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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16B
管理番号 1025049
審判番号 審判1999-4014  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-03-11 
確定日 2000-09-04 
事件の表示 平成 3年実用新案登録願第 58279号「建築用パネルの接合構造」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 1月19日出願公開、実開平5-3619]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成3年6月28日の出願であって、平成11年1月26日に拒絶査定がなされ、その後平成11年3月11日に審判請求がなされ、平成11年7月2日付けで前置審査の拒絶理由を通知したところ、平成11年9月27日に意見書が提出されたものである。

2. 本願考案
本願の請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、平成11年4月12日付け手続補正書により補正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
【請求項1】木製の枠組みを有する2枚の建築用パネルの枠組みの側面同士が緊結具32を用いて接合される建築用パネルの接合構造において、
各前記建築用パネルは、接合される側面である接合面からこの接合面とは反対側の側面である非接合面にかけて貫通する取付け孔38を有し、
前記緊結具32は、一方の前記建築用パネルの前記非接合面に当接する緊結頭部46と、この緊結頭部46に突接され各々の前記取付け孔38に挿入されこれら取付け孔38,38を貫通する緊結軸48と、を有し、
前記緊結軸48は、取付け孔38の孔径よりも大きな最大径を有しかつ挿入方向に向かうに従って小さくなる傾斜形状の突起54を軸方向に沿って複数有し、
前記緊結頭部46は、前記緊結軸48の軸方向に沿って突出する歯型部52を前記非接合面に当接する当接面を備え、この歯型部52を前記非接合面に食い込ませて固定されることを特徴とする建築用パネルの接合構造。

3. 引用例記載の考案
これに対して、前置審査の拒絶の理由に引用された実願平1-114219号(実開平3-54504号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、屋根パネルの接合構造に関する考案が記載されていて、明細書及び図面の記載からみて、次のとおりの考案(以下、「引用考案1」という。)が記載されていると認めることができる。
「木質系である接合部3Aを含む框部3を有する2枚の木質系住宅用のパネル1の框部3の接合部3A同士が緊結する接合ボルト11とナット12を用いて接合される木質系住宅用のパネル1の接合構造において、
各前記木質系住宅用のパネル1は、接合される側面である接合面からこの接合面とは反対側の側面である非接合面にかけて貫通するボルト孔5,6を有し、
前記緊結具32は、一方の前記木質系住宅用のパネル1の前記非接合面に当接するボルト頭部と、このボルト頭部に突接され各々の前記ボルト孔5,6に挿入されこれらボルト孔5,6を貫通するボルト軸部と、を有し、
前記ボルト軸部は、ボルト孔5,6の口径d2と略等しい径d1を有しかつナット12と螺合する雌ねじ部分11bを有することを特徴とする木質系住宅用のパネル1の接合構造。」

4. 本願考案と引用考案1との対比及び判断
本願考案と引用考案1とを対比すると、引用考案1の「木質系である接合部3Aを含む框部3」は本願考案の「木製の枠組み」に相当し、同様に、「木質系住宅用のパネル1」は「建築用パネル」に、「框部3の接合部3A」は「枠組みの側面」に、「緊結する接合ボルト11とナット12」は「緊結具32」に、「ボルト孔5,6」は「取付け孔38」に、「ボルト頭部」は「緊結頭部46」に、「ボルト軸部」は「緊結軸48」に、「口径d2」は「孔径」に、それぞれ、相当すると認められるので、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
木製の枠組みを有する2枚の建築用パネルの枠組みの側面同士が緊結具32を用いて接合される建築用パネルの接合構造において、
各前記建築用パネルは、接合される側面である接合面からこの接合面とは反対側の側面である非接合面にかけて貫通する取付け孔38を有し、
前記緊結具32は、一方の前記建築用パネルの前記非接合面に当接する緊結頭部46と、この緊結頭部46に突接され各々の前記取付け孔38に挿入されこれら取付け孔38,38を貫通する緊結軸48と、を有することを特徴とする建築用パネルの接合構造。
<相違点>
(1)緊結軸48について、本願考案では、取付け孔38の孔径よりも大きな最大径を有しかつ挿入方向に向かうに従って小さくなる傾斜形状の突起54を軸方向に沿って複数有しているのに対し、引用考案1では、取付け孔38(ボルト孔5,6)の孔径(口径d2)と略等しい径d1を有しかつナット12と螺合する雌ねじ部分11bを有している点。
(2)緊結頭部46について、本願考案では、前記緊結軸48の軸方向に沿って突出する歯型部52を前記非接合面に当接する当接面を備え、この歯型部52を前記非接合面に食い込ませて固定されるとなっているのに対し、引用考案1では、このような歯型部52を具備していない点。
以下、これらの相違点について検討する。
<相違点(1)について>
この相違点は、要するに、緊結具として、本願考案では、工具を用いて叩くだけで緊結軸の一部を木質部に食い込ませることで固定する型式のものを採用しているのに対し、引用考案1では、ボルトにナットを螺合させることで固定する型式のものを採用していることに基づくものであるが、工具を用いて叩くだけで緊結軸の一部を木質部に食い込ませることで固定する型式のものは従来周知であって、緊結状態において、挿入孔の孔径よりも大きな最大径を有しかつ挿入方向に向かうに従って小さくなる傾斜形状の突起を軸方向に沿って複数有しているものは、前置審査の拒絶の理由に引用された実公昭32-4101号公報(以下、「引用例2」という)に記載されている。
そして、工具を用いて叩くだけで緊結軸の一部を木質部に食い込ませることで固定する型式の緊結具において、緊結の前において、緊結具の軸部を挿入する孔をあけておくことは従来周知の技術的事項であり(例えば、実願昭60-23682号(実開昭61-140209号)のマイクロフィルム参照。)、さらに、引用例2に記載されたものにおいて、緊結の前において、緊結具の軸部を挿入する孔をあけておくことことを妨げる特段の事情があるとも認められない。
また、工具を用いて叩くだけで緊結軸の一部を木質部に食い込ませることで固定する型式の緊結具において、緊結軸の先端部を貫通させることは、見栄えや防錆の観点で一般的ではないが、緊結具の基本的な機能として格別変わることがないということも当業者であればきわめて容易に予測できることに過ぎない。
してみると、この相違点(1)に係る本願考案の構成は、当業者にとって、引用考案1に引用例2に記載された考案の技術思想を採用することにより、きわめて容易に想到できたものと言わざるを得ない。
<相違点(2)について>
工具を用いて叩くだけで緊結軸の一部を木質部に食い込ませることで固定する型式の緊結具において、緊結軸の軸方向に沿って突出する歯型部を非接合面に当接する当接面を備え、この歯型部を前記非接合面に食い込ませて固定されるようにすることは従来周知の技術的事項であり(例えば、実願昭52-173082号(実開昭54-97668号)のマイクロフィルム参照。)、さらに、引用例2に記載されたものにおいて、緊結軸の軸方向に沿って突出する歯型部を非接合面に当接する当接面を備え、この歯型部を前記非接合面に食い込ませて固定されるようにすることを採用することを妨げる特段の事情があるとも認められない。
また、それによって生じる作用効果も当業者の予測を越えるものとは認められない。
してみると、この相違点(2)に係る本願考案の構成は、当業者にとって、引用考案1に引用例2に記載された考案の技術思想を採用するに際し、適宜実施できる程度の設計的事項であると言わざるを得ない。
結局、上記相違点はいずれも格別なものではなく、また上記相違点を総合的に検討しても奏せられる効果は当業者が当然に予測できる範囲内のものと認められる。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願考案は、引用例1及び引用例2に記載された考案並びに周知の技術的事項から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められ、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-06-27 
結審通知日 2000-07-07 
審決日 2000-07-18 
出願番号 実願平3-58279 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F16B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 仁木 浩森藤 淳志原 泰造  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 池田 佳弘
秋月 均
考案の名称 建築用パネルの接合構造  

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