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審決分類 審判    F24H
管理番号 1012762
異議申立番号 異議1999-73094  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-06 
確定日 2000-03-25 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2590088号「処理液加熱装置」の登録について、次のとおり決定する。    
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2590088号の実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件登録第2590088号実用新案は、平成5年4月23日に出願され、平成10年11月27日に設定の登録がなされたものである。
これに対し、北村二郎より実用新案登録異議の申立があり、取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成11年12月21日付けで訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正請求書における訂正の内容は、本件登録実用新案の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正事項は、以下1)、2)のとおりのものである。
1)実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として 実用新案登録請求の範囲の欄の第5行(本件実用新案登録公報第1欄第6行)の「前記処理槽を終点として」を、「前記処理槽の内部に設けられたアップフロー管を終点として」と訂正し、同第10行(本件実用新案登録公報第1欄第11行)の「該順路内の気体」を「ヒータの加熱により処理液中に生じた気泡」と訂正する。
2)明りょうでない記載の釈明を目的として、
ア.登録明細書中、段落番号【0007】5?6行(本件実用新案登録公報第3欄第41?42行)の「前記処理槽を終点として」を「前記処理槽の内部に内部に設けられたアップフロー管を終点として」に、また、同第9行(本件実用新案登録公報第3欄第45行)の「該循環路内の気体」を「ヒータの加熱により処理液中に生じた気泡」と訂正する。
イ.同明細書中、段落番号【0008】末行(本件実用新案登録公報第4欄第13行)に「また、循環路の終点である処理槽内に設けられたアップフロー管から処理槽内に送られる処理液は処理槽内の処理液を撹拌しつつ循環することから、処理槽内の処理液の温度を均一とすることができる。」を付加する訂正を行う。
(2) 訂正の目的の適否について
前記1)の訂正は、循環路の構成につきその終点を「処理槽の内部に設けられたアップフロー管を終点」と限定し、循環路内の気体を「ヒータの加熱により処理液中に生じた気泡」と限定するものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。
また、前記2)ア、イの訂正は、前記実用新案登録請求の範囲の減縮に伴って明りょうでなくなった明細書の考案の詳細な説明の欄を明りょうにした訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的としたものと認める。
そして、前記1)、2)の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された範囲内においてなされたものであり、また、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 独立実用新案登録要件について
本件訂正後の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
基板処理用の処理液を貯溜する処理槽と、該処理槽から溢れ出た処理液を受けるオーバーフロー槽と、該オーバーフロー槽を始点とし前記処理槽の内部に設けられたアップフロー管を終点として両者を結ぶ循環路と、該循環路の一部に配設したヒータとを備えて上記処理液を加熱する処理液加熱装置において、前記循環路における前記ヒータ部分またはヒータより下流側に設けられ、ヒータの加熱により処理液中に生じた気泡を前記循環路外に逃す気体抜け部と、該気体抜け部から前記オーバーフロー槽に至る戻し路とを設けたことを特徴とする処理液加熱装置。」
なお、平成11年12月21日付け訂正請求書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載の「アップフロー管」は、本件明細書の考案の詳細な説明の段落12の記載からみて、長手方向に複数の孔をあけたパイプ形状の管であると解される(【0012】第9?10行参照)。
これに対して、当審が通知した取消理由で引用した特開昭58-34175号公報(実用新案登録異議申立人の提出した甲第1号証、以下「第1引用例」という。)には、基板処理用の処理液(「半導体ウエーハのエッチング薬液」として記載されている。)を貯溜する処理槽(「処理部」)と、該処理槽から溢れ出た処理液を受けるオーバーフロー槽(「オーバーフロー部」)と、該オーバーフロー槽を始点とし前記処理槽を終点として両者を結ぶ循環路(「管路」)と、該循環路の一部に配設したヒータ(「循環恒温槽」)とを備えて上記処理液を加熱する処理液加熱装置(「薬液処理装置」)において、前記循環路における前記ヒータ部分またはヒータ部分より下流側に設けられ、ヒータの加熱により処理液中に生じた気泡を前記循環路外に逃す気体抜け部(「空気口」)とを設けたことを特徴とする処理液加熱装置が記載されている。
また、特開昭64-75012号公報(実用新案登録異議申立人の提出した甲第2号証、以下「第2引用例」という。)には、基板処理用の処理液(「半導体ウエハにウエットエッチング等の処理を施すための薬液」として記載されている。)を貯溜する処理槽と、該処理槽から溢れ出た処理液を受けるオーバーフロー槽(「オーバーフロー受液槽」)と、該オーバーフロー槽を始点として両者を結ぶ循環路(「排出管」、「供給管」)とを備えた処理液装置(「半導体ウエハ処理薬液循環濾過装置」)において、循環路内の気体を該循環路外に逃す気体抜け部(「エア溜めタンク」)からオーバー槽に至る戻し路(「エア抜き管」)を設けた点が記載されている。
本件考案と前記第1引用例及び第2引用例に記載されたものとを対比すると、本件考案は、処理槽の内部に設けられた長手方向に複数の孔をあけたパイプ形状のアップフロー管を終点とした循環路を設けた構成としているが、前記第1及び第2引用例には、前記本件考案の上記構成については何ら記載されていないし、また示唆もされていない。
即ち、第1引用例に記載のものは、循環路終点を処理槽の内部に設けたものであるが上記アップフロー管についての記載も示唆もない。
また、第2引用例記載のものも、循環路の終点を、単に、処理槽としたものにすぎない。
そして、上記構成は、ウエハー洗浄処理装置の分野において周知の技術的事項であるとも認められない。しかも、本件考案は、訂正後の明細書に記載された作用効果を奏するものと認められる。
従って、本件考案は、前記第1乃至第2引用例記載のものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえない。
また、後述する3.(2)でみたように、登録異議申立人の提出した甲第3?5号証を含めて検討しても実用新案登録異議申立の理由では、本件考案について、実用新案登録を受けることができないとすることができず、また、他に実用新案登録を受けることができないとする理由も発見できない。
以上のとおりであるから、本件考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
(4) よって、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定において準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例とされる、特許法第120条の4第2項及び同第3項において準用する特許法第126条第2乃至4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.実用新案登録異議申立についての判断
(1)実用新案登録異議申立の理由の概要
実用新案登録異議申立人は、
甲第1号証(特開昭58-34175号公報)、
甲第2号証(特開昭64-75012号公報)、
甲第3号証(実願平2-26932号(実開平3-119420号)のマイ クロフィルム)
甲第4号証(特開平1-123683号公報)
甲第5号証(特開昭63-224705号公報)
を提出し、本件請求項1に係る登録実用新案は、甲第1乃至第5号証記載のものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされてものであり、本件登録実用新案は取り消されるべきであると主張している。
(2)当審の判断
1)本件登録実用新案
本件登録実用新案は、訂正後の明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「基板処理用の処理液を貯溜する処理槽と、該処理槽から溢れ出た処理液を受けるオーバーフロー槽と、該オーバーフロー槽を始点とし前記処理槽の内部に設けられたアップフロー管を終点として両者を結ぶ循環路と、該循環路の一部に配設したヒータとを備えて上記処理液を加熱する処理液加熱装置において、前記循環路における前記ヒータ部分またはヒータより下流側に設けられ、ヒータの加熱により処理液中に生じた気泡を前記循環路外に逃す気体抜け部と、該気体抜け部から前記オーバーフロー槽に至る戻し路とを設けたことを特徴とする処理液加熱装置。」をその要旨とするものである。
なお、上記2.(3)でみたように、上記「アップフロー管」は、本件明細書の考案の詳細な説明の記載からみて、長手方向に複数の孔をあけたパイプ形状の管であると解される。
2)証拠
実用新案登録異議申立人が提出した甲第1乃至第2号証には、前記2.(2)に記した内容が記載されているものと認める。
また、甲第3?5号証には、以下の事項が記載されている。
甲第3号証(実願平2-26932号(実開平3 -119420号)のマイクロフィルム)
「薬液を貯蔵するとともに被処理体を薬液処理するための処理槽と、薬液をろ過するためのプレフィルタと、・・・薬液循環ろ過装置」(実用新案登録請求の範囲)に関して、「処理槽の外周には受液槽を設ける。この受液槽は、前記処理槽よりオーバーフローした薬液を蓄えるものである。」(第6頁第2行?第4行)こと、「メインフィルタの一次側に溜まった気泡は、制御弁を開けたエア抜き管を介して受液槽へ送出される」(第10頁第8行?第10行)こと。
甲第4号証(特開平1-123683号公報)
「洗浄液脱気装置付超音波洗浄装置」に関して、「脱気槽内において加熱コイルで洗浄液が加熱され、この加熱により洗浄液中に含まれている空気が脱気され、槽外へ流出する。一方、加熱により蒸気化された洗浄液は上昇して蒸気冷却コイルにて冷却され液化して洗浄槽に戻る。」(公報第2頁左下欄第7行?第13行)こと。
甲第5号証(特開昭63-224705号公報)
「蒸留装置」に関して、「原水を沸点近傍に加熱して水蒸気を発生させ、この水蒸気を疎水性多孔質膜を透過させるとともに冷却凝縮して蒸留水を得るようにした蒸留装置において、前記原水中に含まれる溶存炭酸ガス、溶存揮発性有機物等を除去する加熱脱気装置を加圧ポンプの吸込側に設けたことを特徴とする蒸留装置。」(特許請求の範囲)
3)対比・判断
そこで、本件考案と前記甲各号証記載のものとを対比、検討すると、上記2.(3) に記したように、甲第1号証および甲第2号証には、処理槽の内部に設けられた長手方向に複数の孔をあけたパイプ形状のアップフロー管を終点とした循環路を設けた構成についての記載はないし、示唆もない。
また、上記構成については、上記甲第3?5号証においても何ら記載されていないし、また示唆もない。そして、上記構成は、ウエハー洗浄処理装置の分野において周知の技術的事項であるとも認められない。しかも、本件考案は、訂正後の明細書に記載された作用効果を奏するものと認められる。
従って、本件考案は、上記第1乃至第5号証に記載のものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえない。
4.むすび
以上、本件実用新案登録異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-02-15 
出願番号 実願平5-26966 
審決分類 U 1 65・ 121- YA (F24H)
最終処分 維持    
前審関与審査官 豊島 唯  
特許庁審判長 寺尾 俊
特許庁審判官 岡本 昌直
会田 博行
登録日 1998-11-27 
登録番号 実用新案登録第2590088号(U2590088) 
権利者 大日本スクリーン製造株式会社
京都府京都市上京区堀川通寺之内上る4丁目天神北町1番地の1
考案の名称 処理液加熱装置  

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