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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1014933
審判番号 審判1998-2411  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-02-18 
確定日 2000-03-10 
事件の表示 平成4年実用新案登録願第59800号「断熱性紙カップ容器」拒絶査定に対する審判事件(平成6年3月22日出願公開、実開平6-22212)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 I.手続の経緯・本願考案
本願は、平成4年8月25日の出願であって、その請求項1に係る考案は、平成11年8月24日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認められる。
【請求項1】表面層と断熱材層とを積層した扇形状の断熱シートを、紙カップ容器の胴部に断熱材層を内側にして円周方向に巻付けて、断熱シートの左右端部を封筒状に重ねて貼合せした断熱性紙カップ容器において、扇形状の断熱シートの段付きの中芯紙からなる断熱材層の左右幅が紙カップ容器の胴部の円周方向長さより僅かに短くなるように、断熱シートの表面層を残して、断熱シートの左右端の貼合せ部分の外側の断熱材層を取除いたことを特徴とする断熱性紙カップ容器。
II.引用刊行物記載の考案
当審で平成11年5月14日付けで通知した拒絶の理由において引用した、実願平2-86151号(実開平4-45216号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物1」という。)及び特公昭41-9908号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には以下の点が記載されている。
(1)引用刊行物1
a)「紙カップ本体と、この紙カップ本体の胴部外周に沿う扇形状をした断熱シートとから構成され、断熱シートは波形に段成形した中芯の片面にライナーを貼合してなる片面段ボールからなり、・・・断熱シートをその中芯側を内面として紙カップ本体の外周に巻き付けて装着してなることを特徴とする断熱性容器。」(実用新案登録請求の範囲、第1?5図参照。)
b)「プラスチック製品の不燃ゴミ公害が大きな社会問題となっており、プラスチック製の断熱性容器はその使用をひかえる傾向にある。以上のような観点から、紙製の断熱性容器が見直されているところである」(2頁6?11行)
c)「紙カップ本体2は、第2図に示すように普通の紙カップと同様のものであり、内面若しくは内外両面にポリエチレン等の合成樹脂をコーティングした紙からなるブランク板を巻回しその両端を貼合部4で貼り合わせて胴部5を構成した後、該胴部5の下方に同じ紙からなる底板6を巻き締めると共に、上方開口縁に外向きカール部7が形成されたものである。」(5頁5?12行、第2図参照。)
(2)引用刊行物2
a)「第1図に就いて、・・・用紙10は紙部分11・・・と発泡性プラスチック部12・・・とより形成され、プラスチック部12は・・・紙の部分に積層される。発泡はプラスチック部12は・・・容易に発泡して熱絶縁性となり、用紙10から形成される容器内に飲食物を貯えるのに適する。・・・発泡性プラスチック部12は・・・紙部11よりも狭い幅を有している事が判る。又発泡性プラスチック部12は紙部11に対して中央にあるから、積層用紙10は紙の部分だけの縁部13と14とを有する。」(1頁右欄17?30行、第1図参照。)
b)「第3図について、15はコップを形成するための素材のような容器胴素材を示し、これは特にテーパを有する容器胴を形成するのに適している。素材15は外形が円弧状をなし、一対の轡曲した同心の側縁16と17とを有し、その側縁17は側縁16よりも大きな半径を有する。素材15は一対の端縁18と19とを有し、各縁は直線でその延長が一点に集中するようになっている。素材15は紙の部分のみの端部20で形成され、その残りは素材15が形成されるよう積層されている。」(1頁右欄32?41行、第3図参照。)
c)「素材15が任意の切断装置に依り用紙10から適宜切断された後は、粘着剤が各素材の一端の紙のみの部分に適用され、次に素材は円筒形に成形され前記紙のみの部分が他の縁部に重ね合せられ第5図と第6図に明示するように粘着剤21に依り適宜貼着される。」(2頁左欄20?25行、第5・6図参照。)
III.対比・判断
本願請求項1に係る考案と引用刊行物1記載の考案とを対比すると、後者の断熱シートは波形に段成形した中芯の片面にライナーを貼合してなるものであり、中芯側を内面として紙カップ本体の外周に巻き付けて接着してなるものであるから、後者の「ライナー」、「中芯」、「扇形状をした断熱シート」、「紙カップ本体」及び「断熱性容器」は夫々前者の「表面層」、「断熱材層」、「扇形状の断熱シート」、「紙カップ容器」及び「断熱性紙カップ容器」に相当し、両者は「表面層と断熱材層とを積層した扇形状の断熱シートを、紙カップ容器の胴部に断熱材層を内側にして円周方向に巻付けて、断熱シートの左右端部を貼合せした断熱性紙カップ容器」であること、及び「扇形状の断熱シートの断熱材層が段付きの中芯紙からなる」点で一致する。そして、▲1▼断熱シートの左右端部の貼合せが、前者では「封筒状に重ねて」なされているのに対し、後者では単に「接着してなる」ものである点、▲2▼前者では「断熱材層の左右幅が紙カップ容器の胴部の円周方向長さより僅かに短くなるように、断熱シートの表面層を残して、断熱シートの左右端の貼合せ部分の外側の断熱材層を取除いた」のに対し、後者では表面層と断熱材層の左右幅に差がない点で相違する。
以下、前記相違点について検討する。
(1)相違点▲1▼について
引用刊行物1の記載aによれば、この種カップ容器の左右端部の貼合せにおいて封筒状に重ねることは通常おこなわれていることであり、断熱シートの貼合部にこれを適用することは当業者が適宜行いうる設計事項にすぎない。
(2)相違点▲2▼について
引用刊行物2には、カップ容器を形成する積層用紙において、左右の貼合せ部分の外側の断熱材層を取除いた構成が記載されている。同じカップ容器の技術分野に属する引用刊行物1記載の考案における断熱シートの貼合せ部分にこの技術を適用することに格別の困難性があるとはいえない。そして、重なり代が平坦で極力密着した状態になるように設計することは当業者が通常おこなうことであり、その適用にあたって、断熱材層の左右幅を紙カップ容器の胴部の円周方回長さより僅かに短かくなるように構成することは技術常識として採用することである。
IV.むすび
したがって、本願請求項1に係る考案は引用刊行物1及び引用刊行物2記載の考案に基づいて、当業者がきわめて容易に想到することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-11-30 
結審通知日 1999-12-10 
審決日 1999-12-17 
出願番号 実願平4-59800 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 佐藤 久容
特許庁審判官 杉原 進
鈴木 美知子
考案の名称 断熱性紙カップ容器  

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