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審決分類 |
審判 全部申し立て E03F |
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管理番号 | 1016815 |
異議申立番号 | 異議1998-74234 |
総通号数 | 12 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-12-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-08-26 |
確定日 | 2000-01-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2572050号「グレーチング」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2572050号の実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件実用新案登録第2572050号に係る出願は、平成5年5月28日の出願であって、平成10年2月27日に実用新案登録の設定がなされ、その後株式会社ダイクレから実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成11年7月19日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、それに対して平成11年10月18日付けで手続補正書が提出されたものである。 II.訂正請求及び訂正請求の補正について 1.訂正請求及び補正の内容 (1)訂正請求の趣旨及び訂正の要旨 訂正請求の趣旨は、実用新案登録第2572050号に係る明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書の通り訂正することを求めるものであり、そして、その訂正事項は、以下のとおりである。 ▲1▼訂正事項a:実用新案登録請求の範囲の記載を実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。 「【請求項1】複数の主部材(4,41)及び横部材(8,42)によって格子状に形成された本体(1)と、当該本体(1)の外形面積よりも小面積で装飾性を有する板状の板部材(6)とを備えたグレーチングであって、前記板部材(6)の上面にプレス成形による装飾(7)を施すと共に、前記複数の主部材の少なくとも一つには、所定の幅及び深さを有する切欠部(5)が凹設され、前記板部材(6)は、横方向が前記切欠部(5)の幅と同じ長さで、縦方向が中央の主部材(4)と両側にて隣合う一対の主部材(4)間と同じ長さであり、厚さが前記切欠部(5)の深さに対応するように形成され、前記切欠部(5)に前記板部材(6)を嵌合した状態で両者を溶接により固定したことを特徴とするグレーチング。」 ▲2▼訂正事項b:上記訂正事項aに伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明との整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の段落【0007】を、以下のように訂正する。 「【0007】 【課題を解決するための手段】 上記問題点を解決するために本考案は、複数の主部材及び横部材によって格子状に形成された本体と、当該本体の外形面積よりも小面積で装飾性を有する板状の板部材とを備えたグレーチングであって、前記板部材の上面にプレス成形による装飾を施すと共に、前記複数の主部材の少なくとも一つには、所定の幅及び深さを有する切欠部が凹設され、前記板部材は、横方向が前記切欠部の幅と同じ長さで、縦方向が中央の主部材と両側にて隣合う一対の主部材間と同じ長さであり、厚さが前記切欠部の深さに対応するように形成され、前記切欠部に前記板部材を嵌合した状態で両者を溶接により固定した。」 ▲3▼訂正事項c:上記訂正事項aに伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明との整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の段落【0008】を、以下のように訂正する。 「【0008】 【作用】 この構成によれば、板部材は本体に埋設された状態になると共に板部材の上面と本体の上面とがほぼ面一となるため、板部材が歩行者の歩行の障害となることがない。又、板部材は本体の外形面積よりも小面積であるため、グレーチングの排水性に支障はない。更に、板部材が装飾性を有しているため、板部材が歩行者等の目にとまり易くなり、歩行者等にアピールすることができる。更に、板部材に市章等を標示すれば、所有者が特定できるため、盗難の防止につながる。 更に、本考案によれば、本体を構成する複数の主部材の少なくとも一つに形成した切欠部を、板部材を本体に支持するための部位としているので、本体構造の複雑化が回避される。又、板部材上面の装飾をプレス成形によるものとしたこと、及び、該板部材を前記切欠部内で本体に対し溶接により固定したことで、グレーチングの構造の簡素化ひいては製造コストの低減が図られる。」 ▲4▼訂正事項d:上記訂正事項aに伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明との整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の段落【0023】を、以下のように訂正する。 「【0023】 【考案の効果】 以上詳述したように本考案のグレーチングによれば、排水性及び歩行に支障なく、町並みの美化・装飾に対して寄与することができるとともに、歩道等を往来する歩行者にアピールすることができ、更には盗難防止につなぐことができる。更に、本考案では、本体を構成する複数の主部材の少なくとも一つに形成した切欠部を、板部材を本体に支持するための部位としているので、本体構造の複雑化を回避することができる。このため、板部材上面の装飾をプレス成形によるものとしたこと、及び、該板部材を前記切欠部内で本体に対し溶接により固定したことともあいまって、グレーチングの構造の簡素化ひいては製造コストの低減を図ることができる。」 (2)訂正請求に対する補正 ▲1▼補正事項a:訂正事項aを、下記のように補正する。 「【請求項1】複数の主部材(4,41)及び横部材(8,42)によって格子状に形成された本体(1)と、当該本体(1)の外形面積よりも小面積で装飾性を有する板状の板部材(6)とを備えたグレーチングであって、前記板部材(6)の上面にプレス成形による装飾(7)を施すと共に、前記複数の主部材の少なくとも一つには、所定の幅及び深さを有する切欠部(5)が凹設され、前記板部材(6)は、横方向が前記切欠部(5)の幅と同じ長さで、かつ該切欠部(5)と両側にて隣合う一対の横部材(8)間より短く、縦方向が前記切欠部(5)の凹設された主部材(4)と両側にて隣合う一対の主部材(4)問と同じ長さであり、厚さが前記切欠部(5)の深さに対応するように形成され、前記切欠部(5)に前記板部材(6)を嵌合した状態で両者を溶接により固定したことを特徴とするグレーチング。」 ▲2▼補正事項b:訂正事項bを、下記のように補正する。 「【0007】 【課題を解決するための手段】 上記問題点を解決するために本考案は、複数の主部材及び横部材によって格子状に形成された本体と、当該本体の外形面積よりも小面積で装飾性を有する板状の板部材とを備えたグレーチングであって、前記板部材の上面にプレス成形による装飾を施すと共に、前記複数の主部材の少なくとも一つには、所定の幅及び深さを有する切欠部が凹設され、前記板部材は、横方向が前記切欠部の幅と同じ長さで、かつ該切欠部と両側にて隣合う一対の横部材間より短く、縦方向が前記切欠部の凹設された主部材と両側にて隣合う一対の主部材間と同じ長さであり、厚さが前記切欠部の深さに対応するように形成され、前記切欠部に前記板部材を嵌合した状態で両者を溶接により固定した。」 ▲3▼補正事項c:訂正明細書中の【0018】を下記のように補正する。(訂正事項e) 「【0018】 なお、本考案は上記実施例に限定されることはなく、本考案の趣旨から逸脱しない範囲で以下のようにしてもよい。 (1)図5に示すように、本体1の四箇所のコーナ部近傍の主部材4に四角すり鉢形状のナット受け部材30を埋設固定し、その各ナット受け部材30と本体1の底面周縁部を覆う受け枠31とにボルト32を挿通してナット33により本体1に締付固定するようにしたグレーチングGに具体化してもよい。更に、側溝以外の道路用横断溝、秋水桝等に使用されるグレーチングに具体化してもよい。」 ▲4▼補正事項d:訂正明細書中の【0019】を下記のように補正する。(訂正事項f) 「【0019】 (2)上記実施例では、側溝等に使用するグレーチングGに具体化したが、代わりに、図6に示すように、歩道と車道との段差部に敷設される車両横断用グレーチングSに具体化してもよい。この車両横断用グレーチングSの本体1は一箇所のコーナ部に切欠部41aを有する板状の主部材41が互いに平行となるように等間隔にて配設され、各主部材の上部には棒状の横部材42が互いに平行となるように埋設した状態で溶接固定されている。プレート6は本体1のほぼ中央部に埋設固定されている。又、各主部材41の切欠部41aが形成されていない側の端面にL字状のアングル43が主部材41に対して所定角度傾斜した状態で溶接固定されている。そして、車両横断用グレーチングSはアングル43が歩道Hに掛止され、切欠部41aの下端が車道Fに当接した状態で、歩道Hと車道Fとの段差部Aに敷設されている。この敷設状態では、本体1の主部材41が車道Fに向かって傾斜しているため、段差部Aの通過時に図示しない車両のタイヤが落込むことがない。又、一般に段差部Aに敷設されている縞鋼板と比較して雨水等の敷設した部分の段差部Aの流れが良くなる。即ち、縞鋼板では側板が三角形状となっており、段差部Aを上方及び両側方から覆う形となる。このため、降雨時において段差部を流れる雨水は側板により堰き止められてしまう。しかし、この車両横断用グレーチングSにおいては主部材41が段差部Aを側方から覆うことがないため、雨水等の流れが良くなる。」 ▲5▼補正事項e:訂正明細書中の【図面の簡単な説明】を下記のように補正する。(訂正事項g) 「【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案の実施例におけるグレーチングを示す斜視図である。 【図2】 同じく、グレーチングを側溝に敷設した状態を示す斜視図である。 【図3】 同じく、グレーチングを示す正面図である。 【図4】 同じく、図3のA-A線の一部拡大断面図である。 【図5】 他の実施例のグレーチングを示す正面図である。 【図6】 別の他の実施例のグレーチングを示す斜視図である。 【符号の説明】 1…本体、4,41…主体部、5…切欠部、6…板部材としてのプレート、7…装飾の一例としての市章、8,42…横部材、Gグレーチング。」 ▲6▼補正事項f:下記の訂正事項を追加する補正をする。(訂正事項h) 「登録第2572050号に係る考案の図5を削除し、以下、図番を繰り上げ、図6を図5に、図7を図6に、それぞれ訂正する。」 2.訂正の適否 (1)訂正請求に対する補正の適否について 実用新案登録権者が行った、訂正請求に対する補正事項aは、訂正請求書に添付した明細書又は図面を基準とし、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するものであり、また、補正事項b?fは、減縮された請求の範囲の記載と、考案の詳細な説明、図面の簡単な説明の記載及び図面との整合を図るためのもので、明瞭でない記載の釈明に該当するものであり、さらに、いずれの補正も、訂正請求書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の補正であり、しかも、訂正請求書に添付した明細書又は図面における実用新案登録請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではないから、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、当該訂正請求に対する補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用される、特許法第120条の4第3項でさらに準用する同法第131条第2項の規定に適合する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記補正後の訂正事項aに係る訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、しかもその訂正は、願書に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、さらに実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、補正後の訂正事項b?hに係る訂正は、いづれも訂正事項aに関連してなされた明瞭でない記載の釈明に該当し、願書に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)独立実用新案登録要件の判断 イ.訂正明細書の請求項1に係る考案 上記補正後の訂正事項aにおいて、補正された訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件訂正後考案」という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】複数の主部材(4,41)及び横部材(8,42)によって格子状に形成された本体(1)と、当該本体(1)の外形面積よりも小面積で装飾性を有する板状の板部材(6)とを備えたグレーチングであって、前記板部材(6)の上面にプレス成形による装飾(7)を施すと共に、前記複数の主部材の少なくとも一つには、所定の幅及び深さを有する切欠部(5)が凹設され、前記板部材(6)は、横方向が前記切欠部(5)の幅と同じ長さで、かつ該切欠部(5)と両側にて隣合う一対の横部材(8)間より短く、縦方向が前記切欠部(5)の凹設された主部材(4)と両側にて隣合う一対の主部材(4)間と同じ長さであり、厚さが前記切欠部(5)の深さに対応するように形成され、前記切欠部(5)に前記板部材(6)を嵌合した状態で両者を溶接により固定したことを特徴とするグレーチング。」 ロ.引用刊行物記載の考案 これに対して、当審が先に通知した訂正拒絶理由で引用した、実願平1-98408号(実開平3-40384号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、実用新案登録請求の範囲、第3頁第7?18行及び第1,2図の記載を参照すると、長方形状の外枠の短辺側の両側部分に複数の板材及び支持板を所定間隔で外枠の短辺を構成する板材と平行に架設すると共に、各板材を複数本のバーにより連結した溝ぶた本体と、溝ぶた表面のカラー模様を施す部分である、外枠間の短辺側の両端部を除いた部分を外枠の上縁より若干下げて開口して開口部を形成し、該開口部には複数の支持板にて支持されている底板を設け、底板上にはカラー模様を構成する粉末結合層を溝ぶた本体上面まで積層した溝ぶたが記載されている。 同、実願昭53-130480号(実開昭55-50120号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、第2頁末行?第3頁第3行を参照すると、橋架部材に形成された切欠溝に補強枠が嵌め込まれて橋架部材と面一になるように配置され、電気抵抗溶接等により固着される側溝等の格子蓋が記載されている。 また、同、実願昭60-9941号(実開昭61-130682号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、第2頁第9?16行及び第1図の記載を参照すると、天板には縦横方向にクロスした補強リブが形成されていると共に、その中央部には所定深さの凹部が穿設されており、この凹部内には略同厚さのデザイン板が貼着されていて、デザイン板の表面に案内又はPRが刻印等によって描かれている側溝用蓋で、デザイン板は、一方向が凹部の長さと同じ長さで、かつ該凹部と両側にて隣合う一対の縦補強リブ間と同じ長さであり、他方向が凹部と両側にて隣合う一対の横補強リブ間と同じ長さであり、凹部の所定深さと略同厚さである点が記載されている。 ハ.対比・判断 本件訂正後考案と、刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された考案における「溝ぶた本体」は、本件訂正後考案の「複数の主部材及び横部材によって格子状に形成された本体」に相当し、刊行物1に記載された考案における「底板と、底板上に積層される粉末結合層」は、本件訂正後考案の「装飾性を有する板状の板部材」と、「装飾体」である点で共通し、刊行物1に記載された考案において、粉末結合層が溝ぶた本体上面まで積層されているということは、開口部の深さは装飾体の厚さに対応しているといえるから、刊行物1に記載された考案における「溝ぶた」は、溝ぶた本体の外形面積よりも小面積で装飾性を有する装飾体を備え、装飾体の厚さに対応した深さの開口部を設けた本件訂正後考案の「グレーチング」に相当し、かつ、刊行物1に記載された考案における「板材及び支持板」、「バー」及び「開口部」は、それぞれの機能に照らし、各々本件訂正後考案の「主部材」、「横部材」及び「切欠部」に相当するから、両者は、複数の主部材及び横部材によって格子状に形成された本体と、当該本体の外形面積よりも小面積で装飾性を有する装飾体とを備えたグレーチングであって、前記装飾体の上面に装飾を施すと共に、前記複数の主部材の少なくとも一つには、所定の幅及び深さを有する切欠部が凹設され、前記装飾体は、厚さが前記切欠部の深さに対応するように形成されているグレーチングの点で一致し、次の点で相違している。 a.装飾体が、本件訂正後考案では板状の板部材であるのに対し、刊行物1に記載された考案では、底板と、底板上に積層される粉末結合層よりなる点。 b.装飾が、本件訂正後考案では、プレス成形によって施されているのに対し、刊行物1に記載された考案では粉末結合層によって構成されている点。 c.装飾体は、本件訂正後考案では、横方向が切欠部の幅と同じ長さで、かつ該切欠部と両側にて隣合う一対の横部材間より短く、縦方向が前記切欠部の凹設された主部材と両側にて隣合う一対の主部材間と同じ長さであるのに対し、刊行物1に記載された考案ではそのような構成を有していない点。 d.本件訂正後考案では、切欠部に板部材を嵌合した状態で溶接により固定しているのに対し、刊行物1に記載された考案ではそのような構成を有していない点。 一方、刊行物3に記載された考案の「横補強リブ」、「縦補強リブ」、「デザイン板」及び「側溝用蓋」は、それぞれの機能に照らし、各々、本件訂正後考案の「主部材」、「横部材」、「装飾性を有する板状の板部材」及び「グレーチング」に相当し、刊行物3に記載された考案の「凹部」も本件訂正後考案の「切欠部」も装飾性を有する板状の板部材を嵌合する嵌合部であり、さらに刊行物3には、デザイン板の表面に装飾に相当する案内又はPRを刻印によって描く点が記載されており、刻印は通常プレスによって行われものであるから、刊行物3には、上記相違点a及びbに関する本件訂正後考案と同じ構成が記載されているといえる。 次に相違点cについて検討すると、刊行物3に記載された考案の板部材は、横方向が切欠部の幅と同じ長さで、かつ該切欠部と両側にて隣合う一対の横部材間と同じ長さであり、縦方向が前記切欠部の凹設された主部材と両側にて隣合う一対の主部材間と同じ長さであり、本件訂正後考案の構成と比較すると、本件訂正後考案では、板部材の横方向が、切欠部と両側にて隣合う一対の横部材間より短いのに対し、刊行物3に記載された考案では、板部材の横方向が、切欠部と両側にて隣合う一対の横部材間と同じ長さである点で相違するが、刊行物3に記載された考案においても、切欠部と両側にて隣合う一対の横部材のさらにその両側に排水機能を有するグレーチング部分があり、板部材の横方向を切欠部と両側にて隣合う一対の横部材間より短くすることによって、排水性を増すようにすることは、グレーチングにおいての排水面積をどれくらいにするかという設計的事項にすぎない。 さらに、刊行物2にも記載されているが、上記相違点dに関する本件訂正後考案の構成である嵌合部材相互を溶接により固定することは周知技術にすぎない。 また、刊行物1乃至3に記載された考案はいずれも装飾を施したグレーチングという同一技術分野に属するものであるから、これらを組み合わせることに格別の困難性はない。 そして、全体として本件訂正後考案の奏する効果も、刊行物1、3及び周知技術から予測しうる程度のもので、格別顕著ではない。 したがって、本件訂正後考案は、刊行物1、3に記載された考案及び周知技術から当業者であればきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件訂正後考案は、実用新案登録出願の際、独立して実用新案登録を受けることができないものである。 (4)訂正の適否のむすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する同第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 III.異議の申立てについての判断 1.本件請求項1に係る考案 実用新案登録第2572050号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】複数の主部材(4,41)及び横部材(8,42)によって格子状に形成された本体(1)と、当該本体(1)の外形面積よりも小面積で装飾性を有する板部材(6)とを備えたグレーチングであって、前記板部材(6)の上面にプレス成形による装飾(7)を施すと共に、前記複数の主部材及び横部材の少なくとも一つに前記板部材(6)の厚さに対応した深さの切欠部(5)を形成し、この切欠部(5)に前記板部材(6)を嵌合した状態で両者を溶接により固定したことを特徴とするグレーチング。」 2.申立ての理由の概要 申立人株式会社ダイクレは、証拠として甲第1乃至3号証刊行物を提出して、本件請求項1に係る考案は、甲第1乃至3号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであり、本件の実用新案登録を取り消すべきであると主張している。 3.引用刊行物記載の考案 上記甲第1乃至3号証刊行物は、当審がした取消理由通知において、刊行物1(実願平1-98408号(実開平3-40384号)のマイクロフィルム)、刊行物2(実願昭53-130480号(実開昭55-50120号)のマイクロフィルム)、刊行物3(実願昭60-9941号(実開昭61-130682号)のマイクロフィルム)として引用したものであり、刊行物1乃至3には、前記II.2.(3)ロ.に記載したとおりの考案が記載されている。 4.対比・判断 本件考案と刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された考案における「溝ぶた本体」は、本件考案の「複数の主部材及び横部材によって格子状に形成された本体」に相当し、刊行物1に記載された考案における「底板と、底板上に積層される粉末結合層」は、本件考案の「装飾性を有する板部材」と、「装飾体」である点で共通し、刊行物1に記載された考案において、粉末結合層が溝ぶた本体上面まで積層されているということは、開口部の深さは装飾体の厚さに対応しているといえるから、刊行物1に記載された考案における「溝ぶた」は、溝ぶた本体の外形面積よりも小面積で装飾性を有する装飾体を備え、装飾体の厚さに対応した深さの開口部を設けた本件考案の「グレーチング」に相当し、かつ、刊行物1に記載された考案における「板材及び支持板」、「バー」及び「開口部」は、それぞれの機能に照らし、各々本件考案の「主部材」、「横部材」及び「切欠部」に相当するから、両者は、複数の主部材及び横部材によって格子状に形成された本体と、当該本体の外形面積よりも小面積で装飾性を有する装飾体とを備えたグレーチングであって、前記装飾体の上面に装飾を施すと共に、前記複数の主部材及び横部材の少なくとも一つに装飾体の厚さに対応した深さを有する切欠部を形成したグレーチングの点で一致し、次の点で相違している。 a.装飾体が、本件考案では板部材であるのに対し、刊行物1に記載された考案では、底板と、底板上に積層される粉末結合層よりなる点。 b.装飾が、本件考案では、プレス成形によって施されているのに対し、刊行物1に記載された考案では粉末結合層によって構成されている点。 c.本件考案では、切欠部に板部材を嵌合した状態で溶接により固定しているのに対し、刊行物1に記載された考案ではそのような構成を有していない点。 一方、刊行物3に記載された考案の「横補強リブ」、「縦補強リブ」、「デザイン板」及び「側溝用蓋」は、それぞれの機能に照らし、各々、本件考案の「主部材」、「横部材」、「装飾性を有する板部材」及び「グレーチング」に相当し、刊行物3に記載された考案の「凹部」も本件考案の「切欠部」も装飾性を有する板部材を嵌合する嵌合部であり、さらに刊行物3には、デザイン板の表面に装飾に相当する案内又はPRを刻印によって描く点が記載されており、刻印は通常プレスによって行われものであるから、刊行物3には、上記相違点a及びbに関する本件考案と同じ構成が記載されているといえる。 さらに、刊行物2にも記載されているが、上記相違点cに関する本件考案の構成である嵌合部材相互を溶接により固定することは周知技術にすぎない。 また、刊行物1乃至3に記載された考案はいずれも装飾を施したグレーチングという同一技術分野に属するものであるから、これらを組み合わせることに格別の困難性はない。 そして、全体として本件考案の奏する効果も、刊行物1、3及び周知技術から予測しうる程度のもので、格別顕著ではない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-12-03 |
出願番号 | 実願平5-28378 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
ZB
(E03F)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 藤原 伸二 |
特許庁審判長 |
樋口 靖志 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 鈴木 憲子 |
登録日 | 1998-02-27 |
登録番号 | 実用登録第2572050号(U2572050) |
権利者 |
奥野機材株式会社 愛知県刈谷市神田町1丁目45番地 |
考案の名称 | グレーチング |
代理人 | 佐藤 晃一 |
代理人 | 恩田 博宣 |