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審決分類 審判 全部申し立て   G01S
審判 全部申し立て   G01S
管理番号 1012759
異議申立番号 異議1999-73709  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-09-24 
確定日 2000-03-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第2592490号「パルス型レーダ装置」の請求項1ないし3に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2592490号の請求項1ないし3に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.本件考案
本件実用新案登録2592490号の出願は、平成5年6月28日に出願したものであって、平成11年1月14日に設定登録され、その後、その実用新案登録について実用新案登録異議申立人古野電気株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされたものである。そしてその請求項1ないし3に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】マグネトロン、CFA等のマイクロ波電力管を送信管とする送信部と、アンテナと、受信部と、前記アンテナの前記送信部又は前記受信部への接続切替を行なう送受切替部とを具備するパルス型レーダ装置において、
前記送受切替部と前記受信部との間にリミタ・ダイオードを主体とするリミタを挿入し、該リミタ・ダイオードに、前記送信管を流れるパルス電流、又は該パルス電流の変流器による二次電流、の一部もしくは全部を流すように構成したリミタ部、を設けたことを特徴とするパルス型レーダ装置。
【請求項2】前記リミタ部を、前記送受切替部と前記受信部との間の経路に分波器および合成器により構成した複数の分配路を設け、かつ該分配路の各々に前記リミッタを挿入し、各該リミタの各リミタ・ダイオードに、前記送信管を流れるパルス電流、又は該パルス電流の変流器による二次電流、の一部もしくは全部を、分けて流すように構成したリミタ部、に代えたことを特徴とする請求項1に記載のパルス型レーダ装置。
【請求項3】前記リミタ・ダイオードと直列に、STC回路用として、容量性回路を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパルス型レーダ装置。」
2.申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人古野電気株式会社は、証拠として甲第1号証(特開昭60-229402号公報)、甲第2号証(MERRILL I. SKOLNIK 「Rader Handbook」McGraw-Hill Inc.(1970) Chapter8,31-34)及び甲第3号証(電子工学ポケットブック編纂委員会編「電子工学ポケットブック 第3版」オーム社、(昭49-11-30),p.17-11)を提出し、請求項1に係る考案は甲第1号証のものと同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、また請求項2,3に係る考案は甲第1?3号証ものから容易に考案をすることができたものであるので、同第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1ないし3に係る実用新案登録を取り消すべき旨主張している。
3.異議申立人が提出した甲各号証記載の考案
甲第1号証(特開昭60-229402号公報)
には、次のことが図面とともに記載されている。
「本考案は、マグネトロンに結合したディプレクサと共に用いるのに特に適したマイクロ波切換装置に関する。」(2頁左上欄10?12行)、
「信号を送信し受信するためのポート1に接続した共通アンテナ(図示せず)を有するレーダー装置はマイクロ波エネルギーのパルスを発生するマグネトロン2を含んでいる。」(2頁右下欄8?11行)、
「エネルギーはチャンネ3に沿って両方向に伝播し、1つの方向(図示の右側)において2つのPINダイオード7及び8に入射する。これらのPINダイオードは入射エネルギーを通過させるかまたは反射するように働らく。ポート9は高感度の受信器に接続されている。」(2頁右下欄14?19行)、
「ダイオードの共振周波数は、ダイオードが導通しているとき、マグネトロンのマイクロ波周波数に持たらされ、その結果、ダイオードは高インピーダンスを与えて、マグネトロンからの入射マイクロ波パルスエネルギーをポート1に反射し、ポート1においてエネルギーは輻射される。・・・マグネトロンは、高変圧器(図示せず)からマグネトロンに加えられる電圧パルスがいき値VTを越えて上昇するとき、発振を開始する・・・いき値に達するまで40nsかかり、この時間の間、充電電流がマグネトロンを変圧器に接続する2つの入力リード線に沿って流れる。・・・マグネトロンは、いき値電圧VTに達したとき、発振を開始する。線bは変圧した電圧パルスに起因してリード線10中に流れる電流を示す。初期電流11はマグネトロンの内部容量の充電に起因するものであり、電流は、マイクロ波発振が開始するときの12において急上昇す。」(3頁左上欄2?同頁右上欄7行)、
「小さいトロイド14が、リード線10がマグネトロン2に入る点でリード線10を包囲している。トロイドは代表的には約10ターンのトロイダル巻線15を有するフェライト材料のリングから成る。トロイドはマグネトロンの一体部品であってもよい。巻線の2つの端部は導波管チャンネル3に取入れられ、1つのリード線は導波管自体に16の点で接続されて”アース”として働らき、他のリード線はプローブ18の基部17に接続されており、プローブ18はチャンネル3を横切ってその遠い方の端部に、PINダイオード7を支持している。ダイオード7は調節可能なブッシュ19に接触しており、このブッシュが導波管に対する電流路を完成している。」(3頁右上欄9行?同頁左下欄2行)、
「初期充電電流11はダイオードをバイアスして導通させるのに充分であり、それによって関連する共振回路は、マイクロ波パルスがチャンネル3に注入されるときまでに、反射状態になる。このことによってダイオード7は、比較的大きなキャパシタンスを持つことができ、有効な大きな反射インピーダンスを与える。
他のPINダイオード8ははるかに小さいキャパシタンスを持ち、極めて早く作動する。ダイオード8は、マグネトロンがマイクロ波パルスを発生するとき、チャンネル3中に誘導された電界によって導通状態に持たらされる。・・・変圧器からの高電圧パルスが停止すると、マグネトロンのマイクロ波発振も停止し、ダイオード7及び8は前の状態に戻される。このことによって、ポート1に至る極めて弱い信号がチャンネル3に沿って、高感度受信機に結合したポート9に進行できる。」(3頁左下欄6行?同頁右下欄8行)
甲第2号証(MERRILL I. SKOLNIK 「Rader Handbook」McGraw-Hill Inc.(1970) Chapter8,31-34)
には、次のことが図面とともに記載されている。
「8.6デュプレクサ
デュプレクサ回路は、共通レーダアンテナを送信及び受信に使用できるようにしたものである。デュプレクサは、アンテナを送信器と受信器との間に素早く切り換えるとともに、高出力送信中における受信器の保護機能を備える。好適なデュプレクサは、送信中及び受信中において微小パワーを吸収する。複数の種類のマイクロ波デュプレクサの構成について以下に説明する。・・・
TR管及びATR管は、一般に、4ポート混成結合部(3dB方向性結合器)とともに指数的広帯域の小型のデュプレクサ回路を構成する。図26及び図27は、TR管及びATR管を用いたレーダを示している。これらの回路の切換機能は、前TR管又はATR管によって得られ、受信器の保護は保護TR管によって行われる。分割導波管に対する切換及び受信器保護機能の割当は、各機能を最適化するように行われる。前TR管及びATR管は、アーク損失を低くするとともに広帯域にわたるアンテナに対する高出力の切換を能率的にするように設計され、これに対して、保護TR管は、放電出力を低くするように設計される。前TR管は、通電状態が維持された電極を必要としない。
図26において、2重前TR管(2つのTR管を並設した)が、混成結合部の2つの上壁又は側壁の間に配置されている。送信パルス出力は、混合されて2重前TR管のそれぞれの半分をイオン化する入力によって分割される。パルスのエネルギは、アンテナに再結合及び転送される混成入力によって反射される。少量のエネルギは混成受信器によってパルスエネルギがダミーの負荷(終端)に結合して転送される2重前TR管を通って漏出する。受信器に対する送信器の漏出エネルギは、混成受信器の絶縁によって著しく弱められる。さらに高パルス送信出力に対する受信器の保護は、保護TR管によって与えられる。・受信中には、2重前TR管はイオン化されておらず、総受信信号は混成ネットワークの受信ポートにおいて結合される。・・・
図27に示すデュプレクサは、冷却なしに出力の増加制御を許容する。ATR管は、送信時に放電し、送信出力は僅かな損失でアンテナに切り換えられる。各ATR管は、送信出力の1/2に影響されるため、高出力は、おそらく、導波管における出力分散の超過の前に行われる。その上、ATR管の連続配置された窓は、分離された窓よりも出力の取扱にすぐれているため、適正なATR管デュプレクサは適正なTR管デュプレクサよりも2?4倍の出力を取り扱うことができる。関連する単一のATR管は、TR管よりも長寿命である。受信器は保護TR管によって送信漏出出力から保護される。受信中においてATR管は、送信線に高インピーダンスを与え、受信信号は受信器に反射する。
シャツタスイッチは、図26及び図27のデュプレクサにおいて、保護TR管の通電がオフされることによってリーダが閉鎖している間において、強い干渉信号による受信器の損傷を防止する。シャツタスイッチは、普段は閉じた位置にあり、リーダシステムが働いていない時に受信器と入力との間をショートする。また、リーダがオンされた時には開いた位置に移動する。
・・・1kW程度の高出力レベルの場合は、p-i-n結合のバラクタダイオードリミッタが用いられる。p-i-nダイオードリミッタは、比較的大きな付随の出力をバラクタリミッ夕部によって処理される標準レベルまで減少させるために用いられる。・・・特に、TRリミッタを結合した受信器の保護部は8?12GHzの領域で、500MHzの帯域、最大10kWで平均10Wのハンドリング、0.05ergのスパイク波形の漏出エネルギ、50?100mWのフラット波形の漏出出力、1μsecの回復時間(1μsecのパルス周期、10kWの最大出力)、0.8dBの挿入ロス、1.03以下の電圧定在波比を生じ、-55度C?85度Cにおいて2000時間の寿命であった。平均的なガス導波管デュプレクサを同一の周波数領域で用いた場合、挿入ロスはldBに増加する。回復時間は約2μsec、1MWの最大出力で送信した際の送信ロスは約0.5dBになる。」(8-31頁下から13行?8-34頁27行)
甲第3号証(電子工学ポケットブック編纂委員会編「電子工学ポケットブック 第3版」オーム社、(昭49-11-30),p.17-11)には、次のことが図面とともに記載されている。
「(b)STC回路(海面反射抑制回路)
遠方の物標を探知しやすくするために、受信器の感度を上げると近くの物体に対しては感度が良くなりすぎる。・・・STC回路の動作時の増幅度-時間特性は、図17-13(a)のように、パルス電波の放射時には増幅度が低く、時間とともに増幅度が高くなるようにしている。・・・時間とともにCに充電された負電荷はRを通して放電するので、バイアス電圧も低くなり感度も高くなる。」(17-11頁左欄下から15行?同頁右欄7行)
4.本件考案と実用新案登録異議申立人が提出した甲各号証記載の考案との対比・判断
<請求項1について>
請求項1に係る考案と異議申立人が提出した甲各号証記載の考案とを対比すると、甲各号証には、「送受切替部と前記受信部との間にリミタ・ダイオードを主体とするリミタを挿入し、該リミタ・ダイオードに、前記送信管を流れるパルス電流、又は該パルス電流の変流器による二次電流、の一部もしくは全部を流すように構成したリミタ部、を設けた」との技術的事項が記載されていない。そして上記相違点は設計上の微差あるいは表現上の差異ということはできないから、請求項1に係る考案は、甲第1号証の先願考案と同一ということはできない。
なお異議申立人は、「なお、請求項1に係る考案は、アンテナと受信部との間に送受切替部とリミタとを別体に配置している点で、アンテナと受信器との間にPINダイオードのみを配置した甲第1号証と一見して相違している。しかし、甲第1号証のPINダイオードは、入射エネルギーを受信器に通過させるかまたは反射するものであることから、アンテナと受信器とを選択的に接続するものであり、請求項1に係る考案の送受切替部と同一の機能を有するものである。また、甲第1号証のPINダイオードは、マグネトロンに流れるパルス電流のトロイドによる二次電流の供給を受けて耐電力特性を高めるものであり、請求項1に係る考案のリミタと同一の機能を有するものである。即ち、甲第1号証のPINダイオードは請求項1に係る考案の送受切替部及びリミタの機能を兼ね備えたものであり、請求項1に係る考案は、アンテナと受信部との間に送受切替部とリミタとを別体に配置することによって、アンテナと受信部との間にPINダイオードのみを配置した甲第1号証の効果と比較して特段の効果を奏するものではない。」(申立書6頁下から6行?7頁9行)と主張するが、甲第1号証のPINダイオードが「送受切替部」に相当するとすると、甲第1号証のものは送受切替部と受信部との間に「リミタ」を有さないことになる。また、「甲第1号証のPINダイオードは請求項1に係る考案の送受切替部及びリミタの機能を兼ね備えたもの」であるとしても、該兼ね備えた装置を2つの装置として構成したものと請求項1に係る考案のものとが同一であるということはできない。さらに、請求項1に係る考案は「送信管を流れるパルス電流、又は該パルス電流の変流器による二次電流、の一部もしくは全部を流す」すなわち実施例にある「陽極電流」を流すのに対し、甲第1号証のものは、請求項1に係る考案の実施例にある「パルス駆動電流」を利用するものであるから、この点においても請求項1に係る考案と甲第1号証のものは相違する。そして上記相違点は設計上の微差あるいは表現上の差異ということはできない。したがって、実用新案登録異議申立人の主張は採用するに足らないものである。
<請求項2について>
請求項2のものは、請求項1の考案にさらに、「前記リミタ部を、前記送受切替部と前記受信部との間の経路に分波器および合成器により構成した複数の分配路を設け、かつ該分配路の各々に前記リミッタを挿入し、各該リミタの各リミタ・ダイオードに、前記送信管を流れるパルス電流、又は該パルス電流の変流器による二次電流、の一部もしくは全部を、分けて流すように構成したリミタ部、に代えた」との技術的事項を加えるものであって、請求項1の技術的事項をさらに限定したものであるから、請求項1に係る考案と同様の理由により、刊行物3の先願考案と同一ということはできず、また甲第2号証のものは分波器を示すものではあるが、合成器を示すものではなく、したがって「送受切替部と前記受信部との間の経路に分波器および合成器により構成した複数の分配路を設け」たのものではないので、請求項1に関する相違点及び請求項2においてさらに限定した上記相違点の両者において相違するものであるから、請求項2に係る考案は甲第1?3号証から当業者が容易になし得たということはできない。
なお異議申立人は、「甲第2号証のデュプレクサは、請求項2に係る考案の分波器及び合成器によって構成されるものではないが、一方にアンテナ及び送信器を接続し、他方にダミーの負荷及び送信器を接続した2本の導波管を一体的にしたものであり、レーダ装置の送信器と受信器との間に配置される点で、請求項2に係る考案の分配路と共通している。また、甲第2号証のTR放電管及びATR放電管は、請求項2に係る考案のリミタ・ダイオードによって構成されたリミタと同一のものではないが、アンテナ及び送信器と受信器との間を選択的に開閉して送信時に送信器から照射されたマイクロ波が受信器に受信されないようにするとともに受信時に目標物における反射波がアンテナを介して受信器に受信されるようにするものであり、機能上は請求項2に係る考案のリミタと共通している。即ち、甲第2号証には、送信時において送信器から照射されるマイクロ波から受信器を保護するリミタを、アンテナと受信器との間に複数配置する構成が記載されている。したがって、甲第1及び2号証の考案を組み合わせることによって請求項2に係る考案を得ることができ」(申立書7頁18行?34行)と主張するが、両者は、異議申立人も認めるように、分波器及び合成器によって構成される点で異なるばかりでなく、「リミタ・ダイオード」と「TR放電管及びATR放電管」の点においても相違するものであるから、この点をすべて容易になし得たということはできない。したがって、実用新案登録異議申立人の主張は採用するに足らないものである。
<請求項3について>
請求項3のものは、請求項1又は請求項2に記載の考案にさらに、「前記リミタ・ダイオードと直列に、STC回路用として、容量性回路を設けた」との構成を加えるものであって、請求項1又は請求項2の技術的事項をさらに限定したものであるから、請求項1に係る考案と同様の理由により、甲第1号証と同一ということはできず、また甲第1号証にはSTC回路としての認識がない以上、甲第3号証を適用する動機付けをも欠くものである。また、請求項2に係る考案と同様の技術的事項については上記請求項1に係る判断と同様である。したがって、請求項3に係る考案は甲第1?3号証から当業者が容易になし得たということはできない。
そして、請求項1?3に係る考案は、上記相違点の構成により明細書記載の格別の作用効果を奏するものである。
5. むすび
したがって、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし3に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-02-24 
出願番号 実願平5-39434 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (G01S)
U 1 651・ 113- Y (G01S)
最終処分 維持    
前審関与審査官 宮川 哲伸  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 島田 信一
榮永 雅夫
登録日 1999-01-14 
登録番号 実用新案登録第2592490号(U2592490) 
権利者 新日本無線株式会社
東京都中央区日本橋横山町3番10号
考案の名称 パルス型レーダ装置  
代理人 小森 久夫  

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