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審決分類 審判 全部申し立て   G01V
審判 全部申し立て   G01V
管理番号 1018562
異議申立番号 異議1999-71872  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-10 
確定日 2000-02-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2585129号「ファイバユニット」の請求項1ないし3に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2585129号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1 手続の経緯
本件実用新案登録第2585129号(平成3年10月11日出願、平成10年9月4日設定登録)について、申立人東レ株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間中に訂正請求がなされた。
2 訂正の適否について
(1)訂正の内容
被請求人が求める訂正事項は次のとおりである。
[訂正事項a]
実用新案請求の範囲を次のとおり訂正する。
「【請求項1】センサヘッド、投光用光ファイバ、受光用光ファイバからなる反射型ファイバユニットにおいて、少なくともセンサヘッドの対物側端が投光用光ファイバおよび受光用光ファイバを通すそれぞれ独立した複数の穴部を有し、該穴の深さが1mm?4mmであり、且つ、少なくともセンサヘッドの対物側端面で、接着剤により投光用光ファイバ、受光用光ファイバがセンサヘッドに固定されていることを特徴とする光ファイバユニット。
【請求項2】該複数の穴部がセンサヘッド本体と分離した部品からなり、ファイバユニット製作時に結合させることを特徴とする請求項1のファイバユニット。」
[訂正事項b]実用新案登録明細書【0005】を、
「【課題を解決するための手段】
本考案者は、鋭意検討した結果本考案に至った。
即ち本考案は、センサヘッド、投光用光ファイバ、受光用光ファイバからなる反射型ファイバユニットにおいて、少なくともセンサヘッドの対物側端が投光用光ファイバおよび受光用光ファイバを通すそれぞれ独立した複数の穴部を有し、該穴の深さがlmm?4mmであり、且つ、少なくともセンサヘッドの対物側端面で、接着剤により投光用光ファイバ、受光用光ファイバがセンサヘッドに固定されている光ファイバユニットであり、また、前記複数の穴部がセンサヘッド本体と分離した部品からなり、ファイバユニット製作時に結合させる光ファイバユニットである。」に訂正する。
[訂正事項c]同明細書【0008】を、
「該穴の深さはlmm?4mmである。4mmより大きくなると、高温高湿の条件下においたとき、光ファイバと接着剤やセンサヘッド材質との熱的挙動の差の影響が出てきて、光ファイバがヘッド端面から突き出したりする現象が起こることがあり問題である。深さの小さいほうは機械的に保持強度が保てればよいのであるが、センサヘッドの材質により最小値は異なるが通常1mm以上あることが好ましい。」に訂正する。
[訂正事項d]同明細書【0021】を、
「 【実施例4及び比較例2】
実施例1と同様のヘッドで穴部の深さを種々に変えたセンサヘッドについて試験を行った。
センサヘッドは、真鍮製で対物側端面の中心軸で対称に、直径1.05mm、穴の中心間距離1.2mmとした二つの穴をあけて穴部の深さをlmm、2mm、3mm、4mmの実施例4-1?4-4および5mm、7mm、10mmの比較例2-1、2-2、2-3のものを製作準備した。これらに夫々次の加工を行い、センサヘッドを製作した。即ち、ポリエチレンで外径2.2mmに被覆された直径1.0mmのプラスチック光ファイバコードの片端の被覆材を15mm剥ぎ取った投光用、受光用のプラスチック光ファイバ各一本をセンサヘッドに挿入して、エポキシ接着剤を充填して固定した全長2mのファイバユニットを製作した。センサヘッド端面は3μmの研磨仕上げをし、反対側端面はカミソリで切断した。(図2、2穴タイプ)製作直後と60℃、95%RHの雰囲気に200時間放置したものについて検出距離と端面の外観の光ファイバの突き出しの変化量を測定した。表5に測定結果を示す。」に訂正する。
[訂正事項e]同明細書【0022】を、
「200時間後も、穴部の深さがlmm、2mm、3mm、4mmの実施例4-1?4-4のものはヘッドの端面の突き出し量はないが、穴部の深さが5mm、7mm、10mmの比較例2-1、2-2、2-3のものはヘッドの端面の光ファイバの突き出し現象が見られる。」に訂正する。
[訂正事項f]同明細書【表5】の「実施例4-5」を「比較例2-1」に、「比較例2-1、2-2」を「比較例2-2、2-3」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、請求項1を削除し、訂正前の請求項2、3を訂正後の請求項1,2へ繰り上げるものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするもので、明細書に記載された事項の範囲内でなされ、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張また変更するものでない。
訂正事項b?fは、訂正後の実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合をとるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とし、明細書に記載された事項の範囲内でなされ、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張また変更するものでない。
(3)独立登録要件
訂正後の請求項1及び2に係る考案(以下、各々「本件考案1」及び「本件考案2」という。)は、訂正明細書の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】センサヘッド、投光用光ファイバ、受光用光ファイバからなる反射型ファイバユニットにおいて、少なくともセンサヘッドの対物側端が投光用光ファイバおよび受光用光ファイバを通すそれぞれ独立した複数の穴部を有し、該穴の深さが1mm?4mmであり、且つ、少なくともセンサヘッドの対物側端面で、接着剤により投光用光ファイバ、受光用光ファイバがセンサヘッドに固定されていることを特徴とする光ファイバユニット。
【請求項2】該複数の穴部がセンサヘッド本体と分離した部品からなり、ファイバユニット製作時に結合させることを特徴とする請求項1のファイバユニット。」
これに対して、取消理由通知に引用した引用例は次の引用刊行物1、引用証拠物2の1?2の3、引用証拠物3?5及び引用刊行物6である。
引用刊行物1:「小形光電スイッチISAシリーズ(アンプ内蔵形・ファイバ形)」の製品パンフレット(和泉電気株式会社、カタログNo.P424-3、’88(昭和63)11月現在)
引用証拠物2の1:「ファイバーユニット[アイデックコントロールズ向け]の仕様書(昭和63年2月23日、日星電気株式会社発行)の1及び2頁目
引用証拠物2の2:日星電気株式会社の図番60282の図面
引用証拠物2の3:日星電気株式会社の図番F-359の図面
引用証拠物3:「出荷試験規格(ファイバー出荷検査規格)」(昭和62年8月21日、和泉電気株式会社作成)
引用証拠物4:「輸出貿易管理令別表第1貨物に関する判定資料作成のご依頼」の書面(平成元年6月22日付け、和泉電気株式会社発、日星オプト(株)宛)
引用証拠物5:和泉電気株式会社鷹尾健作成の証明書
引用刊行物6:「光ファイバ応用技術集成」(1986年12月10日、日経技術図書株式会社発行)330?332頁及び338頁
この内、引用刊行物1(以下、「引用例1」という。)、引用証拠物2の1?2の3(以下、「引用例2」という。)、引用証拠物3(以下、「引用例3」という。)、引用刊行物6(以下、「引用例6」という。)には、以下に摘示する事項が開示なし記載されている。
引用例1(「小形光電スイッチISAシリーズ(アンプ内蔵形・ファイバ形)」の製品パンフレット)
ISAシリーズファイバ型光電スイッチに関し、型番IFU-DS31、IFU-DS32、IFU-DS33、IFU-DC31、IFU-DC32、IFU-DC33、IFU-DTI1、IFU-DT12、及びIFU-DT13の2芯の反射形ファイバユニットについて、その外形寸法図(写真、図面、ファイバ構造の図)が記載され(13?14頁)、2芯の光ファイバは、そのファイバ構造の図から、光ファイバ2本が互いに非接触の状態にあり、個々に位置規制されていること、反射型ファイバユニットは、センサヘッド、投光用光ファイバ、受光用光ファイバを備えるものであることが認められる。
引用例2(「ファイバーユニット〔アイデックコントロールズ向け〕の仕様書」、図番60282の図面;図番F-359の図面)
日星電気株式会社が昭和63年2月23日に発行し、和泉電気株式会社が昭和63年3月1日に承認したファイバーユニットの仕様書であり、
「2.構造」の表によれば、反射型ファイバユニット中に上記型番及び対応する図番が記載されている。例えば、その中の一つの型番IFU-DS31は図番60282の構造によることが認められる。
図番60282の図面には、部品名称の欄にIFU-DS31と記載され、反射型ファイバユニットIFU-DS31の2本の光ファイバーが図番F-359のコネクタに挿入される構造であることが認められる。
図番F-359の図面には、IFU-DS31、IFU-DC31のファイバユニットに使われるコネクタの図面であり、対物側端となる先端部には2つの穴部が形成されていること、その穴部の深さは、18.0-13.5(mm)から、4.5mmであることが認められる。
引用例3(「出荷試験規格(ファイバー出荷検査規格)」)
和泉電気株式会社が作成した出荷試験規格であり、「(4)各種ファイバー出荷(受入)基準」中の表のファイバー機種として、反射型ファイバーユニットのIFU-DS31、IFU-DC31等の型番が記載され、対応する目視検査として、工ポキシ充てんチェックが記載されている。
引用例6「光ファイバ応用技術集成」(1986年12月10日、日経技術図書株式会社発行)330?332頁及び338頁
FCコネクタ取付け工程図(332頁図53)が示され、接着剤によりファイバを固定することが開示され、また、多心コネクタの例として、5心テープ心線のコネクタが示され(338頁図65)、「高精度に位置決めされた微細孔が5個並んでいる。この孔に5本の心線を挿入し、接着剤で固定し、端面を研磨する。」(338頁10?12行)と記載されている。
(本件考案1について)
本件考案1は、「接着剤を使用し、従来の技術で製作されたセンサヘッドの場合、高温高湿の条件、例えば60℃、95%RHの雰囲気に長期間放置しておくと、物体がなくても光電スイッチが常に応答している現象、即ち漏れ光の現象が現れ問題となる」(本件明細書【0003】)という課題に関し、「60℃、95%RHの高温高湿の雰囲気下でセンサヘッドの対物側端面で接着剤が盛り上がり、接着剤の盛り上がり部分によって、隣の光ファイバヘの漏れ光となって、常に物体が在るが如く光電スイッチが応答している」(同【0004】)という知見に基づいて考案されたものであり、さらに、光ファイバが通る穴の深さが「4mmより大きくなると、高温高湿の条件下においたとき、光ファイバと接着剤やセンサヘッド材質との熱的挙動の差の影響が出てきて、光ファイバがヘッド端面から突き出したりする現象が起こることがあり問題である。深さの小さいほうは機械的に保持強度が保てればよいのであるが、センサヘッドの材質により最小値は異なるが通常1mm以上あることが好ましい。」(同【0008】)ことから、穴の深さをlmm?4mmに限定したものである。
これに対して、上記引用例1?3によれば、センサヘッド、投光用光ファイバ、受光用光ファイバからなる反射型ファイバユニットであって、センサヘッドの対物側端が投光用光ファイバおよび受光用光ファイバを通すそれぞれ独立した複数の穴部を有し、該穴の深さが4.5mmであり、且つ、少なくともセンサヘッドの対物側端面で、接着剤により投光用光ファイバ、受光用光ファイバがセンサヘッドに固定されている光ファイバユニットが開示されていることが認められ、引用例6には、一般的なコネクタの製造方法として接着剤によりファイバを複数の穴部に固定することが記載されているが、本件考案1の「該穴の深さがlmm?4mm」である点については、引用例1?3及び6に開示ないし記載されていない。
また、引用例1?3及び6は、本件考案1の上記課題及び課題解決手段を記載ないし開示するものではない。
そして、本件考案1は、「高温高湿下でも、センサヘッドの寸法安定性がよく、漏れ光がなく、信頼性の高いファイバユニットを提供」(同【0028】)できるという作用効果を奏することが認められる。
したがって、本件考案1は、引用例1?3により開示された考案とは認められず、また、本件考案1は、引用例1?3及び6に開示ないし記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に推考しうるものとはいえないから、実用新案登録出願の際に独立して実用新案登録を受けることができるものである。
(本件考案2について)
請求項2は、請求項1を引用して記載されており、本件考案2は、本件考案1を「該複数の穴部がセンサヘッド本体と分離した部品からなり、ファイバユニット製作時に結合させる」ように限定するもので、本件考案1の判断について述べた理由と同じ理由で実用新案登録出願の際に独立して実用新案登録を受けることができるものである
なお、以上のように、引用例1?3に記載された考案が、日本国内において公然知られた考案ないし公然実施された考案であるとして、加えて引用例6に記載された考案を考慮したとしても、本件考案1は、引用例1?3に開示された考案ではなく、また、本件考案1、2は、引用例1?3及び6に開示ないし記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認められないから、引用例1?3が開示する考案の公知ないし公然実施について判断するまでもなく、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号、以下「平成6年改正法」という。)附則9条2項の規定により準用され、同附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第3項で準用する平成6年改正法による改正前の特許法126条1項ただし書、2項及び3項の規定に適合するので、訂正を認める。
3 登録異議申立について
(1)異議申立の概要
申立人は、甲第1?6号証(取消理由に引用した引用刊行物1?引用刊行物6に同じ。)を提出して、本件考案1は、甲第1?5号証で証明したとおり、本件出願前に公然実施され、公然知られた考案であり、また、本件出願前に公然実施され、公然知られた考案及び甲第1号証、甲第6号証刊行物に記載されていた考案に基づいて、当業者がきわめて容易になし得た考案でもあり、また、本件考案2は、本件出願前に公然実施され、公然知られた考案及び甲第1号証、甲第6号証刊行物に記載されていた考案から、当業者がきわめて容易になし得た考案であるから、本件考案1及び2の実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものであると主張している。
(2)判断
本件考案1及び2は、訂正明細書の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められる。上記2(3)で述べたように、本件考案1及び2は、実用新案登録出願の際に実用新案登録を受けることができるものであるから、本件考案1及び2を取り消すことはできない。
請求人は、個々のファイバを挿入する穴部は、個々のファイバの位置決め機能を本来的に有するもので、穴部深さは位置決め機能のために必要最小限の深さがあれば足りるものであるから、この穴部の本来的機能の観点からして穴部深さ1?4mmは、実験による最適化により適宜決められる事項にすぎないし、また、4.5mmに対し1?4mmという範囲に効果上の臨界的差異があるとは考えられないと主張している。
しかしながら、本件考案1は、ファイバの漏れ光による常時応答という課題に関し、高温高湿の雰囲気下でセンサヘッドの対物側側面で接着剤が盛り上がること、光ファイバがヘッド端面から突き出ることを防止するために穴部深さ1?4mmとしたもので、甲各号証には、この課題及び課題解決手段を開示ないし示唆するところはなく、穴部深さについては、位置決め機能のためには深くしておく方が安定するとも考えられ、上記課題の開示がない状態で穴部深さを1?4mmに設定することが適宜決められる事項とはいえない。また、上記課題を解決するという作用効果を考慮すると、臨界的差異がないとはいえない。したがって、請求人の主張は採用できない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則9条7項の規定に基づく特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ファイバユニット
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 センサヘッド、投光用光ファイバ、受光用光ファイバからなる反射型ファイバユニットにおいて、少なくともセンサヘッドの対物側端が投光用光ファイバおよび受光用光ファイバを通すそれぞれ独立した複数の穴部を有し、該穴の深さが1mm?4mmであり、且つ、少なくともセンサヘッドの対物側端面で、接着剤により投光用光ファイバ、受光用光ファイバがセンサヘッドに固定されていることを特徴とする光ファイバユニット。
【請求項2】 該複数の穴部がセンサヘッド本体と分離した部品からなり、ファイバユニット製作時に結合させることを特徴とする請求項1のファイバユニット。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、光ファイバ式光電スイッチなど、光により物体の有無あるいは大きさなどを検出する反射型ファイバユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ファイバ式光電スイッチの反射型ファイバユニットのセンサヘッドの構造は、同一径の投光用光ファイバと受光用光ファイバを1本ずつ使用する場合に、光ファイバの直径より僅かに大きい径を半径とする穴をセンサヘッドの対物側端面の中心軸上にあけて、光ファイバを挿入した後、接着剤で投光用光ファイバと受光用光ファイバを固定するものや、挿入する光ファイバの直径より僅かに大きい径を直径とする二つの円を接線で結んだ形状に穴を空け、光ファイバを挿入した後、接着剤で投光用光ファイバと受光用光ファイバを固定するものなどがあった。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、接着剤を使用し、従来の技術で製作されたセンサヘッドの場合、高温高湿の条件、例えば60℃、95%RHの雰囲気に長期間放置しておくと、物体がなくても光電スイッチが常に応答している現象、即ち漏れ光の現象が現れ問題となることがあった。
【0004】
原因を調査すると60℃、95%RHの高温高湿の雰囲気下でセンサヘッドの対物側端面で接着剤が盛り上がり、接着剤の盛り上がり部分によって、隣の光ファイバヘの漏れ光となって、常に物体が在るが如く光電スイッチが応答していることが分かった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案者は、鋭意検討した結果本考案に至った。
即ち本考案は、センサヘッド、投光用光ファイバ、受光用光ファイバからなる反射型ファイバユニットにおいて、少なくともセンサヘッドの対物側端が投光用光ファイバおよび受光用光ファイバを通すそれぞれ独立した複数の穴部を有し、該穴の深さが1mm?4mmであり、且つ、少なくともセンサヘッドの対物側端面で、接着剤により投光用光ファイバ、受光用光ファイバがセンサヘッドに固定されている光ファイバユニットであり、また、前記複数の穴部がセンサヘッド本体と分離した部品からなり、ファイバユニット製作時に結合させる光ファイバユニットである。
【0006】
該複数の穴部はセンサヘッド本体と一体でもよいし、センサヘッド本体と分離した部品からなり、ファイバユニット製作時に結合させたものでもよい。単芯の光ファイバコードを2本使用する場合は、該複数の穴部が一体となったセンサヘッドで製作できるが、2芯の光ファイバコードを使用する場合は2本の光ファイバコードが一体となっているため、2個の穴に同時に光ファイバを通すことは困難である。そのため、該複数の穴部がセンサヘッド本体と分離した部品からなるセンサヘッドを用いるのがベストである。2芯の光ファイバコードの先端部をヘッド本体に通した後、上記の分離した部品を被せて挿入すれば容易にファイバコードが製作できる。3芯以上の光ファイバコードの場合も該複数の穴部がセンサヘッド本体と分離した部品からなるセンサヘッドを用いることが効果的である。
【0007】
センサヘッドの材質は特に限定しないが真鍮、ステンレス、アルミニウム合金、鉄などの金属、PBT、ナイロン、POM、PC、変性PPO、PSF、ポリアリレート、PPS、PP、ABS、PTFEなどの耐熱性プラスチック等が使用できる。
該穴の内径は光ファイバの外径より0.02?0.2mmだけ大きいのが好ましい。0.02mmより、小さいと実質的にファイバの挿入がしにくい。0.2mmより大きいと内部に含まれた接着剤が滲み出してきて問題がおこることがある。
【0008】
該穴の深さは1mm?4mmである。4mmより大きくなると、高温高湿の条件下においたとき、光ファイバと接着剤やセンサヘッド材質との熱的挙動の差の影響が出てきて、光ファイバがヘッド端面から突き出したりする現象が起こることがあり問題である。深さの小さいほうは機械的に保持強度が保てればよいのであるが、センサヘッドの材質により最小値は異なるが通常1mm以上あることが好ましい。
【0009】
該複数の穴部の個数は、例えば投光用光ファイバ1本、受光用光ファイバ1本の場合は2個である。投光用光ファイバ2本、受光用光ファイバ2本の場合は、それぞれ独立させて4個である。あるいは中心部の受光用の大きな穴が1個と、その周辺に取り囲んだ投光用の小さな独立した穴が複数個であってもよい。
穴部の個数の組み合わせはこれに限定されるものではない。
【0010】
光ファイバの材質に特に限定はないが、芯がポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの材質からなるプラスチック光ファイバがよく使われる。
ファイバの径は特に限定はないが、0.25mmφ、0.5mmφ、0.75mmφ、1.0mmφなどのファイバがよく使用される。
【0011】
【実施例】
以下実施例を用いて更に詳細に説明する。
【0012】
【実施例1】
センサヘッドは、真鍮製で対物側端面の中心軸で対称に、直径1.05mm、深さ2mmで穴の中心間距離1.2mmとした二つの穴をあけた先端部品と、直径2.3mmの1つの穴のあいたセンサヘッド本体からなるセンサヘッド部品を準備した。センサヘッド本体にまず、ポリエチレンで外径2.2mmに被覆された直径1.0mmの2芯のプラスチック光ファイバコード(旭化成製TC1000W)の片端の被覆材を15mm▲剥▼ぎ取った投光用、受光用のプラスチック光ファイバ各一本を挿入して、エポキシ接着剤を充▲填▼して、次に先端部品の2つの穴にプラスチック光ファイバを挿入して、エポキシ接着剤により固定した全長2mのファイバユニットを製作した。センサヘッド端面は3μmの研磨仕上げをし、反対側端面はカミソリで切断した。(図1、2穴タイプ)
製作直後と60℃、95%RHの雰囲気に200時間放置したものについて検出距離と端面の外観の変化量を測定した。表1に測定結果を示す。
【0013】
検出距離の測定は、アンプユニットにオムロン製E3XR-CE4T(電源電圧12V)、検出物体に30mm×30mmの白画用紙を使用した。検出距離は、アンプユニットの感度を最大にしてファイバユニットを検出物体から徐々に離していき、アンプユニットの信号がオンからオフ又はオフからオンになったところがら検出物体までの距離を読み取った。端面の外観は、倍率30倍の光学顕微鏡で主として接着剤の盛り上がり量を観察した。
【0014】
200時間後も、ヘッドの端面に変化は無く、検出距離も変化していない。
【0015】
【実施例2】
次に、真鍮製で対物側端面の中心軸で対称に、直径1.05mm、深さ4mmで穴の中心間距離1.2mmとした二つの穴を空けて製作した。これにポリエチレンで外径2.2mmに被覆された直径1.0mmのプラスチック光ファイバコード(旭化成製TC1000)の片端の被覆材を15mm▲剥▼ぎ取った投光用、受光用のプラスチック光ファイバ各一本をセンサヘッドに挿入して、エポキシ接着剤を充▲填▼して固定した全長2mのファイバユニットを製作した。センサヘッド端面は3μmの研磨仕上げをし、反対側端面はカミソリで切断した。(図2、2穴タイプ)
製作直後と60℃、95%RHの雰囲気に200時間放置したものについて検出距離と端面の外観の変化量を測定した。表2に測定結果を示す。
【0016】
200時間後も、ヘッドの端面に変化は無く、検出距離も変化していない。
【0017】
【実施例3】
センサヘッドは、真鍮製で対物側端面の中心軸で対称に、直径0.60mm、深さ3mmで穴の中心間距離0.7mmとした四つの穴をあけて製作した。これに、ポリエチレンで外径1.0mmに被覆された直径0.5mmのプラスチック光ファイバコードの片端の被覆材を約15mm▲剥▼ぎ取ったプラスチック光ファイバ2本ずつを投光用、受光用ファイバとして、センサヘッドの4つの穴に夫々1つおきに挿入して、エポキシ接着剤を充▲填▼して固定した全長2mのファイバユニットを製作した。センサヘッド端面は3μmの研磨仕上げをし、反対側端面はカミソリで切断した。(図2、4穴タイプ)
製作直後と60℃、95%RHの雰囲気に200時間放置したものについて検出距離と端面の外観の変化量を測定した。表3に測定結果を示す。
【0018】
200時間後も、ヘッドの端面に変化は無く、検出距離も変化していない。
【0019】
【比較例1】
センサヘッドは、真鍮製で対物側端面の中心軸上に、直径2.3mm、深さ4mmの穴を空けて製作した。これにポリエチレンで外径2.2mmに被覆された直径1.0mmのプラスチック光ファイバコードの片端の被覆材を約15mm▲剥▼ぎ取った投光用、受光用のプラスチック光ファイバ各1本をセンサヘッドに挿入して、エポキシ接着剤を充填して固定した全長2mのファイバユニットを製作した。センサヘッド端面は3μmの研磨仕上げをし、反対側端面はカミソリで切断した。(図3、1穴タイプ)
製作直後と60℃、95%RHの雰囲気に200時間放置したものについて検出距離と端面の外観の変化量を測定した。表4に測定結果を示す。
【0020】
200時間後、接着剤の盛り上がり量は、0.15mm有り、アンプユニットが常に応答した状態となり検出距離は測定できなかった。
【0021】
【実施例4及び比較例2】
実施例1と同様のヘッドで穴部の深さを種々に変えたセンサヘッドについて試験を行った。
センサヘッドは、真鍮製で対物側端面の中心軸で対称に、直径1.05mm、穴の中心間距離1.2mmとした二つの穴をあけて穴部の深さを1mm、2mm、3mm、4mmの実施例4-1?4-4および5mm、7mm、10mmの比較例2-1、2-2、2-3のものを製作準備した。これらに夫々次の加工を行い、センサヘッドを製作した。即ち、ポリエチレンで外径2.2mmに被覆された直径1.0mmのプラスチック光ファイバコードの片端の被覆材を15mm▲剥▼ぎ取った投光用、受光用のプラスチック光ファイバ各一本をセンサヘッドに挿入して、エポキシ接着剤を充▲填▼して固定した全長2mのファイバユニットを製作した。センサヘッド端面は3μmの研磨仕上げをし、反対側端面はカミソリで切断した。(図2、2穴タイプ)製作直後と60℃、95%RHの雰囲気に200時間放置したものについて検出距離と端面の外観の光ファイバの突き出しの変化量を測定した。表5に測定結果を示す。
【0022】
200時間後も、穴部の深さが1mm、2mm、3mm、4mmの実施例4-1?4-4のものはヘッドの端面の突き出し量はないが、穴部の深さが5mm、7mm、10mmの比較例2-1、2-2、2-3のものはヘッドの端面の光ファイバの突き出し現象が見られる。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
【表4】

【0027】
【表5】

【0028】
【考案の効果】
高温高湿下でも、センサヘッドの寸法安定性がよく、漏れ光がなく、信頼性の高いファイバユニットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案のファイバユニット、 (a);先端部部品分割型の一例
(b);符号4、先端部部品の断面図
【図2】
本考案のファイバユニットの一例(a);センサーヘッド一体型、2穴例
(b);センサーヘッド一体型、先端部
部品の断面図
【図3】
比較例;従来のファイバユニット例
(a);センサーヘッド一体型で光ファイバの通し穴が1穴の例(正面)
(b);センサーヘッド一体型で光ファイバの通し穴が1穴の例(正面)
【図4】
検出距離測定系の概略図
【符号の説明】
1 光ファイバコード
2 光ファイバ
3 センサヘッド
4 部品分割型の対物側部品
5 従来のセンサヘッドの一例
6 従来のセンサヘッドの一例
7 ファイバユニット
8 アンプユニット
9 検出物体
訂正の要旨 訂正の要旨
[訂正事項a]
実用新案登録請求の範囲の記載を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、次のとおり訂正する。
「【請求項1】センサヘッド、投光用光ファイバ、受光用光ファイバからなる反射型ファイバユニットにおいて、少なくともセンサヘッドの対物側端が投光用光ファイバおよび受光用光ファイバを通すそれぞれ独立した複数の穴部を有し、該穴の深さが1mm?4mmであり、且つ、少なくともセンサヘッドの対物側端面で、接着剤により投光用光ファイバ、受光用光ファイバがセンサヘッドに固定されていることを特徴とする光ファイバユニット。
【請求項2】該複数の穴部がセンサヘッド本体と分離した部品からなり、ファイバユニット製作時に結合させることを特徴とする請求項1のファイバユニット。」
[訂正事項b]実用新案登録明細書【0005】を、明瞭でない記載の釈明を目的にして、
「【課題を解決するための手段】
本考案者は、鋭意検討した結果本考案に至った。
即ち本考案は、センサヘッド、投光用光ファイバ、受光用光ファイバからなる反射型ファイバユニットにおいて、少なくともセンサヘッドの対物側端が投光用光ファイバおよび受光用光ファイバを通すそれぞれ独立した複数の穴部を有し、該穴の深さがlmm?4mmであり、且つ、少なくともセンサヘッドの対物側端面で、接着剤により投光用光ファイバ、受光用光ファイバがセンサヘッドに固定されている光ファイバユニットであり、また、前記複数の穴部がセンサヘッド本体と分離した部品からなり、ファイバユニット製作時に結合させる光ファイバユニットである。」に訂正する。
[訂正事項c]同明細書【0008】を、明瞭でない記載の釈明を目的にして、
「該穴の深さはlmm?4mmである。4mmより大きくなると、高温高湿の条件下においたとき、光ファイバと接着剤やセンサヘッド材質との熱的挙動の差の影響が出てきて、光ファイバがヘッド端面から突き出したりする現象が起こることがあり問題である。深さの小さいほうは機械的に保持強度が保てればよいのであるが、センサヘッドの材質により最小値は異なるが通常1mm以上あることが好ましい。」に訂正する。
[訂正事項d]同明細書【0021】を、明瞭でない記載の釈明を目的にして、
「 【実施例4及び比較例2】
実施例1と同様のヘッドで穴部の深さを種々に変えたセンサヘッドについて試験を行った。
センサヘッドは、真鍮製で対物側端面の中心軸で対称に、直径1.05mm、穴の中心間距離1.2mmとした二つの穴をあけて穴部の深さを1mm、2mm、3mm、4mmの実施例4-1?4-4および5mm、7mm、10mmの比較例2-1、2-2、2-3のものを製作準備した。これらに夫々次の加工を行い、センサヘッドを製作した。即ち、ポリエチレンで外径2.2mmに被覆された直径1.0mmのプラスチック光ファイバコードの片端の被覆材を15mm剥ぎ取った投光用、受光用のプラスチック光ファイバ各一本をセンサヘッドに挿入して、エポキシ接着剤を充填して固定した全長2mのファイバユニットを製作した。センサヘッド端面は3μmの研磨仕上げをし、反対側端面はカミソリで切断した。(図2、2穴タイプ)製作直後と60℃、95%RHの雰囲気に200時間放置したものについて検出距離と端面の外観の光ファイバの突き出しの変化量を測定した。表5に測定結果を示す。」に訂正する。
[訂正事項e]同明細書【0022】を、明瞭でない記載の釈明を目的にして、
「200時間後も、穴部の深さが1mm、2mm、3mm、4mmの実施例4-1?4-4のものはヘッドの端面の突き出し量はないが、穴部の深さが5mm、7mm、10mmの比較例2-1、2-2、2-3のものはヘッドの端面の光ファイバの突き出し現象が見られる。」に訂正する。
[訂正事項f]明瞭でない記載の釈明を目的にして、同明細書【表5】の「実施例4-5」を「比較例2-1」に、「比較例2-1、2-2」を「比較例2-2、2-3」と訂正する。
異議決定日 1999-12-17 
出願番号 実願平3-82704 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (G01V)
U 1 651・ 113- YA (G01V)
最終処分 維持    
前審関与審査官 音頭 圭  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 橋場 健治
松本 邦夫
登録日 1998-09-04 
登録番号 実用登録第2585129号(U2585129) 
権利者 旭化成工業株式会社
大阪府大阪市北区堂島浜1丁目2番6号
考案の名称 ファイバユニット  
代理人 鳴井 義夫  
代理人 清水 猛  
代理人 清水 猛  
代理人 伊藤 穣  
代理人 武井 英夫  
代理人 伊藤 穣  
代理人 鳴井 義夫  
代理人 武井 英夫  

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