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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) E04D
管理番号 1018574
判定請求番号 判定2000-60002  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-01-26 
種別 判定 
判定請求日 2000-01-12 
確定日 2000-06-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第1977047号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「棟換気具」は、登録第1977047号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び被請求人の答弁の趣旨

判定請求人の請求の趣旨は「イ号図面並びにその説明書に示す物品は、実用新案登録第1977047号の技術的範囲に属しない、との判定を求める。」にあり、被請求人の答弁の趣旨は「イ号図面並びにその説明書に示す物品は、実用新案登録第1977047号の技術的範囲に属する、との判定を求める。」にある。

第2 実用新案登録第1977047号の実用新案登録請求の範囲

実用新案登録第1977047号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案(以下、本件考案という。)は、次のとおりである。
「(1)長手方向中央に柔軟屈曲部を有する表板の下面の長手方向両側に、取付板を複数の補強板を介して上記表板と間隔を保ってほぼ平行状態に配設し、各補強板には適当間隔で通気孔を穿設してなることを特徴とする棟用通気性瓦棧。」
これを分説すると、
A 長手方向中央に柔軟屈曲部を有する表板の
B (表板の)下面の長手方向両側に、取付板を複数の補強板を介して上記表板と間隔を保ってほぼ平行状態に配設し、
C 各補強板には適当間隔で通気孔を穿設してなること
D を特徴とする棟用通気性瓦棧
となる(以下、本件考案の構成要件AないしDという。)。

第3 イ号物品の特定

イ号物品は、判定請求書に添付されたイ号図面及び判定請求書3頁1行ないし4頁末行に記載された「イ号図面の説明」に記載された事項によって特定される下記のとおりのもの(イ号図面は、添付図面を参照のこと。)であることに争いはない。

イ号図面(1)は棟換気具の縦断正面図、(2)は斜視図、(3)は底面図である。
イ号図面の棟換気具1は、左右1対の主板6,6からなる主板部2と、左右1対の通気コア3,3と、前後の側壁体4,4と、左右1対の風除体5,5から構成されている。
前記主板6,6は、イ号図面(2)に示すように、幅約5cm、長さ約130cmの1対を並列状に突合わせて、イ号図面(1)に示すように、並列幅中央部に間隙6Aを開けて上面に連結板(例えばアルミ板、粘着テープ)7を接着する。符号12は主板6の側部付近に設けた釘孔である。
正面図における左右主板6,6の上面左右両側縁部に、内外1対の突条8,8が長手方向に沿って形成されている。該1対の突条8,8間には仮想線10で示す背高調節具(最上部の瓦の上端部を支持する)が配設される。該突条8,8は主板6の長手方向の屈曲を防止する補強材であると同時に、施工後において主板上の粘土、シックイなどの滑落を防止する。
前記通気コア3,3は、イ号図面(2)の斜視図に示されているように、上板3Aと下板3Bの間に、多数の区画壁3Cを介して多数の通気孔11が、主板6,6の横幅方向を向き、長手方向に並列状に形成されている。正面視において通気コア3,3の上板3Aと下板3Bの左右端面は同一垂直面にあり、左右通気コア3,3の対向端面においては、区画壁3Cを、上が長く下を短く斜めに裁断することによって、上板3Aと下板3Bの長さは異ならせてある。
前記通気コア3の金型は、通気孔11の横並び幅が広くなるほど高価になる。
前記側壁体4,4は、独立気泡の発泡樹脂ブロックから形成され、イ号図面(2)、(3)に示されているように、主板6,6の長手方向の両端下縁部に、左右通気コア3,3の前後端面に当接して接着されている。
これによって、正面における左右通気コア3,3の対向面間の隙間は、前後端部において側壁体4,4により閉塞されている。
前記1対の風除体5は、イ号図面(1)、(2)に示されているように、下板5Aと側板5Bとで正面視略L字形に形成され、主板6の長手方向に設けられている。該側板5Bの高さは、前記通気コア3の高さ以上(15mm)に設定されており、下板5Aの基部は通気コア3の下面端縁部に接着されている。
イ号図面(4)は、棟換気具1の使用状態を示す。建物の小屋部分において屋根材(野地板)13の突合せ部に、換気間隙14(幅2cm?3cm)が小屋の内外に貫通して形成されている。該換気間隙14を塞ぐように棟換気具1をかぶせる。
この場合、屋根勾配に合わせて左右の通気コア3,3を屋根材13に押しつける。
側壁体4,4は発泡樹脂ブロックからなるので、容易に湾曲する。また連結板7も、アルミ板のように硬いものであっても曲げる事ができる。
しかる後、主板6の釘孔12の上から挿入した釘17を屋根板13に打着けて棟換気具1を固定する。釘17は、主板6上から通気コア3の上下板3A3Bを貫通するので、棟換気具1は屋根板13に強固に固定される。
これによって、前記換気間隙14は棟換気具1によって、外部から水密的に封止されたことになり、小屋内の熱気16は換気間隙14から側壁体4,4で囲まれた主板6の下部に入り、左右の通気コア3,3の多数の通気孔11から外方へ効率よく抜けて瓦の継目から放出される。
海岸等、風の強い場所や季節には、風で巻上げられた雨が、瓦の隙間から中に入り込むが、通気孔11の前方に配設された風除体5によって通気孔11内への雨水の進入が阻止される。
特に通気コア3の通気孔11は、約8mm間隔で区画壁3Cを並列して形成されているため、通気孔11方向に対して風向きが少しでも異なっていれば、吹込んだ雨水が区画壁3Cにぶつかって、内奥部に入りにくく、仮に少し雨水が入っても、区画壁3Cに付着して降下する雨水は通気孔11の勾配によって外に流れ出る。
イ号図面(4)に符号18で示すように、屋根に瓦を葺いたときに、最上部にあたる瓦の上先部は、lcmほども浮きあがることがある。
これは、瓦の産地、価格(高級品は肉厚が厚い)などによって、瓦の寸法に差違があるためであり、これに対しては、イ号図面(1)の符号10で示す背高調節具によって対応することができる。
また、主板6の上には、シツクイ、粘土などを介して、丸瓦が葺設されるが、施工後経時的にシックイや粘土が主板6上を滑落して、通気孔11を閉塞する虞があるが、前記突条8,8によって、シツクイ、粘土などの滑落が防止される。

第4 属否の検討

イ号物品の棟換気具は、本件考案の棟用通気性瓦棧に相当するものである(構成要件Dを充足する)ことに当事者間に争いはないが、本件考案の構成要件AないしCについての属否については争いがあるので、以下各構成要件について検討する。

1.構成要件Aについて
本件考案の構成要件Aは「長手方向中央に柔軟屈曲部を有する表板」であって、その意味は一義的に明確である。
一方、イ号物品においては、主板部2の左右の主板6とそれらの主板6を連結している連結板7は、棟の長手方向に延びているものであって、主板部2は連結板7がアルミ板または粘着テープであることによって、イ号図面(4)に示すように中央部で折り曲げられるものであって、連結板7は柔軟性を有するものであることから、イ号物品の主板部2は本件考案の「表板」に相当し、イ号物品は本件考案の構成要件Aを充足するものである。
請求人は、イ号物品においては、一対の主板6を離した状態で組み立てられるので換気間隔が大きくなっても容易に対応できること、主板6上面には長手方向に突条8が形成されており、これが長手方向における補強材となり、主板の肉厚が薄くても剛性が保たれることを根拠にイ号物品の主板部2は本件考案の「表板」に相当しない旨主張するが、本件考案において、表板については「長手方向中央に柔軟屈曲部を有する表板」と記載されているにすぎないことから、長手方向中央に柔軟屈曲部を有する板状のものであればどのような形態のものも技術的範囲に入るのであって、請求人の主張は採用できない。

2.構成要件Bについて
本件考案の構成要件Bは「(表板の)下面の長手方向両側に、取付板を複数の補強板を介して上記表板と間隔を保ってほぼ平行状態に配設し」である。
ここで、「取付板」については、表板と間隔を保ってほぼ平行状態に配設されており、「棟の両側に取付けられているルーフィング4の表面に釘止めする。この際、表板13は柔軟屈曲部14の部分で屈曲して屋根小屋1の勾配に順応し、取付板16は平板になっているため、取付板16の下面全面は、ルーフィング4の表面に密着させることができる。」(公告公報3欄39行ないし4欄3行)ものであることから、その下面全面は、ルーフィング4の表面に密着させて取り付けられるものであり、また、「補強板」については、取付板と表板との間にそれらがほぼ平行状態になるように複数個設けられており、明細書に明示的な記載はないもののその名称から取付板と表板の間に設けられ、表板の上に設けられる瓦やしっくい等の荷重を支え表板13が変形し圧縮するのを防止する補強機能を有するものと考えられる。
一方、イ号物品においては、屋根板(野地板)13の表面に密着して取り付けられるのは通気コア3の下板3B及びこの下板3Bに接着された風除体5の下板5Aであって、これら下板3B及び下板5Aは本件考案の表板に相当する主板部2とほぼ平行状態に配設されていることから、通気コア3の下板3B及び風除体5の下板5Aが、本件考案の「取付板」に相当するものと考えられる。
また、通気コア3の区画壁3Cは、主板部2と通気コア3の下板3B及び風除体5の下板5Aとの間に複数個設けられており、主板部2の上に設けられる瓦やしっくい等の荷重を支え表板13が変形し圧縮するのを防止する補強機能る機能を有するものであるから、本件考案の「補強板」に相当するものである。
したがって、イ号物品は本件考案の構成要件Bを充足するものである。
請求人は、イ号物品においては主板部2上から通気コア3を貫通して釘打ちするから、本件考案のように釘を打つための取付板は存在しない旨主張するが、本件考案においては、実施例のように取付板の端面部において釘打ちをすることは必須の要件ではなく、取付板は、その下面全面がルーフィング4の表面に密着して釘等により取り付けられるものであればよいと考えられ、イ号物品においても通気コア3の下板3B及び風除体5の下板5Aからなる取付板は、釘によって屋根板13に取り付けられるから、請求人の主張は採用できない。
請求人は、また、イ号物品においては主板6上面に長手方向に突条8が形成されており、この突条8によって長手方向の剛性が保持されるように補強されているから、本件考案のような補強板は必要ない旨主張するが、イ号物品において、通気コア3の区画壁3Cは、主板部2と通気コア3の下板3B及び風除体5の下板5Aとの間に設けられて主板部2を支持し、主板部が変形、圧縮されることを防止する補強機能を有するものと考えられることから、請求人の主張は採用できない。
次に、被請求人は、答弁書において、イ号図面に示される通気コア3は本件考案における補強板に相当する旨主張するが、通気コア3の下板3Bは上記したように本件考案の取付板に相当すると考えられることから、通気コア3全体を本件考案の補強板に相当するとすることはできない。

3.構成要件Cについて
本件考案の構成要件Cは「各補強板には適当間隔で通気孔を穿設してなること」である。
ここで、「穿設」の「穿」とは、「うがつ」ことであって、うがつは、「孔をあける。穴を掘る。つきぬく。」(広辞苑第三版)ことを意味するから、「穿設」は、孔をあけて設けることを意味すると考えられる。本件考案の明細書においても、第1図に示すように通気孔17は補強板15自体につきぬけるように設けられており、それ以外の態様は記載されていないことから、本件考案において「穿設」は通常用いられる意味で用いられていると考えられる。
一方、イ号物品において、本件考案の「補強板」に相当するものは、上記2に記載したように、通気コア3の区画壁3Cであって、この区画壁3Cには孔はあけられていない。
したがって、イ号物品は本件考案の構成要件Cを充足しない。
被請求人は、答弁書において、イ号図面に示される通気コア3は本件考案における補強板に相当するものであり、これには適当間隔で通気孔11が設けてあるからイ号物品は本件考案の構成要件Cを充足する旨主張するが、これはイ号物品の通気コア3全体が本件考案の補強板に相当することを前提とするものであり、この前提は上記2に記載したように誤りであって、被請求人の主張は採用できない。

第5 まとめ

以上のように、イ号物品は本件考案の構成要件Cを充足しないから、イ号物品は本件考案の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2000-06-08 
出願番号 実願昭61-10358 
審決分類 U 1 2・ 1- ZA (E04D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 憲子
宮崎 恭
登録日 1993-07-26 
登録番号 実用新案登録第1977047号(U1977047) 
考案の名称 棟用通気性瓦棧  
代理人 倉持 裕  
代理人 旭 宏  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 小松 秀岳  
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