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審決分類 |
審判 全部申し立て F16D |
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管理番号 | 1015018 |
異議申立番号 | 異議1999-74649 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-11-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-12-06 |
確定日 | 2000-04-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第2596097号「機械式車両用ドラムブレーキのアクチュエータ」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2596097号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 実用新案登録第2596097号の請求項1に係る考案についての出願は、平成5年5月31日に出願され、平成11年4月2日にその考案について実用新案の設定登録がされ、その後、その実用新案登録について、異議申立人 日清紡績株式会社により実用新案登録異議申立てがなされたものである。 2.本件考案 本件請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 相対向する一対の側板の中央部を相反する方向へ膨らませて、両側板間に収容空間部を形成したコネクティングロッドと、該コネクティングロッドの一端部に基端腕を枢支して、上記収容空間部に回動可能に収容されるブレーキレバーとを有するアクチュエータであって、前記ブレーキレバーの先端部を前記収容空間部内に間隔を置いて配設される一対の帯片で形成し、該帯片に、ブレーキケーブルの端部に設けられたケーブルエンドを係着する係合孔をそれぞれ設け、前記ブレーキレバーの基端側に、前記コネクティングロッドの一端部に形成された開口に露出して、一方のブレーキシューの一端部を支承するシュー受け部を形成すると共に、前記コネクティングロッドの他端側に、他方のブレーキシューの一端部を支承するシュー受け部を形成した機械式車両用ドラムブレーキのアクチュエータにおいて、前記係合孔を、前記ケーブルエンドの断面形状と同形の貫通孔とし、前記一対の帯片のいずれか一方に、前記ブレーキケーブルを両帯片の間へ取り込むためのスリットを、一方の帯片の外縁から一方の帯片の係合孔の内縁に亙って、ブレーキケーブルの牽引方向と異なる方向に形成すると共に、前記スリットを形成した一方の帯片と同側に配設される前記コネクティングロッドの一方の側板に、前記ケーブルエンドの通過を許容する差し込み孔を、前記係合孔の回動軌跡上に貫通形成し、かつ、該係合孔が前記差し込み孔と一致した際に前記帯片のスリットと一致して前記ブレーキケーブルを両帯片の間へ取り込むことができるスリットを、一方の側板の外縁から差し込み孔の内縁に亙って形成したことを特徴とする機械式車両用ドラムブレーキのアクチュエー夕。 3.異議申立ての理由の概要 実用新案登録異議申立人 日清紡績株式会社は、甲第1号証(実願平2-31816号(実開平3-123129号)のマイクロフィルム)及び甲第2号証(実公昭62-18749号公報)の証拠方法を提示し、本件考案は、これらに記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反し、本件考案についての実用新案登録は取り消されるべき旨主張している。 なお、異議申立人は証拠方法の表示において、甲第1号証を実願平2-31816号の要部公開である実開平3-123129号公報としているが、異議申立書の全趣旨に照らしてみると、甲第1号証は、実願平2-31816号の全部公開であるマイクロフィルムとする方が妥当であると認められるから、上記のとおり訂正し記載することとした。 4.甲各号証記載の考案 (1)甲第1号証 ドラムブレーキ用ケーブル接続装置に関し、「1は厚板で補強したバックプレート、2はバックプレート1に固定したアンカー、3,4はバックプレート1上に可動的に保持した一対のブレーキシュー、5はシュー3,4の上方の対向端間に介挿したアジャスター、6は機械的作動装置で、ブレーキレバー7とストラット8から成り立っている。 このブレーキレバー7は2枚の板状部材を一体化したもので、その一方にケーブル9の端末金具9aを挿入する隙間7aを2枚の板状部材の間に有すると共に、端末金具9aの両側に突設した耳軸9bと係合する接続溝7bを有し、他方の重合部にブレーキシュー4と係合する係合溝7cを形成している。 また、ストラット8は板材を二つ折りにして、その長手方向の中間部のみで対向部片を連結しており、この連結部8aでブレーキレバー7の戻り位置を規制している。対向部片の一方の重合部にはブレーキシュー3と係合する係合溝8bを形成してあり、中間部から他方にかけてはブレーキレバー7を嵌挿する隙間を設け、その他方端部においてブレーキレバー7を回動可能にピン10で軸支している。」(第2頁第14行?第3頁15行)との記載事項及び図面の記載から、「相対向する一対の対向部片の中央部を相反する方向へ膨らませて、両対向部片間に隙間を形成したストラット8と、該ストラットの他方端部に他方の重合部を枢支して、前記隙間に回動可能に収容されるブレーキレバー7とを有する機械的作動装置であって、前記ブレーキレバー7の一方を前記隙間内に間隔を置いて配設される一対の板状部材で形成し、該板状部材に、ケーブル9の端部に設けられた耳軸9bを係着する接続溝7bをそれぞれ設け、前記ブレーキレバー7の他方の重合部側に、前記ストラット8の他方端部側に形成された湾曲縁部に露出して、一方のブレーキシュー4の一端部を支承する係合溝7cを形成すると共に、前記ストラット8の一方の重合部側に、他方のブレーキシュー3の一端部を支承する係合溝8bを形成したドラムブレーキの機械的作動装置」が記載されている。 (2)甲第2号証 ドラムブレーキの機械的作動装置に関し、「ブレーキレバー4の露出端には、ブレーキレバー4の側面から一定の距離を隔てて略クランク形の当板8が固着され、ブレーキレバー4と当板8とによってU字状に形成されている。当板8およびブレーキレバー4の対向する両側板にはそれぞれ貫通穴81,41が開設され、これらの貫通穴81,41内に後述するケーブルエンドの掛止金具9が回動自在に収納される。さらに一方の当板8は貫通穴81から当板8の先端までを連通する切欠溝82…がそれぞれブレーキレバー4の露出部の延長線上に開設されている。」(第3欄第37行?第4欄第6行)、及び、「掛止金具9を当板8側の側方から挿入する。このとき、…ケーブル材6を当板8に開設された…切欠溝82に対応して平行に配置した状態で、当板8とブレーキレバー4の両板間に嵌合する。そして、ケーブル材6をブレーキレバー4の露出端と交差する方向に回動して、操作装置に供する。」(第4欄第23?31行)との記載並びに図面の記載からみて、「ブレーキレバー4とブレーキレバー4の露出端に固着された当板8の距離を隔てて対向する両側板に、ケーブル材6の端部に設けられた掛止金具9を係着する前記掛止金具9の断面形状と同形の貫通穴81,41をそれぞれ設け、前記一対の側板の一方に、前記ケーブル材6を両側板の間へ取り込むための切欠溝82を、一方の側板の先端から一方の側板の貫通穴まで、ブレーキレバー4の露出部の延長線上に形成」したことが記載されている。 5.対比・判断 本件考案と甲第1号証に記載されたものを対比すると、甲第1号証に記載の「対向部片」は本件考案の「側板」に、以下同様に、「隙間」は「収容空間部」に、「ストラット8」は「コネクティングロッド」に、「他方端部」は「一端部」に、「他方の重合部」は「基端腕」に、「機械的作動装置」は「アクチュエータ」に、「ブレーキレバー7の一方」は「ブレーキレバーの先端部」に、「板状部材」は「帯片」に、「ケーブル9」は「ブレーキケーブル」に、「耳軸9b」は「ケーブルエンド」に、「他方の重合部側」は「基端側」に、「係合溝7c,8b」は「シュー受け部」に、「一方の重合部側」は「他端側」に、「ドラムブレーキの機械的作動装置」は「機械式車両用ドラムブレーキのアクチェータ」に、それぞれ相当するから、両者は、「相対向する一対の側板の中央部を相反する方向へ膨らませて、両側板間に収容空間部を形成したコネクティングロッドと、該コネクティングロッドの一端部に基端腕を枢支して、前記収容空間部に回動可能に収容されるブレーキレバーとを有するアクチュエータであって、前記ブレーキレバーの先端部を前記収容空間部内に間隔を置いて配設される一対の帯片で形成し、該帯板に、ブレーキケーブルの端部に設けられたケーブルエンドを係着する係合部をそれぞれ設け、前記ブレーキレバーの基端側に、前記コネクティングロッドの一端部から露出して、一方のブレーキシューの一端部を支承するシュー受け部を形成すると共に、前記コネクティングロッドの他端側に、他方のブレーキシューの一端部を支承するシュー受け部を形成した機械式車両用ドラムブレーキのアクチェータ」である点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 [相違点1] 本件考案は、ブレーキケーブルのケーブルエンドを係着するブレーキレバーの係合部を係合孔とし、「前記係合孔を、前記ケーブルエンドの断面形状と同形の貫通孔とし、一対の帯片のいずれか一方に、前記ブレーキケーブルを両帯片の間へ取り込むためのスリットを、一方の帯片の外縁から一方の帯片の係合孔の内縁に亙って、ブレーキケーブルの牽引方向と異なる方向に形成する」ことについての構成(以下、便宜上「構成要件イ」という。)、及び、「前記スリットを形成した一方の帯片と同側に配設されるコネクティングロッドの一方の側板に、前記ケーブルエンドの通過を許容する差し込み孔を、前記係合孔の回動軌跡上に貫通形成し、かつ、該係合孔が前記差し込み孔と一致した際に前記帯片のスリットと一致して前記ブレーキケーブルを両帯片の間へ取り込むことができるスリットを、一方の側板の外縁から差し込み孔の内縁に亙って形成した」ことについての構成(以下、便宜上「構成要件ロ」という。)を備えているのに対し、甲第1号証記載のものは、ブレーキレバーの係合部が接続溝となっており、上記構成要件イ、ロについて記載されていない点。 [相違点2] 本件考案では、「コネクティングロッドの一端部に形成された開口に露出して、一方のブレーキシューの一端部を支承するシュー受け部を形成」しているのに対し、甲第1号証記載のものでは、ストラット8(コネクティングロッド)の一端部側に形成された湾曲縁部に露出して、一方のブレーキシュー4の一端部を支承する係合溝7c(シュー受け部)を形成している点。 そこで、上記相違点について検討する。 ・相違点1について 上記甲第2号証記載のものにおいて、「露出端」は本件考案の「先端部」に、以下同様に、「側板」は「帯片」に、「貫通穴」は「係合孔」に、「掛止金具9」は「ケーブルエンド」に、「切欠溝82」は「スリット」に、それぞれ対応すること、及び、切欠溝82はケーブル材6の牽引方向と異なる方向に形成されていることは、上記「切欠溝82…がそれぞれブレーキレバー4の露出部の延長線上に開設されている。」、「ケーブル材6をブレーキレバー4の露出端と交差する方向に回動して、操作装置に供する。」との記載及び図4の記載から明らかであることより、甲第2号証には上記構成要件イについて記載されているものと認められるものの、上記構成要件ロについて記載乃至示唆はされていない。そして、本件考案は、上記構成要件ロに基づいて「ブレーキレバーの係合孔をコネクティングロッドの側板から露出させることなく、ケーブルエンドをブレーキレバーの帯片間に掛け渡すことができ、ブレーキレバーの係合孔全体を、コネクティングロッドの側板から露出させるスペースのない場合の取付け構造に適している」という顕著な効果を奏するものであるから、甲第1号証に甲第2号証を適用し上記相違点1に係る構成要件ロのように構成することは、当業者がきわめて容易に想到し得たものとすることはできない。 したがって、本件考案は、上記相違点2について検討するまでもなく、甲第1及び2号証記載の考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認められない。 6.むすび 以上のとおりであるから、異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件考案に係る実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-03-30 |
出願番号 | 実願平5-28842 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Y
(F16D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 藤井 新也 |
特許庁審判長 |
佐藤 洋 |
特許庁審判官 |
鳥居 稔 和田 雄二 |
登録日 | 1999-04-02 |
登録番号 | 実用新案登録第2596097号(U2596097) |
権利者 |
日信工業株式会社 長野県上田市大字国分840番地 |
考案の名称 | 機械式車両用ドラムブレーキのアクチュエータ |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 木戸 一彦 |
代理人 | 木戸 伝一郎 |
代理人 | 杉村 暁秀 |
代理人 | 杉村 純子 |