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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1025040
審判番号 審判1998-18494  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-19 
確定日 2000-08-18 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 78002号「プラスチック製のねじキャップ」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 4月18日出願公開、実開平 7- 21553]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 <1> 本願考案
本願考案は、平成4年9月30日の出願であって、その請求項1に係る考案は、平成12年1月4日付手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「キャップ本体4の筒壁6の内面にねじ山8を有し、筒壁6の上端を塞ぐ端壁7の内天面9に密封リング10が突設してあり、キャップ本体4の下部にピルファープルーフバンド5が一体形成されているねじキャップ3であって密封リングは下方に向って徐々に拡がる下拡がりテーパー状に形成され、閉栓したとき密封リング10のほぼ全域がびん口2内に嵌合し、びん口2に対する嵌合部の下端が少なくともびん口ねじ形成領域Zの中央付近に達するよう、密封リング10に突出長hを設定し、開栓する際ピルファープルーフバンド5が完全に切断される際のキャップ本体4の軸方向の移動量に比べて密封リング10とびん口2の嵌合部長Kが十分に大きく設定されているようにしたプラスチック製ねじキャップ。」

<2> 引用例の記載
これに対して、当審において拒絶の理由に引用した特開昭57-194938号公報(以下、「引用文献1」という。)には、下記の事項が記載されている。
(a)「上述した通りの口部2は、例えば第3図に全体を番号16で示す容器蓋を装着することによって密封される。ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂からそれ自体は公知の方法で製造することができる容器蓋16は、円形天面18及びこの天面18の周縁から垂下する円筒状スカート20を有する。スカート20の外周面には、これを指で把持する際の滑りを防止するための凹凸乃至ローレット22が形成されているのが好都合である。スカート20の内周面には、口部2の外周面4に形成されている雄螺条10に対応して1.25回転(約450度)に渡って連続的に延びる雌螺条24が形成されている。」(第4頁右上欄第3?15行。なお、第3図参照)
(b)「筒状シール片26の外周面の下端部に位置する隆起部28の少なくとも下部は、口部2の内周面8に形成されている上記溝14の下端よりも下方位置にて口部2の内周面8に密接せしめられることが重要である。」(第4頁右下欄第9?13行)
(c)「第8図に図示する容器蓋216は、アルミニウム基合金、クロム酸処理鋼又はブリキの如き適宜の金属薄板から形成された金属シェル216aと、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から形成されたライナー216bとから構成されている。金属シェル216aは、円形天面218及びこの天面218の周縁から垂下する円周スカート220を有する。スカート220には、周方向に間隔を置いて配設された周方向に延びる複数個のスリット221とかかるスリット221間に位置する橋絡部223とによって規定された破断ラインが形成されており、スカート220は破断ラインよりも上方の主部220aと破断ラインよりも下方のピルファプルーフ裾部220bとに区画されている。一方、金属シェル216bの天面218の内面に配設されたライナー216bは、スカート220よりも半径方向内側で天面218から垂下する筒状シール片226と、スカート220と筒状シール片226との間にて天面218から垂下する付加的な筒状シール片230とを有する。ライナー216bの筒状シール片226及び付加的な筒状シール片230自体は、第3図に図示する容器蓋16における筒状シール片26及び付加的な筒状シール片30と実質上同一の構成でよく、筒状シール片226の外周面の下端部近傍には環状隆起部228が形成されている。上記の通りのライナー216bは、例えば金属シェル216aの天面218の内面に軟化状態のライナー素材を供給してこれを所要の形状に型押成形することによって、或いは予め所要の形状に形成したライナーを金属シェル216aの天面218の内面に押入することによって、金属シェル216aの天面218の内面に所要の通りに配設することができる。
上記の通りの容器蓋216は、口部202に被嵌して軸線方向下方に押圧し、次いでそれ自体は周知の方法によって口部202の外周面203に形成されている雄螺条210に沿ってスカート220の主部220aに雌螺条224を成形すると共にスカート220のピルファープルーフ裾部220bの下端縁を半径方向内側に折曲げて口部202の外周面208に形成されている環状突出部212の下面に係止せしめることによって、第8図に図示する通りに口部202に装着される。」(第6頁右下欄第2行?第7頁右上欄第12行。なお、第8図参照)

<3> 対比・判断
ここで、本願の請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)と上記引用文献1の第8図に記載された考案(以下、「引用考案」という。)とを対比する。
上記記載(c)より、引用考案の容器蓋は、その構成部分の「スカートの主部」「天面」「筒状シール片」「スカートのピルファープルーフ裾部」が、それぞれ、本願考案のキャップ本体における「筒壁」「内天面」「密封リング」「ピルファープルーフバンド」に相当し、「スカートの主部」内面にねじ山(雄螺条)が形成されている点においても、本願考案のキャップ本体と一致している。また、上記記載(c)によれば「ライナー216bの筒状シール片226及び付加的な筒状シール片230自体は、第3図に図示する容器蓋16における筒状シール片26及び付加的な筒状シール片30と実質上同一の構成」でよいとされているところ、第3図の蓋に関する上記記載(b)において筒状シール片が下端部に隆起部を有する点が記載されていることより、密封リング(筒状シール片)が「下方に向かって徐々に拡がる下拡がりテーパー形状に形成されている」点も記載されているということができ、この点においても両者は一致している。また、第8図から、引用考案においては閉栓時に密封リング(筒状シール)のほぼ全域がびん口内に嵌入されていることが認められ、「閉栓したとき密封リングのほぼ全域がびん口内に嵌合」する点においても両者は一致している。
したがって、本願考案と引用考案は、
「キャップ本体4の筒壁6の内面にねじ山8を有し、筒壁6の上端を塞ぐ端壁7の内天面9に密封リング10が突設してあり、キャップ本体4の下部にピルファープルーフバンド5が一体形成されているねじキャップ3であって密封リングは下方に向って徐々に拡がる下拡がりテーパー状に形成され、閉栓したとき密封リング10のほぼ全域がびん口2内に嵌合」するねじキャップである点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1> 本願考案においては「びん口2に対する嵌合部の下端が少なくともびん口ねじ形成領域Zの中央付近に達するよう、密封リング10に突出長hを設定し」ているのに対し、引用考案においてはそのようになっていない点
<相違点2>本願考案においては「開栓する際ピルファープルーフバンド5が完全に切断される際のキャップ本体4の軸方向の移動量に比べて密封リング10とびん口2の嵌合部長Kが十分に大きく設定されている」と特定されているのに対し、引用考案においては、そのような特定が明確にされていない点。
<相違点3>本願考案のキャップがプラスチック製であるのに対し、引用考案の蓋(キャップ)が金属薄板の部材と合成樹脂(プラスチック)の部材を組み合わせたものである点
上記の相違点について検討する。
相違点1については、ねじキャップにおいて「びん口に対する嵌合部の下端が少なくともびん口ねじ形成領域の中央付近に達するよう、密封リングに突出長を設定」することは、周知の技術である。(必要とあらば、当審の拒絶の理由に引用した実願昭55-13879号(実開昭56-115354号)のマイクロフィルム、実願昭60-77386号(実開昭61-194646号)のマイクロフィルムの他、特開昭63-218051号公報等も参照。)そして、密封性等の要請に応じて、この周知技術をねじキャップという点で同じ技術分野に属する上記引用考案に適用し本願考案のようにすることに格別の困難性は認められない。また該適用によって当業者の予測を越える格別の作用効果が生ずるものとも認められない。
相違点2については、上記周知技術を引用考案に適用して「びん口に対する嵌合部の下端が少なくともびん口ねじ形成領域の中央付近に達するよう」に構成すれば、密封リングとびん口の嵌合長さが、開栓する際ピルファープルーフバンドが完全に切断される際のキャップ本体の軸方向の移動量に比べて十分大きくなっていることは技術常識から考えて当然のことであり、相違点2に関して特定されている事項は、上記周知技術の適用の際に当然構成されること又は当然生じる作用を規定したに過ぎないものと認められる。したがって、相違点2の特定に格別の困難性は認められない。
相違点3については、(1)上記引用文献1中の上記記載(a)から認められるように、同じ引用文献中の第3図にプラスチック製のねじキャップが記載されていること、(2)しかも、引用考案(上記引用文献中の第8図に示されたもの)と同じ引用文献中の第3図のものものは、上記記載(c)からもわかるように一部の構成を共通にしていること、(3)さらに、ピルファープルーフバンドを有する合成樹脂製蓋自体が周知であること(必要とあらば、特開平1-308758号公報、実願平1-64297号(実開平3-4554号)のマイクロフィルム参照)に鑑みれば、引用考案の蓋を合成樹脂製とすることは、上記引用文献に記載されているに等しいか、又は、当業者であれば適宜採用することができる程度の設計的事項にすぎないものである。

<4> むすび
以上のとおりであって、この出願の請求項1に係る考案は、引用文献1に記載の考案及び本願出願前周知の技術事項に基づいて当業者がきわめて容易に発明をすることができたものであると認められ、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-05-29 
結審通知日 2000-06-13 
審決日 2000-06-26 
出願番号 実願平4-78002 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 渡邊 豊英  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 森林 克郎
杉原 進
考案の名称 プラスチック製のねじキャップ  
代理人 今村 元  

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