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関連判例 | 平成10年(行ケ)84号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない A01K 審判 全部無効 無効としない A01K 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A01K |
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管理番号 | 1018500 |
審判番号 | 審判1997-2460 |
総通号数 | 13 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-01-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1997-02-14 |
確定日 | 2000-06-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2083312号実用新案「魚釣用両軸受型リール」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.本件第2083312号実用新案登録 本件第2083312号実用新案登録(以下、本件登録という。)は、昭和61年1月31日の出願された実願昭61-12582号(以下、本件出願という。)に係り、平成7年10月3日に設定登録されたものであって、本件登録に係る考案(以下、本件考案という。)の要旨は、本件登録明細書及び図面(以下、本件明細書という。)の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された以下のとおりと認める。 「複数の支柱を介して一体形成された左右側枠と、左右側枠の外側にそれぞれ装着されるハンドル側外側板および反ハンドル側外側板と、ハンドル側外側板および反ハンドル側外側板間に収容されるスプールと、ハンドル側外側板および反ハンドル側外側板間に橋設される指掛部を有する魚釣用両軸受型リールにおいて、前記指掛部が、前記反ハンドル側外側板と段差のないように前記ハンドル側外側板に向け一体成形され、かつ前記指掛部が、前記スプールの上側でかつ該スプールの軸芯より前側に位置する前記支柱の上部に当接可能に支持されていることを特徴とする魚釣用両軸受型リール。」 2.請求人の主張 請求人は、「第2083312号実用新案の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、下記の旨の理由で本件審判請求をするに関して利害関係を有すると主張すると共に、下記の旨の本件登録の無効の理由を主張している。 (1)利害関係を有する理由 請求人は、証拠方法として、下記の甲第1号証の1?7を提出し、魚釣リールを日本の取引先へOEMで製造し販売する韓国の法人であって、本件実用新案権の権利者である被請求人のダイワ精工株式会社より、前記取引先へ前記魚釣リールが本件実用新案権を侵害するものであると警告書が送付され、その善処を前記取引先より求められている。このことから、請求人は、本件審判請求をするに関して利害関係を有する。 記 甲第1号証の1:本件実用新案権を侵害している旨のダイワ精工(株)代理人の(株)上洲屋宛の通知書(平成8年10月31日付け) 甲第1号証の2:甲第1号証の1に対する(株)上洲屋代理人のダイワ精工(株)代理人宛の回答書(平成8年11月14日付け) 甲第1号証の3:甲第1号証の1で言う侵害に関する(株)上洲屋総務部長のダイワ精工(株)特許部長宛の書面(平成8年8月9日付け)のFAX 甲第1号証の4:甲第1号証の3に関するダイワ精工(株)特許部長の(株)上洲屋総務部長宛の書面(平成8年8月30日付け)のFAX 甲第1号証の5:甲第1号証の1で言う侵害に関する(株)上洲屋総務部長のダイワ精工(株)特許部長宛の書面(平成8年9月9日付け)のFAX 甲第1号証の6:甲第1号証の5に関するダイワ精工(株)特許部長の(株)上洲屋総務部長宛の書面(平成8年10月8日付け)のFAX 甲第1号証の7:甲第1号証の1で言う侵害に関する(株)上洲屋のSINA SPORTS CO LTD宛の書面(96年10月29日付け)のFAX (2)無効理由 証拠方法として、下記の甲第2号証の1?4及び甲第3?6号証を提出し、本件考案は、甲第2号証の1に記載されたものと同一もしくはこのものから当業者が容易にきわめて考案をすることができたもの、或いは甲第2号証の1?4及び甲第3?6号証に記載されたものから当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、本件考案は、実用新案法第3条第1項又は同条第2項の規定により実用新案登録を受けることができなく、本件登録は、同法第37条第1項に該当し無効とされるべきものである。 記 甲第2号証の1:SIMANO INDUSTRIAL CO.LTD.の英文カタログ 甲第2号証の2:甲第2号証の1第4頁に示される商品名「BRUSH BUSTER」の魚釣用リールの説明図 甲第2号証の3:甲第2号証の1第10頁に示される商品名「BANTAM MAG PLUS」の魚釣用リールの説明図 甲第2号証の4:甲第2号証の1第13頁に示される商品名「BRUSH BUSTER」の魚釣用リールの説明図 甲第3号証:実願昭56ー142437号(実開昭58ー52965号)のマイクロフィルム 甲第4号証:実願昭58ー47420号(実開昭59ー154056号)のマイクロフィルム 甲第5号証:実願昭58ー147184号(実開昭60ー55369号)のマイクロフィルム 甲第6号証:商品名「BRUSH BUSTER」の魚釣用リールの写真 3.被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、請求人は本件審判請求に関して、利害関係を有しないと主張すると共に、請求人の主張する無効理由によって本件登録が無効になるものではない旨の答弁をしている。 4.請求人の利害関係の検討 甲第1号証の1?7の記載によれば、請求人は、(株)上洲屋に魚釣用リール「TOP FORCE」を納品し、これを(株)上洲屋は、日本国内において販売していたところ、ダイワ精工(株)から(株)上洲屋に対して、本件登録に係る実用新案権に基づき前記リールの販売を停止するよう申し入れがあり、(株)上洲屋は、請求人に対し、前記リールの販売を中止する予定もあることを通知したことが認められる。そうすると、請求人は、もし前記販売が中止されれば、前記納品により得ていた利益が得られなくなることは、自明の事実として認められる。 これに対し、被請求人は、請求人は、韓国の法人であり、請求人の韓国における前記リールの製造、販売は、本件登録に係る実用新案権の及ぶところではなく、請求人の利害は、取引先の輸入行為が制限されることによる経済的な反射的効果にすぎず、法律上の利害関係があるとは言えないから、請求人は、本件審判請求の関しての利害関係を有しないと主張する。 確かに、被請求人の主張するように、請求人の前記リールの製造、販売に対して、本件登録に係る実用新案権の及ぶところではない。しかしながら、前述の本件登録に係る実用新案権の行使により、実質的に、請求人は不利益を被ることから、請求人は、本件審判請求に関して、利害関係を有するものであるとするのが相当である。 5.請求人の主張する無効理由の検討 甲第2号証の1の公知性については、これに「1985」という西暦の年号らしきものが認められるものの、何時、何処で、誰によって頒布されたものか不明なものであるが、一応これに記載されたものをみてみると、商品名「BRUSH BUSTER」及び商品名「BANTAM MAG PLUS」という魚釣用リールの外観を写したものが記載されている。そして、これらを甲第2号証の2?4に記載されたことを参酌しつつ、本件考案の魚釣両軸受型リールと比べてみてみると、まず、商品名「BRUSH BUSTER」という魚釣用リールには、本件考案でいうところの「左右側枠」「支柱」「スプール」「ハンドル側外枠」及び「反ハンドル側外枠」らしきものが認められるものの、請求人が「指掛部」と指摘するものは、前記ハンドル側外枠と一体のものであり、これに指を掛けることができるものであるか不明なものである。また、前記「指掛部」と指摘するものには、請求人が「口金」と指摘するものが当接しているようにみえるが、本件考案のように「支柱」が当接可能になっているものとは認められない。 そうすると、甲第2号証の1に記載された商品名「BRUSH BUSTER」という魚釣用リールと本件考案のものとは、明らかに相違する。 なお、請求人は、前記指摘する「指掛部」に前記指摘する「口金」が当接することと本件考案における「指掛部」に「支柱」が当接することと実質的の違いはないと主張するが、「口金」と「支柱」では機能もその構造も明らかに相違するものであることから、前記請求人の主張は採用できない。 また、前述の「なお」書きで示したところの、前記商品名「BRUSH BUSTER」という魚釣用リールと本件考案のものとは、明らかに相違し、前記請求人の主張は採用できないとした理由から、また本件考案は、「指掛部」を「反ハンドル側外側板」と段差のないように「ハンドル側外側板」に向けて一体形成したという構成によって、握持する手のひらから親指にかけて全く違和感なく、痛みを感じることなく長時間リールを保持できるという効果を奏するものであることから、請求人の主張するような「指掛部」を「反ハンドル側外側板」又は「ハンドル側外側板」のいずれに設けるかは、当業者ならば容易に選択できる単なる設計変更程度のこととは認めがたい。そうすると、「甲第2号証の1に記載された商品名「BRUSH BUSTER」という魚釣用リールに基づいて、当業者が本件考案を容易に考案し得たとすることもできない。 そして、甲第6号証に記載されたものは、前記商品名「BRUSH BUSTER」という魚釣用リールと同様のものであることから、本件考案のものとは、前記商品名「BRUSH BUSTER」という魚釣用リールと同様の相違点があるものと認められるので、これを検証しても上記判断を覆すことはできないものと認められるので、これの検証の必要性がない。 次に、商品名「BANTAM MAG PLUS」という魚釣用リールについてみてみると、本件考案でいうところの「左右側枠」「支柱」「スプール」「ハンドル側外枠」及び「反ハンドル側外枠」らしきものが認められるものの、請求人が「指掛部」と指摘するものは、「左右側枠」に取り付けられたものであり、また請求人は「指掛部」と指摘するものの下に「支柱」の上側が当接しているものと主張するが、甲第2号証の1第10頁に示されたものには、前記当接する「支柱」が示されていないため、この主張するような構造は認められない。さらには、請求人は「指掛部」と指摘するものは、「左側枠」と一体成形されていると主張するが、前記同頁に示されたものでは、前記一体成形されたものか不明であり、この主張するような構造に商品名「BANTAM MAG PLUS」という魚釣用リールがなっているとは言えない。 してみれば、この商品名「BANTAM MAG PLUS」という魚釣用リールと本件考案と同一のものであるとすることができないばかりか、この商品名「BANTAM MAG PLUS」という魚釣用リールを示した甲第2号証の1第10頁の記載から当業者において本件考案をきわめて容易に考案し得たとも言えないことは明らかである。 続けて、甲第3?5号証をみてみると、甲第3号証には、本件考案でいうところの「左右側板」に「支柱」に嵌合して「指掛部」を取り付けたものが、甲第4号証には、反ハンドル側の側板(本件考案でいうところの反ハンドル側外側板に相当すると認められる。)に左右リングを横杆で連結した枠体を一体成形したものであって、前記横杆は本件考案でいうところの「支柱」に相当するものと認められるものが、さらには、甲第5号証には、支柱に指当て部の箇所で掛け止めされ、リールの左右内側板の前側外縁間に取り付けられる保護カバーが、それぞれ記載されている。 しかしながら、これら甲第3?5号証には、本件考案のように、前記支柱とは別体に反ハンドル側外側板に段差のないように一体的に形成された「指掛部」を設けたものが記載されていない。 そして、甲第2号証の1に記載された前記それぞれの魚釣用リールと甲第3?5号証の前記記載されたことを合わせ考えても、これらには、前述のごとく、本件考案のように、複数の支柱を介して一体形成された左右側枠と、左右側枠の外側にそれぞれ装着されるハンドル側外側板および反ハンドル側外側板とを有する魚釣用両軸受リールにおいて、前記支柱とは別体に、指掛部を反ハンドル側外側板に段差のないように一体的に形成したものが記載されてなく、しかも、本件考案は、この構成を有することにより、前述の効果を奏するものであるので、これらに記載されたことから、当業者において本件考案をきわめて容易に考案し得たとも認められない。 したがって、請求人のこの無効理由は採用できない。 6.以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件登録を無効にすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1997-08-15 |
結審通知日 | 1997-11-14 |
審決日 | 1997-11-21 |
出願番号 | 実願昭61-12582 |
審決分類 |
U
1
112・
121-
Y
(A01K)
U 1 112・ 113- Y (A01K) U 1 112・ 02- Y (A01K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 斉藤 達夫 |
特許庁審判長 |
酒井 雅英 |
特許庁審判官 |
木原 裕 田中 久直 |
登録日 | 1995-10-03 |
登録番号 | 実用登録第2083312号(U2083312) |
考案の名称 | 魚釣用両軸受型リール |
代理人 | 布施田 勝正 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 水野 浩司 |
代理人 | 伊藤 捷雄 |
代理人 | 坪井 淳 |
代理人 | 中村 誠 |