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審決分類 |
審判 全部申し立て H02K |
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管理番号 | 1020874 |
異議申立番号 | 異議1999-71020 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-02-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-03-15 |
確定日 | 2000-04-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第2580799号「電動機およびその固定子」の請求項1ないし2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2580799号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件実用新案登録第2580799号は平成5年5月25日に出願され、平成10年7月3日に設定登録されたものである。 これに対して、平成11年3月15日に実用新案登録異議申立人 草津電機株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、平成11年7月22日付で当審より取消理由を通知したところ、平成11年10月8日付で訂正請求がなされた。これに対して、平成11年11月8日付で当審より訂正拒絶理由を通知したところ、平成12年1月25日付で意見書及び訂正請求取下書が提出されたものである。 [2]実用新案登録異議申立てについての判断 【1】請求項1?2に係る考案 上記したように、平成11年10月8日付訂正請求は取り下げられたから、本件実用新案登録第2580799号の請求項1?2に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1?2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 固定子鉄心の表面に所定の厚さに絶縁用の樹脂材を被覆するとともに、この樹脂材を上記固定子鉄心の外周部に円筒状に固定子鉄心と一体的に所定の厚さで固定子鉄心の両端側にそれぞれ突き出して固定子組立時の電動機ケースを兼ねるように形成し、 上記樹脂材を被覆した固定子鉄心に巻線を樹脂材中に埋設しているものでなく自然放熱するようにして上記樹脂材の円筒状の突き出し部で保護できるように巻回したことを特徴とする固定子。 【請求項2】 固定子鉄心の表面に所定の厚さに絶縁用の樹脂材を被覆するとともに、この樹脂材を上記固定子鉄心の外周部に円筒状に固定子鉄心と一体的に所定の厚さで固定子鉄心の両端側にそれぞれ突き出して固定子組立時の電動機ケースを兼ねるように形成し、 上記樹脂材を被覆した固定子鉄心に巻線を樹脂材中に埋設しているものでなく 自然放熱するようにして上記樹脂材の円筒状の突き出し部で保護できるように巻回していて、 上記固定子鉄心の外周部の円筒状の突き出し部にブラケット取付部を設けて、このブラケット取付部にブラケットを取り付けて電動機を組み立てたことを特徴とする電動機。 【2】引用刊行物記載の考案 当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開平1ー286748号公報)には、従来技術に関して、「第7図に示す如くフレーム材質を金属から加工が容易である樹脂等に変更することが行われている。」(公報第1頁右下欄第3行?第5行)、と記載されており、この従来技術のものでは、「固定子コア2が巻線4とともにモータフレーム本体1Bに埋設されているため、使用中に発生した熱が拡散し難く、モータ性能の低下を避けられないという不都合があった。」(公報第2頁左上欄第2頁?第5頁)という認識の下に、「熱拡散効果を大きくして固定子コアをモータフレーム本体に強固に取り付け、巻線の断線、絶縁の劣化等を引き起こすことなく能率良く製作できるようにすることを目的と」(公報第2頁左上欄第9行?第12行)した、次の考案が記載されている。 固定子コア2の外周部に樹脂製のモータフレーム本体1を該モータフレーム本体と一体に形成した連結片11を介して支持するとともに、このモータフレーム本体1を上記固定子コア2の外周部に円筒状に固定子コア2と一体的に所定の厚さで固定子コア2の両端側にそれぞれ突き出して形成し、 上記樹脂製のモータフレーム本体1を支持した固定子コア2に巻線4を樹脂材中に埋設しているものでなく自然放熱するようにして上記樹脂製のモータフレーム本体1の円筒状の突き出し部で保護できるように巻回した固定子。 また、固定子コア2の外周部の円筒状の突き出し部に端板5、6をボルト締結等により取り付けた電動機の構成。 同じく取消理由に引用した刊行物2(実願平3ー33573号(実開平4ー121360号)のマイクロフィルム)には、 固定子鉄心2の外周面に樹脂フレーム4を被覆し、上記樹脂フレーム4を被覆した固定子鉄心2に固定子巻線3を樹脂材中に埋設せず、自然放熱するように巻回し、上記樹脂フレーム4の端面に負荷側ブラケット6および反負荷側ブラケット7を支持するようにした固定子鉄心、が記載されている。 【3】対比・判断 (請求項1に係る考案について) そこで、請求項1に係る考案と刊行物1の考案とを比較すると、刊行物1中の 「固定子コア2」、「樹脂製のモータフレーム本体1」、「巻線4」は、それぞれ請求項1に係る考案の 「固定子鉄心」、「樹脂材」、「巻線」に相当し、刊行物1における、固定子鉄心の外周部に樹脂製のモータフレーム本体1を該モータフレーム本体と一体に形成した連結片11を介して支持することも、請求項1に係る考案における「固定子鉄心の表面に所定の厚さに絶縁用の樹脂材を被覆する」ことも共に「固定子鉄心表面に樹脂材を支持」することであるから、両者は、 「固定子鉄心表面に樹脂材を支持するとともに、この樹脂材を上記固定子鉄心の外周部に円筒状に固定子鉄心と一体的に所定の厚さで固定子鉄心の両端側にそれぞれ突き出して形成し、 上記樹脂材を支持した固定子鉄心に巻線を樹脂材中に埋設しているものでなく自然放熱するようにして上記樹脂材の円筒状の突き出し部で保護できるように巻回した固定子。」で一致し、次の点で相違する。 相違点1. 請求項1に係る考案では、固定子鉄心に樹脂材を支持する形態として、「固定子鉄心の表面に所定の厚さに絶縁用の樹脂材を被覆する」構成を採用しているに対し、刊行物1に記載のものでは、固定子鉄心に樹脂材を支持する構成として、上記構成に該当するものは記載されていない点。 相違点2. 請求項1に係る考案では、樹脂材を「固定子組立時の電動機ケースを兼ねるように」形成しているに対し、刊行物1のものでは固定子鉄心の両端側にそれぞれ突き出した樹脂材を「固定子組立時の電動機ケースを兼ねるように」形成しているのか否か、記載されていない点。 そこで、上記相違点につき、以下に検討する。 相違点1.について、 刊行物1のものは、その従来技術に、固定子鉄心が巻線とともに樹脂材に埋設された構成が示されており、該構成では熱が拡散し難いという認識の下に、固定子鉄心外周部及び巻線の双方共、樹脂材中に埋設しない構成を採用することにより、固定子鉄心からの熱拡散、及び巻線からの熱拡散の両方を改善するようにしたものと認められる。 したがって、例えば巻線からの熱拡散を主に改善し、固定子鉄心外周部からの熱拡散を特に問題にしない場合に、巻線のみを樹脂材中に埋設させない構成を採用することは、当業者が必要に応じて行う設計変更の範囲と認められる。 そして、上記刊行物2には、固定子鉄心2(請求項1に係る考案の「固定子鉄心」に相当)の外周面に樹脂フレーム4(「樹脂材」に相当)を被覆し、上記樹脂材を被覆した固定子鉄心に固定子巻線3(「巻線」に相当)を樹脂材中に埋設せず、自然放熱するように巻回しその端面に負荷側ブラケット6および反負荷側ブラケット7を支持するようにした固定子鉄心、が記載されている以上、刊行物2に記載された構成を刊行物1に記載のものに施し、該被覆された樹脂材により突き出し部を支持するようにして、請求項1に係る考案の構成とすることは、上記設計変更を行う過程で、当業者がきわめて容易に着想し得るところと認められる。 相違点2.について、 上記の如く、刊行物2のものを刊行物1のものに施すことにより、固定子は、固定子鉄心の表面に所定の厚さに樹脂材が被覆され、かつ、樹脂材を固定子鉄心の外周部に円筒状に固定子コアと一体的に所定の厚さで固定子鉄心の両端側にそれぞれ突き出して形成した構成を有することになるが、該構成によって、固定子鉄心が樹脂材で被覆される他、固定子組立時、巻線部を樹脂材の突き出し部で保護し得、したがって電動機ケースとして兼ね得ることは、上記構成から当然に生じる作用効果に過ぎず、したがって上記相違点2は格別のものではない。 (請求項2に係る考案について) 請求項2に係る考案と刊行物1に記載の考案とを比較すると、刊行物1中の「端板5、6」、「ボルト締結等により取り付け」は、それぞれ、請求項2に係る考案の「ブラケット」、「ブラケット取付部を設けて、このブラケット取付部にブラケットを取り付け」に相当し、両者の間には、上記1、2の相違点以外の相違点はない。 そして、上記相違点1、2に対する判断は、請求項1に係る考案において述べたとおりである。 【4】むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1?2に係る考案は、上記刊行物1、2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、旧実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることが出来ない。 したがって、本件請求項1?2に係る実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものである。 よって、平成6年法律第116号附則第9条第4項及び第7項並びに第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第3条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-03-02 |
出願番号 | 実願平5-32835 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Z
(H02K)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 山下 喜代治、下原 浩嗣 |
特許庁審判長 |
吉村 宅衛 |
特許庁審判官 |
西川 一 岩本 正義 |
登録日 | 1998-07-03 |
登録番号 | 実用新案登録第2580799号(U2580799) |
権利者 |
三相電機株式会社 兵庫県姫路市青山北一丁目1番1号 |
考案の名称 | 電動機およびその固定子 |
代理人 | 森本 邦章 |
代理人 | 藤本 昇 |
代理人 | 鈴木 活人 |
代理人 | 大内 信雄 |