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審決分類 審判 全部申し立て   B65D
審判 全部申し立て   B65D
管理番号 1020851
異議申立番号 異議1998-75872  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-11-27 
確定日 2000-05-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2573020号「断熱紙カップ」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2573020号の実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2573020号の考案(以下、「本件考案」という。)は、平成2年11月15日に実用新案登録出願され、平成10年3月13日にその登録の設定がなされ、その後、渡辺忠雄より登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年7月16日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の要旨
イ.訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】紙カップ本体と、上下共に開口しており紙カップ本体における胴部外周に押し込まれて嵌挿された板紙製の外筒とからなり、外筒は上下方向に延びる折畳み用の2本の罫線と下方側にのみ形成された複数の罫線とを備え、それらの罫線により上部が円形状であると共に下部が多角形状をした折畳み式のものであって、紙カップ本体に嵌挿された時にその上端近傍において紙カップ本体における胴部外周の上部に密着していると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体における胴部外周の下部に密着しており、外筒の下部における多角形の角部により断熱空間が形成されていることを特徴とする断熱紙カップ。」
ロ.訂正事項b
実用新案登録明細書(以下、行数は平成8年7月29日付けの手続補正書の記載に基づく)の第2頁10?17行目の「上記目的を達成するために、‥‥‥ことを特徴としている。」を次のとおりに訂正する。
「上記目的を達成するために、本考案の断熱紙コップは、紙カップ本体と、上下共に開口しており紙カップ本体における胴部外周に押し込まれて嵌挿された板紙製の外筒とからなり、外筒は上下方向に延びる折畳み用の2本の罫線と下方側にのみ形成された複数の罫線とを備え、それらの罫線により上部が円形状であると共に下部が多角形状をした折畳み式のものであって、紙カップ本体に嵌挿された時にその上端近傍において紙カップ本体における胴部外周の上部に密着していると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体における胴部外周の下部に密着しており、外筒の下部における多角形の角部により断熱空間が形成されていることを特徴としている。」
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
イ.訂正事項aについて
訂正事項aは、実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された外筒の構成を限定しようとするものであって、このような外筒の構成については、実用新案登録明細書の第3頁第6?11行目に「この外筒3は、第4図に示す横に長い扇状のブランク板8を罫線a及びbで折り曲げその両端を貼り合わせることにより第5図に示すようにサック貼りして折り畳んだ状態とし、紙カップ本体2に嵌挿するに際してこれを筒状に起こして第3図の状態とされるもので、筒状に起こす時に、ブランク板8に形成された複数の罫線cを折ってその下部が多角形とされる。」と記載されているから、この訂正は当初明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。この訂正は、当初明細書に記載された外筒の構成に基づいてその構成を限定するものであると認められるから、訂正事項aは実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
ロ.訂正事項bについて
訂正事項bは、上記の訂正事項aに伴う考案の詳細な説明の欄の記載を訂正事項aに合わせて明りょうにしたものに相当すると認められる。
2-3.独立登録要件の判断
(1)訂正明細書の請求項1に係る考案
当審において平成11年4月8日付けで取消理由通知を通知し、訂正された訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正考案」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】紙カップ本体と、上下共に開口しており紙カップ本体における胴部外周に押し込まれて嵌挿された板紙製の外筒とからなり、外筒は上下方向に延びる折畳み用の2本の罫線と下方側にのみ形成された複数の罫線とを備え、それらの罫線により上部が円形状であると共に下部が多角形状をした折畳み式のものであって、紙カップ本体に嵌挿された時にその上端近傍において紙カップ本体における胴部外周の下部に密着していると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体における胴部外周の下部に密着しており、外筒の下部における多角形の角部により断熱空間が形成されていることを特徴とする断熱紙カップ。」
(2)取消理由およびその引用例
本件考案に対して、当審が通知した取消理由は、本件考案は刊行物1及び2に記載された考案に基づいてその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、きわめて容易に考案をすることができたものであると認められるから、実用新案法第3条第2項に該当するという理由(以下、「理由その1」という。)、及び、本件考案は刊行物3に記載されたものと同一であると認められるから、実用新案法第3条の2にの規定に該当するという理由(以下、「理由その2」という。)という2つの理由によって、登録は取り消されるべきであるというものである。
なお、引用した刊行物は次のとおりである。
(i)実用新案登録異議申立人 渡辺忠雄の提出に係る刊行物
刊行物1;実願昭49-26049号(実開昭50-115991号)のマイクロフィルム (甲第2号証に相当)
刊行物3;特開平4-65232号公報
(甲第3号証に相当)
(ii)当審のサーチに係る刊行物
刊行物2;実公昭54-3390号公報 (原審査における引用例に相当)
(刊行物記載事項)
刊行物1には、「耐熱性合成樹脂より成る容器本体(1)を多角形の断面を有する厚紙製カバー体(2)により密着抱持して成るインスタント食品用食器兼用容器。」(実用新案登録請求の範囲)、及び、「カバー体に前記容器本体を密着抱持しうる多角形断面形状を与えることにより、外観上において自他製品の識別を容易にすると共に、多角形の形状の方が手で保持しやすく、又、坐りがよいという点において、取扱い使用に便利であるという事実上の効果が得られる‥‥中略‥‥。図において、1は通常のインスタント食品用容器として利用される耐熱合成樹脂より成る円形断面のコップ状の容器本体であつて、本案においては該容器本体1に密着してこれを抱持しうる寸法の多面形の断面を有する厚紙製カバー体2を準備し、このカバー体2内に前記容器本体1を挿入し必要に応じて粘着等の手段により固着する‥‥中略‥‥。尚、カバー体2の形状としては、第1図及び第2図のような六角形、第3図のような五角形のほか、各種の角形断面の採用が可能であり、実際上、内容品の品種によって断面形状を変更する等の方法の採用も可能である。(第2頁第6行?第4頁第2行)が記載されている。
刊行物2には、「底部が多角形で、上部が円形の紙製外容器3に底部、上部ともに円形である熱可塑性合成樹脂よりなる内容器1を嵌合し、蓋2を設けてなる断熱性容器。」(実用新案登録請求の範囲)、及び、「底部を四角形、六角形、あるいは、八角形となし上部は円形となした紙製外容器3と底部と上部が共に円形で、かつ底部より上部の径が大なる熱可塑性合成樹脂製内容器1とを嵌合して一体となし、必要に応じて、該嵌合部を適当な接着剤で適宜接着部5を接着し、‥‥中略‥‥。更に外容器3について詳細に説明すれば、例えば第4図に示す如く、側壁9は、上辺10が円弧であり、底辺11が円弧でなく、かつ上辺10が底辺11より長くなっており、該側壁9の片側に糊しろ6を設けてなる。そして底辺11を4等分し、それぞれの4等分した底辺に差込片7、嵌合片8を交互に設けてなる外容器である。‥‥中略‥‥。上述したように底部が多角形で上部が円形の構造を有する外容器3に円錐状の内容器1を嵌合するので、嵌合部を除くと、外容器3と内容器1との間には、間隙4ができ、内容器1に熱湯を注いでも該間隙4によつて熱伝導が悪くなり、素手でもつことが容易である。‥‥中略‥‥、紙および合成樹脂という材料の相異がありながら、内容器と外容器の間に断熱のための空隙を無理のない状態で形成できたものである。」(第1頁2欄第6行?2頁3欄第2行)が記載されている。
刊行物3には、「(1)周壁に断面波形の凹凸が出来る罫線を予め施した紙製カップ容器を形成し、この紙製カップ容器内に前記罫線に対応させて外周面に波形の凹凸を形成すると共に、吸引孔を設けたマンドレルを嵌合し、かつ真空吸引して前記紙製カップ容器をマンドレルに密着させることにより周壁に断面波形の凹凸を形成し、更にこの紙製カップ容器の外側に周壁がフラットな紙製胴部材を取り付け一体化することを特徴とする断熱容器の製造方法。 (2)前記罫線が上方より下方に行くに従って狭くなる縦罫線と、この縦罫線の上端同士を結んだ逆V字型罫線とで構成されたことを特徴とする請求項(1)の断熱容器の製造方法。」(特許請求の範囲)、「また、胴部材5は断面が円形のものに限らず、例えば第8図に示すように断面が多角形のもの54でも良く、更に第9図に示すように 有底カートン状の胴部材55を形成しこれを被着するようにしても良い。このように胴部材を取り付ける際にカップ容器3の上端部はフラットな面に残されているので、胴部材5との密着性に優れ、かつ円形の胴部材5の上端は前記トップカール3aの下端に密着し、そのトップカール3aにより隠蔽されるので目立たず外観が良くなる。このようにして形成された断熱容器6は、カップ容器3と胴部材5との間に空気層6aが形成されるので断熱作用を十分に発揮し、‥‥中略‥‥。これにより、胴部の断熱性が維持出来ると共に、下方の凹凸は小さくなるので、下端での紙製胴部材との密着性が良好となり二重容器を形成することが出来る。」(第2頁右下欄第第15行?第3頁右上欄第第2行)が記載されている。
また、異議申立人提出の甲第1号証である実公昭54-5282号公報(以下、「刊行物4」という。)には、「有底のテーパ付(逆円錐台状)紙製容器本体の外周面の上下方向に適当間隔を存して数個の環状突出部を設けると共に該外周面にその下端直径と略等しい直径の波形板紙よりなる円筒状の防熱被覆材を拡開嵌着して紙製容器本体と防熱被覆材との間に空間を設けてなるインスタント食品用紙容器。」(実用新案登録請求の範囲)、及び、「然してかかる構造の紙製容器本体1の内周面及び内底面には耐熱耐水性のコート液が塗装され、外周面には第3a,bに示す帯状の波形板紙9の左右両側端部を接着して第1図の如く紙製容器本体1の下端の直径と略等しい直径の円筒状になした防熱被覆材10が第2図に示す如く紙の弾性に抗して上方が次第に拡開されて嵌着され、紙容器本体1との間に空間11が形成されている。‥‥中略‥‥、つまり波形の底と環状突出部8の頂部とが接しているだけで、両者の間には空間11が形成されているため、インスタント食品の熱は極めて伝わりにくく大部分の熱は空間11において空気を介して間接的に防熱被覆材10に伝えられる。」(第2頁3欄第23行?同第42行)が記載されている。
(対比・判断)
イ.理由その1に対して
訂正考案と、刊行物1に記載された考案とを対比すると、両者は、「容器本体と、容器本体の胴部外周に押し込まれて嵌挿された外筒体とからなり、外筒体は上下方向に延びる折畳み用の多数本の罫線を備え、それらの罫線により多角形状をした折畳み式のものであって、容器本体に嵌挿された時に多角形の各辺の中心部で容器本体の胴部外周に密着しており、多角形の角部で容器本体の胴部外周と断熱空間が形成されることを特徴とする食品用断熱容器。」である点で一致し、訂正考案が「紙カップ本体と、上下共に開口しており紙カップ本体における胴部外周に押し込まれて嵌挿された板紙製の外筒とからなり、外筒は上下方向に延びる折畳み用の2本の罫線と下方側にのみ形成された複数の罫線とを備え、それらの罫線により上部が円形状であると共に下部が多角形状をした折畳み式のものであって、紙カップ本体に嵌挿された時にその上端近傍において紙カップ本体における胴部外周の下部に密着していると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体における胴部外周の下部に密着しており、外筒の下部における多角形の角部により断熱空間が形成されていることを特徴とする断熱紙カップ。」であるのに対して、刊行物1に記載された考案は、カップ本体が合成樹脂よりなるものであって、カバー体は、胴部の全体を多角形状に形成されるものである点で本件の断熱紙カップとは相違する。
上記相違点について検討する。刊行物2には、底部が多角形で、上部が円形の紙製外容器3に底部、上部ともに円形である熱可塑性合成樹脂よりなる内容器1を嵌合し、蓋2を設けてなる断熱性容器に関し、実施例として、底辺11を4等分し、それぞれの4等分した底辺に差込片7、嵌合片8を交互に設けてなる外容器組み立てることで差込片に合わせて、4等分された底辺に合うように底部が四角形になる外容器が形成されることが開示されている。しかしながら、刊行物2の外容器は底部を有するものであって、差込片7と嵌合片8とで底部を形成することによって、外容器の下部は略多角形状に形成されるものであって、訂正考案のように外筒の下方側に形成された複数の罫線により多角形状に形成するものではない。
したがって、刊行物1及び2から訂正考案がきわめてきわめて容易に想到し得たものであるとは認められない。
そして、訂正考案は、上記相違点に係る構成により、本件実用新案登録明細書に記載されたとおりの特有の作用・効果を奏するものと認める。
ロ.理由その2に対して
訂正考案と刊行物3記載の考案とを対比すると、刊行物3の考案は第8図に例示されるように「外筒は上下共に開口した紙製の多角形のものではあるが、その外筒の上部が円形状には形成されておらず多角形状のもの」であって、訂正考案の「外筒の上部が円形状であると共に下部が多角形状をした折畳み式のものであって、紙カップ本体に嵌挿された時にその上端近傍において紙カップ本体における胴部外周の下部に密着していると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体における胴部外周の下部に密着しており、外筒の下部における多角形の角部により断熱空間が形成されていることを特徴とする断熱紙カップ」である構成を有するものではない。
よって、刊行物3記載の考案は訂正考案と同一のものであるとは認められない。
さらに、刊行物4記載の考案について考察すると、刊行物4記載の考案は、紙製容器本体1の環状突出部に本件考案の外筒に相当する防熱被覆材10を嵌着して容器本体と防熱被覆材との間に空間11を形成して防熱効果を得るようにするものであるが、外筒に当たる防熱被覆材は帯状の波形板紙製であって、外筒は上下方向に延びる折畳み用の2本の罫線と下方側にのみ形成された複数の罫線を備え、それらの罫線により上部が円形状であると共に下部が多角形状をした折畳み式のものであるとする、訂正考案のものとは相違する。そして、紙カップ本体に嵌挿された時にその上端近傍において紙カップ本体における胴部外周の下部に密着していると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体における胴部外周の下部に密着しており、外筒の下部における多角形の角部により断熱空間が形成されているような紙カップとは成っていないから、当業者が刊行物4記載の事項を上記刊行物1及び2記載の事項に合わせ考察したとしても、本件の断熱紙カップの構成をきわめて容易に想到しえたものとは認められない。
(まとめ)
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第2項及び第3項でさらに準用する特許法第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.登録異議申立についての判断
登録異議申立人渡辺忠雄は、甲第1号証及び甲第2号証として上記刊行物4及び刊行物1を提出して、本件考案が実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができない旨主張(以下、「主張1」という。)している。
しかしながら、上記2-3.(2)で示したとおり、訂正考案は、上記刊行物4及び刊行物1に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとは認められないため、申立人の上記の「主張1」は採用できない。
また、申立人は、甲第3号証として上記刊行物3を提出して、本件考案が実用新案法第3条の2の規定により登録を受けることができない旨主張(以下、「主張2」という。)している。
しかしながら、上記2-3.(2)で示したとおり、訂正考案は、上記刊行物3に記載された考案と同一であるとは認められないから、申立人の上記の「主張2」は採用できない。

4.むすび
したがって、登録異議申立ての理由および証拠によっては、本件請求項1に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
断熱紙カップ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
(1)紙カップ本体と、上下共に開口しており紙カップ本体における胴部外周に押し込まれて嵌挿された板紙製の外筒とからなり、外筒は上下方向に延びる折畳み用の2本の罫線と下方側にのみ形成された複数の罫線とを備え、それらの罫線により上部が円形状であると共に下部が多角形状をした折畳み式のものであって、紙カップ本体に嵌挿された時にその上端近傍において紙カップ本体における胴部外周の上部に密着していると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体における胴部外周の下部に密着しており、外筒の下部における多角形の角部により断熱空間が形成されていることを特徴とする断熱紙カップ。
【考案の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本考案は、主として即席食品の容器として用いられる断熱性容器に係るものであり、詳しくは、紙カップを利用して形成された断熱紙カップに関するものである。
[従来の技術]
従来、インスタントラーメンの如き熱湯を注ぐのみで食用に供せられる即席食品の断熱性容器として、製作が簡単で且つ安価であることからプラスチック製の断熱カップが広く用いられている。例えば、代表的なものとしては、発砲性のプラスチックを素材としたものやプラスチック製の二重カップなどがある。しかしながら、最近ではプラスチック製品の不燃ゴミ公害が大きな社会問題となっており、プラスチック製の断熱カップはその使用を控える傾向にある。
このようなことから、廃棄処分の容易な紙カップを使用することが好ましいが、紙カップは断熱効果が充分ではないために、上記のように熱湯を注ぐ即席食品の容器としては不適切である。そこで、断熱性を高めるためにコルゲート式の外筒を紙カップ本体の外周を覆うように取り付けてなる断熱紙カップが従来より知られている。
[考案が解決しようとする課題]
従来の技術で述べたコルゲート式の外筒を備えた断熱紙カップは、製造に際して、紙製の円筒形状をした外筒に波形状の凹凸を形成し、これを紙カップ本体の外周に沿うように周囲から押圧して接着剤により紙カップ本体に取り付けるという工程を経るので、手間を要してコストが高くなるという問題点があった。
本考案は、上記のような問題点を解決するために創案されたものであり、簡単に製造できて断熱効果にも優れた断熱紙カップを提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
上記目的を達成するために、本考案の断熱紙カップは、紙カップ本体と、上下共に開口しており紙カップ本体における胴部外周に押し込まれて嵌挿された板紙製の外筒とからなり、外筒は上下方向に延びる折畳み用の2本の罫線と下方側にのみ形成された複数の罫線とを備え、それらの罫線により上部が円形状であると共に下部が多角形状をした折畳み式のものであって、紙カップ本体に嵌挿された時にその上端近傍において紙カップ本体における胴部外周の上部に密着していると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体における胴部外周の下部に密着しており、外筒の下部における多角形の角部により断熱空間が形成されていることを特徴としている。
[作用]
上記構成の断熱紙カップにおいては、嵌挿された外筒の上端近傍及び下端近傍がそれぞれ紙カップ本体における胴部外周の上部及び下部に密着しているので、外筒が紙カップ本体から外れるのが防止される。
また、外筒の下部における多角形の角部により外筒と紙カップ本体との間に空間が形成されるので、紙カップ本体の胴部と外筒による断熱作用に加えてこの空間により断熱作用が行われる。
[実施例]
以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
第1図に示される断熱紙カップ1は、紙カップ本体2とその胴部外周に押し込まれて嵌挿された外筒3とから構成されている。
紙カップ本体2は、第2図に示すように従来の紙カップと同様のものであり、内面若しくは内外両面にポリエチレン等の合成樹脂をコーティングした紙からなるブランク板を巻回しその両端を貼合部4で貼り合わせて胴部5を構成した後、該胴部5の下方に同じ紙からなる底板6を巻き締めると共に、上方開口縁に外向きカール部7が形成されたものである。
一方、外筒3は板紙で構成されるもので、第3図に示すように、上下が共に開口しており上部が円形で下部が多角形となっている。この外筒3は、第4図に示す横に長い扇状のブランク板8を罫線a及び罫線bで折り曲げその両端を貼り合わせることにより第5図に示すようにサック貼りして折り畳んだ状態とし、紙カップ本体2に嵌挿するに際してこれを筒状に起こして第3図の状態とされるもので、筒状に起こす時に、ブランク板8に形成された複数の罫線cを折ってその下部が多角形とされる。そして、外筒3の高さは紙カップ本体2と略同じとされている。また、外筒3における上部の開口は紙カップ本体2における胴部5外周の上端、すなわちカール部7直下の径より僅かに小さくなるように、かつ、外筒3における下部の開口はその多角形の各辺の中心部を結ぶ円が紙カップ本体2における胴部5外周の下端の径より僅かに小さくなるようにそれぞれその寸法が決められている。
第1図に示す断熱紙カップ1は紙カップ本体2に外筒3を嵌挿することにより形成されるが、外筒3における上下開口の寸法が上記のようになっているので、外筒3は紙カップ本体2の胴部5外周に押し込むようにして嵌挿される。したがって、外筒3はその上端近傍において紙カップ本体2における胴部5外周の上部に密着すると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体2における胴部5外周の下部に密着した状態でしっかりと固定されることになる。なお、内容物を食べる場合などの使用時には外筒3の外側を手で持つことになるが、中身の重量により紙カップ本体2と外筒3が嵌入する方向に力が働くので、使用中に外れることがない。
上記の構成からなる断熱紙カップ1では、外筒3における多角形の角部により紙カップ本体2と外筒3との間に空間が形成される。したがって、紙カップ本体2の胴部5と板紙製の外筒3による断熱作用に加えてこの空間により断熱作用が行われることになり、紙カップ本体2の中に注がれた熱湯の熱が外筒3の外側面にまで伝わるのが防止される。
第6図は外筒3を形成するブランク板の別の例を示している。このブランク板9は第4図に示すブランク板8の下方に折返し部10を設けた形態のものであり、この折返し部10は罫線a、罫線b及び複数の罫線cの延長線に沿って切り離されて複数の折返し片11を形成している。そして、この各折返し片11を第7図に示すように罫線dで内側に折り曲げて接着した状態とし、次いで第5図に示したのと同様にサック貼りして折り畳んだ状態とした後、これを起こして第3図に示すのと同様な形状とするものである。このような外筒3を用いた断熱紙カップ1においては、折返し片11があることにより、紙カップ本体2と外筒3との間の空間が先の実施例のものに比べて広くなる。また、折返し片11が在る部分では板紙が一枚増えるので断熱効果が一層高くなる。
なお、上記の各実施例では、外筒3の高さを紙カップ本体2と略同じ高さとし、外筒3が紙カップ本体2の胴部5外周を全て覆うようにした例を示したが、少なくとも手で持つ部分に外筒3があれば上記したのと同様に断熱作用を奏するので、外筒3を短くして外筒3より上側及び下側或いはそのどちらか一方に紙カップ本体2の胴部5外周が露出している形態としても構わないものである。ただし、この場合においても、外筒3を紙カップ本体2に嵌挿した時に外筒3がその上端近傍において紙カップ本体2における胴部5外周に密着すると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体2における胴部5外周に密着するように、外筒3の寸法が決められる。
[考案の効果]
本考案の断熱紙カップは上述のように構成されているので、紙カップ本体に折畳み式の外筒を嵌挿するという簡単な工程で製造することができ、しかも、それぞれが低い熱伝導率であることに加えて紙カップ本体と外筒の間には空間が存在しているので、高い断熱効果を有することができる。
また、紙カップ本体に外筒を押し込んで嵌挿することにより両者を密着させるようにしたので、接着剤を用いた場合のようにその臭いが内容物に移るということがない。
また、紙カップ本体及び外筒は共に紙でできており焼却が可能なことから、本考案の断熱紙カップは廃棄処分が容易である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案に係る断熱紙カップの一実施例を示す斜視図、第2図は紙カップ本体の斜視図、第3図は外筒の斜視図、第4図は外筒を形成するブランク板を示す平面図、第5図は第4図に示すブランク板をサック貼りした状態を示す平面図、第6図は外筒を形成するブランク板の別の例を示す平面図、第7図は第6図に示すブランク板の折返し片を折り曲げて接着した状態を示す平面図である。
1…断熱紙カップ、2…紙カップ本体、3…外筒、4…貼合部、5…胴部、6…底板、7…カール部、8,9…ブランク板、10…折返し部、11…折返し片、a,b,c…罫線
訂正の要旨 (3)訂正の要旨
▲1▼訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る記載を次のように訂正する。
「紙カップ本体と、上下共に開口しており紙カップ本体における胴部外周に押し込まれて嵌挿された板紙製の外筒とからなり、外筒は上下方向に延びる折畳み用の2本の罫線と下方側にのみ形成された複数の罫線とを備え、それらの罫線により上部が円形状であると共に下部が多角形状をした折畳み式のものであって、紙カップ本体に嵌挿された時にその上端近傍において紙カップ本体における胴部外周の上部に密着していると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体における胴部外周の下部に密着しており、外筒の下部における多角形の角部により断熱空間が形成されていることを特徴とする断熱紙カップ。」
▲2▼訂正事項b
実用新案登録明細書(以下、行数は平成8年7月29日付けの手続補正書の記載に基づく)の第2頁第10?17行目の「上記目的を達成するために、……ことを特徴としている。」を次のように訂正する。
「上記目的を達成するために、本考案の断熱紙カップは、紙カップ本体と、上下共に開口しており紙カップ本体における胴部外周に押し込まれて嵌挿された板紙製の外筒とからなり、外筒は上下方向に延びる折畳み用の2本の罫線と下方側にのみ形成された複数の罫線とを備え、それらの罫線により上部が円形状であると共に下部が多角形状をした折畳み式のものであって、紙カップ本体に嵌挿された時にその上端近傍において紙カップ本体における胴部外周の上部に密着していると共に下端近傍においては多角形の各辺の中心部で紙カップ本体における胴部外周の下部に密着しており、外筒の下部における多角形の角部により断熱空間が形成されていることを特徴としている。」
異議決定日 2000-05-08 
出願番号 実願平2-119673 
審決分類 U 1 651・ 161- YA (B65D)
U 1 651・ 121- YA (B65D)
最終処分 維持    
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 市野 要助
祖山 忠彦
登録日 1998-03-13 
登録番号 実用新案登録第2573020号(U2573020) 
権利者 大日本印刷株式会社
東京都新宿区市谷加賀町1丁目1番1号
考案の名称 断熱紙カップ  
代理人 土井 育郎  
代理人 土井 育郎  

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