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審決分類 審判 一部申し立て   F16C
管理番号 1020871
異議申立番号 異議1999-70819  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-02 
確定日 2000-05-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第2581865号「直線摺動用装置」の請求項1ないし3に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2581865号の請求項1ないし3に係る実用新案登録を取り消す。
理由 I.手続きの経緯
本件実用新案登録第2581865号の考案は、平成5年12月7日に出願され、平成10年7月17日に設定登録がされ、その後、実用新案登録異議申立人 廣原守より、実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成11年8月9日に訂正請求がなされ、平成11年8月30日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、権利者からは何らの応答もなかったものである。

II.訂正の適否
1.新規事項の追加について
実用新案登録権者は、実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び段落【0007】に記載されている「張力付与手段を備えたこと」を「張力付与手段を備えており、上記張力付与手段は、…カバー部材の一端が係止される張力付与金具を有し、…カバー部材に張力を付与すること」と訂正すること、また、段落【0010】に記載されている「必要はない。」の後に「加えて、本考案の張力付与手段は、…カバー部材の一端が係止される張力付与金具を有し、…カバー部材に張力付与されるようになっているので、直線摺動用装置の使用時にベアリング本体がカバー部材に摺接してこのカバー部材に摩擦力が作用した際に、カバー部材に作用する張力は摩擦力に応じて若干変動することがあっても、このカバー部材の位置が変動することはなく、優れたシール効果が保たれる。」との文章を追加する訂正をすること、さらに、段落【0035】に記載されている「必要はない。」の後に「加えて、本考案の張力付与手段によれば、直線摺動用装置の使用時にベアリング本体がカバー部材に摺接してこのカバー部材に摩擦力が作用しても、このカバー部材の位置が変動することはなく、優れたシール効果が保たれる。」との文章を追加する訂正をすることを求めているが、「係止される」及び「カバー部材の位置が変動することはなく」との記載については、実用新案登録明細書又は図面に記載されておらず、それらの記載から直接的かつ一義的に導き出せるものでもない。
したがって、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正とは認められない。

2.独立実用新案登録要件について
(1).訂正明細書の請求項1記載の考案
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正考案1」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】長手方向に間隔をおいてボルト挿通穴を開設し、ボルトで固定ベッド上に取り付けられるレール本体に、ベアリング本体を直線移動可能に嵌合させ、該ベアリング本体と前記レール本体との対向面間に転動体を介装した直線摺動用装置において、薄板材で形成され前記レール本体の前記ボルト挿通穴の開口を通る長手方向全長の上部に配置されるカバー部材と、該カバー部材を長手方向に張力を調節可能にレール本体に取付ける張力付与手段とを備えており、上記張力付与手段は、先端がレール本体の端部に当接する引っ張りボルトを具備すると共にカバー部材の一端が係止される張力付与金具を有し、上記引っ張りボルトをねじ込むことによりカバー部材に張力を付与することを特徴とする直線摺動用装置。

(2).引用刊行物記載の考案
訂正考案1に対し当審が訂正拒絶理由通知において提示した刊行物1(実用新案登録異議申立人が提出した甲第1号証である実公平4-26482号公報)には、その明細書の記載事項及び図面の記載からみて、「長手方向に間隔をおいてボルト挿通穴5を開設し、ボルトで基台3上に取り付けられる案内レール1に、スライダ2を直線移動可能に嵌合させ、該スライダと前記案内レールとの対向面間にボール14を介装したリニアガイド装置において、帯状板21で形成され前記案内レール1の前記ボルト挿通穴5の開口を通る長手方向全長の上部に配置された防塵板と、該防塵板を案内レール1に取り付ける固定部材とを備え」、「案内レール1には長手方向に沿って平らな帯状板21で構成された防塵板を装着する凹条1Aを形成したリニアガイド装置」が記載されているものと認められる。
また、同様に提示した刊行物2には、「工作機械の案内面上を覆い、一端を案内面端の不動部分に固定され、他端を張力調整可能に止着して、案内面を切屑などから保護する案内面保護カバーの張力調整機構」(第2頁第4行?7行)に関し、「保護カバーの張力調整機構10は、…一対の固定ボルト11と、保護カバー1の端縁部を止着し、前記固定ボルト11に摺動自在に嵌合する展張ブロック12と、…調整プレート13と、…保護カバー1を緊張側に付勢するコイルばね14と、…調整プレート13に螺合して貫通し、先端を案内面端部4に当接する調整ボルト15とから成っている。」(第6頁第3?13行)こと、「調整ボルト15を右に回転させると、調整プレート13は各図において右方向に引き寄せられ、コイルばね14は圧縮量が増大して保護カバー1の張力は大きくなる。」(第7頁第13?16行)こと、及び図面の記載からみて、「保護カバーを長手方向に張力を調整可能にテーブルに取り付ける張力調整機構を備えており、上記張力調整機構は、先端がテーブルの端部に当接する調整ボルトを具備すると共に保護カバーの一端が止着される展張ブロックを有し、上記調整ボルトを右に回転させることにより保護カバーに張力を付与する」案内面保護カバーの張力調整機構が記載されているものと認められる。

(3).対比・判断
訂正考案1と刊行物1記載の考案とを対比すると、刊行物1記載の考案の「基台」、「案内レール」、「スライダ」、「ボール」、「リニアガイド装置」、「帯状板」及び「防塵板」は、それぞれ訂正考案1の「固定ベッド」、「レール本体」、「ベアリング本体」、「転動体」、「直線摺動用装置」、「薄板材」及び「カバー部材」に相当するから、両者は以下の一致点及び相違点があるものと認められる。
[一致点]
長手方向に間隔をおいてボルト挿通穴を開設し、ボルトで固定ベッド上に取り付けられるレール本体に、ベアリング本体を直線移動可能に嵌合させ、該ベアリング本体と前記レール本体との対向面間に転動体を介装した直線摺動用装置において、薄板材で形成され前記レール本体の前記ボルト挿通穴の開口を通る長手方向全長の上部に配置されるカバー部材とを備えている直線摺動用装置。
[相違点]
カバー部材のレール本体への取付構造に関し、本件考案1では、「カバー部材を長手方向に張力を調整可能にレール本体に取り付ける張力付与手段を備えており、上記張力付与手段は、先端がレール本体の端部に当接する引っ張りボルトを具備すると共にカバー部材の一端が係止される張力付与金具を有し、上記引っ張りボルトをねじ込むことによりカバー部材に張力を付与する」ものであるのに対し、刊行物1記載の考案では、取付のための固定部材は示されているものの、張力付与金具や引っ張りボルトといった張力付与手段については明記されていない点。
そこで、上記相違点について検討する。
・相違点について
上記刊行物2に記載の「張力調整機構」は、訂正考案1の「張力付与手段」と、同様に「調整ボルト15」は「引っ張りボルト」と、「保護カバー1」は「カバー部材」と、「止着」は「係止」と、「展張ブロック12」は「張力付与金具」と、「右に回転させる」は「ねじ込む」と、それぞれ機能上等価なものと認められるから、刊行物2には「カバー部材を長手方向に張力を調整可能にテーブルに取り付ける張力付与手段を備えており、上記張力付与手段は、先端がテーブルの端部に当接する引っ張りボルトを具備すると共にカバー部材の一端が係止される張力付与金具を有し、上記引っ張りボルトをねじ込むことによりカバー部材に張力を付与する」点が記載されているものと認められる。そして、刊行物1及び2に記載のものは、案内面への異物の侵入を防止するカバーに関するものであって、技術的関連性を有するものであるから、刊行物1記載の考案に刊行物2に記載の考案を適用し訂正考案1のように構成することは、当業者がきわめて容易に想到できたものと認められ、また、上記相違点において、訂正考案1のようにすることにより奏される効果も、刊行物1及び2記載のものから予測できる程度のものにすぎない。
(4).むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、また、本件訂正考案1は、上記刊行物1及び2記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用され同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

III.実用新案登録異議申立てについて
1.本件考案
実用新案登録第2581865号の請求項1、2及び3に係る考案(以下、それぞれ「本件考案1」、「本件考案2」及び「本件考案3」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】長手方向に間隔をおいてボルト挿通穴を開設し、ボルトで固定ベッド上に取り付けられるレール本体に、ベアリング本体を直線移動可能に嵌合させ、該ベアリング本体と前記レール本体との対向面間に転動体を介装した直線摺動用装置において、薄板材で形成され前記レール本体の前記ボルト挿通穴の開口を通る長手方向全長の上部に配置されるカバー部材と、該カバー部材を長手方向に張力を調節可能にレール本体に取付ける張力付与手段とを備えたことを特徴とする直線摺動用装置。
【請求項2】上記レール本体には長手方向に沿って上記カバー部材をはめ込む溝部を形成したことを特徴とする請求項1記載の直線摺動用装置。
【請求項3】上記カバー部材は薄平板材で構成したことを特徴とする請求項1、または請求項2記載の直線摺動用装置。

2.引用刊行物記載の考案
当審が取消理由において提示した刊行物1及び2には、上記「2.独立実用新案登録要件について」において示したとおりの考案が記載されているものと認められる。

3.対比・判断
<本件考案3について>
本件考案1及び2を特定する事項の全てを含む本件発明3と刊行物1記載の考案とを対比すると、刊行物1記載の考案の「基台」、「案内レール」、「スライダ」、「ボール」、「リニアガイド装置」、「凹条1A」、「平らな帯状板」及び「防塵板」は、それぞれ本件考案3の「固定ベッド」、「レール本体」、「ベアリング本体」、「転動体」、「直線摺動用装置」、「溝部」、「薄平板材」及び「カバー部材」に相当するから、両者は以下の一致点及び相違点があるものと認められる。
[一致点]
長手方向に間隔をおいてボルト挿通穴を開設し、ボルトで固定ベッド上に取り付けられるレール本体に、ベアリング本体を直線移動可能に嵌合させ、該ベアリング本体と前記レール本体との対向面間に転動体を介装した直線摺動用装置において、薄平板材で形成され前記レール本体の前記ボルト挿通穴の開口を通る長手方向全長の上部に配置されるカバー部材とを備え、レール本体には長手方向に沿って上記カバー部材を配置する溝部を形成した直線摺動用装置。
[相違点1]
本件考案3では、「カバー部材を長手方向に張力を調整可能にレール本体に取り付ける張力付与手段を備え」ているのに対し、刊行物1記載の考案では張力付与手段について明記されていない点。
[相違点2]
本件考案3では、レール部材にカバー部材をはめ込む溝部を形成しているのに対し、刊行物1記載の考案では、案内レールに防塵板を装着する凹条を形成しているものの、そこに防塵板をはめ込むものかどうか不明な点。
そこで、上記相違点1及び2について検討する。・相違点1について
上記「2.独立実用新案登録要件について」において示したとおりの理由により、本件考案3は刊行物1及び2記載の考案から、当業者がきわめて容易になし得る程度のものと認められる。
・相違点2について
刊行物1記載の防塵板は、凹条の幅に合わせた幅に形成されている(公報第3頁左欄第3?6行参照)ことから、防塵板の幅は凹条の幅と略同じと解することができる。
そして、このように幅の略同じ部材同志をはめ込み装着することは、普通に行われているから、刊行物1記載の考案において、凹条に防塵板をはめ込むものとすることは、当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。
<本件考案1及び2について>
また、本件考案1及び2を特定する事項の全てを含む本件考案3が、刊行物1及び2記載のものから、当業者がきわめて容易になし得たものである以上、本件考案1及び2も、同様の理由により、当業者がきわめて容易になし得たものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件考案1?3に係る実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-03-24 
出願番号 実願平5-65360 
審決分類 U 1 652・ 121- ZB (F16C)
最終処分 取消    
前審関与審査官 松下 聡  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 和田 雄二
西村 敏彦
登録日 1998-07-17 
登録番号 実用新案登録第2581865号(U2581865) 
権利者 テイエチケー株式会社
東京都品川区西五反田3丁目11番6号
考案の名称 直線摺動用装置  
代理人 成瀬 勝夫  

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