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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K |
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管理番号 | 1025052 |
審判番号 | 審判1999-15582 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-09-24 |
確定日 | 2000-09-11 |
事件の表示 | 平成4年実用新案登録願第34241号「動力作業車における走行制御装置」拒絶査定に対する審判事件[平成5年12月14日出願公開、実開平 5-91956]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成4年5月22日の出願であって、その請求項1に係る考案(以下、「本考案」という。)は、平成10年8月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「HST駆動装置(5)により機体の走行駆動を行う動力作業車において、機体上に設ける運転者用座席(3)のアームレスト(9)を起立状態と倒伏状態に起伏自在とすると共に、同アームレスト(9)の起伏を検出する検出用センサー(10)と、HST駆動装置(5)の変速手段(7A)とを設け、上記アームレスト(9)が起立状態では、同変速手段(7A)は、HST駆動装置(5)を停止位置に戻すべく構成してなる動力作業車における走行制御装置。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前国内で頒布された実願昭60-31575号(実開昭61-148891号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)及び実願昭62-81519号(実開昭63-188366号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。 刊行物1 (1)「運転席と作業荷台との間の乗り移り通路に回動自在で駐車ブレーキハンドル兼用のアームレストを配し、そして作業荷台への乗り移りの際、運転者が該アームレストを乗り移り通路外へ回動させることにより駐車ブレーキが作動するようになっていることを特徴とする産業車両」(第1頁8行?13行) (2)「アームレスト14はバックガード6に取付けられている支点17を中心に水平状態から上昇回動でき、この上昇回動に伴って支点17のやや下方に連結されている駐車ブレーキ作動用ワイヤ18を引っ張って駐車ブレーキを作動させるようになっている。」(第5頁16行?第6頁1行) (3)「運転席から作業荷台へ運転者が乗り移る作業中に駐車ブレーキを作動させることができるので一作動で安全性の向上を図ることができるという効果がある。」(第7頁16行?19行) これらの記載事項によると、刊行物1には、「産業車両において、機体上に設ける運転席のアームレストの起立状態と倒伏状態に起伏自在とすると共に、アームレストが起立状態では駐車ブレーキを作動させるべく構成してなる産業車両の走行制御装置」の考案(以下、「刊行物1記載の考案」という。)が記載されているものと認められる。 刊行物2 (4)「HST式変速装置の油圧モーター2から車輪に至る動力伝達経路中の1本の回転軸に、付勢バネ8cによる制動と、HST変速装置のチャージポンプ3の油圧により制動解除を行うブレーキ装置8を設け、該チャージポンプ3の圧油をブレーキ装置8へ供給・遮断するブレーキ制御弁VBのソノレイドsol.3を、HST式変速装置の駆動操作手段の中立操作に連動して操作すべく構成したことを特徴とするHST式走行装置。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1) (5)「本考案は建設機械や土木機械において、走行車両の変速装置として用いられるオートコントロール式のHST変速装置に関するものである。」(第2頁2行?4行) (6)「本考案はこのようなオートコントロール式のHST変速装置において、中立状態に操作された時に自動的に駐車ブレーキが制動操作されるように構成したものである。」(第2頁12行?15行) 3.対比 本考案と刊行物1記載の考案とを対比すると、後者の「産業車両」は、前者の「動力作業車」に相当するから、両者は、「動力作業車において、機体上に設ける運転者用座席のアームレストを起立状態と倒伏状態に起伏自在とする動力作業車の走行制御装置」で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:機体の走行駆動を、前者では、HST駆動装置により行うのに対して、後者では、その旨の特定をしていない点。 相違点2:アームレストの起立状態で、前者では、HST駆動装置の変速手段により、HST駆動装置を停止位置に戻すべく構成しているのに対して、後者では、駐車ブレーキを作動させるべく構成している点。 相違点3:アームレストの起伏の検出を、前者では、検出用センサーで行うのに対して、後者では、その旨の特定をしていない点。 4.当審の判断 上記相違点1について検討すると、農作業や建設作業を行う動力作業車の走行駆動をHST駆動装置で行うことは、刊行物2にも記載されているように、本出願前周知であるから(必要なら、特開昭62-18333号公報、実願昭61-68299号(実開昭62-179827号)のマイクロフィルム等参照。)、刊行物1記載の考案において、動力作業車の走行駆動をHST駆動装置で行うように設けること、またその際に、当然に必要な変速手段を設けることは、当業者がきわめて容易になしうるものと認められる。 次に、相違点2について検討するに、本考案の「HST駆動装置の変速手段を、HST駆動装置を停止位置に戻す」に関し、本願明細書の段落番号0014には、「アームレスト9を起立状態Bにすると、上記検出用センサー10がOFF状態となってコントローラ6の電源がOFFとなる。これにより、変速手段7AであるHST用電磁ソレノイド7をニュートラル位置に戻して、HST駆動装置5を停止状態にし」と記載されていることからみて、刊行物2記載の「HST式変速装置の駆動操作手段の中立操作」は、本考案の「HST駆動装置の変速手段を、HST駆動装置を停止位置に戻す」ことに相当するものと認められる。 そして、「HST駆動装置の変速手段を、HST駆動装置を停止位置に戻す」ことと「駐車ブレーキの作動」とは、ともに、動力作業車の停車状態を確保するための走行制御手段であって、しかも、それら2つの手段は、刊行物2に記載されているように、連動させようとする程、互いに関連する走行制御手段であるから(上記摘記事項(4)参照)、動力作業車の走行駆動がHST駆動装置で行われる場合に、「駐車ブレーキの作動」に換えて、もしくは、「駐車ブレーキの作動」に加えて、「HST駆動装置の変速手段を、HST駆動装置を停止位置に戻す」ように設けることは、当業者がきわめて容易になしうるものと認められる。 さらに、相違点3について検討すると、動力作業車の停車状態を確保する走行制御手段の作動をアームレストの起伏に連動させる場合に、その連動機構を、刊行物1記載の考案のように機械的手段で設けるか、本考案のように電気的手段で設けるかは、当業者が適宜選択しうる設計的事項であり、電気的手段で連動機構を設計する場合に、アームレストの起伏を検出するセンサーを設けることは、当業者が適宜行う慣用手段である。 そして、本考案の作用効果は、刊行物1及び刊行物2記載の考案から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。 3.むすび したがって、本考案は、刊行物1及び刊行物2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-06-29 |
結審通知日 | 2000-07-14 |
審決日 | 2000-07-25 |
出願番号 | 実願平4-34241 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
Z
(B60K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村上 哲、鈴木 貴雄 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
飯塚 直樹 清水 信行 |
考案の名称 | 動力作業車における走行制御装置 |