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審決分類 |
審判 全部申し立て B66C |
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管理番号 | 1016790 |
異議申立番号 | 異議1999-71620 |
総通号数 | 12 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-12-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-04-23 |
確定日 | 2000-04-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2585685号「フック格納装置」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2585685号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
(1)手続の経緯 実用新案登録第2585685号の請求項1に係る考案は、平成4年3月30日に出願され、平成10年9月18日に設定登録され、その後、酒井慎吾より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年12月14日に訂正請求がなされたものである。 (2)訂正の適否 ア.訂正の内容 a.考案の名称の訂正 「フック格納装置」とあるのを、「移動式クレーン車」と訂正する。 b.実用新案登録請求の範囲の訂正 【請求項1】の全文 「前傾ブームを備えた移動式クレーン車において、先端ブーム(1)に設けられたシーブ(2)及び(3)により安定されるワイヤロープ(4)を操作することによりワイヤロープ(4)の張力によりフック(9)が巻き上げられ、リンクブラケット(10)の下面(20)とフックブラケット(7)の上面(17)とが当接してフック(9)が回動し格納されるフック格納装置において、リンクブラケット下面(20)とフックブラケット上面(17)とが、フック(9)吊り下げ時は、フック(9)格納時に回動方向へ傾くような角度を有するように構成されたことを特徴とする、フック格納装置。」とあるのを、 「前後輪タイヤと、前傾ブーム(C)とを備え、前後輪タイヤによって移動自在とされると共に、前傾ブームの(C)先端部から繰り出し繰り入れ自在に垂下したワイヤロープの先端に設けたフックのうち、前傾ブーム(C)を前傾させ、かつワイヤロープを繰り入れた移動姿勢でなるフック格納時にフック下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出すフック(9)を有する移動式クレーン車において、 前記「フック下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出すフック(9)」に対し、 前傾ブーム(C)先端(1)に設けられたシーブ(2)及び(3)により案内されるワイヤロープ(4)を操作することによりワイヤロープ(4)の張力によりフック(9)が巻き上げられ、リンクブラケット(10)の下面(20)とフックブラケット(7)の上面(17)とが当接してフック(9)が回動し格納されるフック格納装置であると共に、 リンクブラケット下面(20)とフックブラケット上面(17)とが、フック(9)吊り下げ時は、フック格納中にフック(9)が回動方向へ傾く角度(α)であり、かつフック格納完了時にフック(9)下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出さない角度(α)を備えたフック格納装置を設けたことを特徴とする移動式クレーン車。」と訂正する。 c.考案の詳細な説明の訂正 (c-1)【0001】の全文 「この考案は移動式クレーン車等の荷役車両における吊り具であるフックを、こじんまりと格納するための装置に関する。」とあるのを、 「この考案は、吊り具であるフックをこじんまりと格納する装置を備えた移動式クレーン車に関する。」と訂正する。 (c-2)【0002】の第3行目に「図1,図4」とあるのを、「図4」と訂正する。 (c-3)【0003】の全文 「上記従来のフック格納装置でブームを前下りにしたもの(図3)においては、リンクブラケットjの下面j1と、フックブラケットgの上面g1とは相互に平行で密着しているため、格納時にフック下部がピンkのボス部k1から前輪タイヤへの接線(n-n)より下方へ突き出し、(接近角s2が小さい)これがために坂道、凸部への進入性が悪くなるという不具合があった。」とあるのを、 「上記従来のフック格納装置で前傾ブームを前下りに前傾したもの(図3)においては、リンクブラケットjの下面j1と、フックブラケットgの上面g1とは相互に平行で密着しているため、フック格納完了時にフック下部がピンkのボス部k1から前輪タイヤへの接線(n-n)より下方へ突き出し(より具体的には、同図3に示すとおり、前傾ブーム前傾完了時でのフック格納完了時にフック9が前傾ブームC先端(即ち、先端ブーム1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出し)、(接近角s2が小さい)これがために坂道、凸部への進入性が悪くなるという不具合があった。」と訂正する。 (c-4)【0004】の全文 「この考案は上記に鑑みなされたものであって、前傾ブームを備えた移動式クレーン車において、先端ブームに設けられたシーブにより案内されるワイヤロープを操作することにより該ワイヤロープの張力によりフックが巻き上げられ、リンクブラケットの下面とフックブラケットの上面とが当接してフックが回動し格納されるフック装置において、リンクブラケット下面とフックブラケット上面とが、フック吊り下げ時は、フック格納時に回動方向へ傾くような角度を有するように構成することにより、フック格納時におけるふり上げ角を大きくなるようにしたものである。」とあるのを、 「この考案は上記に鑑みなされたものであって、前後輪タイヤと、前傾ブームとを備え、前後輪タイヤによって移動自在とされると共に、前傾ブームの先端部から繰り出し繰り入れ自在に垂下したワイヤロープの先端に設けたフックのうち、前傾ブームを前傾させ、かつワイヤロープを繰り入れた移動姿勢でなるフック格納時にフック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出すフックを有する移動式クレーン車において、 前記「フック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出すフック」に対し、 前傾ブーム先端に設けられたシーブにより案内されるワイヤロープを操作することによりワイヤロープの張力によりフックが巻き上げられ、リンクブラケットの下面とフックブラケットの上面とが当接してフックが回動し格納されるフック格納装置であると共に、 リンクブラケット下面とフックブラケット上面とが、フック吊り下げ時は、フック格納中にフックが回動方向へ傾く角度であり、かつフック格納完了時にフック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出さない角度を備えたフック格納装置を設けたことにより、フック格納時において、フック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出さないように、ふり上げ角を大きくなるようにしたものである。」と訂正する。 (c-5)【0007】の全文 「またワイヤロープに掛かる引張荷重の大きさを比較説明するために、図5(イ)にこの考案によるフック格納装置の説明用図を示し、図5(ロ)に従来のものを示す。図においてフック格納時ワイヤロープ4(d)を縮める際、ウエッジピン中心6(f)が角度αだけ矢印13の方向に回転し、リンクブラケット10、フックブラケット、フック9が一体になって回転するときの腕長さY1が角度アルファをつけないものY2より大きくなり、ワイヤロープ4に掛かる引張荷重を小さくできるものである。」とあるのを、 「またワイヤロープに掛かる引張荷重の大きさを比較説明するために、図5(イ)にこの考案によるフック格納装置の説明用図を示し、図5(ロ)に従来のものを示す。図5(イ)においてフック格納時ワイヤロープ4を縮める際、ウエッジピン6中心が角度αだけ矢印13の方向に回転し、リンクブラケット10、フックブラケット7、フック9が一体になって回転するときの腕長さY1が角度αをつけない従来の図5(ロ)のものY2より大きくなり、ワイヤロープ4に掛かる引張荷重を小さくできるものである。」と訂正する。 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正aは、明瞭でない記載の釈明に該当し、上記訂正bは、実用新案登録請求の範囲の減縮,誤記の訂正若しくは明瞭でない記載の釈明に該当し、上記訂正cは、誤記の訂正若しくは明瞭でない記載の釈明に該当し、又、上記訂正a,b,cは願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 ウ.独立実用新案登録要件の判断 (訂正明細書の請求項1に係る考案) 訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「前後輪タイヤと、前傾ブーム(C)とを備え、前後輪タイヤによって移動自在とされると共に、前傾ブームの(C)先端部から繰り出し繰り入れ自在に垂下したワイヤロープの先端に設けたフックのうち、前傾ブーム(C)を前傾させ、かつワイヤロープを繰り入れた移動姿勢でなるフック格納時にフック下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出すフック(9)を有する移動式クレーン車において、 前記「フック下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出すフック(9)」に対し、 前傾ブーム(C)先端(1)に設けられたシーブ(2)及び(3)により案内されるワイヤロープ(4)を操作することによりワイヤロープ(4)の張力によりフック(9)が巻き上げられ、リンクブラケット(10)の下面(20)とフックブラケット(7)の上面(17)とが当接してフック(9)が回動し格納されるフック格納装置であると共に、 リンクブラケット下面(20)とフックブラケット上面(17)とが、フック(9)吊り下げ時は、フック格納中にフック(9)が回動方向へ傾く角度(α)であり、かつフック格納完了時にフック(9)下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出さない角度(α)を備えたフック格納装置を設けたことを特徴とする移動式クレーン車。」 (先願明細書に記載の発明) 訂正明細書の請求項1に係る考案に対して、当審が通知した取消理由で引用した、その出願前の出願であって、その出願後に特開平4-341496号(申立人の提示した甲第1号証)として出願公開された特願平3-164182号の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)には、『上記実施例では、主巻および補巻両フックを備えたクレーンを適用対象として例示したが、フックが一つだけのクレーンに対しても上記実施例同様に実施することができる。』(公開公報第4頁第6欄第22?25行、参照。)なる記載、及び図1,図2の記載内容等からみて、 「前後輪タイヤと、前傾するブーム2及び補助ブーム8(主巻フック3及び補巻フック9を具備する。),又は前傾するブーム2(主巻フック3のみを具備する。)とを備え、前後輪タイヤによって移動自在とされると共に、前傾するブーム2及び補助ブーム8,又は前傾するブーム2の先端部から繰り出し繰り入れ自在に垂下した主巻ロープ4及び補巻ロープ10,又は主巻ロープ4の先端に設けた主巻フック3及び補巻フック9,又は主巻フック3のうち、前傾するブーム2及び補助ブーム8,又は前傾するブーム2を前傾させ、かつ主巻ロープ4及び補巻ロープ10,又は主巻ロープ4を繰り入れた移動姿勢でなるフック格納時にフック下部が前傾する補助ブーム8,又は前傾するブーム2先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出す補巻フック9,又は主巻フック3を有するホイール式クレーンにおいて、 前記「フック下部が前傾するブーム2先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出す主巻フック3」に対し、 前傾するブーム2先端に設けられたシーブ5及び6により案内される主巻ロープ4を操作することにより主巻ロープ4の張力により主巻フック3が巻き上げられ、主巻フック格納金具21の当り面21cと主巻フック3の上面とが当接して主巻フック3が回動し格納されるフック格納装置であると共に、 主巻フック格納金具21の当り面21cと主巻フック3の上面とが、主巻フック3吊り下げ時は、主巻フック3格納中に主巻フック3が回動方向へ傾く角度を備えたフック格納装置を設けたホイール式クレーン。」 が記載されている。 (対比・判断) 訂正明細書の請求項1に係る考案と上記先願明細書に記載の発明とを対比すると、先願明細書に記載の発明は、訂正明細書の請求項1に係る考案を特定する事項である「前後輪タイヤと、前傾ブーム(C)とを備え、前後輪タイヤによって移動自在とされると共に、前傾ブームの(C)先端部から繰り出し繰り入れ自在に垂下したワイヤロープの先端に設けたフックのうち、前傾ブーム(C)を前傾させ、かつワイヤロープを繰り入れた移動姿勢でなるフック格納時にフック下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出すフック(9)を有する移動式クレーン車において、 前記「フック下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出すフック(9)」に対し、 前傾ブーム(C)先端(1)に設けられたシーブ(2)及び(3)により案内されるワイヤロープ(4)を操作することによりワイヤロープ(4)の張力によりフック(9)が巻き上げられ、リンクブラケット(10)の下面(20)とフックブラケット(7)の上面(17)とが当接してフック(9)が回動し格納されるフック格納装置であると共に、 リンクブラケット下面(20)とフックブラケット上面(17)とが、フック(9)吊り下げ時は、フック格納中にフック(9)が回動方向へ傾く角度(α)である」事項を備えているが、「前記事項を備え、かつフック格納完了時にフック(9)下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出さない角度(α)を備えたフック格納装置を設けた」事項を備えておらず、当該事項により訂正明細書の請求項1に係る考案は、「クレーン車が狭い場所へ進入することが容易になる。坂道、凸部への進入性が向上する。」という顕著な効果を奏するものである。 したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案は、先願明細書に記載の発明と同一であるとすることはできない。 よって、訂正明細書の請求項1に係る考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。 エ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第2項及び同条第3項でさらに準用する特許法第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)実用新案登録異議の申立てについて ア.申立て理由の概要 申立人酒井慎吾は、甲第1号証(特開平4-341496号公報)を提出し、請求項1に係る考案は、実用新案法第3条の2の規定に違反してなされたものであるから、実用新案登録を取り消すべき旨主張している。 イ.判断 訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記(2)ウで示したように、甲第1号証として出願公開された先願明細書に記載された発明と同一であるとすることはできない。 また、他に訂正明細書の請求項1に係る考案を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 移動式クレーン車 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 前後輪タイヤと、前傾ブーム(C)とを備え、前後輪タイヤによって移動自在とされると共に、前傾ブームの(C)先端部から繰り出し繰り入れ自在に垂下したワイヤロープの先端に設けたフックのうち、前傾ブーム(C)を前傾させ、かつワイヤロープを繰り入れた移動姿勢でなるフック格納時にフック下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出すフック(9)を有する移動式クレーン車において、 前記「フック下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出すフック(9)」に対し、 前傾ブーム(C)先端(1)に設けられたシーブ(2)及び(3)により案内されるワイヤロープ(4)を操作することによりワイヤロープ(4)の張力によりフック(9)が巻き上げられ、リンクブラケット(10)の下面(20)とフックブラケット(7)の上面(17)とが当接してフック(9)が回動し格納されるフック格納装置であると共に、 リンクブラケット下面(20)とフックブラケット上面(17)とが、フック(9)吊り下げ時は、フック格納中にフック(9)が回動方向へ傾く角度(α)であり、かっフック格納完了時にフック(9)下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出さない角度(α)を備えたフック格納装置を設けたことを特徴とする移動式クレーン車。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この考案は移動式クレーン車等の荷役車両における吊り具であるフックを、こじんまりと格納するための装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来の前傾ブームを備えた移動式クレーン車の外観側面図を図3に示し、フック格納装置の要部側面図を図4に示す。図において、下部車体Aの上部には旋回台Bが搭載され、該上部旋回台Bには前後ブームCが設けられている。先端ブームaに設けられたシーブb及びシーブcを介してワイヤロープd、ウェッジピンfによりフックiが作業状態では図に示すように吊り下げられた状態で装着されている。フックiを格納するときは、ウィンチ(図示せず)を作動させてワイヤロープdを縮めると、リンクブラケットjがピンkを中心にして矢印m方向に回動し、フックiは二点鎖線で示す格納状態になるようになっている。hはフックiをフックブラケットgに揺動自在に装着するピンである。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 上記従来のフック格納装置で前傾ブームを前下りに前傾したもの(図3)においては、リンクブラケットjの下面j1と、フックブラケットgの上面g1とは相互に平行で密着しているため、フック格納完了時にフック下部がピンkのボス部k1から前輪タイヤヘの接線(n-n)より下方へ突き出し(より具体的には、同図3に示すとおり、前傾ブーム前傾完了時でのフック格納完了時にフック9が前傾ブームC先端(即ち、先端ブーム1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出し)、(接近角S2が小さい)これがために坂道、凸部への侵入性が悪くなるという不具合があった。 【0004】 【課題を解決するための手段及び作用】 この考案は上記に鑑みなされたものであって、前後輪タイヤと、前傾ブームとを備え、前後輪タイヤによって移動自在とされると共に、前傾ブームの先端部から繰り出し繰り入れ自在に垂下したワイヤロープの先端に設けたフックのうち、前傾ブームを前傾させ、かつワイヤロープを繰り入れた移動姿勢でなるフック格納時にフック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出すフックを有する移動式クレーン車において、 前記「フック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出すフック」に対し、 前傾ブーム先端に設けられたシーブにより案内されるワイヤロープを操作することによりワイヤロープの張力によりフックが巻き上げられ、リンクブラケットの下面とフックブラケットの上面とが当接してフックが回動し格納されるフック格納装置であると共に、 リンクブラケット下面とフックブラケット上面とが、フック吊り下げ時は、フック格納中にフックが回動方向へ傾く角度であり、かつフック格納完了時にフック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出さない角度を備えたフック格納装置を設けたことにより、フック格納時において、フック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出さないように、ふり上げ角を大きくなるようにしたものである。 【0005】 【実施例】 以下、図面に基づいてこの考案の実施例について説明する。図1はこの考案によるフック格納装置を備えた前傾ブームC搭載の移動式クレーン車の外観側面図、図2はこの考案によるフック格納装置の要部側面図であって、先端ブーム1に設けられたシーブ2及びシーブ3を介してワイヤロープ4,ウェッジ5及びウェッジピン6によりフック9が作業状態では図に示すように吊り下げられた状態で装着されている。フック9を格納するときは、ウィンチ(図示せず)を作動させてワイヤロープ4を縮めると、リンクブラケット10がピン11を中心にして矢印13方向に回動し、フック9は二点鎖線で示す格納状態になるようになっている。8はフック9をフックブラケット7に揺動自在に装着するピンである。 【0006】 上記したところまでは従来技術のものと同様であるが、この考案による実施例において最も特徴とするところは、リンクブラケット10の下面部材20と、フックブラケット7の上面部材17とがαで示す角度を有するように構成されている点である。それ故、ワイヤロープ4を縮めてフック9を二点鎖線で示した格納状態にすると、下面部材20と、上面部材17とは、上記αで示した角度が0になって互いに密着するまで、フック9がふり上げられ、ふり上げ角度θ1が図4に示した従来の振り上げ角度θ2に比し大きく図1に示した接線(n-n)よりフック9の下部が下にはみ出さないので従来のものに比べて接近角S1が大きくなり、坂道、凸部への侵入性が向上する。 【0007】 またワイヤロープに掛かる引張荷重の大きさを比較説明するために、図5(イ)にこの考案によるフック格納装置の説明用図を示し、図5(ロ)に従来のものを示す。 図5(イ)においてフック格納時ワイヤロープ4を縮める際、ウェッジピン6中心が角度αだけ矢印13の方向に回転し、リンクブラケット10、フックブラケット7、フック9が一体になって回転するときの腕長さY1が角度αをつけない従来の図5(口)のものY2より大きくなり、ワイヤロープ4に掛かる引張荷重を小さくできるものである。 【0008】 【考案の効果】 この考案は以上詳述したようにして成り、フック格納時の振り上げ角度が大きくなって、クレーン車が走行時には格納状態のフック下面の地上からの距離が大きくなるので、クレーン車が狭い場所へ進入することが容易になるものである。またこの考案によればリンクブラケットをフックブラケットとブームの先端の間に取り付けるだけでよく、構造が簡単でコンパクトである。 【図面の簡単な説明】 【図1】 この考案による格納装置を備えた前傾ブーム搭載の移動式クレーン車の外観側面図である。 【図2】 この考案によるフック格納装置の実施例の要部側面図である。 【図3】 従来の前傾ブームを備えた移動式クレーン車の要部側面図である。 【図4】 従来のフック格納装置の要部側面図である。 【図5】 (イ)この考案によるフック格納装置のワイヤロープにかかる引張荷重の大きさを説明するための図である。 (ロ)従来のフック格納装置のワイヤロープにかかる引張荷重の大きさを説明するための図である。 【符号の説明】 1 先端ブーム 2 シーブ 3 シーブ 4 ワイヤロープ 7 フックブラケット 9 フック 10 リンクブラケット 17 フックブラケットの上面 20 リンクブラケットの下面 |
訂正の要旨 |
a.考案の名称の訂正 「フック格納装置」とあるのを、「移動式クレーン車」と訂正する。 b.実用新案登録請求の範囲の訂正 【請求項1】の全文 「前傾ブームを備えた移動式クレーン車において、先端ブーム(1)に設けられたシーブ(2)及び(3)により安定されるワイヤロープ(4)を操作することによりワイヤロープ(4)の張力によりフック(9)が巻き上げられ、リンクブラケット(10)の下面(20)とフックブラケット(7)の上面(17)とが当接してフック(9)が回動し格納されるフック格納装置において、リンクブラケット下面(20)とフックブラケット上面(17)とが、フック(9)吊り下げ時は、フック(9)格納時に回動方向へ傾くような角度を有するように構成されたことを特徴とする、フック格納装置。」とあるのを、 「前後輪タイヤと、前傾ブーム(C)とを備え、前後輪タイヤによって移動自在とされると共に、前傾ブームの(C)先端部から繰り出し繰り入れ自在に垂下したワイヤロープの先端に設けたフックのうち、前傾ブーム(C)を前傾させ、かっワイヤロープを繰り入れた移動姿勢でなるフック格納時にフック下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出すフック(9)を有する移動式クレーン車において、 前記「フック下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出すフック(9)」に対し、 前傾ブーム(C)先端(1)に設けられたシーブ(2)及び(3)により案内されるワイヤロープ(4)を操作することによりワイヤロープ(4)の張力によりフック(9)が巻き上げられ、リンクブラケット(10)の下面(20)とフックブラケット(7)の上面(17)とが当接してフック(9)が回動し格納されるフック格納装置であると共に、 リンクブラケット下面(20)とフックブラケット上面(17)とが、フック(9)吊り下げ時は、フック格納中にフック(9)が回動方向へ傾く角度(α)であり、かつフック格納完了時にフック(9)下部が前傾ブーム(C)先端(1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出さない角度(α)を備えたフック格納装置を設けたことを特徴とする移動式クレーン車。」と訂正する。 c.考案の詳細な説明の訂正 (c-1)【0001】の全文 「この考案は移動式クレーン車等の荷役車両における吊り具であるフックを、こじんまりと格納するための装置に関する。」とあるのを、 「この考案は、吊り具であるフックをこじんまりと格納する装置を備えた移動式クレーン車に関する。」と訂正する。 (c-2)【0002】の第3行目に「図1,図4」とあるのを、「図4」と訂正する。 (c-3)【0003】の全文 「上記従来のフック格納装置でブームを前下りにしたもの(図3)においては、リンクブラケットjの下面j1と、フックブラケットgの上面g1とは相互に平行で密着しているため、格納時にフック下部がピンkのボス部k1から前輪タイヤヘの接線(n-n)より下方へ突き出し、(接近角s2が小さい)これがために坂道、凸部への進入性が悪くなるという不具合があった。」とあるのを、上記従来のフック格納装置で前傾ブームを前下りに前傾したもの(図3)においては、リンクブラケットjの下面j1と、フックブラケットgの上面g1とは相互に平行で密着しているため、フック格納完了時にフック下部がピンkのボス部k1から前輪タイヤヘの接線(n-n)より下方へ突き出し(より具体的には、同図3に示すとおり、前傾ブーム前傾完了時でのフック格納完了時にフック9が前傾ブームC先端(即ち、先端ブーム1)の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線(n-n)よりも下方へ突き出し)、(接近角s2が小さい)これがために坂道、凸部への進入性が悪くなるという不具合があった。」と訂正する。 (c-4)【0004】の全文 「この考案は上記に鑑みなされたものであって、前傾ブームを備えた移動式クレーン車において、先端ブームに設けられたシーブにより案内されるワイヤロープを操作することにより該ワイヤロープの張力によりフックが巻き上げられ、リンクブラケットの下面とフックブラケットの上面とが当接してフックが回動し格納されるフック装置において、リンクブラケット下面とフックブラケット上面とが、フック吊り下げ時は、フック格納時に回動方向へ傾くような角度を有するように構成することにより、フック格納時におけるふり上げ角を大きくなるようにしたものである。」とあるのを、 「この考案は上記に鑑みなされたものであって、前後輪タイヤと、前傾ブームとを備え、前後輪タイヤによって移動自在とされると共に、前傾ブームの先端部から繰り出し繰り入れ自在に垂下したワイヤロープの先端に設けたフックのうち、前傾ブームを前傾させ、かつワイヤロープを繰り入れた移動姿勢でなるフック格納時にフック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出すフックを有する移動式クレーン車において、 前記「フック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出すフック」に対し、 前傾ブーム先端に設けられたシーブにより案内されるワイヤロープを操作することによりワイヤロープの張力によりフックが巻き上げられ、リンクブラケットの下面とフックブラケットの上面とが当接してフックが回動し格納されるフック格納装置であると共に、 リンクブラケット下面とフックブラケット上面とが、フック吊り下げ時は、フック格納中にフックが回動方向へ傾く角度であり、かつフック格納完了時にフック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出さない角度を備えたフック格納装置を設けたことにより、フック格納時において、フック下部が前傾ブーム先端の最下面から前輪タイヤの下側外面への接線よりも下方へ突き出さないように、ふり上げ角を大きくなるようにしたものである。」と訂正する。 (c-5)【0007】の全文 「またワイヤロープに掛かる引張荷重の大きさを比較説明するために、図5(イ)にこの考案によるフック格納装置の説明用図を示し、図5(ロ)に従来のものを示す。図においてフック格納時ワイヤロープ4(d)を縮める際、ウエッジピン中心6(f)が角度αだけ矢印13の方向に回転し、リンクブラケット10、フックブラケット、フック9が一体になって回転するときの腕長さY1が角度アルファをつけないものY2より大きくなり、ワイヤロープ4に掛かる引張荷重を小さくできるものである。」とあるのを、 「またワイヤロープに掛かる引張荷重の大きさを比較説明するために、図5(イ)にこの考案によるフック格納装置の説明用図を示し、図5(ロ)に従来のものを示す。図5(イ)においてフック格納時ワイヤロープ4を縮める際、ウエッジピン6中心が角度αだけ矢印13の方向に回転し、リンクブラケット10、フックブラケット7、フック9が一体になって回転するときの腕長さY1が角度αをつけない従来の図5(ロ)のものY2より大きくなり、ワイヤロープ4に掛かる引張荷重を小さくできるものである。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-03-10 |
出願番号 | 実願平4-26081 |
審決分類 |
U
1
651・
161-
YA
(B66C)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鈴木 久雄、堀井 啓明 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
関谷 一夫 飯塚 直樹 |
登録日 | 1998-09-18 |
登録番号 | 実用新案登録第2585685号(U2585685) |
権利者 |
株式会社小松製作所 東京都港区赤坂二丁目3番6号 |
考案の名称 | 移動式クレーン車 |