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審決分類 審判 全部申し立て   H01C
審判 全部申し立て   H01C
審判 全部申し立て   H01C
管理番号 1012765
異議申立番号 異議1999-71770  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-30 
確定日 2000-03-06 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2584090号「高圧用可変抵抗器」の請求項1及び2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2584090号の請求項1及び2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.本件考案
実用新案登録第2584090号(平成4年11月9日出願、平成10年8月21日設定登録。)の請求項1及び2に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】一面側に開口部を有する絶縁ケースと、この絶縁ケース内に収納された絶縁基板と、前記絶縁ケースに軸受けされた回転軸と、前記絶縁ケースの開口部側に注型された樹脂とを備えてなる高圧用可変抵抗器であって、
前記絶縁ケースの開口部側の一端に鍔が形成され、この鍔上面に突起が形成され、この突起に溝が形成され、前記絶縁基板から前記絶縁ケース開口部側に導出されたリード端子が前記突起の溝内に配置されて位置決めされ、前記突起には前記溝を分断する切欠きが形成されていることを特徴とする高圧用可変抵抗器。
【請求項2】一面側に開口部を有する絶縁ケースと、この絶縁ケース内に収納された絶縁基板と、前記絶縁ケースに軸受けされた回転軸と、前記絶縁ケースの開口部側に注型された樹脂とを備えてなる高圧用可変抵抗器であって、
前記絶縁ケースの開口部側の一端に鍔が形成され、この鍔上面に突起が形成され、この突起上面に溝が形成され、前記絶縁基板から前記絶縁ケース開口部側に導出されたリード端子が前記突起の溝内に配置されて位置決めされ、前記突起には、そこに形成された前記溝に接する凹部が形成されていることを特徴とする高圧用可変抵抗器。」
2. 異議申立ての理由の概要
異議申立人北陸電気工業株式会社は、(1)本件請求項1に係る考案は、下記甲各号証に記載された事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により、また、(2)本件出願は、実用新案登録請求の範囲の請求項(1)及び(2)には、考案の構成に欠くことができない事項が記載されていないので、実用新案法第5条第4項の規定に違反しており、実用新案登録を受けることができないものであるから、その実用新案登録は取り消されるべきものである旨主張している。

甲第1号証 実願昭61-190152号(実開昭63-95205号)のマイクロフイルム
甲第2号証 実願昭59-43082号(実開昭60-156707号)のマイクロフイルム
甲第3号証 実開平3-7号公報
甲第4号証 実開平3-1409号公報
甲第5号証 実願平2-74455号(実開平4-325045号)のマイクロフイルム
甲第6号証 実願昭63-36557号(実開平1-140806号)のマイクロフイルム
甲第7号証 実願平2-85193号(実開平3-30408号)のマイクロフイルム
甲第8号証 特開昭63-296203号公報
甲第9号証 実願昭63-77208号(実開平2-705号)のマイクロフイルム
3.甲各号証の記載事項
(1)異議申立人北陸電気工業株式会社が提出した甲第1号証(第1,2図参照)には、一面側に開口部を有する絶縁ケース1と、この絶縁ケース1内に収納された絶縁基板5と、絶縁ケース1に軸受けされた回転軸4,4と、絶縁ケースの開口部側に注型された樹脂6と、絶縁ケース1の開口部側の一端に形成された鍔(背面側縁部)1cとを備えた高電圧用可変抵抗器の構造が示されている。この鍔1cの面上には突起8及び11が形成され、2つの突起11の間には2本の溝10,10が形成されている。そして絶縁基板5から絶縁ケース1の開口部側に導出された端子板7が溝10の上を延びるように配置されている。
同甲第2号証(第2,3図参照)には、高電圧用可変抵抗器の絶縁ケース20の鍔(スカート部)21に突起(端子固定部)29が一体に設けられ、この突起29の上に突設された突提30b,30bの間に端子28の一部が嵌合される溝が形成された構造が示されている。
同甲第3号証(第4,5図参照)には、高電圧用可変抵抗器の絶縁ケース1の鍔(ケース端縁)1aに突起1b,1bが一体に設けられ、この突起1b,1bの間に端子3を位置決めする溝が形成された構造が示されている。
同甲第4号証(第9,10図参照)には、高電圧用可変抵抗器の絶縁ケース1の鍔(ケース端縁)1aに甲第3号証と同様な構造が示されている。
同甲第5号証(第5図参照)には、高電圧用可変抵抗器の絶縁ケースの鍔に端子を固定するための突起が一体に設けられた構造が示されている。
同甲第6号証(第1図参照)には、一面側に開口部を有する絶縁ケース1と、この絶縁ケース1内に収納された絶縁基板10と、絶縁ケース1に軸受けされた回転軸6,7と、絶縁ケースの開口部側に注型された樹脂13と、絶縁ケース1の開口部側の一端に形成された鍔(突片)4と、この鍔4の上に一体に形成された突起22とを備えた高電圧用可変抵抗器の構造が示されている。突起22には、リード線16及び17を通す孔21が形成されている。
同甲第7号証(第1?3,5図参照)には、リード線を係止するためのリード線係止片22,23がケース1の鍔部(突起部)1cに一体に設けられ、リード線係止片22,23間にリード線を挟持させる構造を備えた高電圧用可変抵抗器が示されている。
同甲第8号証(第5,6図参照)には、第2頁左上欄第11?20行に第5図に関連して、「この図において、9はプリント回路基板、9aはプリント回路基板9の表面に形成された導体パターン、10は半田である。可変抵抗器自体が矢印A方向へ位置ずれするのは、・・・E寸法に相当するだけ矢印A方向へ位置ずれするのである。」と記載されており、また第2頁右下欄第6?11行に「即ち、第6図に示す様に、従来半田でぬれていたB部は、窓部5bによって溶融半田の拡散が阻止され、半田にてぬらされることがなく、・・・、実装時に位置ずれをすることはない。」と記載されている。
同甲第9号証(第1,7?8図参照)には、第2頁第19行?第3頁第2行に第7?8図に関連して、可変抵抗器において「従来の技術では接着剤12がケースの切欠き部3を通じてケース1外に流れ出すのを防ぐことが困難であると共に、一定の間隔で端子11を導出することが困難であった。」と記載されており、また第1図には、閉鎖部材47を設けて、接着剤12がリード端子45の端部側に流れ出るのを阻止する構造が記載されている。
4.当審の判断
(1)本件請求項1に係る考案(以下、前者という。)と甲各号証の記載事項(以下、後者という。)とを対比すると、後者は、少なくとも前者の構成要件である、「前記突起には前記溝を分断する切欠きが形成されている」構成を具備していない。
そして、前者は上記構成要件を具備することにより、「絶縁ケースの開口部側の一端に形成された鍔上面の突起に、そこに形成された溝を分断する切欠きを形成したから、突起の溝内に侵入した樹脂はその切欠き部分に溜まることになり、絶縁ケースの外部側にまで流出するようなことがなくなる。」という後者のいずれからも予測できない明細書記載のとおりの格別の効果を奏するものと認められる。
したがって、前者は甲各号証の記載事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。
次に、(2)本件請求項1及び2には、考案の構成に欠くことができない事項が記載されてなく、したがって、明細書記載のとおりの効果が得られるのか否かが不明である、との理由について検討する。
異議申立人は、考案の構成に欠くことができない事項として下記の要件についての記載を主張している。
a)請求項1及び2には、絶縁ケースの開口部に充填した樹脂が絶縁ケースの鍔の面上に乗り上げるための要件
b)請求項1において、切り欠きの幅及び深さが、切り欠きの先に更に樹脂が流れることがない程度幅が広く且つある程度深さが広いものでならないことが特定されていない。
c)請求項2において、「溝に接する凹部」の位置及び大きさ並びに溝との連通関係が特定されていない。
そこで明細書の記載をみると、本件出願は、「絶縁ケースの開口部側に注型した樹脂が、リード端子を位置決めする突起にまで達しても、絶縁ケースの外部側にまでは流出しないようにした高圧用可変抵抗器を提供することを目的としている。」ものであり(登録公報【0010】参照)、また「このように構成された高圧用可変抵抗器においては、注型時に樹脂4が突起6にまで達して溝7内に侵入しても、その樹脂は切欠き10部分に溜まることになる。」記載がある(登録公報【0019】参照)。同様な記載として、「・・・樹脂はその凹部部分に溜まることになり、・・・」記載がある(登録公報【0023】参照)。
そして上記の記載に対応して、請求項1中に「前記突起には前記溝を分断する切欠きが形成されている」の要件、及び請求項2中に「前記突起には、そこに形成された前記溝に接する凹部が形成されている」の要件が各記載されており、このように請求項1及び2中に上記各要件が記載されることにより、本件出願はその目的が達成され、明細書記載のとおりの効果が得られるのは明らかである。
してみると、本件請求項1及び2中には必要かつ十分な要件の記載がなされており、上記a)?c)の要件記載は必要に応じて適宜に記載されるべき事項であって、上記の要件記載を要求する異議申立人の主張は採用できない。
5. むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-02-10 
出願番号 実願平4-77022 
審決分類 U 1 651・ 531- Y (H01C)
U 1 651・ 121- Y (H01C)
U 1 651・ 534- Y (H01C)
最終処分 維持    
前審関与審査官 嶋野 邦彦  
特許庁審判長 木南 仁
特許庁審判官 飯尾 良司
木村 勇夫
登録日 1998-08-21 
登録番号 実用新案登録第2584090号(U2584090) 
権利者 株式会社村田製作所
京都府長岡京市天神二丁目26番10号
考案の名称 高圧用可変抵抗器  
代理人 西浦 嗣晴  

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