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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1020786
審判番号 審判1999-3241  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-24 
確定日 2000-06-09 
事件の表示 平成2年実用新案登録願第90281号「複合型圧電部品」拒絶査定に対する審判事件[平成3年9月20日出願公開、実開平3-92822、平成8年2月7日出願公告、実公平8-4736]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 (手続の経緯、本件考案)
本願は、平成2年8月28日(優先権主張 平成1年10月13日)の出願であって、その請求項1乃至3に係るそれぞれの考案は、出願公告された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「(1)圧電基板の表裏両主面に電極がそれぞれ形成されて成る圧電素子の両端部を、立体的に広がった先端部を有する第1および第2の端子の両先端部にそれぞれ導電接合し、かつ誘電体基板の表裏両主面にいずれも中央部で分割された電極がそれぞれ形成されて成るコンデンサを、その一方の主面側の電極部分でしかも前記圧電素子との間に隙間をあけて、前記第1および第2の端子の両先端部にそれぞれ導電接合し、しかも前記圧電素子と前記コンデンサとは、両者間に前記第1および第2の端子の先端部の少なくとも一部分をそれぞれ介在させて、かつ互いに厚み方向において隣り合う状態に配置しており、更に前記コンデンサの他方の主面側の分割された電極間にまたがるように、平面的に広がった先端部を有する第3の端子の先端部を導電接合していることを特徴とする複合型圧電部品。」(以下、本件第1考案という。)
「(2)圧電基板の表裏両主面に電極がそれぞれ形成されて成る圧電素子の両端部を、立体的に広がった先端部を有する第1および第2の端子の両先端部にそれぞれ導電接合し、かつ誘電体基板の表裏両主面にいずれも中央部で分割された電極がそれぞれ形成されて成るコンデンサを、その一方の主面側の電極部分でしかも前記圧電素子との間に隙間をあけて、前記第1および第2の端子の両先端部にそれぞれ導電接合し、しかも前記圧電素子と前記コンデンサとは、両者間に前記第1および第2の端子の先端部の少なくとも一部分をそれぞれ介在させて、かつ互いに厚み方向において隣り合う状態に配置しており、更に前記コンデンサの他方の主面側の分割された電極間にまたがるように、二つに分かれた先端部を有する第3の端子の先端部を導電接合していることを特徴とする複合型圧電部品。」(以下、本件第2考案という。)
「(3)圧電基板の表裏両主面に電極がそれぞれ形成されて成る圧電素子の両端部を、立体的に広がった先端部を有する第1および第2の端子の両先端部にそれぞれ導電接合し、かつ誘電体基板の表裏両主面にいずれも中央部で分割された電極がそれぞれ形成されて成るコンデンサを、その一方の主面側の電極部分でしかも前記圧電素子との間に隙間をあけて、前記第1および第2の端子の両先端部にそれぞれ導電接合し、しかも前記圧電素子と前記コンデンサとは、両者間に前記第1および第2の端子の先端部の少なくとも一部分をそれぞれ介在させて、かつ互いに厚み方向において隣り合う状態に配置しており、更に前記コンデンサの他方の主面側の分割された電極間にまたがるように、同コンデンサの電極間の隙間よりも広い先端部を有する第3の端子の先端部を導電接合していることを特徴とする複合型圧電部品。」(以下、本件第3考案という。)
(引用刊行物記載の考案)
これに対して、原査定の拒絶の理由である特許異議申立ての決定の理由に引用された特開昭63-59012号公報(以下、刊行物1という。)には、複合電子部品に関する考案が記載されており、「第1図は負荷容量内蔵形発振子の分解斜視図であり、第2図は第1図のII-II線に沿う組立断面図である。これらの図における符号10は負荷容量内蔵形発振子であって、この発振子10は板状電子部品素子としての共振子エレメント11及びコンデンサエレメント12を備えている。共振子エレメント11はエネルギー閉じ込め型厚み辷り振動モードを有するものであって、セラミックからなる矩形平板状の基板13を備えている。この基板13の両主表面には、基板13の中央部で基板13を挟んで互いに対向することにより共振電極を構成する対向電極11a,11bがそれぞれ形成されている。基板13の一方の主表面に形成された対向電極11aは、基板13の一方の端面を介して他方の主表面の一部にまで折り返して延出される。また、基板13の他方の主表面に形成された対向電極11bも、前記の対向電極11aと同様に、基板13の反対側の主表面の一部にまで延出される。そして、基板13の中央部に形成されて共振電極を構成する対向電極11a、11bの両側部のそれぞれには、所定高さの突起部14,・・・がソルダーレジストインクなどの絶縁剤により形成される。コンデンサエレメント12は、前記共振子エレメント11の基板13とほぼ同一形状を有し、かつセラミックからなる矩形平板状の基板15を備えている。この基板15の一方の主表面の両端部にはコンデンサ電極12a,12bが形成され、これらのコンデンサ12a,12bそれぞれの内側部及び両コンデンサ電極12a、12bに挟まれる中間部の基板15面はソルダーレジストインクなどからなる絶縁膜16により覆われている。一方、基板15の他方の主表面の中央部には、両端部が基板15を挟んで各コンデンサ電極12a、12bと対向する接地電極12cが形成されている。このような共振子エレメント11とコンデンサエレメント12とは、その突起部14,14と絶縁膜16とが当接することによって両者が所定の間隔を隔てて隣り合うように厚み方向に重ね合わされる。この所定の間隔によって、共振子エレメント11における共振電極の振動空間が確保されることになる。なお、共振子エレメント11とコンデンサエレメント12との間に絶縁剤による所要の振動間隔が確保されれば、これらのエレメント11,12は重ね合わされただけであっても、貼り合わされていてもよい。次に、図における符号17,18は入出力用のリード端子であって、これらのリード端子17,18の内端部には、平面視が略「U」字状とされて凹入した形の保持部17a,18aが形成されている。このような各保持部17a、18aは、重ね合わされた共振子エレメント11及びコンデンサエレメント12の短辺側両端部のそれぞれに外装され、半田付け、もしくは、導電ペーストの塗布により接続される。このとき、共振子エレメント11とコンデンサエレメント12との間には毛細管現象により半田、もしくは、導電ペーストが侵入し、両者は確実に接続されて導通する。そのため、対向電極11a及びコンデンサ電極12aがリード端子17と電気的に接続され、また、対向電極11b及びコンデンサ電極12bがリード端子18と電気的に接続される。そして、コンデンサエレメント12の接地電極12cには接地用のリード端子19の内端部が半田付け、もしくは、導電ペーストにより接続される。」(第2頁右上欄第11行?第3頁左上欄第13行)と説明されている。
同じく、原査定の拒絶の理由である特許異議申立ての決定の理由に引用された実願昭62-171878号(実開平1-76023号)のマイクロフィルム(以下、刊行物2という。)には、コンデンサ素子に関する考案が記載されており、「本件考案は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、素子の方向性をなくし、組立作業性を格段に改善できるコンデンサ素子を提供することにある。」(第3頁第3?6行)、「上記目的を達成するために、本考案のコンデンサ素子は、誘電体基板の表裏面に電極形状を同一パターンとした構成としている。」(第3頁第8?10行)、「入出力端子20,30の上端部21,31はそれぞれ裏面側の電極9,10にそれぞれ半田付けされ、接地用端子40の上端部43は表面側の電極7,8間に架け渡すように半田付けされる。このため、接地用端子40の上端部43は幅広に形成されている。」(第7頁第8?13行)と説明されている。
同じく、原査定の拒絶の理由である特許異議申立ての決定の理由において、周知技術として引用された特開昭63-67908号公報(以下、刊行物3という。)には、2端子形圧電共振素子を有する電子部品に関する考案が記載されており、「圧電共振素子の一方主面には、その一方端から一定の位置まで電極22が形成される。同様に、圧電共振素子20の他方主面には、その他方端から一定の位置まで電極22が形成される。そして圧電共振素子20の電極22とカップ状の保持部16とが、たとえばはんだ付けなどにより電気的に接続される。カップ端子12の保持部16外側面には、コンデンサ基板24が、たとえばはんだ付けなどにより電気的に接続される。コンデンサ基板24は、板状の誘電体の一方主面の長手方向の両端に1対の電極26a,26aが形成される。また、誘電体の他方主面の中央には、電極26bが形成される。そして、電極26a,26aと一対のカップ端子12,12の保持部16,16の外側面とが電気的に接続される。さらに、コンデンサ基板24の中央の電極26bに端子28が接続される。この電機部品10は、カップ端子12の長手方向に圧電共振素子とコンデンサ基板24を並べたものに比べて、低背化されている。したがって、この電子部品10を装置内に組み込んだとき、その取付けスペースが小さくなる。」(第3頁左上欄第9行?第3頁右上欄第10行)と説明されている。
(対比・判断)
そこで、本件第1考案と上記刊行物1記載の考案とを対比すると、
(i)上記刊行物1記載の考案においては、共振子エレメント11は、セラミックからなる矩形平板状の基板13を備え、この基板13の両主表面には、基板13の中央部で基板13を挟んで互いに対向することにより共振電極を構成する対向電極11a,11bがそれぞれ形成されており、そして略「U」字状とされて凹入した形の保持部17a,18aに内装され、半田付け、もしくは、導電ペーストの塗布により接続されるようになっており、この点は、本件第1考案における、圧電基板の表裏両主面に電極がそれぞれ形成されて成る圧電素子の両端部を、立体的に広がった先端部を有する第1および第2の端子の両先端部にそれぞれ導電接合する点に相当する。
(ii)上記刊行物1記載の考案においては、コンデンサエレメント12は、セラミックからなる矩形平板状の基板15を備え、この基板15の一方の主表面の両端部にはコンデンサ電極12a,12bが形成され、他方の主表面の中央部には、両端部が基板15を挟んで各コンデンサ電極12a、12bと対向する接地電極12cが形成されており、このコンデンサエレメント12は、略「U」字状とされて凹入した形の保持部17a,18aに内装され、半田付け、もしくは、導電ペーストの塗布により接続されるようになっており、また、共振子エレメント11とコンデンサエレメント12とは、両者が所定の間隔を隔てて隣り合うように厚み方向に重ね合わされるように配置されているから、この点は、本件第1考案において、誘電体基板の表裏両主面に電極がそれぞれ形成されて成るコンデンサを、その一方の主面側の電極部分でしかも前記圧電素子との間に隙間をあけて、前記第1および第2の端子の両先端部にそれぞれ導電接合し、かつ互いに厚み方向において隣り合う状態に配置してするとする点に相当する。
したがって、本件第1考案と上記刊行物1記載の考案とは、次の点で相違し、その余では一致する。
(a)コンデンサの誘電体基板の表裏両主面に形成される電極が、本件第1考案においては、いずれも中央部で分割されており、また、コンデンサの他方の主面側の分割された電極間にまたがるように、平面的に広がった先端部を有する第3の端子の先端部を導電接合しているのに対し、上記刊行物1記載の考案においてはそのようになっていない点
(b)本件第1考案においては、圧電素子と前記コンデンサとは、両者間に第1および第2の端子の先端部の少なくとも一部分をそれぞれ介在させているのに対し、上記刊行物1記載の考案においてはそのようになっていない点
そこで上記相違点について検討する。
上記相違点(a)について
上記刊行物2には、組立作業性を改善するために、誘電体基板の表裏面に電極形状を同一パターンとして素子の方向性をなくし、接地用端子に関しては、その上端部43を幅広に形成し、この上端部43は表面側の電極7,8間に架け渡すように半田付けした構成のコンデンサ素子が記載されており、本件第1考案において、コンデンサの誘電体基板の表裏両主面に形成される電極が、いずれも中央部で分割されており、また、コンデンサの他方の主面側の分割された電極間にまたがるように、平面的に広がった先端部を有する第3の端子の先端部を導電接合している点に相当する。
また、分割された電極間にまたがるように、平面的に広がった先端部を有する第3の端子の先端部を導電接合していることは、例えば、実願昭63-30809号(実開平1-133816号)のマイクロフィルムにみられるように、本件出願前普通に知られたことにすぎない。
そして、考案の課題解決のために、関連する技術分野の技術手段の適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから、上記刊行物1記載の考案に上記刊行物2記載の技術、あるいは周知技術を適用して、本件第1考案のように、コンデンサの誘電体基板の表裏両主面に形成される電極が、いずれも中央部で分割されており、また、コンデンサの他方の主面側の分割された電極間にまたがるように、平面的に広がった先端部を有する第3の端子の先端部を導電接合しているようにすることは、当業者が極めて容易になし得ることにすぎない。
上記相違点(b)について
圧電素子と前記コンデンサとの間に第1および第2の端子の先端部の少なくとも一部分をそれぞれ介在させているとする点は、上記刊行物3あるいは、例えば、実願昭62-41375号(実開昭63-149628号)のマイクロフィルム、前出の実願昭63-30809号(実開平1-133816号)のマイクロフィルムにみられるように、本件出願前普通に知られたことにすぎない。
そして、考案の課題解決のために、関連する技術分野の技術手段の適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから、上記刊行物1記載の考案に上記周知技術を適用して、本件第1考案のように、圧電素子と前記コンデンサとの間に第1および第2の端子の先端部の少なくとも一部分をそれぞれ介在させるとすることは、当業者が極めて容易になし得ることにすぎない。
(まとめ)
以上のとおりであるから、本件第1考案は、上記刊行物1乃至3に基づき、あるいは周知技術を参酌して、当業者が極めて容易に考案できたものであって、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-03-08 
結審通知日 2000-03-17 
審決日 2000-03-29 
出願番号 実願平2-90281 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 徳永 民雄江畠 博  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 吉見 信明
橋本 正弘
考案の名称 複合型圧電部品  
代理人 山本 惠二  

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