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審決分類 審判 全部申し立て   A63F
審判 全部申し立て   A63F
管理番号 1015015
異議申立番号 異議1999-72892  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-27 
確定日 2000-04-03 
異議申立件数
事件の表示 登録第2589304号「パチンコ機の表示装置」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2589304号の実用新案登録を維持する。
理由 一、手続の経緯
本件登録第2589304号実用新案は、平成2年2月13日に実願平2-12917号として出願され、平成10年11月20日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、実用新案登録異議申立人三島紘一(以下、「申立人」という。)より実用新案登録異議の申立てがなされたものである。

二、本件考案
本件の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「パチンコ機の遊技盤の裏面側へ貫通した状態で装着される表示装置であって、制御基板の表面側に装着されてカラー表示が可能な液晶パネルと、前記制御基板の裏面側に装着され実質的に前記液晶パネル付近の温度を検出するための温度センサと、この温度センサからの検出信号に基づいて液晶パネルのカラー表示に対する温度補償を行う制御装置とからなり、かつ前記温度センサは、ソレノイド等の発熱部材を取り囲みかつ入賞球集合保護カバー板とアウタカバーとを含んで構成されるカバー体の内部に収められていることを特徴とするパチンコ機の表示装置。」

三、実用新案登録異議の申立てについて
(1)実用新案登録異議申立ての理由の概要
申立人は、下記の証拠方法を提示して、次の理由により、本件実用新案登録は取り消されるべきであると主張している。
・異議理由1:本件考案は、本件出願前に頒布された刊行物である下記甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案の登録は実用新案法第3条の規定に違反してされたものである。
・異議理由2:本件考案は、本件考案の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項(甲第4号証)からみて、本件考案の効果を達成するすることができず、したがって、構成が不備であるから、本件考案の登録は実用新案法第5条の規定を満たさない出願に対してなされたものである。

・甲第1号証:実願昭58-199954号(実開昭60-109683号)のマイクロフィルム
・甲第2号証:実願昭61-161707号(実開昭63-66818号)のマイクロフィルム
・甲第3号証:特開平1-172820号公報
・甲第4号証:実願平2-12917号実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書及び図面
(2)異議理由1について
1.甲第1号証ないし甲第3号証の内容
・甲第1号証〔実願昭58-199954号(実開昭60-109683号)のマイクロフィルム〕には、パチンコ機の画像表示装置に関して、次の事項が記載されている。
「窓を有する取付基板を遊戯盤に固着し、該取付基板の窓には後方からクリアプレートを臨ませ、クリアプレートの後方には保持部材によって保持され偏光板に挟まれた画像表示液晶パネルを設け、さらに後方には画像表示液晶パネルに光を送り込むための光源を配置したことを特徴とするパチンコ機の画像表示装置。」(1頁5?11行の実用新案登録請求の範囲)、
「第4図及び第5図に於て、遊技盤2の裏面には、開ロ35を有する制御ベース板34が取り付けてあり、該ベース板には液晶画像表示装置40を取付け、その表示面を凹室30の背面に在るクリアプレート31に臨ませてある。」(8頁14?18行)、
「このパネル保持部材42内には、開ロ420に向って、ゲーム内容を付したフルター44、第1偏光板45、液晶表示パネル41、第2偏光板46が、これらの順序で納められている。」(10頁8?12行)、
「保持部材42の蓋として機能する押え部材43は、当接面側に位置する液晶駆動基板430と、該基板の後方に延在し且つ開口したケース部分431と、該ケース部分の蓋432とから成る。液晶駆動基板430には、上記ゴムコネクタ47と対応する位置にドライバ(IC)48が設けてある。」(10頁19行?11頁5行)。
また、第3図及び第4図には、開ロ23にクリアプレート31が取り付けられた取付基板22の斜視図、及び、液晶画像表示装置40がその表示面をクリアプレート31に向け遊技盤2の後方に突出した状態で取り付けられた遊技盤の断面図、が各々示され、第5図には、前方(遊技盤方向)に向けて液晶表示パネル41が配置され、この液晶表示パネル41の後面側に液晶駆動基板430が配置され、この液晶駆動基板430の一方の面にドライバ(IC)48が取り付けられた液晶画像表示装置の展開斜視図、が示されている。
・甲第2号証〔実願昭61-161707号(実開昭63-66818号)のマイクロフィルム〕には、液晶表示装置に関して、次の事項が記載されている。
「(1)液晶分子の捩れ角が180度以上の液晶を挟持しポジ型表示をする液晶パネルと、該液晶パネルの背面に配置された青色発光の照明手段と、液晶駆動電圧を-0.08V/°Cより大きい値で補正し乍ら液晶パネルを時分割駆動する駆動回路とを具備した事を特徴とする液晶表示装置。」(1頁4?9行の実用新案登録請求の範囲)、
「(3)は液晶パネル(1)の駆動素子で温度補償手段を内蔵し、基板(4)に取りつけられ」(3頁6?8行)。
また、第1図には、液晶パネル1が基板4に取り付けられ、基板4の裏面に温度補償手段を内蔵した駆動素子3が取り付けられている液晶表示装置の断面図、が示されている。
・甲第3号証〔特開平1-172820号公報〕には、液晶パネル付POS端末装置に関して、次の事項が記載されている。
「一般に、液晶ディスプレイ(以下LCDという)は、入射する光の透過を光学的媒質の特性を変化することで制御するものであるから、温度の影響をうけやすい。」(1頁右下欄5?8行)、
「本発明の目的は、上記の欠点を除去し、自動的に液晶駆動電圧を調整し、LCDを常に最良のコントラスト状態にしておく」(2頁左上欄19行?右上欄1行)、
「温度センサ5は、LCD2の液晶パネル裏面にサーミスタをはりつけ、直接にパネル温度を測るようにしている。温度センサ5の検出値はA/D変換器6でディジタル値としてCPU11に入力する。CPU11はこの温度データに対して、ルックアップテーブル12をルックアップして、液晶駆動電圧値を求め、信号21として駆動電圧発生回路4に出力する。駆動電圧発生回路4には、液晶用電源(直流)3の電圧22が入力しているが、前記信号21によって可変的に液晶駆動電圧23を発生し、LCD2に印加する。」(2頁左下欄8?18行)」。
また、第1図には、温度センサ5の出力に基づいて液晶用電源3からのLCD2の駆動電圧の温度補償を行う、CPU11とルックアップテーブル12とからなる演算制御部1で構成される制御回路の概略構成図、が記載されている。
2.対比、及び、相違点・一致点
甲第1号証の記載からみて、甲第1号証には、「窓を有する取付基板22がパチンコ機の遊技盤2の裏面側へ固着され、該取付基板22に装着される液晶画像表示装置40がパチンコ機の遊技盤の裏面側へ貫通した状態で装着されるパチンコ機の画像表示装置であって、制御駆動基板430の表面側に液晶表示パネル41が装着され、液晶表示パネル41の後方に光源49が配置されたパチンコ機の画像表示装置」が記載されていると認める。
ここで、本件考案と甲第1号証に記載の考案とを対比すると、甲第1号証に記載の考案の「パチンコ機の遊技盤2」「液晶表示パネル41」「液晶画像表示装置40」「制御駆動基板430」が、本件考案の「パチンコ機の遊技盤」「液晶パネル」「表示装置」「制御基板」にそれぞれ相当するから、本件考案と甲第1号証に記載の考案とは、「パチンコ機の遊技盤の裏面側へ貫通した状態で装着される表示装置であって、制御基板の表面側に装着された液晶パネルからなるパチンコ機の表示装置」の点で一致し、次の点で構成が相違する。
・相違点1:本件考案の液晶パネルが「カラー表示が可能」であるのに対し、甲第1号証に記載の液晶パネルは、カラー表示が可能であるか否か不明である点。
・相違点2:本件考案が「制御基板の裏面側に装着され実質的に前記液晶パネル付近の温度を検出するための温度センサと、この温度センサからの検出信号に基づいて液晶パネルのカラー表示に対する温度補償を行う制御装置」を有するものであるのに対し、甲第1号証に記載の考案は、該構成を有しない点。
・相違点3:本件考案が「温度センサは、ソレノイド等の発熱部材を取り囲みかつ入賞球集合保護カバー板とアウタカバーとを含んで構成されるカバー体の内部に収められている」ものであるのに対し、甲第1号証に記載の考案は、該構成を有しない点。
3.判断
甲第2号証には、基板4の裏面に装着された温度補償手段を内蔵する駆動素子3と、この駆動素子3からの出力に基づいて液晶パネル1の表示に対する温度補償を行う制御手段、が記載されているが、少なくとも本件考案の前記相違点1の「カラー表示が可能な液晶パネル」の構成、及び相違点3の「温度センサは、ソレノイド等の発熱部材を取り囲みかつ入賞球集合保護カバー板とアウタカバーとを含んで構成されるカバー体の内部に収められている」構成が記載されていない。
また、甲第3号証には、LCD2の液晶パネル裏面にサーミスタをはりつけ直接にパネル温度を測るようにした温度センサ5により、自動的に液晶駆動電圧を調整して、LCD2を常に最良のコントラスト状態にしておくようした液晶パネル付POS端末装置、が記載されているが、少なくとも本件考案の前記相違点1及び相違点3の構成が記載されていない。
そうしてみると、甲第1号証に記載の考案に上記甲第2号証及び甲第3号証に記載の考案を適用したとしても、本件考案のような構成を得ることはできない。そして、本件考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された構成により、本件考案の明細書に記載の「液晶パネル周りの雰囲気温度が変化しても、これを温度センサが検出して制御装置が液晶パネルのカラー表示に対する温度補償を行うため、液晶パネルには所期の色彩の表示が得られる」という効果を奏するものである。
したがって、本件考案は上記甲第1号証ないし甲第3号証に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということができない。
(3)異議理由2について
1.甲第4号証の記載事項
甲第4号証〔実願平2-12917号実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書及び図面〕の4頁10行?5頁2行には、『つまり、「当たり状態」になると、各種ランプが一斉に点滅を開始し、また役物等を駆動させるための各種のソレノイドが通電状態となるため、これらランプあるいはソレノイドの発熱によって遊技盤の裏面側は温度が上昇する。このため、「当たり状態」となっている時間中は、遊技盤の裏面側と表面側とでかなりの温度差が生じる。したがって、温度センサは本来検出すべき液晶パネル付近の温度よりも実際には高めの温度を検出してしまう。この結果、液晶パネルに対する供給電圧は本来の制御値から外れ、パネルは本来表示されるべき色彩とは異なった色彩を表示することになる。』が記載されている。
2.本件考案
本件考案は、上記「二、本件考案」の欄に記載したとおりのものである。
3.本件考案の作用・効果
本件考案の作用・効果は、明細書に記載された次のとおりのものである。
・作用:「上記の構成によれば、発熱部材で発生した熱はカバー体の内部で籠もり、液晶パネル付近の温度を上昇させる。この温度上昇の変化を温度センサが検出し、その検出信号に応じて制御装置からは制御信号が出力されるため、液晶パネルに対して適性なカラー表示の制御がなされる。」(本件実用新案登録第2589304号公報の2頁3欄42?47行参照)
・効果:「液晶パネル周りの雰囲気温度が変化しても、これを温度センサが検出して制御装置が液晶パネルのカラー表示に対する温度補償を行うため、液晶パネルには所期の色彩の表示が得られる。」(本件実用新案登録第2589304号公報の4頁8欄4?8行参照)
4.申立人が主張する記載不備の理由の概要
申立人は、上記「(1)甲第4号証の記載事項」の欄に摘記した甲第4号証における記載を指摘して、「この記載は、遊技盤の裏面に単に温度センサを配置しても、その温度センサは液晶パネルの温度を正確に検出できず、高めの温度を検出してしまうので、その位置の温度センサでは液晶パネルの温度補償はできないと明記している。しかるに、本件考案は、前述した構成要件Cおよび構成要件Eから明らかなように、遊技盤の裏面に、キャップを被せる等の工夫もなく、単に温度センサを配置したもので、この構成では、液晶パネルの温度補償ができないことは出願人自らが明記している通りである。」とし、「本件考案の実用新案登録請求の範囲に記載される技術事項は本件出願の効果を達成するすることができず、したがって、本件出願の明細書には記載不備がある。」と主張している。
5.判断
しかしながら、前記「二、本件考案」の欄に記載したとおり、本件考案は、「遊技盤の裏面に配置した温度センサにキャップを被せること」の構成を本件考案の構成要件としているものではなく、また、本件考案の作用・効果は、前記「(3)本件考案の作用・効果」の欄に記載したとおりであって、本件考案が「遊技盤の裏面に配置した温度センサにキャップを被せること」の構成を本件考案の必須構成要件とした場合の作用・効果を奏する、としているものではない。
したがって、本件考案の出願明細書に記載不備があるとする主張の根拠を、明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されていない上記「(1)甲第4号証の記載事項」の欄に摘記した事項に求めた申立人の主張は、採用できない。

四、むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び提出した証拠方法によって、本件考案の登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案の登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-03-01 
出願番号 実願平2-12917 
審決分類 U 1 651・ 534- Y (A63F)
U 1 651・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持    
前審関与審査官 神 悦彦松川 直樹  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 吉村 尚
佐藤 昭喜
登録日 1998-11-20 
登録番号 実用新案登録第2589304号(U2589304) 
権利者 株式会社三洋物産
愛知県名古屋市千種区今池三丁目9番21号
考案の名称 パチンコ機の表示装置  

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