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審決分類 審判 全部申し立て   B42D
審判 全部申し立て   B42D
管理番号 1020903
異議申立番号 異議1998-74997  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-08 
確定日 2000-06-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第2568139号「書籍用カバー」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2568139号の実用新案登録を取り消す。
理由 [手続の経緯]
本件実用新案登録第2568139号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案の出願は、平成4年5月29日に実用新案登録出願され、平成10年1月9日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、その実用新案登録についてアキレス株式会社およびダイニック株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、当審において取消理由の通知がなされてその指定期間内である平成11年6月15日に訂正請求がなされ、そして、その訂正請求に対して訂正拒絶理由の通知がなされ期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もなかったものである。

[訂正の適否についての判断]
【1】訂正の内容
〔1〕訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1を 「【請求項1】次式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にポリオレフィン系樹脂を添加して板状のカバー本体を形成し、該カバー本体の両端に差し込み部を設けてなる書籍用カバー
(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2 )〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉」と訂正する。
〔2〕訂正事項b
考案の詳細な説明における段落【0005】を「【解決するための手段】上記目的を達成するために本考案がなした技術的手段は、(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2 )〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にポリオレフィン系樹脂を添加して板状のカバー本体を形成し、該カバー本体の両端に差し込み部を設けてなることである。」と訂正する。
〔3〕訂正事項c
考案の詳細な説明における段落【0006】を「【実施例】以下、本考案書籍用カバーの実施の一例について説明するに、書籍用カバーAは、下記式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にポリオレフィン系樹脂を添加してカバー本体1を形成し、そして該カバー本体1の両端を夫々所望位置で内側に折曲げて差し込み部2,2を設けた構造である。(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2 )〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉」と訂正する。
〔4〕訂正事項d
考案の詳細な説明における段落【0009】を「加工方法としてはT-ダイ押出し,カレンダー加工等あるが、硬度調整のためにエチレン,プロピレン,ブテン,ブテン-1,3-メチル-ブテン-1,ヘキセン-1,オクテン-1,4-メチル-ペンテン-1等の重合体及び共重合体を主成分とするもので、例えば高密度ポリエチレン,中低密度ポリエチレン,超低密度ポリエチレン,結晶性ポリプロピレン,ポリブテンなど及びこれらの混合物からなるポリオレフィン系樹脂を添加する。その他カレンダー加工の場合にはロール滑性を上げる為、これらにアクリル系加工助剤,有機酸系金属塩,有機脂肪酸の単独またはこれらの2種以上の混合物等を添加することも可能である。上記アクリル系加工助剤,有機酸系金属塩,有機脂肪酸の単独またはこれらの2種以上の混合物の添加量は、樹脂100重量部に対して0.005?10重量部,好ましくは0.01?3重量部である。尚、上記樹脂をカレンダー加工して板状物を形成する場合の適正温度範囲は100?220℃、好ましくは120?200℃である。」と訂正する。
〔5〕訂正事項e
考案の詳細な説明における段落【0013】を「上記(a)式を共重合してなるコポリマーまたはこれらの混合物に添加される加工助剤は、前記のアクリル系加工助剤,有機酸系金属塩,有機脂肪酸を単独またはこれらの2種以上の混合物を樹脂100重量部に対して0.005?10重量部を添加せしめるものであるが、この他の添加物として、エチレンと酢酸ビニルの共重合体やこの種の技術分野において周知の帯電防止剤,紫外線吸収剤,抗酸化剤,顔料,ブロッキング防止剤等を添加することも可能である。」と訂正する。
〔6〕訂正事項f
考案の詳細な説明における段落【0015】を「ここでカレンダー成型する場合の具体的実施の一例について説明するに、エチレンメチルメタクリレート:100重量部 PA-100:0.5重量部からなる配合物に高密度ポリエチレン25重量部を添加して、140±2℃のロール温度でカレンダー加工して所望な厚みの板状カバー本体1を形成し、そして該カバー本体1の両端を夫々所望位置で内側に折曲げて差し込み部2,2を設けた書籍用カバーAを作成した。上記の如く構成された書籍用カバーAを書籍Bに被せて一年間使用したが、書籍B表面に印刷されている文字、図柄等b・・・がカバーAの表面(内表面)aに付着することもなく(図1,2参照)、また上記書籍用カバーAにおける風合等にあってはソフト感に優れ充分であった。」と訂正する。
〔7〕訂正事項g
考案の詳細な説明における段落【0016】を「【考案の効果】本考案は、(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2 )〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にポリオレフィン系樹脂を添加して板状のカバー本体を形成し、該カバー本体の両端に差し込み部を設けてなる所望形状、所望厚さの書籍用カバーを形成し、従来の書籍用カバーの如き可塑剤を添加しないものとしたため、書籍用カバーが備える風合等を付与しつつ可塑剤のブリードアウト等による弊害、即ち、書籍表面の印刷文字、図柄等のカバー表面への付着等の虞れのない使用勝手に優れた書籍用カバーの提供が図れると共に柔らかい樹脂に対して適度の硬さを保持させるいわゆる硬度の調整ができるものである。」と訂正する。

【2】訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aの訂正は、実用新案登録請求の範囲において、「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物」にその硬度調整の為に「ポリオレフィン系樹脂を添加」することを新たに付加するものであり、また、訂正事項b?gの訂正は、考案の詳細な説明の記載を、上記訂正事項aの訂正に伴ってこれと整合させるものである。
しかしながら、願書に添付した明細書又は図面には、「他の添加物」として「ポリオレフィン系樹脂」を添加する旨の記載はあるものの、該「ポリオレフィン系樹脂」の添加を「硬度調整」を目的或いは作用効果として行う旨の記載はなく、また、それを示唆する記載もない。
従って、これらの訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明のうちの何れの目的とも合致しないものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、しかも、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものである。

【3】独立実用新案登録要件
〔1〕訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案
訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下「訂正後の本件考案」という)は、訂正明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりである。
「【請求項1】次式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にポリオレフィン系樹脂を添加して板状のカバー本体を形成し、該カバー本体の両端に差し込み部を設けてなる書籍用カバー
(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2 )〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉」
〔2〕訂正拒絶理由の引用発明
当審が平成11年9月27日付けで通知した訂正拒絶理由通知書において引用した先願1は、特願平4-107499号〔特開平5-301999号〕(この先願1の出願当初の明細書又は図面の内容を掲載した公開公報が異議申立人アキレス株式会社が提出した甲第4号証であり、また、この先願1は平成11年3月25日付けで通知した取消理由通知書において引用した先願である。)であり、また、先願2は、特願平4-46258号〔特開平5-212742号〕である。そして、訂正後の本件考案と上記先願1,2の出願当初の明細書又は図面に記載された発明とをそれぞれ対比して検討すると、以下のとおりである。
(A)先願1(特願平4-107499号〔特開平5-301999号〕)の出願当初の明細書又は図面(以下「先願明細書1」という。)に記載された発明に関して
1.先願明細書1に記載された発明
先願明細書1には、高周波ウェルダー加工にて溶断、溶着される透明シートで形成した手帳、ファイル、被覆用のカバー等(段落【0001】)に関する発明が記載され、
従来技術の問題点に関して、「軟質塩化ビニールシートは、可塑剤の配合によって柔軟性がコントロールでき、また、透明性にも優れたものである。しかしながら最近の廃棄物の問題の一部として、塩化ビニールの焼却時の有害ガス発生の問題があり、軟質塩化ビニールを利用している分野から、代替材料を望む要求が高まっている。」(段落【0003】),「軟質塩化ビニール代替の必要特性は多数あるが、小物ケース、手帳、ファイル、被覆用のカバー等の分野で重要なものは、従来通りの高周波ウェルダー適性と、柔軟性、透明性である。これらの特性を満足する可能性のある素材として、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸類の共重合体、エチレンとアクリル酸エステル類の共重合体が候補として挙げられる。」(段落【0004】)と記載され、
発明が解決すべき課題に関して、「本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、焼却の際に有毒なガスを発生しない材料で、高周波ウェルダー適性、柔軟性、透明性を有し、ブロッキングのない透明シートを提供することにある。」(段落【0007】)と記載され、
構成に関して、「本発明の透明シートは、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸類の共重合体、エチレンとアクリル酸エステル類の共重合体から選択される少なくとも1種以上の樹脂からなり」(段落【0009】),「具体的には、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体が挙げられる。」(段落【0010】)と記載されており、
これらの記載によれば、先願明細書1には、「エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体等から選択される少なくとも1種以上の樹脂から透明シートを形成し、該透明シートからなる手帳、ファイル、被覆用のカバー等」(以下「引用発明1」という)が記載されているものと認められる。
2.訂正後の本件考案と引用発明1との対比
引用発明1の「エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体」が訂正後の本件考案の「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー」に相当し、また、引用発明1の「エチレン-酢酸ビニル共重合体」等が訂正後の本件考案の「ポリオレフィン系樹脂」に相当することが明らかであり、さらに、「透明シート」が「板状」であってこれが「カバー本体」になることも明らかであるから、訂正後の本件考案と引用発明1とは、「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にポリオレフィン系樹脂を添加して板状のカバー本体を形成し、該カバー本体からなる被覆用のカバー等(但し、式(a)の詳細は省略)」の点で一致し、訂正後の本件考案が、「被覆用のカバー等」の用途を「書籍用カバー」に限定すると共に、その「カバー本体の両端」に「差し込み部」を設けてなるものとしたのに対し、引用発明1は、そのように用途を限定せず、「カバー本体の両端」の構成についても全く言及していない点で一応の相違がある。
3.上記相違点についての検討
引用発明1の「被覆用のカバー等」の主な用途は事務用品であるから、その用途を「書籍用カバー」とすることは、当業者が随時想到する程度の取捨選択的事項であると認められ、また、「書籍用カバー」の技術分野において、「カバー本体の両端」に「差し込み部」を設けることが、例えば、実願昭62-7312号〔実開昭63-116365号〕のマイクロフィルム〈異議申立人アキレス(株)が提出した甲第3号証〉,実開平1-146972号公報〈異議申立人ダイニック(株)が提出した甲第4号証〉,実開平3-45164号公報〈異議申立人ダイニック(株)が提出した甲第5号証〉に示されているように、従来から普通に行われている周知の技術であることから鑑みて、
訂正後の本件考案は、引用発明1の「被覆用のカバー」の用途を単に「書籍用カバー」に限定したものであり、そして、「カバー本体の両端」に「差し込み部」を設ける構成は該用途の限定により必然的に導き出された構成であると認めることができるから、訂正後の本件考案と引用発明1とは実質的に同一のものといわざるをえない。
(B)先願2(特願平4-46258号〔特開平5-212742号〕)の出願当初の明細書又は図面(以下「先願明細書2」という)に記載された発明に関して
1.先願明細書2に記載された発明
先願明細書2には、オレフィン系樹脂製のシートやフィルムで形成したバインダー、手帳や高級ノートの表紙等の事務用品(段落【0002】)に関する発明が記載され、
構成に関して、「本発明において、オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等の単独重量体、共重合体を主成分とするものが用いられる。例えば、高密度ポリエチレン、中低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、結晶性エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、結晶性ポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-メチルメタクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、ポリブテン、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1等が挙げられる。これらは、単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。」(段落【0012】)と記載されており、
これらの記載によれば、先願明細書2には、「エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等の単独重量体、共重合体を主成分とするもので、例えば、高密度ポリエチレン、中低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、結晶性エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、結晶性ポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-メチルメタクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、ポリブテン、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1等のオレフィン系樹脂を単独で、あるいは2種以上を混合したものからシートを形成し、該シートからなる手帳や高級ノートの表紙等の事務用品」(以下「引用発明2」という)が記載されているものと認められる。
2.訂正後の本件考案と引用発明2との対比
引用発明2の「エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体」が訂正後の本件考案の「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー」に相当し、また、引用発明2の「エチレン、プロピレン、ブテン、等の単独重量体、共重合体を主成分とするもので、例えば、高密度ポリエチレン、中低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、結晶性ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1等のオレフィン系樹脂」が訂正後の本件考案の「ポリオレフィン系樹脂」に相当することが明らかであり、さらに、「手帳や高級ノートの表紙等の事務用品」に用いる「シート」が「板状」であってこれが「カバー本体」になることも明らかであるから、
訂正後の本件考案と引用発明2とは、「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にポリオレフィン系樹脂を添加して板状のカバー本体を形成し、該カバー本体からなるシート状事務用品(但し、式(a)の詳細は省略)」の点で一致し、訂正後の本件考案が「シート状事務用品」の用途を「書籍用カバー」に限定すると共に、その「カバー本体の両端」に「差し込み部」を設けてなるものとしたのに対し、引用発明2は、そのように用途を限定せず、「カバー本体の両端」の構成についても全く言及していない点で一応の相違がある。
3.上記相違点についての検討
引用発明2の「シート状事務用品」の用途を「書籍用カバー」とすることは、当業者が随時想到する程度の取捨選択的事項であると認められ、また、「書籍用カバー」の技術分野において、「カバー本体の両端」に「差し込み部」を設けることが、例えば、上述したように、従来から普通に行われている周知の技術であることから鑑みて、
訂正後の本件考案は、引用発明2の「シート状事務用品」の用途を単に「書籍用カバー」に限定したものであり、そして、「カバー本体の両端」に「差し込み部」を設ける構成は該用途の限定により必然的に導き出された構成であると認めることができるから、訂正後の本件考案と引用発明2とは実質的に同一のものといわざるをえない。
〔3〕結論
結局、訂正後の本件考案は、引用発明1,2と同一であり、しかも、本件考案の考案者が各引用発明1,2の発明者と同一であるとも、また、本件考案の出願時にその出願人が各引用発明1,2の出願人と同一であるとも認められないので、実用新案法第3条の2第1項の規定により、実用新案登録出願の際に独立して実用新案登録を受けることができないものである。

【4】まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1?3項に適合しないものであり、認められない。

[実用新案登録異議申立について]
【1】本件考案
上記「訂正の適否についての判断」の欄で示したように、平成11年6月15日付けの訂正請求は認められないので、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、実用新案登録掲載公報発行時の明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりである。
「【請求項1】次式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にて板状のカバー本体を形成し、該カバー本体の両端に差し込み部を設けてなる書籍用カバー
(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2)〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉」

【2】取消理由1
〔1〕取消理由の引用発明
当審が平成11年3月25日付けで通知した取消理由通知書において引用した先願(特願平4-107499号〔特開平5-301999号〕)は、当審が平成11年9月27日付けで通知した訂正拒絶理由通知書において引用した上記先願1であり、
上記先願1の先願明細書1には、「エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体等から選択される少なくとも1種以上の樹脂から透明シートを形成し、該透明シートからなる手帳、ファイル、被覆用のカバー等」という引用発明1が記載されていることは上述したとおりであり、該引用発明1中には、「エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等から選択される少なくとも1種以上の樹脂から透明シートを形成し、該透明シートからなる手帳、ファイル、被覆用のカバー等」(以下「引用発明3」という)が記載されていることは明らかである。
〔2〕対比・判断
「訂正の適否についての判断」の欄、【3】、〔2〕の「訂正拒絶理由の引用発明」の項、(A)で述べたと同様の理由により、本件考案と引用発明3とは実質的に同一のものといわざるをえない。
〔3〕結論
結局、本件考案は、引用発明3と同一であり、しかも、本件考案の考案者が引用発明3の発明者と同一であるとも、また、本件考案の出願時にその出願人が引用発明3の出願人と同一であるとも認められないので、実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
尚、当審が平成11年9月27日付けで通知した訂正拒絶理由通知書において引用した上記先願2(特願平4-46258号〔特開平5-212742号〕)の先願明細書2にも、本件考案と同一の発明が記載されていることが明らかである(「訂正の適否についての判断」の欄、【3】、〔2〕の「訂正拒絶理由の引用発明」の項、(B)参照)から、本件考案は、この発明によっても、実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

【3】取消理由2
〔1〕取消理由の引用刊行物
当審が平成11年3月25日付けで通知した取消理由通知書において引用した刊行物1(実願昭62-7312号〔実開昭63-116365号〕のマイクロフィルム)は、異議申立人アキレス株式会社が提出した甲第3号証であり、刊行物2(「プラスチックフィルム-加工と応用-」,プラスチックフィルム研究会編,大沼正吉,昭和46年7月10日,(株)技報堂,発行)は、異議申立人ダイニック株式会社が提出した甲第1号証であり、それぞれ、以下の考案ないし技術が記載されている。
(A)刊行物1(実願昭62-7312号〔実開昭63-116365号〕のマイクロフィルム)
刊行物1には、透明合成樹脂よりなるブックカバーに関する考案(明細書1頁15?20行)が記載され、
従来技術に関して、「ブックカバーは書冊類の収納、保管、取り出し等に便利なように、又、書冊類の表紙の汚染及び破損を防止するために使われることが多い。ブックカバーの素材は、紙のほか透明な合成樹脂フィルムより調整されたものが使用されている。・・・透明な合成樹脂フィルム材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、塩化ビニル系樹脂等が使用されており、」(明細書2頁5?16行)と記載され、
構成に関して、「第1図および第2図は本考案に係るブックカバーの例の斜視図、第3図は第1図の接合端部における一部拡大縦断面図を示す。図において、11、21は積層フィルム、12、22は積層フィルムの接合接着部、33は軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、34はポリエチレンフィルム、35はエチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、36は書冊の表紙を示す。本考案に係るブックカバーは・・・ポリエチレンフィルムをエチレン-酢酸ビニル共重合体で接着積層した軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを、長方形状に切りとり、これをポリエチレンフィルム面を内側にして端部を折り曲げ、第1図の片側を接合した構造でもよいし、第2図の両側端部を接合した構造でもよい。」(明細書10頁17行?11頁11行)と記載され、
これらの記載によれば、ブックカバーに使用する透明な合成樹脂フィルムの材料としてポリエチレンが従来から使用されていること、ブックカバーは合成樹脂フィルムを長方形状に切りとってその端部を折り曲げ接着して両端に差し込み部を設けたものであること、等が把握されるから、刊行物1には、「ポリエチレンフィルムにて板状のカバー本体を形成し、該カバー本体の両端に差し込み部を設けてなる書籍用カバー」が記載されているものと認められる。
また、軟質塩化ビニル系樹脂フィルムをブックカバーに用いた際の問題点に関しても、「しかしながら、軟質塩化ビニル系樹脂フィルムは、それに配合された可塑剤が多いとフィルムのベタツキが生じ書冊の取り出しが不便になるため、少なめに調製されることが多い。・・・又、軟質塩化ビニル系樹脂フィルムに配合された可塑剤、添加剤が時間の経過にしたがってフィルム表面に移行し、にじみでるため、このフィルムから作成されたブックカバーで書冊類を長期間保管すると・・・書冊の表紙とブックカバーが粘着したり、又、ブックカバー同士が付着しあい取り出しに不便な場合があった。」(明細書3頁1?16行)と記載されている。
(B)刊行物2(「プラスチックフィルム-加工と応用-」,プラスチックフィルム研究会編,大沼正吉,昭和46年7月10日,(株)技報堂,発行)
刊行物2には、装飾用フィルムへの応用に関して、「プラスチックフィルムの装飾用への応用としては・・・ブックカバーなどがある。・・・ブックカバーなどの文房具用としてポリ塩化ビニルフィルム,ポリエチレンフィルム,ポリプロピレンフィルムなどが使用されている。」(280頁「5.9装飾用フィルムへの応用」)と記載され、また、包装用に応用されるポリエチレン共重合フィルムに関して、「エチレンー酢酸ビニル共重合フィルム,エチレンーアクリル酸エステル共重合フィルム,イオノマー(エチレンとアクリル酸,マレイン酸,あるいはイタニン酸との共重合物をイオン架橋したもの・・・),エチレンープロピレン共重合フィルムなどのポリエチレン共重合フィルムが包装用に応用されている。」(285頁「5.11.1ポリエチレンフィルムの市場」,「(5)ポリエチレン共重合フィルム」)と記載されている。
〔2〕本件考案と刊行物1に記載された考案との対比
両者は、「エチレンの重合体にて板状のカバー本体を形成し、該カバー本体の両端に差し込み部を設けてなる書籍用カバー」の点で一致し、「板状のカバー本体」の材料、即ち、「エチレンの重合体」の種類について、本件考案が「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物」としたのに対し、刊行物1に記載された考案は「エチレン重合体」の種類を特定していない点で相違する。
〔3〕上記相違点についての検討
刊行物2には、ブックカバーなどの文房具用としてポリエチレンフィルムが使用されることが記載され、また、包装用のポリエチレン共重合フィルムとしてエチレンーアクリル酸エステル共重合体(本件考案の「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー」)が利用される旨記載され、また、ブックカバーも包装の一態様であることが一般に認識されていることからみて、ブックカバーなどの文房具用として使用されるポリエチレンフィルムとして、包装用に利用され、本件考案の「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー」に相当する、エチレンーアクリル酸エステル共重合体等のポリエチレン共重合フィルムを適用することに、格別の技術的困難性はないものと認められる。
尚、従来からブックカバーの材料として使用されている軟質塩化ビニル系樹脂フィルムには可塑剤のブリードアウト等による弊害があることや、これを防止するために軟質塩化ビニル系樹脂フィルムと書冊との間にポリエチレンフィルムを介在させて軟質塩化ビニル系樹脂フィルムと書冊とを直接接触させないようにすることが上記刊行物1に記載されていること、そして、エチレン系コポリマーも概念上含むポリエチレンが一般に可塑剤を用いなくても柔軟製品を製造できる材料であって軟質塩化ビニル系樹脂のような可塑剤に関するトラブルがないことが周知の事項(「実用プラスチック用語辞典」,瀬戸正二監修,大阪市立工業研究所プラスチック課編纂,(株)プラスチック・エージ,昭和50年1月20日発行,505?506頁,「ポリエチレン」の項、55頁,「エチレン・アクリル酸エチル共重合体」の項、参照)であることからみて、刊行物1に記載された「書籍用カバー」の材料として、可塑剤のブリードアウト等による弊害の防止を意図して、刊行物2に記載され且つ従来から周知である、本件考案のような「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー」を適用することに、格別の技術的困難性はないものと認められる。
〔4〕結論
結局、本件考案は、刊行物1に記載された考案に刊行物2に記載され且つ従来から周知の材料を適用することにより、当業者がきわめて容易になしえたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

[むすび]
以上のとおりであるから、本件考案は、実用新案法第3条の2第1項または同法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
異議決定日 2000-04-26 
出願番号 実願平4-36521 
審決分類 U 1 651・ 16- ZB (B42D)
U 1 651・ 121- ZB (B42D)
最終処分 取消  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 小泉 順彦
伊波 猛
登録日 1998-01-09 
登録番号 実用新案登録第2568139号(U2568139) 
権利者 オカモト株式会社
東京都文京区本郷3丁目27番12号
考案の名称 書籍用カバー  
代理人 細井 貞行  
代理人 早川 政名  
代理人 石渡 英房  
代理人 長南 満輝男  
代理人 ▲桑▼原 史生  
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