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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1025008
審判番号 審判1999-4436  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-03-18 
確定日 2000-06-14 
事件の表示 平成10年実用新案登録願第5174号「画像形成装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年11月4日出願公開、実開平10-258]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯等
本願は、出願日が昭和62年7月21日である実願昭62-111779号の一部を平成10年7月13日に新たな実用新案登録出願としたものであって、その考案の要旨は、平成11年12月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、この実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】像担持体が位置決め固定された本体ユニットと、他方のユニットとを互いに締結させて一つの像担持体ユニットを形成する画像形成装置において、
前記本体ユニットに前記像担持体の周囲所定位置に配設されるとともに、直接前記像担持体に作用する部材の両端部を回転不可能に支持し、当該部材と当該像担持体との距離を規定する位置決め部を形成するとともに、
前記本体ユニットと前記他方ユニットとを締結させる際に、前記部材を当該本体ユニットの位置決め部と当該他方のユニットとの間に挟持固定させるようにしたことを特徴とする画像形成装置。」
(以下、「本願考案」という。)

2.引用例
これに対して、前置の審査における平成11年10月18日付け拒絶理由通知に記載した拒絶の理由に引用された各文献には以下の記載がある。

(1)特開昭60-168175号公報(以下、「引用例1」という。)
a.特許請求の範囲
「(1)少なくとも像担持体と該像担持体に像を形成する現像手段とをカートリッジに内包化してプロセスユニットとし、該プロセスユニットを複写機本体に着脱自在に装填できるようにした複写機において、
上記カートリッジが2分割して開閉可能に形成され、開放された一方の内部に上記現像手段が着脱自在に取り付けられて成ることを特徴とする複写機。」

b.第2頁左上欄第10行?第14行
「本発明は、かかる点に鑑みて成されたもので、その目的は、各々の部分が集合してユニットを構成し複写機本体に対して一体的に着脱可能でありながらも、そのユニット内にの現像部分が分離交換できるようにした複写機を提供することである。」

c.第2頁右下欄第19行?第3頁左上欄第19行
「さて、本実施例では、上記した感光ドラム7,帯電器8,現像装置9,除電極19,クリーナ20を、カートリッジ21に内包化して、1個のプロセスユニットUを構成するようにしている。
このカートリッジ21は、第2図に示すように、上面の露光用スリット211を境にして分割開放するように構成されている。すなわち、このカートリッジ21は2個のカートリッジ部分212,213で構成され、その下部分において軸22により枢支されている。また、一方のカートリッジ部分213の上部では前面奥面において、ロック爪23が軸24に枢支され、このロック爪23が他方のカートリッジ部分212の上部の側面及び奥面に設けたピン25に係合することにより、両カートリッジ部分212と213が閉じた状態がロックさるように構成されている。26はカートリッジ部分213側の正面に形成された把手である。また、両カートリッジ部分212,213の側面には、ガイド突起212a、213aが形成され、複写機本体1側に設けられたガイドレール27,28に案内されるようになっている。」

これらの記載内容からみて、引用例1より、像担持体である感光ドラム7が内包された本体ユニットに相当するカートリッジ部分213と、他方のユニットに相当するカートリッジ部分212とを互いにロック爪23とピン25により締結させて一つのプロセスユニットUを形成しており、これを複写機のガイドレールで案内して装着可能とされた構成が把握できる。

(2)特開昭62-153964号公報(以下、「引用例2」という。)
d.特許請求の範囲
「(1)感光体ドラムとその周辺部分を一体的に構成した感光体カートリッジにおいて、
カートリッジフレームを回転体の複数の軸受け部とともにプラスチックで形成するとともに前記回転体の軸受け部を境にして上下に二分割し、さらに前記複数の軸受け部の一部または全部に、前記フレームに一体的に設けられ軸の前後を挟むように対向する2つの弾性片を設け、
前記周辺部品は、フレームに位置決め用突起を設けるとともに周辺部分に前記突起に嵌合する位置決め孔を設け、前記位置決め用孔に前記位置決め用突起を嵌合させた状態でその突起を溶着することによって取り付け、
さらに上下二分割したカートリッジフレームは、その端部にそれぞれ係合部と係合受け部とを設けそれらを係合することにより組み付けることを特徴とする感光体カートリッジ構造。」

e.第2頁左上欄第8行?第18行
「<発明の目的>
この発明の目的は、カートリッジフレームをプラスチックで形成するとともに回転体の軸受け部をこのフレームを形成することによって直接形成し、さらにカートリッジフレームに突起を設けることによってその位置決め用突起に周辺部分を合わせた状態で溶着することでそれらの周辺部品がカートリッジフレームに簡単に取り付けられ、またカートリッジフレームも上下に二分割したものを係合によって簡単に組み付けることのできる感光体カートリッジ構造を提供することにある。」

f.第2頁左上欄第19行?左下欄第18行
「<発明の構成および効果>
この発明は、カートリッジフレームを回転体の複数の軸受け部とともにプラスチックで形成するとともに前記回転体の軸受け部を境界にして上下に二分割し、さらに前記複数の軸受け部の一部または全部に、前記フレームに一体的に設けられ軸の前後を挟むように対向する2つの弾性片を設け、
前記周辺部品は、フレームに位置決め用突起を設けるとともに周辺部品に前記突起に嵌合する位置決め孔を設け、前記位置決め用孔に前記位置決め用突起を嵌合させた状態でその突起を溶着することによって取り付け、
さらに上下二分割したカートリッジフレームは、その端部にそれぞれ係合部と係合受け部とを設け、それらを係合することにより組み付けることを特徴とする。
上記のように構成することでこの発明によれば、感光体等の回転体はその軸部を上下に二分割された一方のカートリッジフレームの軸受け部にそのフレームに設けられている2つの弾性片で挟持されるように挿入固定し、さらに周辺部分はその周辺部分に設けられている位置決め用孔をカートリッジフレームに設けられている位置決め用突起に合わせてその状態で突起を溶着するだけで取り付けることができる。また二分割されたカートリッジフレームは必要な周辺部品および回転体が取り付けられた後、それらの端部を係合することによって簡単に組み付けることができる。すなわち本発明によれば、感光体カートリッジを構成するのにビスやネジ等を使用する必要がなく、二分割されたそれぞれのカートリッジフレームに周辺部品や感光体等の回転体を嵌合や溶着によって簡単に取り付けることができるとともに、カートリッジフレームは回転体の軸受け部を境界にして上下に二分割されるため、周辺部品は各フレームに対して1方向から取り付けることができる。このため組立が非常に簡単となり生産性が大幅に向上する効果がある。しかも構造が簡単化するためにコストダウンに寄与することもできる。」

g.第3頁左下欄第20行?右上欄第18行、第7図
「第7図は上記カートリッジ7の断面図を示している。
カートリッジフレーム6は上フレーム6aと下フレーム6bとで構成されている。このフレーム6には感光体ドラム1の回転軸、帯電器2,クリーナユニット3、剥離ユニット4が取り付けられ、また感光体ドラム1の露光部Aに対向する部品が開口されて露光スリット5が形成されている。クリーナユニット3は感光体ドラム表面上の残留トナーを廃トナーとしてかき落とすブレード30と、廃トナーを収容する廃トナー容器31と、ブレード30dでかき落としたトナーを廃トナー容器31に送る廃トナー回収用回転板32と、廃トナー容器31を仕切るための仕切り板33とで構成されている。
図示するように上フレーム6aには帯電器2,ブレード30および仕切り板33が位置合わせ用突起43,41が溶着されることによって取付られている。」

h.第3頁右上欄第19行?左下欄第11行、第1図
「第1図は上記感光体カートリッジの上フレームおよび下フレームの外観図を示している。図示するようにこれらの上下フレーム6a,6bには感光体ドラム1および廃トナー回収用回転板32の軸受け部23?28が形成され、これらの軸受け部を境界にして上下に二分割されている。上フレーム6a、下フレーム9bはプラスチックで形成されるとともに各軸受け部は成形によってフレームと一体的に形成され、下フレーム6bの軸受け部24,26,27,28にはそれぞれ軸の前後を挟むように対向する二つの弾性片(24a,24b,26a,26b,27a,27b,28a,28b)が設けられている。」

j.第3頁左下欄第13行?第15行
「また本実施例では弾性片を下フレーム6bの軸受け部にのみ設けているが、上フレーム6aの軸受け部にも設けてもよい。」

k.第4頁左上欄第3行?第15行
「第4図(A)は感光体ドラム1の軸部50に対する軸受け部の構造を示している。軸受け部24の径φ1’は軸部50の径φ1とほぼ同じに設定されている。弾性片24a,24bは軸受け部24の円弧部が半円よりも若干大きくなるような形状に設定されている。このような構成で軸部50を上方から軸受け部24に対して降ろしていくと弾性片24a,24bが最初は外側に押し広げられていき、軸部50の軸受け部24に深く入ったところで弾性片24a,24bが再び元の状態に戻る。このようにして軸部50の軸受け部24に対する嵌合が行われる。他の軸部51?53も同様にして嵌合される。」

これらの記載内容からみて、引用例2より、像担持体である感光体ドラムが内包されたカートリッジフレームを上下に二分割したものを係合によって組み付けることのできる感光体カートリッジ構造が把握できる。
そして、このカートリッジフレームに感光体ドラム等の回転体はその軸部を上下に二分割された一方のカートリッジフレームの軸受け部にそのフレームに設けられている2つの弾性片で挟持されるように挿入固定し、さらに帯電器、クリーナユニット、剥離ユニット等の周辺部品はそれに設けられている位置決め用孔をカートリッジフレームに設けられている位置決め用突起に合わせてその状態で突起を溶着することで取り付けられていることからして、いずれも位置決め固定されていると把握でき、さらに、前記の感光体ドラム等の回転体においては、上下に二分割されたカートリッジフレームの間で挟持固定されているものといえる。

3.周知技術に関する文献
特開昭62-159157号公報
m.特許請求の範囲
「画像形成用の構成部品を着脱自在に緩く結合してユニットを形成すると共に、上記構成部品に設けた固定部を装置本体側に設けた着脱自在の位置決め部に差込み保持して、上記構成部品相互の位置を規制するようにしたことを特徴とする電子写真装置。」
当該公報には、構成部品の位置決め部材を、取り付けられる側の部材に設けた位置決め部に付勢して挟持することで、構成部品相互の位置を規制する手法が記載されている。

4.本願考案と引用例1から把握できる考案との対比
まず、本願考案と、引用例1から把握できる考案とを対比すると、
引用例1における「プロセスユニット」は「像担持体」を「カートリッジ」に内包化しており、本願考案の「像担持体ユニット」に相当し、また引用例1における「複写機」は、本願考案の「画像形成装置」に包含されるものであることからして、両者は、像担持体が内包された本体ユニットと、他方のユニットとを互いに締結させて一つの像担持体ユニットを形成する画像形成装置である点で共通している。

しかしながら、両者は以下の各点で相違している。
(1)本体ユニットへの像担持体の内包に関して、本願考案では、「像担持体が位置決め固定され」と限定されているのに対して、引用例1から把握できる考案においては、単に「内包化される」と記載されるのみで、位置決め固定されるか否かが不明である点。
(2)直接像担持体に作用する部材の固定に関して、本願考案では、「前記本体ユニットに前記像担持体の周囲所定位置に配設されるとともに、直接前記像担持体に作用する部材の両端部を回転不可能に支持し、当該部材と当該像担持体との距離を規定する位置決め部を形成するとともに、
前記本体ユニットと前記他方ユニットとを締結させる際に、前記部材を当該本体ユニットの位置決め部と当該他方のユニットとの間に挟持固定させる」と限定されており、その実施例において「直接前記像担持体に作用する部材」としては「帯電器2」が掲げられているのに対して、引用例1から把握できる考案では、全体の概略を示す第1図において像担持体を内包している本体ユニットの中に帯電器である帯電極8を有することは把握できるものの、これの固定がどのようになされているか不明である点。

5.当審の判断
まず、相違点1について検討する。
前記引用例2には、複写機本体へ装着されて使用されるカートリッジフレーム構造に関して、本願考案の像担持体ユニットに相当するカートリッジフレームへ本願考案の像担持体に相当する感光体ドラムを支持するに際して、まず、感光体ドラムを下フレームの軸受部に弾性片で挟持されるように挿入固定した後に、下フレームへ上フレームを係合することで上下フレームを組み付けることからして、本願考案と同様に、本願考案の「本体ユニット」に相当する下フレームには本願考案の「像担持体」に相当する感光体ドラムが位置決め固定されているものといえる。
したがって、当該相違点1のごとくに構成することは、当業者が必要に応じて容易に採用し得た程度のことである。

次に、相違点2について検討する。
本願明細書には、従来技術では、帯電器を装着させる際に、放電ワイヤが感光体に対し適正な位置にあるか否かを測定し調整させるものであって、人手により測定と調整作業を行うため、組み立て作業が繁雑であり、しかも位置決め精度を高精度に規定することが極めて困難であるという問題点があることが指摘されている。
また、前記引用例2として引用した特開昭62-153964号公報に関して、「図3に記載されているように、感光体ドラム1(像担持体)の両端部を下フレーム6bの軸受部24及び25上に位置決め載置し、また、その図7で示すように、直接像担持体に作用する部材である帯電器2を別フレームである上フレーム6aに固定し、この上フレーム6aと前記下フレーム6bとを互いに締結させて、直接像担持体に作用する部材(帯電器2)と像担持体(感光体ドラム1)との間の距離を規定するようにしたものも開示されている。」(本願明細書段落【0006】および【0007】)と、この引用例2においても、帯電器2に関しては従来技術としての問題点を有するものと指摘されている。
しかし、当該引用例2においては、直接像担持体に作用する部材とまではいえないまでも、像担持体と関連して作動する周辺部品である廃トナー回収用回転板32が感光体ドラム1と同様の手法により下フレーム6bに取り付けられている。
そして、本願考案における「直接前記像担持体に作用する部材」が帯電器のみを意図するものであるとすれば、引用例2において本願考案における挟持固定構成が帯電器において採用された同一の構成のものであるとはいえない。
しかしながら、本願明細書においては、本願考案が前記「直接前記像担持体に作用する部材」として意図するものに関して、段落【0001】で「この考案は、電子写真システムを採用した画像形成装置に関し、特に感光体等の像担持体周辺に配置される部材の位置決め構造に関する。」と、また、段落【0008】で「この発明は上述した事情に鑑み、部品点数が少なく、しかも簡単な作業で像担持体の周囲に配置される部材と像担持体との距離を精度よく規定することのできる画像形成装置を提供することを目的とする。」との記載があり、段落【0028】および【0029】における記載からしても、こと帯電器のみを意図するものとはいえない。
また、前記したように、帯電器を位置決め固定する同一構成が引用例2に記載されているとはいえないとしても、同じ周辺部品の位置決め固定手法を他の周辺部品に適用することの困難性があるものとはいえない。
そして、前記に周知技術に関する文献として掲げた特開昭62-159157号公報にみられるように画像形成装置である電子写真装置において、構成部品の位置決め部材を、取り付けられる側の部材に設けた位置決め部に付勢して挟持することで、構成部品相互の位置を規制する手法は慣用されているものである。

本願考案においては、前記したように本体ユニットと他方ユニットとを締結させる際に、
「前記本体ユニットに前記像担持体の周囲所定位置に配設されるとともに、直接前記像担持体に作用する部材の両端部を回転不可能に支持し、当該部材と当該像担持体との距離を規定する位置決め部を形成するとともに、
前記本体ユニットと前記他方ユニットとを締結させる際に、前記部材を当該本体ユニットの位置決め部と当該他方のユニットとの間に挟持固定させる」なる限定がなされる。
これは、像担持体を支持する本体ユニットに設けられた位置決め部に対して、他方ユニットが締結される際に、「直接前記像担持体に作用する部材の両端部」を付勢して位置決めを図ると共に、挟持固定することを意味するものである。
一方、引用例2における廃トナー回収用回転板32は感光体ドラム1と同様の手法で組み付けられており、まず下フレーム6bの弾性片26a,26bで挟み軸受部26に嵌合され、次に上フレーム6aの軸受部25で挟持固定されるものである。
よって、引用例2においても、ひとまず、像担持体周辺に配置される部材の位置決め構造に関して、位置決めすると共に挟持固定する手法が明らかに記載されているものといえる。
そして、前記に指摘するように、この手法自体は、画像形成装置において位置決め固定に際して周知の手法である。

したがって、引用例1における、像担持体が内包された本体ユニットと、他方のユニットとを互いに締結させて一つの像担持体ユニットを形成する画像形成装置構成に対して、引用例2に記載される、像担持体周辺に配置される部材の位置決め構造を適用することは、当業者が必要に応じて容易になし得た程度のことである。
また、本願考案において、これらの相違点を合わせて備えたことによる作用効果も当業者が容易に推察し得る程度のものである。
6.むすび
以上のとおりであるから、本願実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案は、引用例1乃至引用例2に記載されたものから当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-03-27 
結審通知日 2000-04-07 
審決日 2000-04-18 
出願番号 実願平10-5174 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 高島 喜一鈴木 秀幹木村 敏康  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 水垣 親房
小橋 立昌
考案の名称 画像形成装置  
代理人 木村 高久  

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