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審決分類 審判 一部申し立て   F16B
審判 一部申し立て   F16B
管理番号 1015005
異議申立番号 異議1999-70485  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-10 
確定日 2000-03-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2581249号「クリップ」の請求項1に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2581249号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 I.手続の経緯
実用新案登録第2581249号(平成5年3月12日出願、平成10年7月10日設定登録。)の請求項1に係る考案は、平成11年2月10日に、平岡良子より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月8日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項▲1▼
実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載を下記のとおりに訂正する。
【請求項1】ピンとブッシュで構成され、ブッシュの軸部を連結すべき複数のパネル等の被取付部材の穴に挿入し、そのブッシュの中空軸部にピンの軸部を挿入してブッシュ軸部を拡径し、この拡径軸部部分とブッシュのフランジとによって被取付部材を相互に連結するクリップにおいて、
ピンとブッシュは、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されてブッシュ軸部を拡径しない状態でピンフランジがブッシュフランジから離れている第1連結位置と、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されてブッシュ軸部を拡径し且つピンフランジがブッシュフランジに接面する第2連結位置と、該第2連結位置から、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されているがピンフランジがブッシュフランジから離れた状態にピン軸部をブッシュ軸部から引き上げた第3連結位置とをとり、前記3つの連結位置をとるため、ブッシュ軸部内面には半径方向内方且つ軸部先端方向に延びる係止爪が形成され、ピン軸部には該係止爪を受ける係止溝が形成され、前記第3連結位置において前記係止爪に係止する係止溝は、第2連結位置において拡径したブッシュ軸部部分を元の状態に縮径させるように該係止爪先端を該係止溝に拘束する形状であり、前記係止爪は、ブッシュフランジとブッシュ軸部先端との間であってブッシュフランジから離れた位置のブッシュ軸部内面に形成されていることを特徴とするクリップ。
(2)訂正事項▲2▼
明細書の【0005】【課題を解決するための手段】の欄の記載を訂正事項▲1▼と対応させて訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項▲1▼は実用新案登録請求の範囲に記載された構成をさらに限定するものであって、訂正事項▲2▼は訂正事項▲1▼に合わせたものであるから、いずれも、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、且つ、該限定事項は願書に添付された図面に記載されているから、いずれれの訂正事項も新規事項の追加に該当せず、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
3.独立実用新案登録要件の判断
(1)訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件訂正考案」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されたとおりのもの(訂正事項▲1▼参照)である。
(2)取消理由通知で引用した刊行物
▲1▼引用例1:実公平1-43532号公報
(申立人が甲第1号証として提示)
▲2▼引用例2:特開昭50-107365公報
(申立人が甲第2号証として提示)
▲3▼引用例3:意匠登録第664350号の類似3公報
(申立人が甲第3号証として提示)
(3)本件訂正考案と引用例に記載された考案の対比・判断
▲1▼本件訂正考案と引用例1の記載との対比
引用例1に記載されたものにおいて、第9図の状態は、本件訂正考案の第1連結位置及び第3連結位置に相当すると認めることができるが、この状態で係止突起25(本件訂正考案の「係止爪」に相当)が係止ブロック6(本件訂正考案の「ピン軸部」に相当)に係止している箇所は、ほぼ水平であって、第10図の状態(本件訂正考案の「第2連結位置」に相当)において拡径した雌部材11の係止脚20(本件訂正考案の「ブッシュ軸部部分」に相当)を元の状態に縮径させる機能を有しないばかりか、このような機能を持たせることを示唆する記載もない。
また、引用例1に記載されたものにおいては、係止突起25(本件訂正考案の「係止爪」に相当)は、雌部材11の基板12(本件訂正考案の「ブッシュフランジ」に相当)に近接していて、そこから離れた位置に形成することを示唆する記載もない。
▲2▼本件訂正考案と引用例2の記載との対比
引用例2に記載されたものにおいて、第12図の状態は、本件訂正考案の第3連結位置に相当すると認めることができるが、この状態でストッパ片13(本件訂正考案の「係止爪」に相当)がプランジャ2(本件訂正考案の「ピン軸部」に相当)に係止しているストッパ肩20は、ほぼ水平であって、第10図の状態(本件訂正考案の「第2連結位置」に相当)において拡径した雌部材11の係止脚20(本件訂正考案の「ブッシュ軸部部分」に相当)を元の状態に縮径させる機能を有しないばかりか、このような機能を持たせることを示唆する記載もない。
また、引用例2に記載されたものにおいては、ストッパ片13(本件訂正考案の「係止爪」に相当)は、はと目1(雌部材)の相補的な頭部3(本件訂正考案の「ブッシュフランジ」に相当)に近接していて、そこから離れた位置に形成することを示唆する記載もない。
▲3▼本件訂正考案と引用例3の記載との対比
引用例3に記載されたものにおいて、A-A線断面図の状態は、本件訂正考案の第1連結位置及び第3連結位置に相当すると認めることができるが、この状態で本件訂正考案の「係止爪」に相当する箇所が本件訂正考案の「ピン軸部」に相当する部材に係止している箇所は、ほぼ水平であって、本件訂正考案の「第2連結位置」に相当する使用状態を示す参考図の状態において拡径した本件訂正考案の「ブッシュ軸部部分」に相当する部材を元の状態に縮径させる機能を有しないばかりか、このような機能を持たせることを示唆する記載もない。
してみると、引用例1乃至引用例3に記載されたものは、いずれも、本件訂正考案が具備する構成「前記第3連結位置において前記係止爪に係止する係止溝は、第2連結位置において拡径したブッシュ軸部部分を元の状態に縮径させるように該係止爪先端を該係止溝に拘束する形状である」(以下、「特定構成A」という。)を具備しないばかりか、該構成を具備することを示唆するものでもない。
また、引用例1乃至引用例3に記載されたものに、上記特定構成Aを付加しなければならない特段の事情も見当たらない。
したがって、本件訂正考案は、引用例1乃至引用例3に記載されたいずれの考案でもないばかりか、これらの考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものでもないので、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案とすることができない。
4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第2項及び第3項でさらに準用する特許法第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.実用新案登録異議申立てについての判断
1.申立て理由の概要
申立人 平岡良子は、甲第1号証として実公平1-43532号公報(引用例1)を、甲第2号証として特開昭50-107365公報(引用例2)を、甲第3号証として意匠登録第664350号の類似3公報(引用例3)をそれぞれ提示して、実用新案登録第2581249号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、引用例1乃至引用例3に記載された考案のいずれとも同一、又はこれらの考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定により、又は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、実用新案登録を取り消すべき旨主張している。
2.判断
本件考案は、前記II.で説示したように、本件訂正考案のとおりにその訂正が認められるものであって、該本件訂正考案が、引用例1乃至引用例3に記載されたいずれの考案でもないばかりか、これらの考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものでもないので、当然、同じ理由によって、本件考案は、引用例1乃至引用例3に記載されたいずれの考案でもないばかりか、これらの考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものでもない。
してみると、本件考案は、実用新案法第3条第1項第3号の規定により、又は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものとすることができない。
3.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
クリップ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ピンとブッシュで構成され、ブッシュの軸部を連結すべき複数のパネル等の被取付部材の穴に挿入し、そのブッシュの中空軸部にピンの軸部を挿入してブッシュ軸部を拡径し、この拡径軸部部分とブッシュのフランジとによって被取付部材を相互に連結するクリップにおいて、
ピンとブッシュは、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されてブッシュ軸部を拡径しない状態でピンフランジがブッシュフランジから離れている第1連結位置と、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されてブッシュ軸部を拡径し且つピンフランジがブッシュフランジに接面する第2連結位置と、該第2連結位置から、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されているがピンフランジがブッシュフランジから離れた状態にビン軸部をブッシュ軸部から引き上げた第3連結位置とをとり、前記3つの連結位置をとるため、ブッシュ軸部内面には半径方向内方且つ軸部先端方向に延びる係止爪が形成され、ピン軸部には該係止爪を受ける係止溝が形成され、前記第3連結位置において前記係止爪に係止する係止溝は、第2連結位置において拡径したブッシュ軸部部分を元の状態に縮径させるように該係止爪先端を該係止溝に拘束する形状であり、前記係止爪は、ブッシュフランジとブッシュ軸部先端との間であってブッシュフランジから離れた位置のブッシュ軸部内面に形成されていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】 ピンとブッシュで構成され、ブッシュの軸部を連結すべき複数のパネル等の被取付部材の穴に挿入し、そのブッシュの中空軸部にピンの軸部を挿入してブッシュ軸部を拡径し、この拡径軸部部分とブッシュのフランジとによって被取付部材を相互に連結するクリップにおいて、
ブッシュ軸部の先端側には直径方向に横切る係止バーが形成され、ピンの軸部は下方に向けて開くように延びる2本の脚部で構成され、ピンとブッシュは、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されてブッシュ軸部を拡径しない状態でピンフランジがブッシュフランジから離れている第1連結位置と、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されてピン軸部の脚部が係止バーに係合して拡開され、この拡開によってブッシュ軸部を拡径し且つピンフランジがブッシュフランジに接面する第2連結位置とをとり、ピン軸部の各脚部の先端には半径方向外側に張出す係止爪が形成され、この係止爪には、第2連結位置において拡径したブッシュ軸部部分を、第1連結位置において元の状態に縮径させるように拘束する係止溝が設けられたことを特徴とするクリップ。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、ピンとブッシュで構成され、2枚のパネル等の被取付部材を相互に連結するクリップに関する。
【0002】
【従来の技術】
ピンとブッシュで構成され、ブッシュの軸部を連結すべき2枚のパネル等の被取付部材の穴に挿入し、そのブッシュの中空軸部にピンの軸部を挿入してブッシュ軸部を拡径し、この拡径軸部部分とブッシュのフランジとによって被取付部材を相互に連結するクリップはよく知られている。このクリップは、ブッシュ軸部を被取付部材の穴に挿入してピンを押込むだけで、被取付部材を相互に連結できるので、その作業が簡単である。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
車体に取付けられた部材を交換したりする場合のように、被取付部材の連結を解除したい場合に、上記のクリップを被取付部材から除去する必要がある。このクリップの除去において、ピンを引抜くことによってブッシュも一緒に引抜くのであるが、ピンを解除位置にしても被取付部材から外れにくくなってしまう。これは、ブッシュ軸部を拡径した状態で被取付部材を相互に連結する構成であるため、連結状態で長く放置されると、ブッシュ軸部は拡径状態に変形してピンを引抜いても非拡径状態には戻らず、クリップが外れにくくなるからである。このようにブッシュが変形してしまうと、ブッシュの除去作業が加わることになり、また、このブッシュの除去作業は中々厄介であった。
【0004】
従って、本考案の目的は、長く被取付部材を連結した状態の後でもピンの引き上げによって確実にブッシュも一緒に引抜けるクリップを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本考案によれば、ピンとブッシュで構成され、ブッシュの軸部を連結すべき複数のパネル等の被取付部材の穴に挿入し、そのブッシュの中空軸部にビンの軸部を挿入してブッシュ軸部を拡径し、この拡径軸部部分とブッシュのフランジとによって被取付部材を相互に連結するクリップであって、ピンとブッシュは、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されてブッシュ軸部を拡径しない状態でピンフランジがブッシュフランジから離れている第1連結位置と、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されてブッシュ軸部を拡径し且つピンフランジがブッシュフランジに接面する第2連結位置と、この第2連結位置から、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されているがピンフランジがブッシュフランジから離れた状態にピン軸部をブッシュ軸部から引き上げた第3連結位置とをとり、前記3つの連結位置をとるため、ブッシュ軸部内面には半径方向内方且つ軸部先端方向に延びる係止爪が形成され、ピン軸部には該係止爪を受ける係止溝が形成され、前記第3連結位置において前記係止爪に係止する係止溝は、第2連結位置において拡径したブッシュ軸部部分を元の状態に縮径させるように該係止爪先端を該係止溝に拘束する形状であり、前記係止爪は、ブッシュフランジとブッシュ軸部先端との間であってブッシュフランジから離れた位置のブッシュ軸部内面に形成されていることを特徴とするクリップが提供される。
【0006】
また、本考案によれば、ピンとブッシュで構成され、ブッシュの軸部を連結すべき複数のパネル等の被取付部材の穴に挿入し、そのブッシュの中空軸部にピンの軸部を挿入してブッシュ軸部を拡径し、この拡径軸部部分とブッシュのフランジとによって被取付部材を相互に連結するクリツブであって、ブッシュ軸部の先端側には直径方向に横切る係止バーが形成され、ピンの軸部は下方に向けて開くように延びる2本の脚部で構成され、ビンとブッシュは、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されてブッシュ軸部を拡径しない状態でピンフランジがブッシュフランジから離れている第1連結位置と、ピン軸部がブッシュ軸部に挿入されてピン軸部の脚部が係止バーに係合して拡開され、この拡開によってブッシュ軸部を拡径し且つピンフランジがブッシュフランジに接面する第2連結位置とをとり、ピン軸部の各脚部の先端には半径方向外側に張出す係止爪が形成され、この係止爪には、第2連結位置において拡径したブッシュ軸部部分を、第1連結位置において元の状態に縮径させるように拘束する係止溝が設けられたことを特徴とするクリップが提供される。
【0007】
【実施例】
以下、本考案の実施例について、図面を参照しながら説明する。図1?図7は本考案の第1の実施例に係るクリヅプ1を示す。図1?図3に示すように、クリップ1はピン2とブッシュ3で構成され、各部材はプラスチックで成形される。このクリップ1は、ブッシュ3の軸部4を連結すべき被取付部材としての図2に示す2枚のパネル5、6の穴に挿入し、ブッシュ3の中空の軸部4にピン2の軸部7を挿入してブッシュ軸部4を拡径し、この拡径軸部部分とブッシュ3のフランジ8とによってパネル5、6を相互に連結する。この連結のため、先ず、ピン2とブッシュ3は、ピン軸部7がブッシュ軸部4に挿入されてピン軸部7がブッシュ軸部4を拡径しない状態でビン2のフランジ9がブッシュフランジ8から離れている図1の第1連結位置をとる。この第1連結位置は、ピン2とブッシュ3を連結する仮止め状態となるもので、手で持ち易いように、ピン2がブッシュ3に対して高く上がっている。
【0008】
図1の仮止め状態から、ピン軸部7がブッシュ軸部4に挿入されてピン軸部7がブッシュ軸部4を拡径し且つピンフランジ9がブッシュフランジ8に接面する図2の第2連結位置に移ることができ、この第2連結位置は、ブッシュ軸部4の拡径軸部部分とブッシュ3のフランジ8とにより、パネル5、6を相互に連結する本止め状態となる。この本止め状態である第2連結位置から、図6の想像線で示すように工具10の先端をブッシュフランジ8とピンフランジ9との間の隙間に入れて矢印10aの方向に回転させる等して、ピン軸部7をブッシュ軸部4から引き上げる。これにより、図3に示すように、ピン軸部7がブッシュ軸部4に挿入されているがピンフランジ9がブッシュフランジ8から離れた第3の連結位置にすることができる。この第3連結位置は本止めを解除する解除位置となり、ブッシュ軸部7は、軸部を拡径する強制力がなくなるので、ピンの引き上げによって、ブッシュも一緒に図3のパネル5、6から引抜くことができる。
【0009】
図1の第1連結位置と、図2の第2連結位置と、図3の第3連結位置の3つの連結位置をとるため、図4に示すように、ピン2の軸部7には、その先端に第1の係止溝11が形成されており、この第1係止溝11に隣接して、第2の係止溝12が形成されている。第1係止溝11は、その下面側は軸部径が小さくされてピン軸部7を挿入し易くしており、上面側は上方に向けてテーパしている。また、第2係止溝12では、上面が水平方向に対してテーパしているが、下面は中心に向けて水平よりやや下方に向かう段部13が設けられ、ブッシュ軸部4の第1係止爪(後述)がこの段部13に拘束される。この段部13の力は、ブッシュ軸部4が長期間拡径したままにされた後でも、第1係止爪16を軸心側に引き寄せるように拘束するものである。第2係止溝12の上方には大径部14が形成されている。この大径部14は、図1の第1連結位置において、ピン2がブッシュ3に対してぐらつかないようにするものであって、ある程度ぐらつきが防止できれば直径はそれ程大きくなくともよく、また、外周全体に渡って大径でなくともよい。
【0010】
ブッシュ3の詳細は図5?図7に示す。図示のように、ブッシュ軸部4の内面には、先端とフランジ8の間の位置に、第1の係止爪16が形成され、軸部先端に第2の係止爪17が形成されている。第1係止爪16は、図5に示すように、軸部4の内周面に沿って3つ形成され、各第1係止爪16の側面及び下側には長手方向に延びるスリット18が形成されて各係止爪16が携み且つ軸部4がピン軸部7の挿入によって3方向に拡がるようになっている。なお、この第1係止爪16の数及ぴスリット18の数は3に限らず、2つまたは4つ等の任意の数にすることもできる。第2係止爪17も図示の例では軸部4の内周方向に見て第1係止爪16の間に3つ形成されているが、前記のように、任意の数及び任意の形状にできる。また、ブッシュ軸部4の断面形状は、パネルの取付け穴に合わせて、円の断面に限らず、四角や三角等の任意の形状にできる。なお、ブッシュフランジ8の上面には、図5及び図6に示すように、工具10の先端が入る隙間を形成する凹部19が一対形成されている。この凹部19は、工具10の先端を入れる隙間を形成するためのものであるから、隙間が形成される限り、図示の形状には限らない。また、その隙間は、ピンを引き上げるために使用するものであるから、他の方法でピンの引き上げができるのであれば、なくともよい。更に、ピンフランジ9の直径はブッシュフランジ8の直径より小さく形成され、凹部19の隙間を確保して、ピン2をブッシュ3から引き上げるのを容易にしている。
【0011】
ピン軸部7の第1係止溝11と第2係止溝12と、ブッシュ軸部4の第1係止爪16と第2係止爪17とにより、ピン2とブッシュ3とが前記した3つの位置をとる。すなわち、図1の第1連結位置では、第1係止爪16が第1係止溝11に係止している。図2の第2連結位置では、第2係止爪17が第1係止溝11に係止して、ブッシュ軸部4を拡径してパネル5とパネル6を連結する。図3の第3連結位置では、第1係止爪16が第2係止溝12に係止する。この第3連結位置において、ピン2をブッシュ3に対してさらに引き上げようとすると、第2係止溝12の段部13が第1係止爪16をそこに拘束する。この拘束作用について更に説明する。図3において、ピン2を引き上げると、段部13から第1係止爪16の先端にその引き上げ力が作用する。第1係止爪16は、ブッシュ軸部4がパネル6の取付穴に規制されているので半径方向外側への動きが規制され、段部13によって下向きへの動きも規制されるので、上方向へか、半径方向内側にしか動けない。図3のように、第1係止爪16の先端が段部13にしっかりと掛かっている場合には、ピン2を引き上げると、そのまま、第1係止爪16も引き上げられて、ブッシュ3もビン2とともにパネル5、6から引抜かれる。
【0012】
しかし、ブッシュ軸部4が長期間拡径したままに放置された場合、第1係止爪16の先端が半径方向外側に片寄せられて段部13に対しほんの少ししか掛からない状態になることがある。この状態では、ピン2を引き上げても、第1係止爪16に十分な引き上げ力が与えられない。ピン2を引き上げた場合、前記したように、第1係止爪16は、ブッシュ軸部4がパネル6の取付穴に規制されているので半径方向外側への動きが規制され、段部13によって下向きへの動きも規制されている。従って、段部13から第1係止爪16の先端に加わる力は、半径方向内側すなわち軸心側に片寄せる力となって、第1係止爪16の先端を半径方向内側に動かす。この動きによって、第1係止爪16の先端が段部13にしっかりと掛かり、ピン2の引き上げにより第1係止爪16が引き上げられ、ブッシュ3がピン2とともにパネル5、6から引抜かれる。このように、ブッシュ軸部4が長期間拡径したままに放置されて拡径状態に経時変化したブッシュ軸部4を、強制的に元の状態に縮径させるように、第1係止爪16を拘束する。従って、第1係止爪16は第2係止溝12に拘束されてピンの引き上げでブッシュも一緒にパネル5、6から引抜かれ、これにより、ピンだけが引抜かれてブッシュがパネルに残るといった不都合がなくなる。
【0013】
図8及び図9は、本考案の第2実施例に係るクリップ21を示しており、この実施例では、図8の第1連結位置と、図9の第2連結位置と、再び図8の連結状態に戻す第3連結位置の3つの連結位置をとる。すなわち、この実施例では、第1連結位置と第3連結位置とが同じ状態にある。第1連結位置では、ピン22の軸部23の第2係止溝24がブッシュ25の軸部26の第1係止爪27に係止しており、図9の第2連結位置では、ピン軸部23の第1係止溝28が第2係止爪29に係止して、ブッシュ軸部26を拡径し、パネル5、6を連結している。そして、工具等によって、ピン22を第2連結位置から上方に引き上げて、第3連結位置としての図8の位置に上げる。第2係止溝24にも、第1実施例の段部13と同じく、第1係止爪27を半径方向内側すなわち軸心側に引き寄せる拘束力を有する段部が形成されているので、ブッシュ軸部26が長期間拡径したままにされた後でも、第1係止爪27は第2係止溝24に拘束されてピン22の引き上げでブッシュ25も一緒にパネル5、6から引抜かれ、これにより、ピンだけが引抜かれてブッシュがパネルに残るといった不都合がなくなる。
【0014】
図10及び図11は、本考案の第3実施例に係るクリップ31を示しており、この実施例でも、図10の第1連結位置と、図11の第2連結位置と、再び、図10の連結状態に戻す第3連結位置の3つの連結位置をとり、第1連結位置と第3連結位置とが同じ状態である。この実施例では、ブッシュ32の軸部33の先端に係止爪34が設けられ、先端とブッシュフランジ35との間の軸部33の内面には係止爪が形成されていない。また、ピン36の軸部37には、第1実施例のピン軸部の第1係止溝に相当する第1係止溝38と、それより先端側に形成された第2係止溝39とが設けられている。第2係止溝39には、第1係止爪38を軸心側に引き寄せる拘束力を有する突部40が形成されている。
【0015】
第3実施例のクリップ31において、第1連結位置では、ピン36の軸部37の第2係止溝39がブッシュ軸部33の係止爪34に係止しており、図11の第2連結位置では、ピン軸部37の第1係止溝38が係止爪34に係止して、ブッシュ軸部33を拡径し、パネル5、6を連結している。工具等により、ピン36を第2連結位置から上方に引き上げて、第3連結位置としての図10の位置に上げる。第2係止溝39には、係止爪34を軸心側に引き寄せる拘束力を有する突部40が形成されているので、ブッシュ軸部33が長期間拡径したままにされた後でも、係止爪34は第2係止溝39に拘束されてピン36の引き上げでブッシュ32も一緒にパネル5、6から引抜かれ、これにより、ピンだけが引抜かれてブッシュがパネルに残るといった不都合がなくなる。
【0016】
図12及び図13は、本考案の第4実施例に係るクリップ42を示す。このクリップ42は、図8及び図9の第2実施例のクリップ21と殆ど同じであるが、ピン43のフランジ44に起伏可能な指掛け部45が形成されている点で違っている。図13の第2連結位置から図12の第3連結位置(第1連結位置と同じ)にするため、指掛け部45を引き起こして、工具を使用せずに、ピン43を引き上げることができる。図14及び図15は、本考案の第5実施例に係るクリップ47を示す。このクリップ44は、図10及び図11の第3実施例のクリップ31と殆ど同じであるが、違うのは、ピン48のフランジ49に起伏可能な指掛け部50が形成されている点である。従って、図15の第2連結位置から図14の第3連結位置(第1連結位置と同じ)にするため、指掛け部50を引き起こして、工具を使用せずに、ピン48を引き上げることができる。
【0017】
図16?図18は、本考案の第6実施例に係るクリップ52を示す。このクリップ52は、図1?図7の第1実施例のクリップ1と殆ど同じである。違っている点は、ピン53のフランジ54に起伏可能な指掛け部55が形成されている点である。図16の第1連結位置と図17の第2連結位置とは、図1の第1連結位置と図2の第2連結位置と同じ姿勢である。しかし、図17の第2連結位置から図18の第3連結位置にするため、指掛け部50を引き起こしてピン48を引き上げることができる。このため、図6の工具を必要としない。
【0018】
図19及び図20は、本考案の第7実施例に係るクリップ57を示す。このクリップ57は、ピン58とブッシュ59との2部品で構成され、ブッシュ59の軸部60を連結すべき複数のパネル5、6の穴に挿入し、ブッシュ軸部60にピン58の軸部61を挿入してブッシュ軸部60を拡径し、この拡径軸部部分とブッシュ59のフランジ62とによってパネル5、6を相互に連結する(図20参照)点は、第1実施例?第6実施例のクリップと同じである。
【0019】
この第7実施例のクリップ57においては、ブッシュ軸部60の先端側には直径方向に横切る係止バー63が形成され、ピン58の軸部61は下方に向けて開くように延びる2本の脚部64、64で構成されている。また、ブッシュ軸部60も、中央の係止バー63を間にして半分または4つに分割されて、拡径を容易にしている。各ピン脚部64の先端には、半径方向外側に張出した係止爪65が形成され、図19の第1連結位置(第3連結位置と同じ)において、ブッシュ軸部60の係止部66と係止する。脚部64の内側には、先端とフランジ67の間に係止部68が設けられ、図20の第2連結位置において係止バー63に係止してその第2連結位置を保持する。
【0020】
かかる構成でなるクリップ57において、ピン58とブッシュ59は、ピン軸部61がブッシュ軸部60に挿入されてブッシュ軸部60を拡径しない状態でピンフランジ67がブッシュフランジ62から離れている第1連結位置(図19)と、ピン軸部61がブッシュ軸部60に挿入されてピン軸部の脚部64、64の係止部66が係止バー63に係合して脚部が拡開され、この脚部64、64の拡開によってブッシュ軸部60が拡径し且つビンフランジ67がブッシュフランジ62に接面する第2連結位置(図20)と、第2連結位置から、工具等によってピン58をブッシュ59から引き上げた、図19に示す第3連結位置(第1連結位置と同じ)とをとることができる。第3連結位置では、ブッシュ軸部61に拡径する強制力がなくなるので、ピン58の引き上げによって、ブッシュ59も一緒にパネル5、6から引抜くことができる。
【0021】
この引き上げにおいて、ブッシュ軸部60が拡径した状態でパネルに長く放置されると、ブッシュ軸部60は拡径状態に変形してピン58を引き上げても非拡径状態には戻らず、ピンだけが引抜かれてしまうことが考えられる。本考案においては、かかる不具合をなくするため、各係止爪65には、第2連結位置において拡径したブッシュ軸部部分である係止部66を、第1連結位置において元の状態に縮径させるように拘束する係止溝69が設けられている。従って、ブッシュ軸部60が長期間拡径したままにされた後でも、ブッシュ軸部の係止部66は、ピン軸部の係止溝65の係止爪69に拘束され、ピン58の引き上げでブヅシュ59も一緒にパネル5、6から引抜かれる。すなわち、ピンだけが引抜かれてブッシュがパネルに残るといった不都合がなくなる。
【0022】
図21及び図22は、本考案の第8実施例に係るクリップ71を示す。このクリップ71は、図19及び図20の第7実施例のクリップ57と殆ど同じであるが、ピンフランジ72に起伏可能な指掛け部73が形成されている点で違っていて、図22の第2連結位置から図21の第3連結位置(第1連結位置と同じ)にするため、指掛け部73を引き起こして、工具を使用せずに、ピン74を引き上げることができる。
【0023】
【考案の効果】
本考案のクリップによれば、ピン軸部によってブッシュ軸部を拡径して被取付部材を相互に連結する本止め位置すなわち第2連結位置に長く置かれてブッシュ軸部が拡径状態に変形しても、ピン軸部をブッシュ軸部から少し引上げた第3連結位置において、ブッシュ軸部部分を元の状態に縮径させるように拘束する手段が設けられているので、確実にブッシュ軸部がピン軸部に係止され、長く被取付部材を連結した状態の後でも、ピンの引き上げによって、確実にブッシュも一緒になって引抜かれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の第1実施例に係るクリップの第1連結位置を示す半断面正面図である。
【図2】
図1のクリップの第2連結位置を示す断面正面図である。
【図3】
図1のクリップの第3連結位置を示す断面正面図である。
【図4】
図1のクリップのピンの正面図である。
【図5】
図1のクリップのブッシュの平面図である。
【図6】
図5のブッシュの半断面正面図である。
【図7】
図1のA-A線断面図である。
【図8】
本考案の第2実施例に係るクリップの第1連結位置及び第3連結位置を示す断面正面図である。
【図9】
図8のクリップの第2連結位置を示す断面正面図である。
【図10】
本考案の第3実施例に係るクリップの第1連結位置及ぴ第3連結位置を示す断面正面図である。
【図11】
図10のクリップの第2連結位置を示す断面正面図である。
【図12】
本考案の第4実施例に係るクリップの第1連結位置及ぴ第3連結位置を示す断面正面図である。
【図13】
図12のクリップの第2連結位置を示す断面正面図である。
【図14】
本考案の第5実施例に係るクリップの第1連結位置及ぴ第3連結位置を示す断面正面図である。
【図15】
図14のクリップの第2連結位置を示す断面正面図である。
【図16】
本考案の第6実施例に係るクリップの第1連結位置を示す断面正面図である。
【図17】
図16のクリップの第2連結位置を示す断面正面図である。
【図18】
図16のクリップの第3連結位置を示す断面正面図である。
【図19】
本考案の第7実施例に係るクリップの第1連結位置及ぴ第3連結位置を示す断面正面図である。
【図20】
図19のクリップの第2連結位置を示す断面正面図である。
【図21】
本考案の第8実施例に係るクリップの第1連結位置及び第3連結位置を示す断面正面図である。
【図22】
図21のクリップの第2連結位置を示す断面正面図である。
【符号の説明】
1 クリップ
2 ピン
3 ブッシュ
4 ブッシュ軸部
5、6 パネル
7 ピン軸部
8 ブッシュフランジ
9 ピンフランジ
10 工具
11 第1係止溝
12 第2係止溝
13 段部
16 第1係止爪
17 第2係止爪
21 第2実施例のクリップ
22 ピン
23 ピン軸部
24 第2係止溝
25 プッシュ
26 ブッシュ軸部
27 第1係止溝
28 第2係止溝
29 第2係止爪
31 第3実施例のクリップ
32 ブッシュ
33 ブッシュ軸部
34 係止爪
35 ブッシュフランジ
36 ピン
37 ピン軸部
38 第1係止溝
39 第2係止溝
40 突部
42 第4実施例のクリップ
43 ピン
44 ピンフランジ
45 指掛け部
47 第5実施例のクリップ
48 ピン
49 ピンフランジ
50 指掛け部
52 第6実施例のクリップ
53 ピン
54 ピンフランジ
55 指掛け部
57 第7実施例のクリップ
58 ピン
59 ブッシュ
60 ブッシュ軸部
61 ピン軸部
62 ブッシュフランジ
63 係止バー
64 脚部
65 係止爪
66 係止部
67 ピンフランジ
69 係止溝
71 第8実施例のクリップ
72 ピンフランジ
73 指掛け部
74 ピン
訂正の要旨 訂正の要旨
実用新案登録請求の範囲の請求項1に、「あることを特徴とする」とある記載を、『あり、前記係止爪は、ブッシュフランジとブッシュ軸部先端との間であってブッシュフランジから離れた位置のブッシュ軸部内面に形成されていることを特徴とする』と訂正する。
明細書の考案の詳細な説明の段落番号0005の「あることを特徴とする」とある記載を、『あり、前記係止爪は、ブッシュフランジとブッシュ軸部先端との間であってブッシュフランジから離れた位置のブッシュ軸部内面に形成されていることを特徴とする』と訂正する。
異議決定日 1999-12-22 
出願番号 実願平5-10755 
審決分類 U 1 652・ 121- YA (F16B)
U 1 652・ 113- YA (F16B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山下 喜代治  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 鳥居 稔
和田 雄二
登録日 1998-07-10 
登録番号 実用登録第2581249号(U2581249) 
権利者 ポップリベット・ファスナー株式会社
東京都千代田区紀尾井町3番6号
考案の名称 クリップ  
代理人 村社 厚夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 大塚 文昭  
代理人 小川 信夫  
代理人 中村 稔  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 小川 信夫  
代理人 今城 俊夫  
代理人 村社 厚夫  
代理人 竹内 英人  
代理人 今城 俊夫  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 竹内 英人  
代理人 中村 稔  
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