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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16J
管理番号 1025047
審判番号 審判1999-5294  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-04-02 
確定日 2000-08-16 
事件の表示 平成3年実用新案登録願第39085号「ガスケット」拒絶査定に対する審判事件[平成4年11月12日出願公開、実開平4-124372]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 I.手続の経緯・本願考案

本願は、平成3年4月26日の出願であって、その請求項1に係る考案は、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願考案」という。)。
「インジェクターとハウジングの間をシールする環状のガスケットであって、該ガスケットは、外周面には径方向外方に向かって開口するとともに全周に渡って形成された溝部を備え、両側面には軸方向に突出するとともに外周側寄りに突起部が設けられ、前記インジェクターの外周面と該外周面から径方向外方に延びる第1の軸方向直交面とからなる第1の段部、および前記ハウジングの内周面と該内周面から径方向内方に延びる第2の軸方向直交面とからなる第2の段部より構成される環状空所に配置されるとともに、一側面の突起が前記第1の軸方向直交面と当接し、且つ他側面の突起部が前記第2の軸方向直交面と当接して、前記突起部の先端部が前記ガスケットの両側面と同一高さとなるシール面を形成することを特徴とするガスケット。」

II.引用刊行物

これに対して、当審の拒絶の理由に引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭57-69827号(実開昭58-172053号)のマイクロフィルム(以下、刊行物1という)には、その第1実施例(第2図)として、吸気マニホルド12とエアアシストインジェクタ14に相当。)との間に装着された2枚のゴムシール26,28のうち、先端側ゴムシール26の断面形状が略U字形状とされているものが記載されているが、実用新案登録請求の範囲第3項に「前記2枚のシール部材の少なくとも一方の断面形状が、略U字形状とされ」と記載されているように、エアアシストインジェクタ14取付部のゴムシール28の断面形状が略U字形状とされることについても記載されていると認められることから、刊行物1には、下記の考案が記載されているものと認める。(以下、「引用考案」という。)
「エアアシストインジェクタ(インジェクター)と吸気マニホルド(ハウジング)の間をシールする環状のゴムシール(ガスケット)であって、該ゴムシール(ガスケット)は、外周面には径方向外方に向かって開口するとともに全周に渡って形成された略U字形状断面形状(溝部)を備え、前記エアアシストインジェクタ(インジェクター)の外周面と該外周面から径方向外方に延びる第1の軸方向直交面とからなる第1の段部、および前記ハウジングの内周面と該内周面から径方向内方に延びる第2の軸方向直交面とからなる第2の段部より構成される環状空所に配置されるとともに、一側面が前記第1の軸方向直交面と当接し、且つ他側面が前記第2の軸方向直交面と当接して、シール面を形成することを特徴とするゴムシール(ガスケット)。」
()内は、引用考案を特定する事項に対応した本願考案を特定する事項を示す。
また、当審の拒絶の理由に引用された周知の技術思想を示す例として本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭59-171652号(実開昭61-87289号)のマイクロフイルム(以下、刊行物2という)には、「側端面に1個又は複数の環状凸部を設けたので、これがシール面(プラグの外周面部および環状パッキンの取付溝壁)に密着したときの接触面積は減少し、従ってシール面圧を増大させることができる。」(第6頁第6?10行)と記載されている。

III.対比・判断

そこで、本願考案と引用考案とを対比すると、引用考案の「エアアシストインジェクタ」、「吸気マニホルド」、「略U字形状断面形状」及び「ゴムシール」は、それぞれの有する機能に照らしてみると、本願考案の「インジェクター」、「ハウジング」、「溝部」及び「ガスケット」にそれぞれ相当するので、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
インジェクターとハウジングの間をシールする環状のガスケットであって、該ガスケットは、外周面には径方向外方に向かって開口するとともに全周に渡って形成された溝部を備え、前記インジェクターの外周面と該外周面から径方向外方に延びる第1の軸方向直交面とからなる第1の段部、および前記ハウジングの内周面と該内周面から径方向内方に延びる第2の軸方向直交面とからなる第2の段部より構成される環状空所に配置されるとともに、一側面が前記第1の軸方向直交面と当接し、且つ他側面が前記第2の軸方向直交面と当接して、シール面を形成することを特徴とするガスケット。
<相違点>
1.本願考案が、ガスケットの「両側面には軸方向に突出するとともに外周側寄りに突起部が設けられ」ているのに対し、引用考案にはそのような突起部が設けられていない点。
2.本願考案が、「一側面の突起が第1の軸方向直交面と当接し、且つ他面側の突起部が第2の軸方向と当接して、突起部の先端部がガスケットの両側面と同一高さとなるシール面」を形成しているのに対し、引用考案にはそのような突起部が設けられていない点。
ついで、上記相違点について検討する。
相違点1について
シール性を向上させるために環状のガスケットの両側面に軸方向に突出する突起部を設けることは、上記刊行物2にも記載されているように従来周知の技術思想であり、また、突起部を設ける位置は必要な面圧とシール部位を考慮して適宜に決め得る事項であると認められるので、引用考案のガスケットに上記周知の技術思想を適用して、上記相違点1の本願考案のように構成することに格別な困難性は認められない。
なお、引用考案においても、本願考案と同様に、インジェクターが傾いた場合には、ゴムシールが溝部を介して軸方向に伸縮変形することによりその傾きを吸収するので、良好なシール性が確保できるという効果を奏することも、当業者ならきわめて容易に予測し得ることである。
相違点2について
ガスケットにおいて、必要な面圧を得るため、あるいは、シール部への追随性を得るため、ガスケットを弾性材料で形成し、適宜予圧を付与して設置することは、従来周知の技術思想であり、また、予圧の程度、弾性材料の寸法によって突起部の高さが決まることから、引用考案に上記従来周知の技術思想を適用するに際し、突起部の先端部がガスケットの両側面と同一高さとなるようにすることは、当業者が格別創意工夫を要することとはいえず、また、そうすることによって、当業者が予期し得る以上の格別な効果を奏するものとも認められない。

IV.むすび

本件出願の請求項1に係る考案は、その出願前に国内において頒布された刊行物1に記載された考案、及び周知の技術思想に基づいて、当業者が、きわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-06-02 
結審通知日 2000-06-16 
審決日 2000-06-27 
出願番号 実願平3-39085 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (F16J)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 柴沼 雅樹前田 幸雄  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 和田 雄二
常盤 務
考案の名称 ガスケット  
代理人 高塚 一郎  

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