• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A01K
管理番号 1014965
審判番号 審判1999-4414  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-03-18 
確定日 2000-04-17 
事件の表示 平成 1年実用新案登録願第 54691号「リール脚固定装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 2年12月10日出願公開、実開平 2-145070、平成 7年 5月10日出願公告、実公平 7- 19260、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。   
結論 原査定を取り消す。 本願の考案は、実用新案登録すべきものとする。
理由 理 由
1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成1年5月13日の出願であって、その請求項1及び2に係る考案は、出願公告後の平成12年2月9日付けの手続補正書により補正された実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりの次のものである。
「【請求項1】リール脚載置部の前側に移動フードを有し、これに対向して後側に固定タイプフードを有するリール脚固定装置において、前記固定タイプフードの径方向反対側周側部でかつ該固定タイプフード開口より後方になだらかな起伏の凸部を設け、前記固定タイプフード開口の径方向反対側位置が前記凸部の裾野部付近にあたり、両軸受型リールを装着して中指と薬指との間に前記凸部を位置させるように握った場合、該中指と薬指は前記なだらかな起伏の凸部の前後の傾斜面に当って滑り止めされて握持でき、一方、スピニングリールを装着した場合、親指付け根の手の膨出部がなだらかな起伏の凸部の前側の傾斜面に当って握持できることを特徴とするリール脚固定装置。
【請求項2】前記固定タイプフードの径方向反対側周側部に、前記凸部に連続してその前側に長手方向に長く、前記裾野部付近を含んだ凹部を形成した請求項1記載のリール脚固定装置。」

2.刊行物の記載内容
原査定の拒絶の理由となった実用新案登録異議の決定の理由において引用された甲第1号証の意匠登録第453681号公報(以下、刊行物1という)及び甲第2号証の米国特許第4,697,376号明細書(以下、刊行物2という)には、それぞれ下記の考案が記載されている。

刊行物1
A-A断面図には、リ-ル脚固定装置e、cの左側に移動フードaを有し、これに対向して右側に固定フードbを有する釣竿用リールシートにおいて、前記固定フードbの径方向反対側周側部でかつ該固定フードb開口より右方に凸部dを設け、該凸部dに連続してその左側に凹部fを備えた釣竿用リールシート(以上、原審の異議申立人付与の符号参照)が記載されている。
また、A-A断面図に記載された釣竿用リールシートの固定フードより右側の同径の軸部分が、使用状態参考図では大径になっていて鞘管が嵌合された記載になっていると共にその右端部にはキャップが設けられている。

刊行物2
「図35のハンドル構造の側面図には、リールシート部分を通してグリップ部分(butt grip segment)に挿入されたロッド軸2を有する左横にオッフセットされたピストル型グリップハンドルを示す。リールシート部分8a上には、2点鎖線で示すユーザの左手がパーミンググリップ位置に置かれたパーミンググリップリール(Palmig grip reel)16aが示されている。図35,36で示されるように、ロッド軸2は、リールシート部分とグリップ部分6kの大部分とを通して軸方向に延びている。ハンドルは、リールシート部分8前方の前グリップ(foregrip)10とリールシート部分8の間に調節可能に螺合されたロックナット14とを備えている。パーミングリール16aは、リールシート8a上に載置されている。ピストルグリップ形状を有するハンドル4は、グリップ部分6kの前方の端が、ロッド軸上部の端部122に向かって高くなっている。これは、グリップ部6kのトップ面からリール16aのトップ面までの握り距離を少なくしている。また、グリップ部分6kのトップ面は、好しくは、ユーザの親指付け根の手の膨出部の形状に合った凹形状124のゆるやかなカーブで凹んでいる。なだらかなカーブの凹部126が、パーミンググリップ位置でのユーザの握りの改善のために、リールシート部分8とグリップ部分6kの下部に設けられている。図35の態様では、従来のピストル型ハンドルのように、リールシート部分下部にトリガーは設けられない。図14の符号40で示されるように、そのようなトリガーは、手の平での握りの障害となる。リールシートトリガーはキャスティング時には有用であるけれども、ルアーや魚を回収するリール時やハンドル操作時には障害となる。
ここに開示された横方向にオフセットされたハンドルの全態様は、グリップ位置におけるユーザの手のハンドルとの接触部分を増やすことで、ロッドに加わる力と振動に対する感度を改善している。図35、36、37に示す態様において、ハンドルにたいするわずかなロッドの振動とわずかな梃子作用力に対する釣人の能力が、図35、36に示すように、凹形状124の領域におけるグリップ部分6kのトップ面でロッド軸2の後端を曝すことで著しく拡大される。それ故、ユーザの親指付根部分と手の平部分のグリップトップ面との最も直接的で密接な接触は、ハンドルの上方への梃子作用力及びロッド振動に対する感度が、いわゆるブランクースルー構造(blank-through construction)のロッドとハンドル構造に上記位置でのロッド軸後端を露出することで著しく改善される。」(20欄41行?21欄25行)、の記載がある。
さらに、上記図35には、パーミングリール16aが載置されたリールシート部分8a後部の径方向反対側周側部付近の凸部dを含む複数の凸部が設けられ、中指と薬指との間に前記凸部dを位置させるように握るようにした構成(以上、原審の異議申立人付与の符号参考)が記載されている。

3.対比・検討
先ず、刊行物1を検討すると、移動フードは前側に、固定フードは後側に設けるのが普通であるとと共に、意匠公報の刊行物1のA-A断面図に記載された釣竿用リールシートの固定フードより右側の同径の軸部分が、使用状態参考図では大径になっていて鞘管が嵌合された記載になっていると共にその右端部にはキャップが設けられた記載になっていると認められるから、該A-A断面図の右側の同径の軸部分は、釣竿の握り部を構成していると認める。
したがって、同刊行物1には、リ-ル脚固定装置e、cの前側に移動フードaを有し、これに対向して後側に固定フードbを有する釣竿用リールシートにおいて、前記固定フードbの径方向反対側周側部でかつ該固定フードb開口より後方に凸部dを設け、該凸部dに連続してその前側に凹部fを備えた釣竿用リールシート(以上、原審の異議申立人付与の符号参照)が記載されていると認める。

次に、本願の請求項1に係る考案と刊行物1に記載の考案とを比較すると、刊行物1に記載の考案の「固定フードb」、「リール脚固定装置e,c」、「釣竿用リールシート」は、それぞれ本願の請求項1に係る考案の「固定タイプフード」、「リール脚載置部」、「リール脚固定装置」に相当するから、両者は、リール脚載置部の前側に移動フードを有し、これに対向して後側に固定タイプフードを有するリール脚固定装置において、前記固定タイプフードの径方向反対側周側部でかつ該固定タイプフード開口より後方に凸部を設けたリール脚固定装置である点で一致し、
前記凸部が、本願の請求項1に係る考案は、なだらかな起伏の凸部であって、固定タイプフード開口の径方向反対側位置が前記凸部の裾野部付近にあたり、両軸受型リールを装着して中指と薬指との間に前記凸部を位置させるように握った場合、該中指と薬指は前記なだらかな起伏の凸部の前後の傾斜面に当って滑り止めされて握持でき、一方、スピニングリールを装着した場合、親指付け根の手の膨出部がなだらかな起伏の凸部の前側の傾斜面に当って握持できるものであるのに対し、刊行物1には、そのような構成が記載されていない点、
で相違している。

上記相違点に関し刊行物2の記載事項を検討すると、上記図35には、パーミングリール16aが載置されたリールシート部分8a後部に接するグリップ部分6kの前方端部には開口を有する固定タイプフードbが構成されていることは技術常識からみて明かであり、該固定タイプフードbの開口の径方向反対側周側部付近の凸部dを含む複数の凸部が設けられ、パーミングリール16aを装着して中指と薬指との間に前記凸部dを位置させるように握るようにした構成(以上、原審の異議申立人付与の符号参考)が記載されていると認められ、刊行物2に記載の「ハンドル構造」、「パーミングリール」は、本願の請求項1に記載の考案の「リール脚固定装置」、「両軸受型リール」に相当すると共に、同刊行物2に記載された凸部dが滑り止め機能を有することは明らかであるから、同刊行物2には、固定タイプフード開口の径方向反対側周側部付近に凸部dを設け、両軸受型リールを装着して中指と薬指との間に前記凸部dを位置させるように握った場合、該中指と薬指は前記凸部dの前後の傾斜面に当って滑り止めされて握持できるようにしたピストル型グリップ部分を有するリール脚固定装置が記載されていると認める。
しかしながら、同刊行物2に記載のリール脚固定装置は、ピストル型グリップ部分を有するものであるため、スピニングリールを装着した場合はピストル型グリップの湾曲部分(符号4の部分)及び凸部dを含む複数の凸部が障害となって、スピニングリールの使用には適さないことは明らかである。したがって、同刊行物2に記載された凸部は、上記相違点の請求項1に係る考案の構成のように、なだらかな起伏の凸部であって、スピニングリールを装着した場合、親指付け根の手の膨出部がなだらかな起伏の凸部dの前側の傾斜面に当って握持できることを特徴とする技術事項をなすものとは認められないものである。
そうしてみると、刊行物2には、本願の請求項1に係る考案の「固定タイプフードの径方向反対側周側部でかつ該固定タイプフード開口より後方になだらかな起伏の凸部を設け、前記固定タイプフード開口の径方向反対側位置が前記凸部の裾野部付近にあたり、両軸受型リールを装着して中指と薬指との間に前記凸部を位置させるように握った場合、該中指と薬指は前記なだらかな起伏の凸部の前後の傾斜面に当って滑り止めされて握持でき、一方、スピニングリールを装着した場合、親指付け根の手の膨出部がなだらかな起伏の凸部の前側の傾斜面に当って握持できる」とする上記相違点に関する構成は記載されておらず、刊行物1記載の考案において刊行物2記載の考案を適用しても本件考案の構成にはなりえなから、刊行物1及び2に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものであるとすることはできない。
そして、本願の請求項1に係る考案は、上記構成を主要な構成要件とすることにより、「両軸受型リールが取付けられる時及びスピニングリールが取付けられる時に夫々の握り方法に対応できて、握り易いと共に握り心地がよく、長時間握っていても手が痛くならず、両軸受型リールが取付けられた時、手の滑り止めもなされる等、実用上優れた効果を奏するリール脚固定装置が提供可能になる」(考案の効果)という明細書記載の特有の効果を奏すると認める。

本願の請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案を減縮したものであるから、請求項1に係る考案と同様に、上述のとおり、刊行物1及び2に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものであるとすることはできない。

4.むすび
以上、本願の請求項1及び2に係る考案は、刊行物1及び2に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2000-03-28 
出願番号 実願平1-54691 
審決分類 U 1 8・ 121- WY (A01K)
最終処分 成立    
前審関与審査官 塩崎 進  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 村山 隆
鈴木 公子
考案の名称 リール脚固定装置  
代理人 越智 俊郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ