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審決分類 審判    G11B
管理番号 1024958
審判番号 審判1998-11654  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-07-28 
確定日 2000-04-26 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 57841号「光ピックアップ装置」拒絶査定に対する審判事件[平成6年3月11日出願公開、実開平6-19125]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本件は、平成4年7月25日の出願であって、その請求項1に係る考案は、平成10年8月25日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下、「本願考案」という。)
「光源からの光をハーフミラーを介して物体に照射し、物体からの反射光を上記ハーフミラーを介して光検出器に導くようにしてなる光ピックアップ装置において、上記ハーフミラーは、光軸に対して傾けて配置され、上記ハーフミラーと光検出器との間に、上記ハーフミラーとは別体の楔形光学素子が配置され、上記楔形光学素子は、光軸が通る一方側の面が光軸に垂直な線に対しハーフミラーで発生したコマ収差を打ち消すように傾いており、光軸が通る他方側の面が光軸に対し垂直であることを特徴とする光ピックアップ装置。」
2.引用刊行物記載の考案
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前である昭和61年9月8日に頒布された特開昭61-202339号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
I.「物体と受光素子との間に平行平板型ビームスプリッタを配置し、このビームスプリッタを介して光源からの光ビームを物体に照射し、上記ビームスプリッタを透過した物体からの反射光を受光素子に導くようにした光ピックアップにおいて、上記平行平板型ビームスプリッタと受光素子との間に異方性曲率面を有する補正レンズを配置し、上記異方性曲率面は、光ビームが上記ビームスプリッタを透過することによって発生する非点収差を打ち消すと共に、新たに別の方向に任意の大きさの非点収差を発生させるように形成されていることを特徴とする光ピックアップ。」(特許請求の範囲)
II.「いま、第1図に示すように、補正レンズ7の前方の光束断面をA、前後の異方性曲率面R1,R2の中間における光束断面をB、上記異方性曲率面R2の後方における光束断面をCとする。ハーフミラー3は斜めの平行平板であるため、ハーフミラー3を透過した収束光には、非点収差δmが発生する。この非点収差の発生方向はハーフミラー3の傾斜方向により一義的に決まり、……発生する。ここでは、対物レンズ5を……約45度傾ける。……。また補正レンズ7の面R2は任意の方向θに異方性を有する……面であり、第3図(C)に示すように、上記R2の曲率異方性の大きさに応じた新たな非点収差を生じる。この非点収差の大きさはピックアップのフォーカスエラー検出のために必要にして十分なものとなるようにする。」(第3頁右上欄第14行目?左下欄第19行目)
III.「補正レンズの光軸S-Sを光軸X-Xに対してφだけ傾斜させている。これは、ハーフミラー3で発生するコマ収差の影響を打ち消すためのもので、コマ収差の影響が特性上無視できない場合はこうした用い方をしてもよい。」(第3頁右下欄第10?15行目)
また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である昭和63年4月19日に頒布された実願昭61-151736号(実開昭63-58316号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
「くさび形平板3の頂角βを所定値β0に設定するとコマ収差を零にすることができる。」(第3頁第5?7行目)
3.対比
本願考案と引用刊行物1に記載された考案とを対比すると、引用刊行物1に記載された「平行平板型ビームスプリッタ」は、光源からの光を反射して物体に照射し、物体からの反射光を透過して受光素子に導くものであるから本願考案の「ハーフミラー」に相当し、引用刊行物1に記載された「受光素子」は本願考案の「光検出器」に相当するので、引用刊行物1に記載された考案は、「光源からの光をハーフミラーを介して物体に照射し、物体からの反射光を上記ハーフミラーを介して光検出器に導くようにしてなる光ピックアップ装置において、上記ハーフミラーは、光軸に対して傾けて配置され、上記ハーフミラーと光検出器との間に、上記ハーフミラーとは別体の光学素子が配置され、上記光学素子は、光軸が通る側の一方側の面が光軸に垂直な線に対しハーフミラーで発生したコマ収差を打ち消すように傾いていることを特徴とする光ピックアップ装置。」である点で本願考案と一致し、次の点で相違する。
相違点 ハーフミラーとは別体の光学素子が、本願考案では、光軸が通る“他方側”の面が光軸に対し垂直である楔形光学素子であるのに対し、引用刊行物1に記載された考案では、“他方側”の面R2が面異方性曲率面を有する補正レンズである点。
4.当審の判断
相違点について
上記したように引用刊行物2の第6図およびその説明の項には、光源からの光を平行平板からなるハーフミラーを介して物体に照射し、物体からの反射光を上記ハーフミラーを介して光検出器に導くようにしてなる光ピックアップ装置において、ハーフミラーを透過した放射ビームが有するコマ収差を楔形光学素子によって補正しようとするとともに、楔形素子の頂角の設定によってコマ収差を零にすることおよび非点収差を任意の値にすることが記載されている。これらの記載によれば、フォーカスエラー信号が不要の場合は、非点収差を得ることは不要であるからコマ収差のみを補正すればよく、かつコマ収差の補正には楔形光学素子の取り付け角を特定の値にする必要がないことが読みとれる。してみれば傾斜角の小さい楔形光学素子の取り付けにおいて、そのいずれか一方の面を光軸に垂直に近く取り付けることは、新たな非点収差を生じないようにしようとする場合および、通常考慮されるピックアップを小型化しようとする場合に、当該分野における通常の技術常識の適用により得られる自明の配置に過ぎないと認められる。
そして上記各引用刊行物はいずれも本願考案と同様の光ピックアップにおける収差補正に関するものであるから、引用刊行物1に記載のものに、引用刊行物2に記載の上記構成を採用し、その際、楔形光学素子を上記のように配置して本願考案の構成とすることは当業者がきわめて容易になし得たものと認められる。
5.結び
したがって、本願考案は、引用刊行物1,2に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-01-28 
結審通知日 2000-02-15 
審決日 2000-02-28 
出願番号 実願平4-57841 
審決分類 U 1 80・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 川嵜 健  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 岡本 利郎
田良島 潔
考案の名称 光ピックアップ装置  
代理人 石橋 佳之夫  

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