ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 一部申し立て G01C |
---|---|
管理番号 | 1020881 |
異議申立番号 | 異議1999-73249 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-02-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-08-24 |
確定日 | 2000-07-25 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第2591178号「ガイド光を備えたレーザ光出射装置」の請求項1,2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2591178号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。 同請求項2に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯、請求項に係る考案 実用新案登録第2591178号の請求項1,2に係る考案についての出願は、平成5年4月23日に出願され、平成10年12月18日に設定登録がなされ、その後平成11年8月24日に実用新案登録異議申立人林正雄より実用新案登録異議の申立てがなされ、平成11年11月8日に取消理由通知がなされたものである。 その請求項1,2に係る考案は、実用新案登録明細書および図面の記載から見て、実用新案登録請求の範囲の請求項1,2に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 「【請求項1】水平検出手段の出力を水平補正機構にフィードバックして装置自体の傾きを調整して、設定した勾配を保って第1のレーザ光を出射させるレーザ光学系を備えたレーザ光出射装置において、前記第1のレーザ光とは別の第2のレーザ光を出射させるレーザ光学系を備え、該第2のレーザ光を出射させるレーザ光学系は、前記水平検出手段の出力をフィードバックして調整された装置自体の傾きとは関係なく常に鉛直方向に第2のレーザ光を出射させてなることを特徴とするガイド光を備えたレーザ光出射装置。 【請求項2】脚体と、該脚体上に配設され水平に対して傾動できると共にレーザ光学系が配設されたベースと、該ベース上に配設された水平検出手段と、を備え、前記水平検出手段によって前記ベースの水平状態を保持するように傾動制御すると共に、第1のレーザ光を設定角に設定する勾配設定用光学素子と設定制御部と前記ベース上に装置自体の傾きとは関係なく鉛直方向に出射させてなるレーザ光学系を備えてなることを特徴とするガイド光を備えたレーザ光出射装置。」 2.異議申立ての概要 実用新案登録異議申立人林正雄は、証拠として甲第1号証(米国特許第4,333,242号公報)、甲第2号証(特開平2-179413号公報)、甲第3号証(実願昭58-176896号(実開昭60-83911号)のマイクロフィルム)、甲第4号証(特開昭64-65409号公報)を提出し、請求項1,2に係る考案は、実用新案登録法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、実用新案登録を取り消すべき旨主張している。 3.引用刊行物記載の考案 (1)これに対し、当審において通知した取消理由で引用した刊行物1(米国特許第4,333,242号公報)には、大略以下のことが図面とともに記載されている。 「装置のサポート機構を動作する際に、サポート機構は略平面に固定的に方向づけられたサポート面に対して位置され、足199、201、397、399の先端がサポート面に接触し、それによりハウジング11がサポート面の上に支持されている。・・・”NC”は傾斜の無変化を示し、“減”は減少傾斜を示し、“増”は増加傾斜を示している。」(12欄61行?14欄6行)、 「4.光学ベンチ 図2及び図3を参照すると、本発明装置の好ましい実施例は、装置の種々の部品を支持するための光学ベンチ511を含んでいる・・・3つの特定方向は、(1)軸Eに沿って且つ左壁17の通路67内の方向(”左”)、(2)軸Eに沿って且つ右壁19の通路107内の方向(”右”)、及び(3)軸Cに沿って且つトップ部13の通路31内の方向(“上”)である。」(14欄38行?16欄22行)、 「更に、ベンチ511は、サポート機構のターミナルユニット367、369に可変電位を印加することによりハウジング11のサポート面に対する直交関係を制御するレベル制御機構を支持している。レベル制御機構は、・・・回路663は、ターミナルユニット367、369に電位を印加し、印加された電位は、レベルアクチュエータ変換器の軸の水平に対する傾斜に依存している。」(20欄25行?48行)、 「好ましい実施例においては、ポテンショメータ793は、液体を部分的に満たし3個の電極を有する密封湾曲ガラスチューブからなる・・・それによりラインNが軸Rに平行になるように、ケース797のチャネル809に装着されている。」(23欄16行?48行)、 「更に、レベルコントロール機構の説明において示されたように、S668とS668Aが両方水平な時、指示ユニット837、869のスケールの目盛は、そぞれSEとSFを表している。・・・傾斜の角度は目盛の値により表され、各値は個々の頃斜の角度に対応している。」(36欄45行?37欄3行) (2)同じく刊行物2(特開平2-179413号公報)には、以下のことが図面とともに記載されている。 「本発明は・・・オートレベル等の測量機に係わり、特に、測量機本体を水平に位置決めするための整準装置が、測定者のマニュアル調整を必要とせず自動的に駆動される測量機に関するものである。」(1頁右下欄19行?2頁左上欄3行)、 「基盤2は、整準台21と底板22とからなっており、整準台21は、3個の整準ネジ23、23、23により上下動自在に支持されている。・・・3個の整準ネジ23、23、23に対して、それぞれ第1の歯車41、第2の歯車42、モータ43が取り付けられており、3個のモータ431、432、433を制御駆動することにより、整準台21の傾きを調整することができる。」(3頁左下欄5行?同頁右下欄6行)、 「制御手段6は、第1の傾斜センサ51と第2の傾斜センサ52の出力信号に基づき、整準台21を基準面に設定するために必要な整準ネジ23、23、23の変位量を演算するものである。・・・制御手段6は、それぞれの整準ネジの移動量に相当する制御信号を、対応する第1、2、3モータ駆動手71、72、73に送出する。・・・モータ431、432、433は、モータ駆動手段71、72、73から供給された電力により整準ネジ23、23、23を回動させ、整準台21の傾きを修正する。そして、第1、第2の傾斜センサ51、52は、再び整準台21の傾きを検出し、フィードバック制御を行うことにより、オートレベル1の鉛直軸を正確に鉛直に整準(基準面に設定)させることができる。」(4頁左上欄11行?右上欄13行)、 「また本実施例は、整準台21に載置する測量装置本体を自由に交換することができる。第3図は・・・水平面内に走査されるレーザー光線を、測量対象上で検出し、その到達高さから水準測量等を行ったり、鉛直方向にレーザー光線を視光させて、地上の基準点を移行設定させることができる。回転式レーザー投光機8は・・・第2の反射部85の反射光の内、90%を下方に放射することができる。即ち、第4図に示す様にレーザー光源部81の発射光の内、9%が、鉛直下方に放射されることになる。」(5頁左上欄11行?同頁左下欄7行)、 「第2の嵌合部材89は、レーザー光を鉛直方向に走査する場合に、回転式レーザー投光機8全体を回転させ、第2の嵌合部を整準台21に嵌合させるものである。」(5頁右下欄1行?5行) (3)同じく刊行物3(実願昭58-176896号(実開昭60-83911号)のマイクロフィルム)には、以下のことが図面とともに記載されている。 「鉛直レーザー管Aは、箱本体2の下方から旋回自在に垂下させる。一方、先端にコリメーターレンズ13を装備した回動レーザー管Cは、箱本体2の側面に回動自在取付け、この箱本体2を水平方向で回動自在に三脚台Dに載置してなるものである。」(3頁8?13行)、 「包持体1は、第3図及び第4図に示すように、2つの気泡管19、19をそれぞれ直交する方向に装備し」(4頁13?15行)、 「天井に照明器具等を取付ける場合を一例に鉛直だしについて説明すると、・・・鉛直レーザ管Aが自重により鉛直となるようにし、この時、鉛直レーザ管Aの下透過口9から出るレーザー光線aを地墨84に合せると、・・・鉛直出しをすることができ、・・・使用するものである。」(10頁5?19行) (4)同じく刊行物4(特開昭64-65409号公報)には、軸17を支点として回動可能に傾斜台18を器体1に設け、傾斜センサー台18に傾斜センサ19を設けた勾配調整装置に関し、以下のことが図面とともに記載されている。 「プリズム枠12にはカム部材16が連動して回転するように設けてあり、該カム部材16のカム面に、ビームエキスパンダー光軸Xに直交する軸17を支点として俯抑する傾斜センサ-台18の先端部が当接して、前記楔プリズム10、11の正逆回転により偏角するビーム光線の傾斜角度と一致する俯抑角度で傾斜センサー第18が傾斜するように構成してある。そして傾斜センサー台18には傾斜センサー19が設けてあり、傾斜角度に対応した電圧を出力し、・・・器体1の後壁等に設けたパネルメーター20に傾斜角度値を表示するように構成してある。」(2頁右下欄13行?3頁左上欄5行) 4.対比・判断 (1)請求項1に係る考案について 請求項1に係る考案と、刊行物2に記載された考案とを対比する。 a.刊行物2の「第1の傾斜センサ、第2の傾斜センサ」「整準ネジ23、第1、2、3モータ駆動手段71、72、73」「水平面内に走査されるレーザー光線」「基盤2、回転式レーザー投光機8」「鉛直方向のレーザー光線」はそれぞれ請求項1に係る考案の「水平検出手段」「水平補正機構」「第1のレーザ光」「レーザ光出射装置」「第2のレーザ光」に相当する。 b.本件登録明細書には、「【0017】本例のレーザ光出射装置Sは、図1で示すように、支持板1aと脚部1bとを備えた脚体としての固定ベース1と、ベースとしての可動ベース2と・・・とから構成されており、可動ベース2は水平補正機構7によって傾動可能に構成される。・・・【0022】・・・可動ベース2が常に水平を保っているため、可動ベース2上に設けたこれらの構成も常に水平からの角度を保ち、即ち、図2のように装置S自体の傾きとは関係なく設定した勾配θを保って出射し続けることが出来る。【0023】・・・この可動ベース2は前述のように常に水平を保っているため、第2のレーザ光L2は装置S自体の傾きとは関係なくいつでも鉛直方向に出射される。」と記載されており、これは請求項1に係る考案の「装置自体の傾き」との技術的事項が、「固定ベース1が傾くことによるレーザ光出射装置S全体の傾き」と捉えることができることを示すものである。よって、刊行物2の、底板22が傾くことによる装置全体の傾きが、請求項1に係る考案の「装置自体の傾き」に相当することになる。 c.刊行物2に、「制御手段6は、第1の傾斜センサ51と第2の傾斜センサ52の出力信号に基づき、整準台21を基準面に設定するために必要な整準ネジ23、23、23の変位量を演算する・・・制御手段6は、・・・制御信号を、対応する第1、2、3モータ駆動手71、72、73に送出・・・オートレベル1の鉛直軸を正確に鉛直に整準させることができる。」(4頁左上欄第11行?右上欄第13行)と記載されているのは上記のとおりであり、これは請求項1に係る考案の「装置自体の傾きとは関係なく常に鉛直方向に第2のレーザ光を出射させてなる」との技術的事項を示すものである。 上記a?cの考察から、両者は「水平検出手段の出力を水平補正機構にフィードバックして装置自体の傾きを調整して、設定した勾配を保って第1のレーザ光を出射させるレーザ光学系を備えたレーザ光出射装置において、前記第1のレーザ光と第2のレーザ光を出射させるレーザ光学系を備え、該第2のレーザ光を出射させるレーザ光学系は、前記水平検出手段の出力をフィードバックして調整された装置自体の傾きとは関係なく常に鉛直方向に第2のレーザ光を出射させてなることを特徴とするガイド光を備えたレーザ光出射装置」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 請求項1に係る考案のものは、第1のレーザ光と第2のレーザ光を出射させるレーザ光学系が「別の」ものであるのに対し、刊行物2のものは、具体的には、同じ「回転式レーザー投光機8」から2つのレーザー光が出射されている点。 上記相違点について検討すると、刊行物3には、鉛直レーザ管Aと回動レーザ管Cを別に構成したレーザ水平・鉛直出し器が記載されており、同じ技術分野に属する刊行物3の上記技術的事項を、刊行物2に適用することにより上記相違点の技術的事項とすることは、当業者がきわめて容易になし得る程度の事項である。 そして、本願考案が奏する作用効果は刊行物2,3に記載された考案から予測しうる程度のものである。 (2)請求項2に係る考案について 当審が通知した取消理由において引用した刊行物のいずれにも、請求項2に記載された「第1のレーザ光を設定角に設定する勾配設定用光学素子と、設定制御部」が記載されていないことから、請求項2に係る考案は、当該引用刊行物に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえない。 なお、実用新案登録異議申立人の提出した甲第1?3号証に、「第1のレーザ光を設定角に設定する勾配設定用光学素子と、設定制御部」が記載されていないのは明らかである。また、甲第4号証には、軸17を支点として回動可能に傾斜台18を器体1に設け、この傾斜センサー台18に傾斜センサ19を設けた構成が開示されており、また「プリズム枠12にはカム部材16が連動して・・・楔プリズム10、11の正逆回転により偏角するビーム光線の傾斜角度と一致する俯抑角度で傾斜センサー台18が傾斜する・・・傾斜センサー台18には傾斜センサー19が設けてあり、傾斜角度に対応した電圧を出力し、・・・器体1の後壁等に設けたパネルメーター20に傾斜角度値を表示する」と記載されているのは上記のとおりであって、つまり刊行物4のものは、ビーム光線の傾斜角度と一致する俯抑角度で傾斜センサー台18を傾斜させ、傾斜角度を表示するものであるから、「レーザ光を設定角に設定する」ものでも、またそのための「設定制御部」を有するものでもないので、結局甲第4号証のものは、請求項2に係る考案の「第1のレーザ光を設定角に設定する勾配設定用光学素子と、設定制御部」の技術的事項を記載するものではない。そしてこの点を、当業者がきわめて容易になし得る事項である、ということは出来ない。 そして、請求項2に係る考案は、上記相違点の構成により明細書記載の格別の作用効果を奏するものであ。 5.むすび 以上のとおり、請求項1に係る考案は、上記刊行物2、3に記載された考案から当業者がきわめて容易になし得たものであるから、請求項1に係る実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであるので、平成6年法律第116条附則第9条第2項の規定により準用する特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 そして、請求項2に係る実用新案登録については、他に取消理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-03-08 |
出願番号 | 実願平5-26553 |
審決分類 |
U
1
652・
121-
ZC
(G01C)
|
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 渡部 葉子 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
島田 信一 柏木 悠三 |
登録日 | 1998-12-18 |
登録番号 | 実用新案登録第2591178号(U2591178) |
権利者 |
株式会社ソキア 東京都渋谷区富ヶ谷1丁目1番1号 |
考案の名称 | ガイド光を備えたレーザ光出射装置 |
代理人 | 秋山 敦 |