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審決分類 審判 全部申し立て   B42D
管理番号 1020904
異議申立番号 異議1998-74998  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-08 
確定日 2000-06-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第2568140号「合成樹脂製手帳」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2568140号の実用新案登録を取り消す。
理由 [手続の経緯]
本件実用新案登録第2568140号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案の出願は、平成4年6月18日に実用新案登録出願され、平成10年1月9日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、その実用新案登録についてアキレス株式会社およびダイニック株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、当審において取消理由の通知がなされてその指定期間内である平成11年6月15日に訂正請求がなされ、そして、その訂正請求に対して訂正拒絶理由の通知がなされ期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もなかったものである。

[訂正の適否についての判断]
【1】訂正の内容
〔1〕訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1を 「【請求項1】次式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にアクリル系加工助剤又は有機脂肪酸若しくは両者を添加した配合物で表紙が形成される合成樹脂製手帳
(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2 )〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉」と訂正する。
〔2〕訂正事項b
考案の詳細な説明における段落【0005】を「【解決するための手段】上記目的を達成するために本考案がなした技術的手段は、(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2 )〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にアクリル系加工助剤又は有機脂肪酸若しくは両者を添加した配合物で表紙を形成することである。」と訂正する。
〔3〕訂正事項c
考案の詳細な説明における段落【0006】を「【実施例】以下、本考案合成樹脂製手帳の実施の一例について説明するに、合成樹脂製手帳Aは、下記式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にアクリル系加工助剤又は有機脂肪酸若しくは両者を添加した配合物で、表紙1を形成する。(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2 )〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉」と訂正する。
〔4〕訂正事項d
考案の詳細な説明における段落【0009】を「加工方法としては、T-ダイ押出し、カレンダー加工等あるが、カレンダー加工の場合にはロール滑性を上げる為、上記樹脂にアクリル系加工助剤又は有機脂肪酸若しくは両者を添加する。また、有機酸系金属塩を添加することも可能である。上記アクリル系加工助剤,有機酸系金属塩,有機脂肪酸の単独またはこれらの2種以上の混合物の添加量は、樹脂100重量部に対して0.005?10重量部,好ましくは0.01?3重量部である。尚、上記表紙1をカレンダー加工にて形成する場合の適正温度範囲は100?220℃、好ましくは120?200℃である。」と訂正する。
〔5〕訂正事項e
考案の詳細な説明における段落【0013】を「上記(a)式を共重合してなるコポリマーまたはこれらの混合物にアクリル系加工助剤又は有機脂肪酸若しくは両者を樹脂100重量部に対して0.005?10重量部を添加せしめるものであるが、この配合物に他の添加物として、エチレンと酢酸ビニルの共重合体,エチレン,プロピレン,ブテン,ブテン-1,3-メチル-ブテン-1,ヘキセン-1,オクテン-1,4-メチル-ペンテン-1等の重合体及び共重合体を主成分とするもので例えば高密度ポリエチレン,中低密度ポリエチレン,超低密度ポリエチレン,結晶性ポリプロピレン,ポリブテンなど及びこれらの混合物からなるポリオレフィン系樹脂を添加することや、添加物としてこの種の技術分野において周知の帯電防止剤,紫外線吸収剤,抗酸化剤,顔料,ブロッキング防止剤等を添加することも可能である。」と訂正する。
〔6〕訂正事項f
考案の詳細な説明における段落【0017】を「【考案の効果】本考案は、(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2 )〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にアクリル系加工助剤又は有機脂肪酸若しくは両者を添加した配合物で形成した表紙を備えて合成樹脂製手帳を形成し、従来の合成樹脂製手帳の表紙の如き可塑剤を添加しないものとしたため、合成樹脂製手帳が備える風合等を付与しつつ可塑剤のブリードアウト等による種々の弊害が解消された。即ち、従来可塑剤のブリードアウトにより生じていた表紙内表面と接するメモ等に記載されている文字、図柄等の表紙内表面への付着がなくなり、さらに表紙外面に抽出した可塑剤により生じていた汚れ付着容易性、及び拭き取り困難性がなくなるため商品価値及び使用勝手に優れた合成樹脂製手帳の提供が図れると共にカレンダー加工においてロール滑性に優れたものである。」と訂正する。

【2】独立実用新案登録要件
〔1〕訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案
訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下単に「本件考案」という)は、訂正明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりである。
「【請求項1】次式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にアクリル系加工助剤又は有機脂肪酸若しくは両者を添加した配合物で表紙が形成される合成樹脂製手帳
(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2)〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉」
〔2〕訂正拒絶理由の引用発明
当審が平成11年9月27日付けで通知した訂正拒絶理由通知書において引用した先願は、特願平4-46258号〔特開平5-212742号〕(この先願の出願当初の明細書又は図面の内容を掲載した公開公報が、異議申立人アキレス株式会社が提出した甲第2号証である。)であり、
上記先願の出願当初の明細書又は図面(以下「先願明細書1」という)には、オレフィン系樹脂製のシートやフィルムで形成した手帳や高級ノートの表紙に関する発明が記載され、
構成に関して、「本発明において、オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等の単独重量体、共重合体を主成分とするものが用いられる。例えば、高密度ポリエチレン、中低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、結晶性エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、結晶性ポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-メチルメタクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、ポリブテン、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1等が挙げられる。これらは、単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。」(段落【0012】),「更に、本発明においては、金属石鹸の外に、従来のオレフィン系樹脂フィルムに配合されている各種の添加剤、例えば、滑剤、顔料、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、無機充填剤等を配合してもよい。」(段落【0015】),「このうち、滑剤としては、脂肪酸アミド系、脂肪酸ビスアミド系、脂肪酸エステル系、脂肪酸ケトン系、高級アルコール系等が使用でき、特にステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリル酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤を使用することが、ロール滑性、フィルムのスリップ性から好ましい。この脂肪酸アミド系滑剤の添加量は、0.01?3重量部が好ましい。0.01重量部未満では、添加効果が期待できず、3重量部より多いと、ブルーム、プレートアウト(滑剤が析出してロール表面に付着すること)等の問題が発生する。さらに好ましい添加量は、0.05?1重量部である。」(段落【0016】)と記載されており、
これらの記載によれば、先願明細書1には、「エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、等を単独で、あるいは2種以上を混合した混合物に、例えば、脂肪酸アミド系の滑剤を添加した配合物で表紙が形成される合成樹脂製手帳」(以下「引用発明1」という)が記載されているものと認められる。
〔3〕対比・判断
本件考案と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体」が本件考案の「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー」に該当し、また、本件考案の「アクリル系加工助剤又は有機脂肪酸若しくは両者」は「ロール滑性を上げる」ために添加される滑剤であるから、
本件考案と引用発明1とは、「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物に滑剤を添加した配合物で表紙が形成される合成樹脂製手帳(但し、式(a)の詳細は省略)」の点で一致し、滑剤として、本件考案が「アクリル系加工助剤又は有機脂肪酸若しくは両者」を用いたのに対し、引用発明1が「脂肪酸アミド系」のものを用いた点で一応の相違がある。
〔4〕相違点についての検討
「ロール滑性を上げる」ために添加される滑剤として、「有機脂肪酸」も「脂肪酸アミド系」のものも従来から慣用され(「実用プラスチック用語辞典」1989年9月10日改訂第3版(永井進監修,大阪市立工業研究所プラスチック課編纂,(株)プラスチックス・エージ発行)P.136?137の「滑剤」の項参照)ており、且つ、相互に置換可能であること、また、「アクリル系加工助剤」もプラスチック加工時の成形性を向上させるためその硬化性や機械的物性を改変する改質剤として従来から慣用され(上記「実用プラスチック用語辞典」P.117の「改質剤」の項,P.126の「加工助剤」の項参照)ていることから、当該相違点は従来慣用技術相互の単なる置換或いは従来慣用技術の単なる付加によるものと云わざるをえない。
〔5〕結論
結局、本件考案は、引用発明1と同一であり、しかも、本件考案の考案者が上記引用発明1の発明者と同一であるとも、また、本件考案の出願時にその出願人が上記引用発明1の出願人と同一であるとも認められないので、実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、実用新案登録出願の際に独立して実用新案登録を受けることができないものである。

【3】まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項に適合しないものであり、認められない。
尚、上記訂正は、実用新案登録請求の範囲において、「式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物」にそれのロール滑性を上げる為に「アクリル系加工助剤又は有機脂肪酸若しくは両者を添加」することを付加するものであるところ、これらの訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明の何れをも目的とするものではなく、実質上実用新案登録請求の範囲を変更するものであるから、同上、特許法第126条第1,2項にも適合せず、認められない。

[実用新案登録異議申立について]
【1】本件考案
上記「訂正の適否についての判断」の欄で示したように、平成11年6月15日付けの訂正請求は認められないので、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、実用新案登録掲載公報発行時の明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりである。
「【請求項1】次式(a)を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物にて表紙が形成される合成樹脂製手帳
(a)式 CH_(2)=CH_(2),CH_(2)=CR_(1)COOR_(2)〈R_(1)はH,CH_(3 ),R_(2)はアルキル基〉」

【2】取消理由
〔1〕取消理由の引用発明
当審が平成11年3月25日付けで通知した取消理由通知書において引用した先願は特願平4-107499号〔特開平5-301999号〕(この先願の出願当初の明細書又は図面の内容を掲載した公開公報が、異議申立人アキレス株式会社が提出した甲第1号証である。)であり、
上記先願の出願当初の明細書又は図面(以下「先願明細書2」という)には、高周波ウェルダー加工にて溶断、溶着されて、小物ケース、手帳、ファイル、被覆用のカバー等に用いる透明シート(【産業上の利用分野】参照)に関する発明が記載され、
従来技術の問題点に関して、「軟質塩化ビニールシートは、可塑剤の配合によって柔軟性がコントロールでき、また、透明性にも優れたものである。しかしながら最近の廃棄物の問題の一部として、塩化ビニールの焼却時の有害ガス発生の問題があり、軟質塩化ビニールを利用している分野から、代替材料を望む要求が高まっている。」(段落【0003】),「軟質塩化ビニール代替の必要特性は多数あるが、小物ケース、手帳、ファイル、被覆用のカバー等の分野で重要なものは、従来通りの高周波ウェルダー適正と、柔軟性、透明性である。これらの特性を満足する可能性のある素材として、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸類の共重合体、エチレンとアクリル酸エステル類の共重合体が候補として挙げられる。」(段落【0004】)と記載され、
発明が解決すべき課題に関して、「本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、焼却の際に有毒なガスを発生しない材料で、高周波ウェルダー適正、柔軟性、透明性を有し、ブロッキングのない透明シートを提供することにある。」(段落【0007】)と記載され、
構成に関して、「本発明の透明シートは、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸類の共重合体、エチレンとアクリル酸エステル類の共重合体から選択される少なくとも1種以上の樹脂からなり」(段落【0009】),「具体的には、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体が挙げられる。」(段落【0010】)と記載されており、
これらの記載によれば、先願明細書2には、「エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、等から選択される少なくとも1種以上の樹脂」からなる「手帳、ファイル、被覆用のカバー等に用いる透明シート」(以下「引用発明3」という)が記載されているものと認められる。
〔2〕対比・判断
本件考案と引用発明3とを対比すると、引用発明3において、「エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体」が本件考案の「式(a)」の「エチレン系コポリマー」であることは明らかであり、また、これらの材料からなる「手帳、ファイル、被覆用のカバー等に用いる透明シート」が「合成樹脂製手帳」の「表紙」に使用されるものであることも先願明細書2の産業上の利用分野等の記載からみて明らかであるから、本件考案と引用発明3とは一致する。
〔3〕結論
結局、本件考案は、引用発明3と同一であり、しかも、本件考案の考案者が上記引用発明3の発明者と同一であるとも、また、本件考案の出願時にその出願人が上記引用発明3の出願人と同一であるとも認められないので、実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
尚、当審が平成11年9月27日付けで通知した訂正拒絶理由通知書において引用した先願である特願平4-46258号〔特開平5-212742号〕の上記先願明細書1にも、本件考案と同一の発明が記載されていることが明らかである([訂正の適否についての判断]の欄、【2】、「独立実用新案登録要件」の項参照)から、本件考案は、この発明とも同一であると認められ、実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

[むすび]
以上のとおりであるから、本件考案は、実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
異議決定日 2000-04-24 
出願番号 実願平4-42069 
審決分類 U 1 651・ 16- ZB (B42D)
最終処分 取消  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 伊波 猛
小泉 順彦
登録日 1998-01-09 
登録番号 実用新案登録第2568140号(U2568140) 
権利者 オカモト株式会社
東京都文京区本郷3丁目27番12号
考案の名称 合成樹脂製手帳  
代理人 ▲桑▼原 史生  
代理人 早川 政名  
代理人 細井 貞行  
代理人 石渡 英房  
代理人 長南 満輝男  
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