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審決分類 審判 全部申し立て   G02B
管理番号 1020879
異議申立番号 異議2000-70701  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-02-16 
確定日 2000-08-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2598765号「回転装置へのミラー取り付け構造」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2598765号の請求項1及び2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2598765号の請求項1及び2に係る考案は、平成4年12月18日に実用新案登録出願され、平成11年6月18日にその設定の登録がなされ、その後、キャノン株式会社により実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年7月13日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否に対する判断
2-1.訂正事項
(a)実用新案登録明細書の請求項1「回転装置へ屈曲片を有するバネ部材を介してロータと一体回転自在に取り付けた回転装置へのミラー取り付け構造において、ミラーに屈曲片の逃がし部を設け、この逃がし部に前記ミラーに当接するバネ部材の屈曲片端部が位置するように前記ミラーを取り付けたことを特徴とする回転装置へのミラー取り付け構造。」を「回転装置へ屈曲片を有するバネ部材を介してロータと一体回転自在に取り付けた回転装置へのミラー取り付け構造において、ミラーに屈曲片の逃がし部を設け、この逃がし部に前記ミラーに当接するバネ部材の屈曲片端部が位置するように前記ミラーを取り付け、上記バネ部材の屈曲片端部の先端が上記逃がし部に突出しているようにしたことを特徴とする回転装置へのミラー取り付け構造。」に訂正する。
(b)同じく、考案の詳細な説明の記載を、上記請求項1の訂正との整合を図るために訂正明細書のアンダーラインを付したとおりに訂正する。
(c)同じく、【0008】の「バランスシート」を「バランスプレート」に、【0010】中の「ミラー4」を「ミラー3」に訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(a)は、バネ部材の屈曲片端部の逃がし部に対する取付位置を、明細書及び図1の記載に基づいて、具体的に限定したものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当し、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張しまたは変更するものではない。
また、上記訂正事項(b)は、実用新案登録請求の範囲の訂正に伴って、考案の詳細な説明を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、上記訂正事項(c)は、明らかな誤記の訂正に該当する。
そして、上記訂正事項(a)ないし(c)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新規事項の追加に該当しない。
2-3.訂正の適否に対するむすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第2項の規定及び同条第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.異議の申立てについて
実用新案登録異議申立人キャノン株式会社は、本件の請求項1及び2に係る考案は、甲第1号証(実願昭62-51892号(実開昭63-160524号)のマイクロフィルム)に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その実用新案登録を取り消すべき旨主張している。
3-1.本件考案
本件の請求項1及び2に係る考案は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】回転装置へ屈曲片を有するバネ部材を介してロータと一体回転自在に取り付けた回転装置へのミラー取り付け構造において、ミラーに屈曲片の逃がし部を設け、この逃がし部に前記ミラーに当接するバネ部材の屈曲片端部が位置するように前記ミラーを取り付け、上記バネ部材の屈曲片端部の先端が上記逃がし部に突出しているようにしたことを特徴とする回転装置へのミラー取り付け構造。
【請求項2】 逃がし部はミラー端面に設けられた環状の溝である請求項1に記載の回転装置へのミラー取り付け構造。」
3-2.甲第1号証記載の考案
この出願前頒布された刊行物である甲第1号証(実願昭62-51892号(実開昭63-160524号)のマイクロフィルム)には、
「第1図に於いて、符号10は本考案の多面鏡の1実施例を示している。多面鏡10の本体部は扁平多角柱状であって、その周面は鏡面に仕上げられている。この本体部の回転軸に直交する2つの面の一方に、中空円柱状部分10Aが本体部と一体に形成されている。この多面鏡10をスキャナモーター200に組込むには、・・・多面鏡10をその中空円柱状部分10Aにより直接手で保持して、そのはめ合穴を第2図に示すように、スキャナーモーター200のはめ合い用の扁平円柱状凸部200Aにきっちりとはめ合わせる。そして、第2図に示すように弾性部材20を介して押圧部材30をモーター軸200Bにはめ込んで上方から押圧し、さらにモーター軸の軸溝200C(第1図参照)にグリップリング40をかませて、全体を固定する。」(3頁9行?4頁5行)と記載されている。
また、第2図には、多面鏡10の本体部の一端面に設けられた中空円柱状部分10Aとモーター軸200Bとの間に環状の空隙が形成され、前記中空円柱状部分10Aの図示上端面の外周及び内周側に段差部が構成されるものに於いて、中空円柱状部分10Aの図示上端面に波形板状の弾性部材20の屈曲片端部が位置するように多面鏡10をスキャナモーター200に取り付けたものが図示されている。
上記によれば、甲第1号証には、「スキャナモーターに波形板状の弾性部材を介して多面鏡を取り付けるものにおいて、多面鏡の本体部の一端面に設けられた中空円柱状部分とモーター軸との間に環状の空隙が形成され、前記中空円柱状部分の上端面の外周及び内周側に段差部が構成され、中空円柱状部分の上端面に波形板状の弾性部材の屈曲片端部が位置するようにしたスキャナモーターへの多面鏡取り付け構造」の考案が記載されている。
3-3.当審の判断
[請求項1について]
本件の請求項1に係る考案(以下、「本件考案1」という)と甲第1号証記載の考案を対比する。
甲第1号証記載の考案の「スキャナモーター」、「波形板状の弾性部材」及び「多面鏡」は、本件考案1の「ロータと一体回転自在に取り付けた回転装置」、「屈曲片を有するバネ部材」及び「ミラー」に相当し、両者は、「回転装置へ屈曲片を有するバネ部材を介してロータと一体回転自在に取り付けた回転装置へのミラー取り付け構造」である点で一致する。
又、甲第1号証記載の考案において、中空円柱状部分の上端面の外周及び内周側の段差部は、一見、本件考案1の逃がし部に類似している。しかし、第2図に示されるように、ミラーを取り付けた状態で、波形板状の弾性部材の屈曲片端部が中空円柱状部分の上端面に位置しており、該屈曲片端部の先端が段差部に突出していないから、前記段差部は、ミラーを取り付ける過程で屈曲片の端部がミラーの当接面に食い込むのを防ぐということはありえない。
そして、本件考案1は、バネ部材の屈曲片端部の先端が上記逃がし部に突出しているので、ミラーとの食い込みを生ずることはないから、低温雰囲気での使用時、ミラーの中心軸方向への縮みを吸収することができるという明細書記載の格別の効果を奏するものである。
したがって、本件考案1が、甲第1号証に記載された考案であるとすることはできない。
[請求項2について]
本件の請求項2に係る考案は、請求項1の構成を全て引用し、さらに、逃がし部の構成を具体的に限定したものであるから、本件考案1が、甲第1号証に記載された考案であるとすることができない以上、請求項2に係る考案も同様の理由により、甲第1号証に記載された考案であるとすることができない。
3-4.むすび
以上のとおり、実用新案登録異議の申立の理由及び証拠によっては、本件の請求項1及び2に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
回転装置へのミラー取り付け構造
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 回転装置へ屈曲片を有するバネ部材を介してロータと一体回転自在に取り付けた回転装置へのミラー取り付け構造において、ミラーに屈曲片の逃がし部を設け、この逃がし部に前記ミラーに当接するバネ部材の屈曲片端部が位置するように前記ミラーを取り付け、上記バネ部材の屈曲片端部の先端が上記逃がし部に突出しているようにしたことを特徴とする回転装置へのミラー取り付け構造。
【請求項2】 逃がし部はミラー端面に設けられた環状の溝である請求項1に記載の回転装置へのミラー取り付け構造。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、回転装置へのミラー取り付け構造に係るもので、特にポリゴンミラーの取り付けに好適なミラー取り付け構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2?図4に、動圧軸受を有する回転装置にポリゴンミラーを取り付けた従来のポリゴンミラー取り付け構造の一例を示す。
同図において、1はロータ、2はロータ受体であり、前記ロータ1の上端側に形成された小径のフランジ部1aにポリゴンミラー3を嵌め込み、ロータ1の上端肩面部1bで支承し、前記フランジ部1aにバランスプレート4をネジ5で固定するとともに、バランスプレート4とポリゴンミラー3との間に環状の波形板バネ6を介装し、この波形板バネ6によりポリゴンミラー3をロータ側に弾力的に押圧するようにした構造である。
なお、図3?図4に示した波形板バネ6において、A_(1)?A_(3),B_(1)?B_(3)は板バネを形成している屈曲片6aの端部である。
【0003】
上記のように波形板バネ6を用いてポリゴンミラーを弾圧状態に固定しているのは、他の手段、例えばネジ止め手段ではミラーに歪が生じてしまい、光走査装置に適用した場合、レーザ光の焦点がぼやける等の問題があり、接着による手段も応力を生じてしまう欠点を有するためである。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上記に例示したポリゴンミラー取り付け構造にあっては、波形板バネ6はその径を大きくしながら押しつぶされる状態で装着されるため、波形板バネ6を形成している屈曲片6aの端部A_(1)?A_(3)がポリゴンミラー3の当接面に食い込み、低温雰囲気中での使用時にミラーが中心軸の方向に縮んだとき、大きな応力が発生し、ミラーが歪む。この歪発生は、ミラー面の平面度を悪化させ、レーザ光の焦点がぼやけたり、レーザ光の走査精度を悪くする。
【0005】
【考案の目的】
本考案は、上記問題を解消するためになされたものであって、波形板バネをミラーの当接面に食い込まないようにした回転装置へのミラー取り付け構造を提供することを主たる目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案は、回転装置へ屈曲片を有するバネ部材を介してロータと一体回転自在に取り付けた回転装置へのミラー取り付け構造において、ミラーに屈曲片の逃がし部を設け、この逃がし部に前記ミラーに当接するバネ部材の屈曲片端部が位置するように前記ミラーを取り付け、上記バネ部材の屈曲片端部の先端が上記逃がし部に突出しているようにした構造を要旨としている。
【0007】
【作用】
上記構成によれば、低温雰囲気での使用時、ミラーの中心軸方向への縮みは逃がし部で吸収されるため、即ち、上記逃がし部に前記ミラーに当接するバネ部材の屈曲片端部が位置していることにより、該屈曲片端部の先端は上記逃がし部に突出しているので、ミラーとの食い込みを生ずることはなく、縮みを吸収することができる。
【0008】
【実施例】
図1に、本考案の一実施例を示す。なお、図2?図4と同一または類似する部材には同じ符号が付されている。
図1において、1はロータ、2はロータ受体、3はポリゴンミラー、4はバランスプレート、5はバランスプレートの固定ネジ、6は環状の波形板バネであり、前記ポリゴンミラー3の端面で、波形板バネ6を形成している屈曲片6aの端部が当接する部位に、前記逃がし部としての環状の逃がし溝部3aが設けられ、図示のように上記端部の先端が溝部3aに突出している。
【0009】
上記構成では、一般に波形板バネ6はバランスプレート4より硬質の材料が使用されていることから、板バネの装着時、その屈曲片6aの端部はバランスプレート4の当接面に食い込まれ、板バネはバランスプレートに係止され、移動することはない。
【0010】
しかして上記構成によれば、使用雰囲気での温度変化時におけるミラー3の中心軸方向への伸縮変形(実際には、ミラーおよび板バネの伸び、または縮みの差)は、板バネの屈曲片端部に当接しているミラー3の逃がし溝部3aにて吸収される。即ち、屈曲片6aの端部が本来当接するミラー3の部位には、逃がし溝部3aが設けられているので、屈曲片6aの端部の先端はミラー3より逃がし溝部3a側に突出することになり、屈曲片6aの端部の先端はミラー3には当接せず、食い込みが発生することはない。したがって、ミラー3の伸縮変形による応力歪の発生は抑えられる。
【0011】
なお、前記凹形逃がし溝3aは環状でなく、屈曲片端部が当接する部分だけの溝部であってもよい。また、エッジ部が逃げていれば、環状の凸部であってもよい。
【0012】
【考案の効果】
以上に述べたように、本考案によれば、屈曲片を有するバネ部材を介してロータと一体回転自在に取り付けた回転装置へのミラー取り付け構造において、前記バネ部材を形成している屈曲片端部のミラー当接面への食い込みを確実になくし、ミラー側の応力歪の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の一実施例を示す回転装置へのミラー取り付け構造の断面図である。
【図2】
従来のミラー取り付け構造の断面図である。
【図3】
波形板バネの平面図である。
【図4】
波形板バネの側面図である。
【符号の説明】
1 ロータ
2 ロータ受体
3 ポリゴンミラー
3a 凹形逃がし溝部
4 バランスプレート
5 ネジ
6 波形板バネ
6a 板バネの屈曲片
訂正の要旨 訂正の要旨
(a)実用新案登録明細書の請求項1「回転装置へ屈曲片を有するバネ部材を介してロータと一体回転自在に取り付けた回転装置へのミラー取り付け構造において、ミラーに屈曲片の逃がし部を設け、この逃がし部に前記ミラーに当接するバネ部材の屈曲片端部が位置するように前記ミラーを取り付けたことを特徴とする回転装置へのミラー取り付け構造。」を「回転装置へ屈曲片を有するバネ部材を介してロータと一体回転自在に取り付けた回転装置へのミラー取り付け構造において、ミラーに屈曲片の逃がし部を設け、この逃がし部に前記ミラーに当接するバネ部材の屈曲片端部が位置するように前記ミラーを取り付け、上記バネ部材の屈曲片端部の先端が上記逃がし部に突出しているようにしたことを特徴とする回転装置へのミラー取り付け構造。」に訂正する。
(b)同じく、考案の詳細な説明の記載を、上記請求項1の訂正との整合を図るために訂正明細書のアンダーラインを付したとおりに訂正する。
(c)同じく、【0008】の「バランスシート」を「バランスプレート」に、【0010】中の「ミラー4」を「ミラー3」に訂正する。
異議決定日 2000-07-27 
出願番号 実願平4-91830 
審決分類 U 1 651・ 113- YA (G02B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 田部 元史  
特許庁審判長 青山 待子
特許庁審判官 吉田 禎治
稲積 義登
登録日 1999-06-18 
登録番号 実用新案登録第2598765号(U2598765) 
権利者 株式会社三協精機製作所
長野県諏訪郡下諏訪町5329番地
考案の名称 回転装置へのミラー取り付け構造  
代理人 永田 武三郎  
代理人 永田 武三郎  
代理人 阪本 善朗  

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