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審決分類 |
審判 全部申し立て A01C 審判 全部申し立て A01C 審判 全部申し立て A01C |
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管理番号 | 1018554 |
異議申立番号 | 異議1997-75397 |
総通号数 | 13 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-11-13 |
確定日 | 1999-07-06 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2535791号「水田作業機」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2535791号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件実用新案登録2535791号考案は、平成3年7月2日付けで実願平3-59222号として実用新案登録出願され、平成9年2月21日にその実用新案登録の設定登録がされ、その後、井関農機株式会社、及び、山本進より実用新案登録異議の申立て(以下、それぞれ「申立て1」、及び「申立て2」という。)がなされ、取消理由通知がされ、その指定期間内である平成10年5月19日に訂正請求がされ、訂正拒絶理由通知がされ、その指定期間内である平成11年3月23日に手続補正書が提出されたものである。 2.訂正の適否について (2-1)手続補正の適否 上記手続補正は、訂正明細書中の「実用新案登録請求の範囲」の欄の第1?4行目の「左右両外側方に前低後高状に傾斜する……他方の足のせ部を設け、」とあるのを、『左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部を形成し、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連接すると共に、リヤフェンダ部の傾斜上端側で側面視運転席後側に他方の足のせ部を水平状に設け、』と補正すると共に、考案の詳細な説明の記載を補正するものである。 そして、上記手続補正は、訂正明細書の特許請求の範囲を減縮するものであって、新規事項を追加するものではなく、訂正請求の要旨を変更するものではないから、この補正は、適法はものと認められる。 (2-2)訂正の内容 本件訂正請求は、本件実用新案登録明細書を前記手続補正された訂正明細書及び図面のとおりに訂正することを求めるものであり、具体的には下記のとおりに訂正しようとするものである。 記 (1)本件実用新案登録公報第1欄第2?6行の「左右両外側方に前低後高状に傾斜する……他方の足のせ部を設け、」とあるのを『左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部を形成し、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連設すると共に、リヤフェンダ部の傾斜上端側で側面視運転席後側に他方の足のせ部を水平状に設け、』と訂正する。 (2)本件実用新案登録公報第2欄第6行の「傾斜上端部からに」とあるのを『傾斜上端部から』と訂正する。 (3)本件実用新案登録公報第4欄下から4行の「大又に」とあるのを『大股に』と訂正する。 (4)本件実用新案登録公報第5欄第2行目の「共に」とあるのを『と共に』と訂正する。 (5)本件実用新案登録公報第5欄第14行の「無理は」とあるのを『無理な』と訂正する。 (6)本件実用新案登録公報の図1において、符号29を31に訂正する。 (7)本件実用新案登録公報の図5において、符号14に矢印付き引き出し線を加入すると共に、符号8を符号18に訂正する。 (8)本件実用新案登録公報の第1欄下から3?2行の「安全かつ」とあるのを『小型の機種でも安全かつ』と訂正する。 (9)本件実用新案登録公報の第3欄第9乃至13行の「左右両外側方に前低後高状に傾斜する……他方の足のせ部を設け、」とあるのを『左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部を形成し、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連設すると共に、リヤフェンダ部の傾斜上端側で側面視運転席後側に他方の足のせ部を水平状に設け、』と訂正する。 (10)本件実用新案登録公報の第3欄下から4?1行目の「前方傾斜下端部側には夫々後方へ向け窪ませた一方の足のせ部24が運転席ステップ部18に連らなった状態で水平状に設けられており、また、リヤフェンダ部20の後方傾斜上端側に」とあるのを『前方傾斜下端部側には側面視で運転席前側に位置して夫々後方へ向け窪ませた一方の足のせ部24が運転席ステップ部18に連らなった状態で水平状に設けられており、また、リヤフェンダ部20の後方傾斜上端側には側面視で運転席後側に位置して』と訂正する。 (11)本件実用新案登録公報第3欄第18?19行目の「リヤフェンダ部の傾斜上端側に設けた他方の足のせ部に」とあるのを『後方且つ上方に向かう凹状に湾曲傾斜して立上ったリヤフェンダ部の傾斜上端側に設けた水平状の他方の足のせ部に楽に』と訂正する。 (12)本件実用新案登録公報第3欄第40乃至41行)の「前提後高状に傾斜する後輪リヤフェンダ部」とあるのを『運転席ステップ18から後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部』と訂正する。 (13)本件実用新案登録公報第4欄第34?35行の「リヤフェンダ部20の傾斜上端側に設けた他方の足のせ部25に」とあるのを『後方且つ上方に向かう凹状に湾曲傾斜して立上ったリヤフェンダ部20の傾斜上端側に設けた水平状の他方の足のせ部25に楽に』と訂正する。 (14)本件実用新案登録公報第5欄第13行目の「左右の足を前後の足のせ部に段違い状」とあるのを『片足をリヤフェンダ部の傾斜始端部側に設けた一方の足のせ部に、他の足を後方且つ上方に向かう凹状に湾曲傾斜して立上ったリヤフェンダ部の傾斜上端側に設けた水平状の他方の足のせ部に楽に載せることが出来、しかも左右の足を前後の足のせ部に段違い状で水平』と訂正する。 (2-3)訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否 上記(1)の訂正、すなわち、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「左右両外側方に前低後高状に傾斜する……他方の足のせ部を設け、」とあるのを『左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部を形成し、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連設すると共に、リヤフェンダ部の傾斜上端側で側面視運転席後側に他方の足のせ部を水平状に設け、』と訂正する点は、リヤフェンダの形状を限定し、一方の足のせ台及び他方の足のせ台の位置を限定するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 また、上記(2)?(7)の訂正は明らかな誤記の訂正を目的とするものであり、上記(8)?(14)の訂正は上記(1)の訂正に伴って不明りょうとなった記載を明りょうにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 さらに、上記(1)?(14)の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 (2-4)独立実用新案登録要件の判断 (1)訂正明細書の考案 訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正明細書の考案」という。)は、補正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「運転席の左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部を形成し、該リヤフエンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連設すると共に、リヤフェンダ部の傾斜上端側で側面視運転席後側に他方の足のせ部を水平状に設け、前記前後の足のせ部により作業機に対する苗等の補給用ステップを形成したことを特徴とする水田作業機。」 (2)刊行物1記載の考案の内容 訂正拒絶理由通知で引用した上記刊行物1(実願昭61-31734号(実開昭62-142215号のマイクロフィルム)には、「運転席(16)の左右両外側方に前低後高状に傾斜するリヤフェンダ部(ステップ18の緩傾斜部18e、急傾斜部18d)を設け、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席に後方へ向け延長した一方の足のせ部(供給ステップ部18c)を運転席ステップ(運転ステップ部18b)に連設すると共に、リヤフェンダ部の傾斜上端側で側面視運転席後側に他方の足のせ部(緩傾斜部18e)を設け、前記前後の足のせ部により作業機に対する苗等の補給用ステップを形成した水田作業機。」が記載されている。 (3)対比・判断 訂正明細書の考案と上記刊行物1記載の考案との対比すると、訂正明細書の考案が、運転席の左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい立上るリヤフェンダ部を形成とし、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連設しているのに対し、上記刊行物1記載の考案は、このような構成を有しない点で相違する。すなわち、上記刊行物1記載の考案は、リヤフェンダ部がステップ18の緩傾斜部18eと急傾斜部18dとからなり、側面視後輪の外形状に沿った凸状段部を呈するものであるから、訂正明細書の考案の「左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上がるリヤフェンダ部を形成し」た構成を備えていない。 そして、訂正明細書の考案は、「運転席ステップ部18のフロア有効面積が増大し苗補給作業並びに乗降が一層楽になるばかりでなく、運転時における足b,cの自由度が増し、その分疲労度を少なくできると共に、苗補給用ステップ26に足を載せた立ち姿勢では前後の足幅(歩幅)を大股に広げる必要が無く適度の幅となるので苗の補給作業がし易くしかも身体のバランスがとり易くなる。」という作用効果を奏する。 したがって、訂正明細書の考案は、刊行物1記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることができないから、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。 (4)まとめ 、本件訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項の規定により準用する同法126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 4.本件実用新案 本件実用新案(以下、本件考案という。)は、前記(2-4)(1)訂正明細書の考案に記載したとおりである。 5.実用新案登録異議の申立てに対して (5-1)申立て1の概要 訂正前の本件考案は、他人の(本件出願と考案者非同一、且つ、出願人非同一)の先願(本件出願の日前の出願、且つ、本件出願後に出願公開)の願書に最初に添付した明細書又は図面(下記甲第1号証がそれを示す。)に記載された発明と同一であり、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができないから、本件実用新案登録は取り消されるべきである。 (5-1-1)甲号各証等 甲第1号証:特開平4-299904号公報 参考資料1:特開昭61-193972号公報 参考資料2:特開昭62-186709号公報 参考資料3:特開平2-308705号公報 上記甲第1号証には、運転席(操縦席1)の左右両側に前低後高状に傾斜するリヤフェンダ部(フェンダ一部3)を設け、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部(収容坑4内のステップ)を運転席ステップ(操縦ステップ2)に連接した水田作業機が記載されている。 上記参考資料1には、運転席(7)の左右両側に前低後高状に傾斜する後輪上方のカバー設け、該カバーの傾斜下端部側を側面視運転席前側にてステップ(床面15)に連設し、該カバーの傾斜上端側に水平状の足のせ部(後部床面35)を設けた水田作業機が記載されている。 上記参考資料2には、運転席(操縦座席13)の左右両側に前低後高状に傾斜する後輪上方のカバー(15)を設け、該カバーの傾斜下端部側を側面視運転席前側にてステップ台14に連設し、該カバー後端側に水平面15bを設けた水田作業機が記載されている。 上記参考資料3には、運転席(操縦席10)の左右両側に前低後高状に傾斜する後輪上方のカバー(傾斜面部1lb)を設け、該カバーの傾斜下端部側を側面視運転席前側にて主ステップ11に連設し、該カバー及び主ステップ11とは別体のステップ4に足を載せられる水平平面部4aを設けた水田作業機が記載されている。 (5-1-2)対比・判断 本件考案と、甲第1号証記載の発明とを対比すると、同甲号証記載の発明は、(a)「凹状に湾曲傾斜して立上るリャフェンダ部を形成し」た構成を有しておらず、両者を同一とすることはできない。また、参考資料1,2,3には、後輪上方のカバーの傾斜上端側に水平状の足のせ部を設けることが周知であることを示しているだけであって、上記(a)の構成を有していないから、本件考案と、甲第1号証記載の発明とを同一とすることはできない。 (5-2)申立て2の概要 訂正前の本件考案は、下記甲第1号証(又は甲第1号証の2、甲第1号証の3あるいは甲第1号証の4)に記載された考案、あるいは、甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に想到できた考案であるから、本件実用新案登録は実用新案法第3条の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである (5-2-1)甲号各証等 (1)甲第1号証:特開昭62-187669号公報 (2)甲第1号証の2:特開平2-308705号公報 (3)甲第1号証の3:特開昭61-193972号公報 (4)甲第1号証の4:実開昭62-142215号公報 (5)甲第2号証:昭和63年11月10日 株式会社農機春秋社発行の農機春秋,88/11の表紙、表紙裏頁及び奥付。 (6)参考資料1:実開昭57-158310号公報 (7)参考資料2:実開昭59-165261号公報 (8)参考資料3:実開昭58-113317号公報 甲第1号証には、運転席(操縦座席13)の左右両側に前低後高状に傾斜するリヤフェンダ部(27c)を設け、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側に運転席ステップ(ステップ27)に連設すると共に、リヤフェンダ部(27c)の傾斜面上に水平部を設けた水田作業車が記載されている。 甲第1号証の2には、上記(5-1-1)参考資料3に記載したとおりの考案が記載されている。 甲第1号証の3には、上記(5-1-1)参考資料1記載のとおりの考案が記載されている。 甲第1号証の4には、上記(2-4)(2)刊行物1記載のとおりの考案が記載されている。 甲第2号証には、運転席の左右側に前低後高状に傾斜するリヤフェンダ部を設け、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側を運転席ステップに連設すると共に、該リヤフェンダ部の傾斜上端側に平坦部を設けた水田作業機が記載されている。 参考資料1,3には、水田田植機において後輪の上方のカバーの前側が運転席の台座の前壁とほぼ同じ前後位置にあるものが記載されている。 参考資料2には、水田田植機においてフェンダーの外側を通ることのできるステップを形成したものが記載されている。 (5-2-2)対比・判断 本件考案と甲第1号証?甲第2号証記載の考案とを対比すると、本件考案が、運転席の左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい立上るリヤフェンダ部を形成とし、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連設しているのに対し、甲第1号証?甲第2号証記載の考案はこのような構成を有していない。 そして、本件考案は、上記構成により、上記「(2-4)独立特許要件の判断」の「(3)対比・判断」の項において述べたように、格別の効果を奏する。 したがって、本件考案は、甲第1号証?甲第1号証の4に記載された考案とすることはできず、また、参考資料1?3を参照しても、本件考案が甲第2号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に推考できたものとは認められない。 6.まとめ 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案の実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 水田作業機 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 運転席の左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部を形成し、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連設すると共に、リヤフェンダ部の傾斜上端側で側面視運転席後側に他方の足のせ部を水平上に設け、前記前後の足のせ部により作業機に対する苗等の補給用ステップを形成したことを特徴とする水田作業機。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、乗用型の田植機、移植機、施肥機又は播種機等の水田作業機に関するもので、さらに詳しくは、苗、肥料、種籾等の補給作業を小型の機種でも安全かつ確実に行なえるようにした水田作業機に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 水田作業機、例えば乗用田植機において、苗載台に苗を補給する際には、植付部を下降接地させたままの状態で、苗補給者(オペレータ)がステップに乗ったまま機体前部に設けた補助苗台上のマット苗をスクレーパ(苗載せヘラ)等を介し手で1条ずつ取出し、苗載台の傾斜上端部から苗載台上面に沿って滑落させるようにして供給しているが、機体の左右巾が狭い状態に制約されている4条植え等の小型のものでは左右の足のせ場を別々に設けて苗補給が楽に行なえるように配慮したものは提供されていない。ただ、苗補給時の足場用のスペースとして運転席の一側方に設けたものは実開平3-22611号公報等により既に公知である。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 しかし、上記従来のものは、苗補給時の足場用スペースが機体の片側にしかないため幅広の苗載台の全幅(全条)にわたって苗を補給するには不便であるうえ、苗補給時に不安定な足場で無理な姿勢を強いられる等の問題があり、安全かつ確実に苗補給を行なうことは困難であった。 【0004】 【課題を解決するための手段】 本考案に係る水田作業機は、上記のような実状に基づきなされたものであって、運転席の左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部を形成し、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連設すると共に、リヤフェンダ部の傾斜上端側で側面視運転席後側に他方の足のせ部を水平上に設け、前記前後の足のせ部により作業機に対する苗等の補給用ステップを形成したことを要旨とする。 【0005】 【作用】 補給苗を苗載台に移載する際には、後向きの状態で片足をリヤフェンダ部の傾斜下端部側に設けた一方の足のせ部に、他の足を後方且つ上方に向かう凹状に湾曲傾斜して立上ったリヤフェンダ部の傾斜上端側に設けた水平上の他方の足のせ部に楽に載せて苗補給作業を行なう。この姿勢により左右の足を前後の足のせ部に段違い状に載せて作業ができ、また、必要に応じて機体の左右両側に設けた足のせ部に足を載せ変えることができるので無理な姿勢を強いられることなく安定した姿勢で楽に苗補給ができる。 【0006】 【実施例】 本考案の構成を図面に示された一実施例により説明すれば、図面には、走行機体1の後方にフロート2、植付杆3、ドライブケース4及び前高後低状にかつ左右往復動自在に架設された苗載台5等からなる植付部6が昇降リンク7を介して昇降自在に連結してなる機体長の短い小型の乗用田植機が例示されている。8はエンジン、9は燃料タンク、10はステアリングコラム、11は前方へ向け起倒自在な運転席で、運転席11の右側(機体進行方向に対し、以下同じ)には油圧レバー12や感度調整レバー13等のレバー類が配置されている。14は機体フレーム15上を覆う覆い体で、この覆い体14は、ボンネット16の下方部分を覆う前部カバー部17、ボンネット16の左右両側の前部ステップ18aを連設した運転席ステップ部18、リヤカバー部19及びリヤカバー部19の外側方に位置して運転席ステップ18から後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部20を樹脂成形等により一枚板状に一体形成してなるもので、機体フレーム15にボルト等の緊締具(図示せず)を介して固定されている。21,22はペダル穴、23は運転席ステップ部18に設けたゴム板取付ベースである。 【0007】 ところで、前記左右のリヤフェンダ部20の前方傾斜下端部側には側面視で運転席前側に位置して夫々後方へ向け窪ませた一方の足のせ部24が運転席ステップ部18に連らなった状態で水平状に設けられており、また、リヤフェンダ部20の後方傾斜上端側には側面視で運転席後側に位置して他方の足のせ部25が水平状に設けられている。そして、これら前後の足のせ部24,25により苗載台5に対する段差状の苗補給用ステップ26が形成されている。また、リヤカバー部19の前部左右両側コーナー部にはアール状の湾曲部27が形成されており、この湾曲部27により前部側足のせ部24のスペースが拡大されると共に足の自由度が一層高められるようになっている。さらに、図4に示すように左右一方側(図示例では右側)の苗補給ステップ26と運転席11の間に位置するリヤカバー部19の上方膨出部19aの上面には前記油圧レバー12や感度調整レバー13等のガイド穴12a,13aを設け、運転席11に近接した片手操作し易い個所に操作レバー部28を位置させた構成となっている。尚、上記ガイド穴12a,13aはリヤカバー上方膨出部19aの上面を下方に向け絞り加工状に凹陥させて設けてあり、その内底部に水平状のレバーガイド部28aが形成されている(図6参照)。これによりレバーガイド部28aが運転席11より一段下方で水平状になっているので一層見易く、また、左右のリヤカバー上方膨出部19a間に運転席11の収納空間aが形成されており、運転席11及びその取付ブラケット11aの左右両側にリヤカバー上方膨出部19aが位置するようにしてデザイン効果を高め、かつリブ構成により強度を高めている。図中、符号29はリヤカバー取付部、30はフェンダ取付部で夫々ステー29a,30aを介し機体フレーム15に一体的に取付けられている。31はボンネット16の左右に装着した補助苗台、32はモニタパネル、33はパネルリヤカバーである。 【0008】 さて、植付作業中、苗載台5上のマット苗の残苗が少なくなった時には、機体を停止し、植付部6を下降接地させたまま、補助苗台31から苗載台5へ苗を移載して苗補給を行なう。この際、苗補給者Sは補助苗台31から苗を取出した後、図5図示のように後向きの状態で片足bをリヤフェンダ部20の傾斜下端部側に設けた一方の足のせ部24に、他の足cを後方且つ上方に向かう凹状に湾曲傾斜して立上ったリヤフェンダ部20の傾斜上端側に設けた水平状の他方の足のせ部25に楽に載せて苗補給作業を行なう。この姿勢により左右の足b,cを前後の足のせ部24,25に水平段違い状に載せて作業ができるので無理な立ち姿勢を強いられることなく幅広の苗載台5であっても安定した姿勢で楽にしかも確実に苗補給かできる。また、前部足のせ部24をリヤフェンダ部20の湾曲下端部側に位置させ運転席ステップ部18に連設させた状態で後方へ向け窪ませてあるので運転席ステップ部18のフロア有効面積が増大し苗補給作業並びに乗降が一層楽になるばかりでなく、運転時における足b,cの自由度が増し、その分疲労度を少なくすることができると共に、苗補給用ステップ26に足を載せた立ち姿勢では前後の足幅(歩幅)を大股に広げる必要がなく適度の幅となるので苗補給作業がし易くしかも身体のバランスがとり易くなる。また、リヤカバー部19の前部左右両側コーナー部に設けたアール状の湾曲部27により前部側足のせ部24のスペースが拡大され足の自由度が一層高められると共に起立姿勢、着座姿勢への身体の動きが楽にできる。尚、本考案は乗用田植機のみならず、施肥機や播種機等の水田作業機にも適用できる。 【0009】 【考案の効果】 本考案は、上記のように構成されているので、運転席ステップのフロア有効面積が増大し、とりわけ運転席回りに足場が形成されるので乗降並びに苗等の補給作業が一層楽になると共に、運転時における足の自由度が増し、その分小型の機種(運転席ステップのスペースが少ない)でも疲労度を少なくできる。また、苗等の補給時には片足をリヤフェンダの傾斜始端部側に設けた一方の足のせ部に、他の足を後方且つ上方に向かう凹状に湾曲傾斜して立上がったリヤフェンダ部の傾斜上端側に設けた水平上の他方の足のせ部に楽に載せることが出来、しかも左右の足を前後の足のせ部に段違い状で水平ににのせて作業ができるので無理な姿勢を強いられることなく安定した姿勢で苗等の補給作業を安全かつ確実に行なえる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案を装備した乗用田植機の側面図である。 【図2】 機体フレームにエンジン等の主要部を組付けた状態の側面図である。 【図3】 機体フレームにエンジン等の主要部を組付けた状態の平面図である。 【図4】 覆い体の平面図である。 【図5】 要部の作用説明図である。 【図6】 覆い体の断正面図である。 【図7】 運転席ステップ部の断正面図である。 【符号の説明】 11 運転席 18 運転席ステップ 20 リヤフェンダ部 24 一方の足のせ部 25 他方の足のせ部 【図面】 ![]() |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 実用新案登録第2535791号実用新案の明細書を本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として下記(1)のとおりに訂正し、誤記の訂正を目的として下記(2)ないし(7)のとおりに訂正し、明瞭でない記載の釈明を目的として下記(8)ないし(14)のとおりに訂正する。 (1)本件実用新案登録公報第1欄第2?6行の「左右両外側方に前低後高状に傾斜する……他方の足のせ部を設け、」とあるのを『左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部を形成し、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連接すると共に、リヤフェンダ部の傾斜上端側で側面視運転席後側に他方の足のせ部を水平状に設け、』と訂正する。 (2)本件実用新案登録公報第2欄第6行の「傾斜上端部からに」とあるのを『傾斜上端部から』と訂正する。 (3)本件実用新案登録公報第4欄下から4行の「大又に」とあるのを『大股に』と訂正する。 (4)本件実用新案登録公報第5欄第2行目の「共に」とあるのを『と共に』と訂正する。 (5)本件実用新案登録公報第5欄第14行の「無理は」とあるのを『無理な』と訂正する。 (6)本件実用新案登録公報の図1において、符号29を31に訂正する。 (7)本件実用新案登録公報の図5において、符号14に矢印付き引き出し線を加入すると共に、符号8を符号18に訂正する。 (8)本件実用新案登録公報の第1欄下から3?2行の「安全かつ」とあるのを『小型の機種でも安全かつ』と訂正する。 (9)本件実用新案登録公報の第3欄第9乃至13行の「左右両外側方に前低後高状に傾斜する……他方の足のせ部を設け、」とあるのを『左右両外側方に運転席ステップから後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部を形成し、該リヤフェンダ部の傾斜下端部側で側面視運転席前側に後方へ向け窪ませた一方の足のせ部を運転席ステップに連設すると共に、リヤフェンダ部の傾斜上端側で側面視運転席後側に他方の足のせ部を水平状に設け、』と訂正する。 (10)本件実用新案登録公報の第3欄下から4?1行目の「前方傾斜下端部側には夫々後方へ向け窪ませた一方の足のせ部24が運転席ステップ部18に連らなった状態で水平状に設けられており、また、リヤフェンダ部20の後方傾斜上端側に」とあるのを『前方傾斜下端部側には側面視で運転席前側に位置して夫々後方へ向け窪ませた一方の足のせ部24が運転席ステップ部18に連らなった状態で水平状に設けられており、また、リヤフェンダ部20の後方傾斜上端側には側面視で運転席後側に位置して』と訂正する。 (11)本件実用新案登録公報第3欄第18?19行目の「リヤフェンダ部の傾斜上端側に設けた他方の足のせ部に」とあるのを『後方且つ上方に向かう凹状に湾曲傾斜して立上ったリヤフェンダ部の傾斜上端側に設けた水平状の他方の足のせ部に楽に』と訂正する。 (12)本件実用新案登録公報第3欄第40乃至41行)の「前提後高状に傾斜する後輪リヤフェンダ部」とあるのを『運転席ステップ18から後方且つ上方に向かい凹状に湾曲傾斜して立上るリヤフェンダ部』と訂正する。 (13)本件実用新案登録公報第4欄第34?35行の「リャフェンダ部20の傾斜上端側に設けた他方の足のせ部25に」とあるのを『後方且つ上方に向かう凹状に湾曲傾斜して立上ったリヤフェンダ部20の傾斜上端側に設けた水平状の他方の足のせ部25に楽に』と訂正する。 (14)本件実用新案登録公報第5欄第13行目の「左右の足を前後の足のせ部に段違い状」とあるのを『片足をリヤフェンダ部の傾斜始端部側に設けた一方の足のせ部に、他の足を後方且つ上方に向かう凹状に湾曲傾斜して立上ったリヤフェンダ部の傾斜上端側に設けた水平状の他方の足のせ部に楽に載せることが出来、しかも左右の足を前後の足のせ部に段違い状で水平』と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-06-10 |
出願番号 | 実願平3-59222 |
審決分類 |
U
1
651・
161-
YA
(A01C)
U 1 651・ 121- YA (A01C) U 1 651・ 113- YA (A01C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 郡山 順 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
鈴木 寛治 木原 裕 |
登録日 | 1997-02-21 |
登録番号 | 実用登録第2535791号(U2535791) |
権利者 |
三菱農機株式会社 島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 |
考案の名称 | 水田作業機 |
代理人 | 北村 修 |
代理人 | 北村 修一郎 |