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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B65D
管理番号 1018573
判定請求番号 判定2000-60016  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-01-26 
種別 判定 
判定請求日 2000-01-28 
確定日 2000-05-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第2053596号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「「袋物類の提手部材」」は、登録第2053596号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求は、イ号図面並びにその説明書に示す「袋物類の提手部材」は、請求人所有の実用新案登録第2053596号の請求項1ないし3に係る考案の技術的範囲に属する、との判定を求めたものである。

2.被請求人の主張
被請求人の主張は、概略以下のとおりである。
i)イ号図面並びにその説明書に示す「袋物類の提手部材」は、実用新案登録第2053596号の請求項1ないし3に係る考案の技術的範囲に属しない。
ii)判定請求の必要性は認めない。

3.当審の判断
(1)被請求人の主張について
被請求人は、イ号図面並びにその説明書に示す「袋物類の提手部材」(以下、「イ号物件」という。)は、実用新案登録第2053596号の請求項1ないし3に係る考案とは明らかに異なるものであり、その技術的範囲に属しないことは誰が見ても明白であり、判定請求の必要性が認められないと主張しているが、少なくとも請求人は、イ号物件は、請求人所有の実用新案登録第2053596号の請求項1ないし3に係る考案の技術的範囲に属すると判断して、判定請求に及んだものと認められるのであり、上記の被請求人の主張をもって、本件判定請求の必要性がないものとすることはできない。
また、被請求人は、答弁書において、同人が実際に販売している「袋物類の提手部材」は、判定請求書で説明されたイ号物件とは異なるものであるとして、乙第12号証(特開平10-201519号公報)及び乙第15号証(実際の製品)とを提出し、実用新案登録第2053596号の考案との違いを主張しているが、同時に、請求人の提出したイ号図面並びにその説明書に示す「袋物類の提手部材」について、実用新案登録第2053596号の請求項1ないし3に係る考案の技術的範囲に属しないとの主張もしているので、本件判定請求においては、イ号図面並びにその説明書に示す「袋物類の提手部材」について判定を行うのが妥当と認める。

(2)本件考案
本件実用新案登録第2053596号の請求項1ないし3に係る考案(以下、それぞれ「本件考案1」、「本件考案2」および「本件考案3」という。)は、登録された明細書及び図面の記載からみて、それぞれ、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし3に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
A.袋物類1の開口に対向した口縁部2に夫々1本ずつ取り付けられ、2本1組で提手を構成する提手部材であって、
B.手に提げるため逆U字形に曲げられる細長いバンド部10と、口縁部を内外から挟むためにバンド部の両端部にそれぞれ設けられた各一対の取付片20、30並びに口縁部2を挟んだ状態で両取付片20、30を結合するため取付片20、30に設けられた結合手段40と、
C.内側に位置する取付片20の内側面に内方に突出して設けられた2重の開口防止手段50とからなり、
D.該開口防止手段50は、前記突出して設けられたその基部60の上面の一側に片寄って設けられた係合受部51と、他の係合受部51と係脱可能なように前記基部上の係合受部51と隣接した位置に突出して設けられた係合突部52とを有し、
E.これら係合受部51と係合突部52とをバンド部10の両端の取付片20、20に対称に配置した
F.ことを特徴とする袋物類の提手部材。
【請求項2】
開口防止手段50は、取付片20の内側面に突出して設けられた中空の基部を有し、該基部上よりさらに突出して設けられた係合突部52と、中心軸を挟み該突部52を隣接する位置で中空内部61へ達するように形成された係合受部51とからなる請求項第1項記載の袋物類の提手部材。
【請求項3】
開口防止手段は50は、1個の基部60に設けられた係合受部51とそれに隣接した係合突部52が相手側の係合突部52及び係合受部51に略同一の箇所で相互に係脱する2重構造を有する請求項第1項記載の袋物類の提手部材。」
(A?Fの記号は便宜上付したものである。)

(3)イ号物件
これに対して、イ号物件の構成は、上記本件考案1の分節に即して示すと、以下のとおりのものである。
a.袋物類1Aの開口に対向した口縁部2Aに夫々1本ずつ取り付けられ、2本1組で提手を構成する提手部材であって、
b.手に提げるため逆U字形に曲げられる細長バンド部10Aと、袋物類1Aの口縁部2Aを内外から挟むためにバンド部10Aの両端部に夫々設けられた各一対の取付片20A、30Aと、袋物類1Aの口縁部2Aを挟んだ状態で両取付片20A、30Aを結合するために両取付片20A、30Aに設けられた結合子42Aと、この結合子42Aを嵌合させる結合孔41Aからなる結合手段40Aと、
c.袋物類1Aの内側に位置する取付片20Aの内側面に内方へ突出して設けられた「2重の開口防止手段50A」とからなり、
d.「2重の開口防止手段50A」は、取付片20Aより突出して設けられた円筒状の基部60Aと、この基部60Aの上面の直径方向に形成された略扇形の空間である2個の係合受部51A、51Aと、対面する取付片20A上の他の係合受部51A、51Aと係脱可能なように、前記基部60Aに設けた係合受部51A、51Aと隣接した位置であって、直径方向に設けられた略四角形の2個の係合突部52A、52Aとで形成されており、
e.これらの係合受部51A、51Aと係合突部52A、52Aとをバンド部10Aの両端の取付片20A、20Aに配置した
f.袋物類の提手部材。
この提手部材を袋物類の口縁部に取り付け、この口縁部を閉止する際は、2枚の取付片20A、20A上の「2重の開口防止手段50A」を接近させ、係合させる。
この係合状態は、係合突部52A、52Aが互いに相手の係合受部51A、51Aに押込まれて4個の係合突部52A同士が互いに押し合うことによって係合力を強くするように作用するようになっている。

(4)対比・判断
まずイ号物件の構成が本件考案1の構成要件A?Fを充足するか否かについて検討する。
[構成要件A、C、Fについて]
イ号物件の構成要件a、c、fは、本件考案1の構成要件A、C、Fと文言上一致しており、これを充足する。
[構成要件Bについて]
本件考案1の「口縁部」は、袋物類の口縁部であることは明らかであり、本件考案1の「結合手段40」は、明細書に(実施例)として「取付片20、30の一方に形成された貫通孔状の結合孔41と、取付片の他方から該結合孔41へ向かって突出するように設けられた結合子42とからなり」と記載されているように、結合子とこの結合子を嵌合させる結合孔からなるものを含んでいるので、イ号物件の構成要件bは本件考案1の構成要件Bを充足する。
[構成要件Dについて]
本件考案1において「2重の開口防止手段50」は、「基部60の上面の一側に片寄って設けられた係合受部51と、他の係合受部51と係脱可能なように前記基部上の係合受部51と隣接した位置に突出して設けられた係合突部52とを有し」ている、すなわち、基部上面を2分して、その一方に係合受部、他方に係合突部が設けられているのに対し、イ号物件において「2重の開口防止手段50A」は、「基部60Aの上面の直径方向に形成された略扇形の空間である2個の係合受部51A、51Aと、対面する取付片20A上の他の係合受部51A、51Aと係脱可能なように、前記基部60Aに設けた係合受部51A、51Aと隣接した位置であって、直径方向に設けられた略四角形の2個の係合突部52A、52Aと」で形成されている、すなわち、基部上面を4分して、略扇形の2個の係合受部及び略四角形の2個の係合突部がそれぞれ直径方向に配されているのであって、上記各2個の係合受部及び係合突部は直径方向に配される以上、本件考案1のように基部上面の一側に片寄って配置されるということはあり得ない。
したがって、イ号物件の構成要件dは、本件考案1の構成要件Dを充足しない。
[構成要件Eについて]
本件考案1において、係合受部51と係合突部52とをバンド部10の両端の取付片20、20に「対称に配置」しているのに対し、イ号物件は、係合受部51A、51Aと係合突部52A、52Aとを「対称に配置」とは明記していないが、本件考案1でいう「対称に配置」は、明細書の作用効果に関する記載および図面の記載を参酌すれば、バンドの中心について点対称に配置されていることの意味と解される。そして、イ号図面の記載も、バンド部の両端の取付片における2個ずつの係合突部と係合受部が、バンドの中心について点対称に配置されている態様を示している。
したがって、イ号物件の構成要件eは、本件考案1の構成要件Eを充足する。
次に上記において充足しないと判断したイ号物件の構成要件dと本件考案1の構成要件Dが均等であるか否かについて検討する。
本件考案1は、バンドの両端の取付片に設けられた各基部の上面に、係合受部と係合突部をともに配備し、夫々が対向する係合突部と係合受部に係合することにより2重の開口防止手段となすという、従来の提げ手部材にはなかった構成により、明細書に記載の効果を奏するものであり、この点で、構成要件Dは、本件考案1の本質的部分である。
そして、本件考案1の本質的部分である構成要件Dをイ号物件の構成要件dが充足していない、すなわち相違している以上、均等を判断するための他の要件を検討するまでもなく、イ号物件の構成が本件考案1の構成と均等なものであるということはできない。
したがって、イ号物件が本件考案1の技術的範囲に属するということはできない。
また、本件考案2および本件考案3も上記の構成要件Dを具備するものである以上、本件考案1についてと同様の理由によって、イ号物件が、本件考案2及び本件考案3の技術的範囲に属するということもできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件考案1、本件考案2および本件考案3の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2000-05-10 
出願番号 実願平1-136695 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (B65D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 岡田 幸夫鳥居 稔  
特許庁審判長 佐藤 雪枝
特許庁審判官 鈴木 美知子
船越 巧子
登録日 1995-03-06 
登録番号 実用新案登録第2053596号(U2053596) 
考案の名称 袋物類の提手部材  
代理人 斎下 和彦  
代理人 久保 司  
代理人 野口 賢照  
代理人 小川 信一  

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