• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16J
管理番号 1025051
審判番号 審判1998-18170  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-12 
確定日 2000-08-16 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 84670号「密封装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 6月10日出願公開、実開平 6- 43422]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯
本願は、平成4年11月13日の出願であって、平成8年9月12日付けで審査請求され、平成10年4月22日付けで拒絶の理由が通知され、平成10年10月2日付けで拒絶の査定がなされ、平成10年11月12日本件審判請求がなされ、平成10年12月14日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.本願考案の要旨
(1) 実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載
「軸の外周面に密封接触するシールリップを有し、前記シールリップがめくれた際に軸に接触する面に突起を設ける密封装置において、前記シールリップのホルダリップの少なくとも外端面に前記突起が設けられていることを特徴とする密封装置。」(以下、「本願考案」という。)
(2) 本願考案の課題
シールリップがめくれた際に軸に接触する面に突起を設け、軸挿入後シールリップがめくれた場合、突起の周方向両端部においてシールリップと軸との間に隙間が生じるようにして、エアリークテストで必ずめくれが検出することができ、したがって、エアリークテストでのシールリップめくれ検出精度の向上を図る。(【考案が解決しようとする課題】及び【考案の効果】の欄参照)

3.引用例
原審の拒絶理由に引用した特開平2-113175号公報(以下、「引用例」という。)には、「パッキンリング」に関する考案について記載されていて、次のような技術的事項が記載されている。
(1) 「本発明の課題は、パッキンリングの取付けミスを確実に確認することができるようにこの種のパッキンリングを構成することである。」(第1頁右下欄第18?20行参照)
(2) 「パッキン部分4はその筒状の外面8に、横断面が部分円状の溝9を有し、・・・溝9は半径方向にてパッキンリップ12に対向しており、該パッキンリップ12はそのパッキン稜11によって、パッキンされるべき軸に載置されている。・・・パッキン部分4は、半径方向の面内にあるほぼ平坦な端面13を有している。」(第2頁右上欄第8?16行参照)
(3) 「パッキン部分が折り返されたことを上記の密封検査でも確認することができるように、本発明によるパッキンリングのリング部分15は異形部16を備えている。異形部16は・・・その結果隆起部17,17′とその間に凹部18が形成される(第3図)。・・・凹部18は密封検査のときに圧縮空気が流動する流動路を形成する。」(第2頁右下欄第6?14行参照)
(4) 「異形部16の代わりに、パッキン部分4のリング領域15に、・・・隆起部を設けることができる。」(第2頁右下欄第17?19行参照)
(5) 「第1図ないし第3図において波線で示したように、異形部16に加えて、前記端面13の中心部に少なくとも1つの別の異形部19を設けることができる。この異形部19はほぼ半球状の隆起部20によって形成される。・・・隆起部20は端面13の中心部に位置し、その高さは異形部16の隆起部17の高さにほぼ等しい。」(第3頁左上欄第15行?同頁右上欄第4行参照)
(6) 「異形部23は、リングスプリング10と、・・・半径方向の幅狭部25との間・・・に位置している。」(第3頁左下欄第13?17行参照)
(7) 「異形部16,19,23は一緒に設けることも、またそれぞれ独立に設けることもできる。或いはこれら異形部16,19,23のうち2つだけを設けることができる。しかし、常に異形部16を設けるのが有利である。」(第3頁右下欄第4?8行参照)
これらの記載事項並びに明細書及び図面の記載全体からみて、引用例には、次のような考案(以下、「引用考案」という。)及びその課題が記載されていると認めることができる。
<引用考案>
「軸の外周面に密封接触するパッキン部分を有し、前記パッキン部分が折り返されたときに軸に接触する面に隆起部を設けるパッキンリングにおいて、前記パッキン部分が折り返されたときに軸と接触する面である、パッキン部分4のリング部分15の周囲、パッキン部分4の端面13及びパッキン部分4のリングスプリング10用の溝9と幅狭部25の間に、それぞれ、隆起部17,17′、隆起部20、隆起部26が設けられているパッキンリング。」
<引用考案の課題>
「パッキンリングの取付けミスにより、パッキン部分が折り返されたとき軸に接触する部分に隆起部を設け、パッキンリングの取付けミスによりパッキン部分が折り返されたとき、隆起部の周囲に凹部が形成され、密封検査のときに圧縮空気が流動するようにして、密封検査を確実にすること。」

4.本願考案と引用考案との対比
本願考案と引用考案とを対比すると、引用考案の「パッキン部分」が本願考案の「シールリップ」に相当し、同様に、「パッキン部分が折り返されたとき」が「シールリップがめくれた際」に、「隆起部」が「突起」に、「パッキンリング」が「密封装置」に、それぞれ相当すると認められる。
してみると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
また、両者は、その課題において、格別な相違がない。
<一致点>
軸の外周面に密封接触するシールリップを有し、前記シールリップがめくれた際に軸に接触する面に突起を設ける密封装置。
<相違点>
突起を設ける位置について、本願考案では、前記シールリップのホルダリップの少なくとも外端面に前記突起が設けられているとなっているのに対し、引用考案では、シールリップがめくれた際に軸に接触する面である、パッキン部分4(「シールリップ」に相当)のリング部分15の周囲、パッキン部分4(「シールリップ」に相当)の端面13及びパッキン部分4(「シールリップ」に相当)のリングスプリング10用の溝9と幅狭部25の間に、それぞれ、突起が設けられている点。

5.相違点に対する検討及び判断
本願考案の「シールリップのホルダリップの外端面」について本願の明細書及び図面の記載をみると、「シールリップ102のスプリングホルダー104の内外両端面107,108が平坦な為、シールリップ102が・・・図3(b)に示すようにめくれ込んだりした場合・・・軸106に密着してしまい」(【0005】欄参照)、「シールリップ1のホルダーリップ52の内外両端面52A,52Bにそれぞれ密封側突起7,大気側突起8」(【0017】欄参照)と記載されていて、「シールリップのホルダリップの外端面」は、「シールリップのスプリングホルダーの近傍であって、軸側と反対側の平坦な部分」であって、「シールリップがめくれ込んだりした場合に軸と密着する可能性のある部分」と解することができる。
そして、シールリップのめくれは、シールリップの各個所に作用する力の態様と応力の関係によって生じるものと考えられるから、シールリップがめくれ込んだりした場合、どこまでめくれるのか、どの位置でめくれが休止・安定するのかは、シールリップの各部分の大きさや押し込むときの力の大きさや速度によって決定するものであって、全てのシールリップが一様に一定個所でめくれが生じるものではない。
そこで、引用考案において、めくれの態様と突起の形成位置についてみると、本願考案と同様な課題を解決するために、本願考案の実施例の図3(b)に示されるものより、深くめくれ込んだ場合に密封装置の一部が密着して軸と接触することを想定して、その密着して接触する個所に突起を形成しているものと解することができる。
してみると、引用考案が、シールリップがめくれてシールリップの平坦な面が軸に密着する可能性のある複数個所に突起を設け、しかも、本願考案が想定するより相当深くめくれることを想定しているものと解することができるので、当業者がこのようなシールリップを有する密封装置の実施に際し、引用考案が想定するめくれの途中の段階のめくれに注目して(請求人は、審判請求理由補充書において、これを「シールリップが完全に反転するごとくめくれ」と称しているが、願書に添付した明細書及び図面の記載に基づかない主張であると共に、引用考案との対比においては途中にすぎない。)、その状態でシールリップの平坦な面が軸に密着する可能性のある個所に突起を設ける程度のことは、当業者にとって、きわめて容易に想到できたものというほかない。
したがって、上記相違点において摘記した本願考案の構成は、引用考案に基づいて、当業者にとって、きわめて容易に想到できたものであって、上記相違点は格別のものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願考案は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物(「引用例」)に記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められ、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-05-29 
結審通知日 2000-06-13 
審決日 2000-06-27 
出願番号 実願平4-84670 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F16J)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 秋月 均  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 和田 雄二
池田 佳弘
考案の名称 密封装置  
代理人 高塚 一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ