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審決分類 審判 全部申し立て   B60T
管理番号 1015006
異議申立番号 異議1999-73712  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-09-24 
確定日 2000-03-01 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2592683号「トレーラの渦電流式減速装置」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2592683号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2592683号の請求項1及び2に係る考案についての出願は、平成5年10月7日に出願され、平成11年1月22日にその考案について実用新案の設定登録がされ、その後、その実用新案登録について、異議申立人 日野自動車工業株式会社により実用新案登録異議申立てがなされたものである。
2.本件考案
本件請求項1及び2に係る考案(以下、それぞれ「本件考案1」及び「本件考案2」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
車軸ケースの中間部に設けた前後方向の円筒部へ環状の取付板を介して差動装置の歯車箱を結合し、歯車箱に車軸と同軸にキャリアの両端軸部を回転可能に支持し、左右の車軸に結合した傘歯車に噛み合う中間傘歯車をキャリアに軸支持し、キャリアに結合したクラウン歯車に車軸と直交する出力軸の傘歯車を噛み合せ、出力軸に結合した制動ドラムの内部へ歯車箱に結合した案内枠を突出し、案内枠に制動位置と非制動位置に移動可能の磁石支持筒を支持し、磁石支持筒に周方向等間隔に多数の磁石を、制動ドラムに対向する極性が周方向に交互に異なるように結合したことを特徴とする、トレーラの渦電流式減速装置。
【請求項2】
前記取付板は周縁部に車軸ケースの円筒部の端縁部に重合せ結合される第1の平板部を、前記周縁部よりも内側に差動装置の歯車箱の端部フランジを重ね合せ結合する第2の平板部をそれぞれ備えており、第2の平板部は第1の平板部に対し傾斜されている、請求項1に記載のトレーラの渦電流式減速装置。
3.異議申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人 日野自動車工業株式会社は、甲第1号証(実願平3-111743号(実開平5-54130号)のCD-ROM)、甲第2号証(TELMA社発行のリターダ装置のカタログ、1991年9月発行)、甲第3号証(SAEテクニカルペーパ、1992年発行、及びこのテクニカルペーパに開示された型式GR116の株式会社VOITH社発行のリターダ装置のパンフレット)、甲第4号証(新編・自動車工学ハンドブック、図書出版社、1979年11月25日発行、5-34?5-39)及び甲第5号証(特開平4-12659号公報)の証拠方法を提示し、本件考案1及び2は、これらに記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反し、本件考案についての実用新案登録は取り消すべき旨主張している。
4.甲各号証記載の考案
実用新案登録異議申立人 日野自動車工業株式会社が提出した甲第1?5号証には、以下の事項が記載されている。
(1)甲第1号証
「トレーラの車軸の中央にスペースを設け、該スペースにリターダを装着し、該リターダの一対のディスクロータと該トレーラの車軸の左右両端に回転自在に装着した左右のハブとをそれぞれ該リターダの回転部のシャフトで連結したトレーラのブレーキ装置」(実用新案登録請求の範囲)、
「リターダ30の構成は,2枚のディスクロータ32,32がプロペラシャフト34,34と直結して一緒に回転し、前記2枚のディスクロータ32,32の間にコイル31,31を支持するステータ36があり、このステータ36は前記スペーサ28の内側に固定されている。」(段落番号【0011】参照)こと、及び
「リターダ30の原理は、NSを交互に並べたコイル31,31に電流が流れると磁界が発生し、該ロータ32,32を介して磁力線がつながり、この磁界が回転する前記ロータ32,32に渦電流を発生させ、これによる磁界が回転方向とは逆の力を発生させ、この力が前記シャフト34,34の回転を停止させる」(段落番号【0012】参照)こと。
(2)甲第2号証
車軸(Axle)の中間部外側に渦電流式リターダを設けること。
(3)甲第3号証
トレーラの車軸の中間部外側に流体式リターダを設けること。
(4)甲第4号証
大型車用はすば傘歯車減速装置(図4-3参照)。
(5)甲第5号証
「トランスミッション後部の出力軸aにドラム状のロータbが取付けられており、このロータbの内側に位置させてミッションケースcに支持された永久磁石dがドラム状のロータbの軸方向に往復自在に…設けられている。この永久磁石dは、ドラム状のロータbの内周面に臨む磁極がN極、S極交互になるように所定の間隔を隔てて支持リングe上に周接されている。この渦電流式減速装置xを作動させ、車両に減速制動を与える場合、…支持リングeを…右方向にスライド移動させ、…この減速運動を解除する場合、…左方向にスライド移動させ」(第1頁右下欄下から1行?第2頁右上欄第4行)ること。
5.対比・判断
(1)本件考案1について
本件考案1と甲第1号証に記載されたものを対比すると、甲第1号証に記載の「トレーラの車軸」は本件考案1の「車軸ケース」に相当し、また、甲第1号証のリターダは渦電流の発生により、制動力を得るものであるから、甲第1号証には「渦電流式減速装置」が記載されている。そうすると、両者は、「車軸ケースの中間部に設けたトレーラの渦電流式減速装置」の点で一致し、渦電流式減速装置の車軸ケースに対する配置構造に関して、本件考案1では、「車軸ケースの中間部に設けた前後方向の円筒部へ環状の取付板を介して差動装置の歯車箱を結合し、歯車箱に車軸と同軸にキャリアの両端軸部を回転可能に支持し、左右の車軸に結合した傘歯車に噛み合う中間傘歯車をキャリアに軸支持し、キャリアに結合したクラウン歯車に車軸と直交する出力軸の傘歯車を噛み合せ、出力軸に結合した制動ドラムの内部へ歯車箱に結合した案内枠を突出し、案内枠に制動位置と非制動位置に移動可能の磁石支持筒を支持し、磁石支持筒に周方向等間隔に多数の磁石を、制動ドラムに対向する極性が周方向に交互に異なるように結合した」のに対し、甲第1号証記載のものでは、車軸ケースの中央にスペースを設け、車軸に直結されたディスクロータ(制動ドラムと機能上等価)間にコイル(磁石と機能上等価)を支持するステータ(磁石支持筒と機能上等価)があり、該スペースの内側にステータを固定している点、で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
甲第2号証には車軸(本件考案1の車軸ケースに対応;以下、括弧内の記載は同様)の中間部外側に渦電流式リターダ(減速装置)が設けられたものが示されているが、上記相違点に係る本件考案1の構成は何ら記載されていない。また、甲第2号証には、渦電流式減速装置が、トレーラに搭載されるとの明示の記載がなく、むしろ、「Electromagnetic Retarder Equipped Single Drive Axle」、「driveline mounted stator/rotor mechanism」等の記載からみると、自動車の機関からの動力伝達系路上に設けられていると、すなわち、トレーラにではなく、トレーラを牽引する側のトラック或いはトラクタ等の車両に設けられていると推定できること、そして、トレーラにおいては、甲第1号証に記載されているように必ずしも差動装置が装着されていないことを考慮すれば、甲第2号証に記載の渦電流式減速装置を甲第1号証記載の発明に組み合わせる契機となるものもない。
したがって、甲第1号証に甲第2号証を適用し、本件考案1の上記相違点のように構成することはきわめて容易に想到できるものではない。
甲第3号証は、トレーラの車軸(車軸ケース)の中間部外側に流体式リターダ(減速装置)が設けられているものであって、本件考案1と減速装置の種類が異なるものである。したがって、当然に、上記相違点に係る本件考案1の構成は示されていない。
ところで、甲第3号証には、トレーラの車軸中間部外側に減速装置を設ける点が記載されていることから、甲第1?3号証を組み合わせれば、流体式減速装置を渦電流式減速装置に置き換える程度のことが導き出されるとしても、車軸ケースに差動装置が装着されていることについて明示の記載がないこと、そして、本件考案1の相違点に係る構成、特に、車軸ケース、差動装置、及び、渦電流式減速装置の各構成要素の結合関係は何ら特定されていないことを考慮すれば、本件考案1の上記相違点1に係る構成がきわめて容易に想到できるとする根拠はない。
甲第4号証には、大型車用はすば傘歯車減速装置が記載されており、その図4-3から、本件考案1と同一の差動装置が看て取れる。しかしながら、甲第4号証には、車両の動力伝達系に通常採用されている差動装置が記載されているにすぎず、この差動装置をトレーラの減速のために、渦電流式減速装置と結合させることについて起因乃至契機となりうるものは何もない。また、本件考案1の上記相違点に係る構成、特に差動装置の歯車箱に渦電流式減速装置の磁石支持筒を支持する案内枠を結合することや差動装置の出力軸に制動ドラムを結合することについても何ら記載されていないから、結局、甲第1?3号証に甲第4号証を適用し、本件考案1の相違点に係る構成をきわめて容易に想到できるものではない。
甲第5号証の渦電流式減速装置は、渦電流式減速装置自体の構成は本件考案1と同様の構成であるが、設置個所がトランスミッションケースに設けられたものであって、甲第2号証のものと同様に、動力伝達系路中に設けられものにすぎず、甲第5号証にも前示したようなトレーラの車軸ケース、差動装置、及び、渦電流式減速装置の各構成要素の結合関係は何ら特定されていないのであるから、甲第1?5号証を組み合わせても、本件考案1の上記相違点に係る構成をきわめて容易に想到できるものではない。
そして、本件考案1の上記相違点に係る構成により、トレーラの差動装置の出力軸に渦電流式減速装置を結合することで十分な制動力が得られ、製造経費を節減できるという、甲第1?5号証に記載のものから予測できない作用効果が得られるものである。
(2)本件考案2について
本件考案2は本件考案1をさらに限定するものであって、本件考案1が前示のとおり、甲第1?5号証記載のものから、当業者がきわめて容易に想到できたものではない以上、本件考案2に係る実用新案登録を取り消す理由はない。
6.むすび
以上のとおりであるから、異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件考案1及び2に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-12-20 
出願番号 実願平5-59447 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (B60T)
最終処分 維持    
前審関与審査官 藤井 新也  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 西村 敏彦
和田 雄二
登録日 1999-01-22 
登録番号 実用登録第2592683号(U2592683) 
権利者 いすゞ自動車株式会社
東京都品川区南大井6丁目26番1号
考案の名称 トレーラの過電流式減速装置  
代理人 井出 直孝  
代理人 下平 俊直  

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