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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) A62C
管理番号 1025010
審判番号 審判1998-35603  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-11-30 
確定日 2000-08-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第2581690号実用新案「スプリンクラーヘッドの自由位置設定用配管構造」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2581690号実用新案の明細書の請求項1ないし3に記載された考案についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.経緯
本件実用新案登録第2581690号は、平成2年10月24日に出願され(実願平2-112048号)、平成10年7月17日に実用新案登録され、平成10年11月30日にニッコーメタル株式会社より無効審判の請求がされ、平成11年4月23日付で被請求人より審判事件答弁書とともに訂正請求書が提出され、平成11年8月17日付で請求人より審判事件弁駁書が提出され、平成11年10月7日に大阪で口頭審理がされ、平成11年10月28日付で訂正拒絶理由通知がだされ、平成12年1月7日付で被請求人より意見書とともに平成11年4月23日付の訂正請求書の訂正事項を補正する手続補正書が提出され、平成12年5月8日付で請求人より上申書が提出された。

2.審判請求人の主張の概要
請求人は、本件実用新案登録を無効とすべき理由として概略次のように主張する。
(1)本件実用新案登録の請求項1ないし3に係る考案(以下、本件考案1ないし3という。)は、本件の出願日前に出願されその後出願公開された特願平2-106950号(平成2年4月23日出願、平成4年1月9日出願公開(特開平4-5971号公報(甲第1号証))(以下、先願という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明(以下、先願発明という。)と同一であり、先願発明の発明者は本件考案の考案者と同一でなく、また先願の出願人は本件実用新案の出願人と同一でないから、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができない。
(2)本件考案1ないし3は、本件の出願前に頒布され公知となった甲第2号証ないし甲第5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
(3)(上記弁駁書における主張)平成11年4月23日付の訂正請求書によって実用新案登録請求の範囲を訂正しているが、訂正後の考案1及び2は先願発明と同一である。また、先願発明と異なったものになったとすれば、当該訂正は要旨を変更するものであって、出願日が繰り下がり、本件実用新案の出願公開公報により実用新案法第3条第1項第3号または実用新案法第3条第2項に該当するものとなるか、または、実用新案登録請求の範囲を実質的に変更するものであるので、その訂正は認められない。
(4)(上記上申書における主張)平成12年1月7日付の手続補正書によって実用新案登録請求の範囲を補正しているが、当該補正により限定した技術的事項は周知慣用技術であって、補正後の考案1及び2は先願発明と同一であるから、依然として無効事由を有する。

3.審判被請求人の主張の概要
審判被請求人は、概略次のように反論する。
(1)平成11年4月23日付の訂正請求書において実用新案登録請求の範囲等を訂正しており、訂正された考案1及び2は、甲第1号証の先願発明と同一ではないから、実用新案法第3条の2に該当しない。
(2)また、訂正された考案1及び2は、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものではないから、実用新案法第3条第2項に該当しない。
(3)(上記意見書における主張)平成12年1月7日付で補正された補正後の考案1及び2は、甲第1号証の先願発明と同一ではないから、実用新案法第3条の2に該当しない。

4.平成12年1月7日付の手続補正書で補正された訂正考案について
(1)無効審判の被請求人は平成12年1月7日付の手続補正書において、平成11年4月23日付の訂正請求書を補正し、実用新案登録請求の範囲について、同範囲の減縮を目的として次のように補正している。
「1.消火用水の給水用主配管の下方において該主配管と交差して分岐された複数の給水用補助配管にT字管チーズを介して接続される給水口2を上部に有し且つ側部に前記給水口より小径の排水口3が少なくとも3つ以上設けられた接続継手1と、該接続継手1の排水口3に変位自在なフレキシブルジョイント管13を介して取付けられる複数のスプリンクラーヘッド18とからなり、前記フレキシブルジョイント管13の可撓性によってスプリンクラーヘッド18を任意の位置に自由設定できると共に、前記給水口から給水される消火水を、前記排水口を介して水量及び水圧を略均等に分散させて放水するように構成にしてなるスプリンクラーヘッドの自由位置設定用配管構造。
2.前記排水口3が4個である請求項1記載のスプリンクラーヘッドの自由位置設定用配管構造。」
を、
「1.消火用水の給水用主配管の下方において該主配管と交差して分岐された複数の給水用補助配管にT字管チーズを介して接続される給水口2を上部に有し且つ側部に前記給水口より小径であって外周面に雄ネジ部5が形成された排水口3が少なくとも3つ以上設けられた接続継手1と、該接続継手1の排水口3の雄ネジ部5に螺合する袋ナット15により該排出口3に連結される変位自在なフレキシブルジョイント管13を介して取付けられる複数のスプリンクラーヘッド18とからなり、前記フレキシブルジョイント管13の可撓性によってスプリンクラーヘッド18を任意の位置に自由設定できると共に、前記給水口から給水される消火水を、前記排水口を介して水量及び水圧を略均等に分散させて放水するように構成にしてなるスプリンクラーヘッドの自由位置設定用配管構造。
2.前記排水口3が4個である請求項1記載のスプリンクラーヘッドの自由位置設定用配管構造。」
と補正する(以下、補正後の請求項1及び2に記載された考案を本件訂正考案1及び2という。)。
(2)以下、補正された訂正請求書に基づいて検討する。
(2-1)本件実用新案は、平成2年10月24日の出願に係り、平成10年7月17日に登録されたものであり、本件訂正請求は、平成11年4月23日にされたものであるから、平成6年法律第116号付則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成5年法律第26号付則第4条で読み替える旧実用新案法第40条第2項に基づく訂正の請求であり、旧実用新案法第40条第2項ただし書きの要件と、平成5年法律第26号付則第4条で読み替える旧実用新案法第40条第5項で準用する同法第39条第2項から第3項の要件を満たすことを要するので、まず旧実用新案法第39条第3項(独立要件)について以下検討する。
(2-2)先願について
無効審判請求人の提示した甲第1号証は、平成2年4月23日に出願(特許願平成2年第106950号)され、平成4年1月9日に特開平4-5971号として出願公開されたものであって、本件実用新案の出願の日前の特許出願であって本件実用新案の出願後に出願公開されたものである。先願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、次の記載が認められる。
明細書の記載及び図面の特に第1図ないし第3図を参酌すると、複数本の補助配管5は消火用水の給水用主配管1に交差させて配設されており、補助配管5にはT字管チーズ6を介して五方口継手10の吸入口8が接続され、該五方口継手10には4つの排出口9が設けられており、該排出口9には継手管11、フレキシブルジョイント管12、継手管13、エルボ14を介してスプリンクラーヘッド15が接続されている。スプリンクラーヘッド15はフレキシブルジョイント管12の可撓性により任意の位置に自由に設定できるものであることは明らかである。
ここで、第3図には、五方口継手10のフレキシブルジョイント管12が接続される4つの排出口9の口径は、吸入口8の口径よりも小さく示されているものの、口径について明示の記載はない。
また、4つの排出口9は図面上同じ大きさの口径で示されているものの、口径について明示の記載はない。
以上のことから、先願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、消火用水の給水用主配管1の下方において該主配管1と交差して分岐された複数の給水用補助配管5が設けられ、この給水用補助配管5にT字管チーズ6を介して接続される五方口継手10は、吸入口8を上部に有し且つ側部に排出口9が4つ設けられており、該排出口9には、継手管11、変位自在なフレキシブルジョイント管12、継手管13、エルボ14を介してスプリンクラーヘッド15が接続されており、前記フレキシブルジョイント管12の可撓性によってスプリンクラーヘッド15を任意の位置に自由設定でき、吸入口8からの消火水を4つの排出口9を介して分散させて放水するようになっているスプリンクラーヘッドに係る発明(先願発明)が記載されていると認められる。
(2-3)ここで、先願発明の吸入口、排出口は、本件訂正考案1の給水口、排水口に相当することは明らかであるから、本件訂正考案1と先願発明とは次の点で一致し、相違していると認められる。
[一致点]
消火用水の給水用主配管の下方において該主配管と交差して分岐された複数の給水用補助配管にT字管チーズを介して接続される給水口を上部に有し且つ側部に排水口が少なくとも3つ以上設けられた接続継手と、該接続継手の排水口に連結される変位自在なフレキシブルジョイント管を介して取付けられる複数のスプリンクラーヘッドとからなり、前記フレキシブルジョイント管の可撓性によってスプリンクラーヘッドを任意の位置に自由設定できると共に、前記給水口から給水される消火水を、前記排水口を介して分散させて放水するように構成にしてなるスプリンクラーヘッドの自由位置設定用配管構造。
[相違点1]本件訂正考案1では、排水口が給水口より小径となっているのに対し、先願発明ではその点が明記されていない点。
[相違点2]本件訂正考案1では、給水口から給水される消火水を、排水口を介して水量及び水圧を略均等に分散させて放水するようにしているのに対し、先願発明では排水口より水量及び水圧を略均等に分散させて放水する旨の記載はない点。
[相違点3]本件訂正考案1では、排水口の外周面に雄ネジ部が形成されているのに対し、先願発明の排出口の外周面に雄ネジ部は形成されていない点。
[相違点4]本件訂正考案1では、フレキシブルジョイント管は排水口の雄ネジ部に螺合する袋ナットにより該排出口に連結されるのに対し、先願発明では、フレキシブルジョイント管は継手管を介して排出口に連結されている点。
(2-4)しかしながら、本件訂正考案1の上記相違点1については、先願発明の第3図から五方口継手10の吸入口8の口径は、フレキシブルジョイント管12が接続される4つの排出口9の口径よりも大きいことが示されており、このように1つの吸入口8から流入させた消火用水を4つの排出口9に分散して流出させる場合に、流出側の流路を狭くする(口径を小さくする)ことは、流体の流れをスムーズにするために当然に配慮される設計的事項である。
次に、上記相違点2については、4つの排出口9は図面上同じ口径となっていることが示されており、格別の理由がない限り各スプリンクラーヘッドからの消火用水の流出量や水圧は均等とすることが望ましいことから、各スプリンクラーヘッドに接続された各排出口9の口径を同じ口径とすることは当然の設計的事項である。
次に、本件訂正考案1の上記相違点3及び4のように、継手部材とフレキシブル管とを接続するに当たり、継手部材の外周面に雄ネジ部を形成し、フレキシブル管とは該雄ネジ部に螺合する袋ナットにより連結するようにする構成は、管継手の技術分野において周知慣用の技術的事項である(例えば、実願昭53-104542号(実開昭55-21746号)のマイクロフィルムには、スプリンクラーヘッドと管継手との間に設けられた可撓性を有する蛇腹管(フレキシブル管)が、めねじ筒(雄ネジ部に螺合する袋ナット)により連結される構成が記載されており、実公昭58-46835号公報には、スプリンクラーヘッドのアングル管と配管との間に設けられたフレキシブルチューブからなる導管が、内側にめねじが設けられた(袋)ナットにより連結される構成が記載されている。)ことから、先願発明のフレキシブルジョイント管の継手の構成を本件訂正考案1の上記相違点3及び4に係る構成とすることは、当業者にとって周知慣用手段の単なる転換にすぎない。
以上のように、本件訂正考案と先願発明との相違点はいずれも当業者にとって単なる設計的事項にすぎないか、または周知慣用手段の単なる転換にすぎず、先願発明と本件訂正考案1とは実質的に同一である。
(2-5)また、本件訂正考案2に係る構成も先願の明細書又は図面に記載されており、先願発明と本件訂正考案2とは実質的に同一である。
(2-6)次に、考案者、発明者と出願人の異同について検討する。
本件実用新案の出願時(平成2年10月24日)における考案者及び出願人は共に服部孝正であり、一方、先願の発明者及び出願人は、本件実用新案の出願時においては発明者は服部孝正と南部武であり、出願人は五十鈴工業株式会社であることから、本件実用新案の出願時において考案者と発明者は同一でなく、また、本件実用新案の出願人と先願の出願人も同一でなく、実用新案法3条の2の除外の規定は適用できない。
(2-7)以上のように、本件訂正考案1及び2は、少なくとも実用新案法第3条の2の規定に該当するので、出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであって、補正後の訂正請求は、平成5年法律第26号付則第4条で読み替える旧実用新案法第40条第5項で準用する同法第39条第3項の要件を満たさないものである。したがって、平成12年1月7日付けで補正された平成11年4月23日付の訂正請求書による訂正請求は適法なものとは認められない。
(2-8)審判被請求人は、答弁書において、先願発明には、「給水口より小径の排水口3」や、「給水口から給水される消火水を、前記排水口を介して水量及び水圧を略均等に分散させて放水する」構成については開示されておらず、またそれらの構成を示唆する記載もない旨、また、平成12年1月17日付の意見書において、本件訂正考案は上記相違点に係る構成としたことによって、フレキシブルジョイント管を排水口に連結する作業がきわめて容易となるばかりでなく、接続継手の排水口の内径と略同一寸法の内径を有するフレキシブルジョイント管の接続が可能となり、これにより管内径の絞り込みによる圧力損失等が抑制でき、消火用水の流出量を低下せしめるという不都合を有効に防止できるという作用効果を奏する旨主張するが、上記(2-2)に記載したとおり、上記相違点に係る構成は、先願の図面の記載を参酌すれば当業者にとって当然の設計的事項を限定したに過ぎないのであって、先願の明細書又は図面に記載されているに等しい事項であるとともに、被請求人主張の作用効果は、フレキシブル管の管継手部分に袋ナットを用いたことによって当然に生じる作用効果であって、上記(2-4)に挙げた周知文献に記載のものも奏する作用効果にすぎない。
審判被請求人の主張はいずれも採用できない。

5.本件考案について
上記「4」に記載したように、平成11年4月23日付の訂正請求書の訂正請求は認められないので、本件考案について検討する。
(1)本件考案の認定
本件考案は、登録時の実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のものと認める(以下、請求項1ないし3に記載されたものを本件考案1ないし3という。)。
「【請求項1】給水用配管に接続される給水口2を上部に有し且つ側部に少なくとも3以上の排水口3が設けられた接続継手1と、該接続継手1の排水口3に変位自在なフレキシブルジョイント管13を介して取付けられるスプリンクラーヘッド18とからなり、且つ前記フレキシブルジョイント管13の可撓性によってスプリンクラーヘッド18を任意の位置に自由設定できる構成にしてなるスプリンクラーヘッドの自由位置設定用配管構造。
【請求項2】前記排水口3が4個である請求項1記載のスプリンクラーヘッドの自由位置設定用配管構造。
【請求項3】前記排水口3の口径が前記給水口2のそれよりも小径に形成されてなる請求項1又は2記載のスプリンクラーヘッドの自由位置設定用配管構造。」
(2)実用新案法第3条の2について
(2-1)本件出願前の出願に係る特許願平成2年第106950号(先願)には、上記「4」の「(2-2)」に記載した発明(先願発明)が記載されていると認められる。
そうすると、先願発明の吸入口、排出口は、本件考案1の給水口、排水口に相当することは明らかであるから、本件考案1ないし3は先願発明と同一であるといえる。
なお、先願発明においては、実施例を示す第2図において、五方口継手10の排出口9には継手管11を介してフレキシブルジョイント管12が接続されるとともに、スプリンクラーヘッド15は継手管13とエルボ14を介してフレキシブルジョイント管12に接続されているが、継手管11はフレキシブルジョイント管12と継手10の排出口9とを接続するものであって、本件考案1ないし3の実施例における接続継手1の排出口3とフレキシブルジョイント管13との接続の具体例である袋ナット15の代わりとなるものであり、排出口9にフレキシブルジョイント管12が取り付けられているとの認定を左右するものではない。
(2-2)また、本件実用新案の考案者、出願人と先願発明の発明者、出願人とは、上記「4」の「(2-6)」に記載したように同一ではないことから、実用新案法3条の2の除外の規定は適用できない。
(2-3)したがって、本件考案1ないし3は、実用新案法第3条の2に該当する。

6.まとめ
以上のように、本件考案1ないし3は実用新案法第3条の2の規定に該当するので、無効審判請求人の他の無効理由について検討するまでもなく、旧実用新案法第37条第1項第1号の規定により実用新案登録を受けることができない。
また、審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用し、さらに特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-06-05 
結審通知日 2000-06-16 
審決日 2000-06-27 
出願番号 実願平2-112048 
審決分類 U 1 112・ 121- ZB (A62C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 住田 秀弘  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 公子
小野 忠悦
登録日 1998-07-17 
登録番号 実用新案登録第2581690号(U2581690) 
考案の名称 スプリンクラーヘッドの自由位置設定用配管構造  
代理人 鈴江 正二  
代理人 鈴江 孝一  
代理人 藤本 昇  
代理人 藤本 昇  
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