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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01H
管理番号 1020816
審判番号 審判1997-13077  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-08-05 
確定日 2000-08-01 
事件の表示 平成3年実用新案登録願第81031号「ピストン位置検出用磁気近接スイッチ」拒絶査定に対する審判事件(平成7年3月29日出願公告、実公平7-13155)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 I.本願は、平成3年9月10日の出願であり、原審において出願公告されたところ、登録異議の申立てがあり、その異議の決定に記載した理由によって拒絶すべきものとされたものであって、その考案の要旨は、出願公告された明細書と図面、並びに当審において提出された平成9年9月4日付け手続補正書の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された以下のものにあると認める。
「スイッチ本体ケースを、リードスイッチが収容される円筒部分と、それに平行して連設され、動作表示用LEDを含む電子部品が収容される角筒部分とからなるものとして、合成樹脂により形成し、
上記円筒部分は、流体圧シリンダのボディに設けた断面円形の溝に嵌るものとし、
上記角筒部分は、流体圧シリンダの溝の上記円筒部分が嵌った部分の開放部に、表面を上記ボディにおける表面と略同一面にして嵌り込むことにより、該開放部を満たす形状に形成し、
上記スイッチ本体ケースの円筒部分にリードスイッチを収容すると共に、上記角筒部分内に、リードスイッチに重ねて動作表示用LEDを含む電子部品を収容し、
リードスイッチを収容した円筒部分の先端側に中実の固定部を一体的に連設し、この固定部に、上記角筒部分を設けた側から取付け用ねじ孔を開設した、
ことを特徴とするピストン位置検出用磁気近接スイッチ。」
(なお、実用新案登録請求の範囲には「流体圧シリングのボディ」の記載があるが、これは「流体圧シリンダのボディ」の誤記であると認めた。)
II.これに対して、前記異議の決定の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である、実願平1ー107923号(実開平3-46005号)のマイクロフイルム(以下、引用例と云う)には以下の事項が記載されている。
引用例
「シリンダケース(1)の外周面にシリンダの軸線方向に延びるセンサ装着溝(3)を形成し、そのセンサ装着溝(3)内にセンサ素子(6)を内装したセンサケース(5)を装着し、センサ装着溝(3)の外面側には前記センサケース(5)の抜止めのための抜止め部(4)を形成し、センサケース(5)の内部には両端を同センサケース(5)外に突出させた金属製の固定板(8)を設け、その固定板(8)には雌ねじ(9)を透設するとともに、雌ねじ(9)と対向するようにセンサケース(5)には挿通孔(10)を貫設し、前記雌ねじ(9)には挿通孔(10)を通る雄ねじ(11)を螺着し、その雄ねじ(11)のセンサ装着溝(3)底面への締付けにより前記固定板(8)の突出部(8a)が前記抜止め部(4)に圧接されるように構成したことを特徴とするセンサ装着機構。」(実用新案登録請求の範囲1)
「この考案はシリンダのピストン位置を検出するためのセンサの装着機構に関する。」(第2頁第4行?第5行)
「第5,6図は従来のセンサ装着機構を示す。この従来機構においては、検出回路を内装した合成樹脂製のセンサケース24に第5図において下向きの収容孔21が形成され、同孔21内にナット22が回転不能に嵌合されている。そして、ナット22に螺入された雄ねじ11を締付けて、その先端をシリンダケース1のセンサ装着溝3の底面に圧接させることにより、その反力で、センサケース24に一体形成された突起23が前記センサ装着溝3の外面側の抜止め部4に圧接され、これによってセンサケース24がセンサ装着溝3内において固定される。」(第2頁第7行?第18行)
「第3,4図に示すように、シリンダケース1の相互に対応する一対の外周面にはピストンロッド2の軸線方向、すなわちシリンダの軸線方向に延びるそれぞれ一対のセンサ装着溝3が形成され、そのセンサ装着溝3内には台成樹脂製のセンサケース5が装着される。前記センサ装着溝3の外面側にはセンサケース5の抜止めのための抜止め部4が間隔をおいて対向形成されている.尚、センサケース5が装着されないセンサ装着溝3内には第4図に示すようにマスキングスペーサー13がはめ込まれている。
第1,2図に示すように、前記センサケース5には検出回路12が内装されており、その検出回路12にはピストンヘッド(図示しない)の位置を検出するセンサ素子6が備えられている。このセンサ素子6は磁気感知型センサ素子であり、ピストンヘッドの外周には永久磁石が取付けられていて、センサ素子6の磁気の感知に基づいてピストン位置を検出できる。14はセンサ素子6の感知動作を視覚表示するランプである。
又、センサケース5にはその幅方向、つまり横方向に沿って貫通孔7が貫設され、その内部には金属製の固定板8が挿通されている。固定板8の両端はセンサケース5の外方に突出しており、そ突出部8aの上面が抜止め部4に当接するようになっている。前記固定板8のほぼ中央には雌ねじ9が透設されており、センサケース5にはその雌ねじ9と対応する位置に挿通孔10が貫設されている。そして、前記雌ねじ9には挿通孔10を通る雄ねじI1が螺着されており、その雄ねじI1を締付けて、その先端をセンサ装着溝3の底面に圧接させると、その反力で固定板8の突出部8a上面がセンサ装着溝3の抜止め部4に圧接される。これによって固定板8がセンサ装着溝3内に固定されるとともに、同固定板8を装着したセンサケース5もセンサ装着溝3内で固定される。
従って、センサ装着溝3内にセンサケース5を固定した状態においても、雄ねじ11の締付けによる圧接反力は固定板8が受承してセンサケース5にほとんど伝わらない。従って、センサケース5に応力が発生することはほとんどなく、センサケース5が歪んだりする恐れがない。このため、内部の検出回路12の動作への悪影響を防止することができるとともに、センサケース5の破損の恐れもない。又、固定板8はセンサケース5に横方向に設けられた貫通孔7に挿通されるので、同固定板8はセンサケース5から脱落する恐れがない。従って、固定板8の脱落防止のための接着剤等の工夫が不要となり、製作が容易である。しかも、雄ねじI1の締付け力は金属製の固定板8に作用するためクリープによるねじ緩みは生じない。」(第5頁第3行?第7頁第13行)
「以上詳述したように、この孝案のセンサ装着機構においては、センサケースの歪みによる検出回路への悪影響を防止することができるとともに、ねじ緩みやセンサケースが破損する恐れがなく、さらにセンサケースから固定板が脱落する恐れもなく、製作が容易になるという優れた効果を発揮する。」(第7頁第15行?第8頁第1行)
III.本願考案と引用例に記載された事項とを対比すると、引用例に記載された「センサケース」、「検出回路」、「シリンダケース」は、夫々本願考案の「スイッチ本体ケース」、「電子部品」、「シリンダのボディ」に相当するものと認められ、また、第2図の記載も参酌すると、シリンダケースの溝の開放部に、表面をシリンダケースの表面と略同一面にして嵌り込むようにしたセンサケースの角筒部分内に、センサ素子に重ねて動作表示用ランプを含む検出回路を収容する空間が設けられているものと認められるから、引用例には、「スイッチ本体ケースを、センサ素子が収容される六角筒部分と、それに平行して連設され、動作表示用ランプを含む電子部品が収容される角筒部分とからなるものとして、合成樹脂により形成し、上記六角筒部分は、シリンダのボディに設けた断面六角形の溝に嵌るものとし、上記角筒部分は、シリンダの溝の上記六角筒部分が嵌った部分の開放部に、表面を上記ボデイにおける表面と略同一面にして嵌り込むことにより、該開放部を満たす形状に形成し、上記スイッチ本体ケースの六角筒部分にセンサ素子を収容すると共に、上記角筒部分内に、センサ素子に重ねて動作表示用ランプを含む電子部品を収容し、センサ素子を収容した六角筒部分の先端側に貫通孔が貫設された固定部を一体的に連設し、この貫通孔に金属製の固定板を装着し、この固定板に、上記角筒部分を設けた側から取付け用ねじ孔を開設した、ピストン位置検出用磁気近接スイッチ。」の考案が記載されているものと認められる。
そうすると、本願考案(以下、前者と云う)と引用例に記載された考案(以下、前者と云う)とは、以下の各点において相違するものの、その他の点においては一致するものと認められる。
相違点1
前者は、ピストン位置検出のために「リードスイッチ」を用いているのに対して、後者は「センサ素子」を用いている点。
相違点2
前者のスイッチ本体ケースは「円筒部分」を有し、シリンダのボディに設けた溝が断面円形であるのに対して、後者のスイッチ本体ケースは「六角筒部分」を有し、シリンダのボディに設けた溝が断面六角形である点。
相違点3
前者は、表示動作用に「LED」を用いているのに対して、後者は「ランプ」を用いている点。
相違点4
前者の「シリンダ」は流体圧シリンダであるのに対して、後者のそれは、これに関して明らかでない点。
相違点5
前者の「固定部」は円筒部分の先端側に一体的に連設された中実のものであり、この「固定部」にねじ孔が開設されているに対して、後者の「固定部」は六角筒部分の先端側に貫通孔が貫設された固定部を一体的に連設し、この貫通孔に金属製の固定板を装着したものであり、この固定板に取付け用ねじ孔が開設されている点。
IV.前記各相違点について検討する。
相違点1について
後者の「センサ素子」は磁気感知型センサ素子であり、このようなセンサ素子としてリードスイッチは周知のものであるから、後者のセンサ素子としてリードスイッチを採用することは、当業者が適宜になし得ることであると認められる。
相違点2について
後者のスイッチ本体ケース(センサケース)は「六角筒部分」を有するものであるが、これを単に「円筒部分」とし、これに合わせて、シリンダのボディ(シリンダケース)に設けた溝を断面六角形に代えて断面円形とすることは、そのようにしても格別に効果が相違するものではなく、当業者がきわめて容易に想到し得た程度のことであると認められる。
相違点3について
表示動作用に「LED」を用いることは周知であるから、後者の「ランプ」に代えて「LED」を採用することは、当業者が適宜になし得ることであると認められる。
相違点4について
この種のシリンダとして「流体圧シリンダ」は周知のものであるから、この点に格別の困難性は認めれれない。
相違点5について
後者の金属製の固定板はスイッチ本体ケース(センサケース)が破損すること等を防止するために設けたものであるから、強度をそれほど必要としなければ、このような固定板を用いることなく、この部分を中実とし、スイッチ本体ケース(センサケース)自体にねじ孔を開設して前者のようにすることは、当業者がきわめて容易に想到し得ることであると認められる。
(なお、角筒部分を円筒部分とすることが当業者にとってきわめて容易であることは、相違点2の判断において述べたとおりである。)
また、相違点1?5による前者の効果についてみても、後者から予測し得た程度のものであり、格別のものとは認められない。
V.従って、本願考案は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用例に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1998-08-06 
結審通知日 1998-08-21 
審決日 1998-08-28 
出願番号 実願平3-81031 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (H01H)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 田中 秀夫川嵜 健  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 木村 勇夫
柿澤 惠子
考案の名称 ピストン位置検出用磁気近接スイッチ  
代理人 内山 正雄  
代理人 林 宏  

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