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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効としない B65H
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B65H
管理番号 1025074
審判番号 審判1999-35644  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-11-04 
確定日 2000-09-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第2039589号実用新案「吸付け方式ロ?ル巻き機械体」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯・本件考案
本件登録無効審判請求に係る登録第2039589号実用新案は平成2年9月5日に出願され、平成6年1月26日に出願公告(実公平6-3000号)され、平成6年11月21日に設定の登録がなされたもので、その請求項1に係る考案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。(以下、「本件考案」という。)
「本体(1)に於いて、中空で角柱の形状にし、吸入穴(2)を有した軸(3)を設け、軸(3)は本体(1)の中央部より左右に分離出来る構造にし、軸(3)の端へ回転方向でスライド出来る間接部(4)を有し、間接部(4)からホース(5)を介して吸引機(6)と結合させ、本体(1)の奥からロール状に巻く為の紙(7)を送り出し、この紙(7)の直ぐ下へ擡げ部(8)を設け、擡げ部(8)の下へ底面壁(9)を設け、軸(3)は支持壁(10)で支えられ、回転出来る様にチェーン(11)を取付けて設けた、吸付け方式ロール巻き機械体。」

2.請求人の主張
請求人は、平成11年11月4日付けで無効審判を請求し、本件実用新案登録はこれを無効とする、との審決を求め、その理由は概略以下のとおりである。
[理由1]本件考案は、その出願前に頒布された甲第1号証?甲第3号証に記載された考案等に基づいて出願時に当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものである。よって本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
[理由2]本件に係る実用新案登録出願は、明細書の考案の詳細な説明に、当業者が容易にその実施をすることができる程度に考案の構成が記載されていないので、実用新案法第5条第3項に規定する要件を満たしていない。よって、本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第3号の規定により無効とすべきである。

3.被請求人の主張
被請求人は、平成12年3月1日付けで答弁書を提出し、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張に対し概略以下のように反論している。
[1]本件考案は、甲第1号証?甲第3号証に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案できたものではなく、無効理由1は失当である。
[2]本件実用新案登録出願の明細書は、本件考案を当業者が容易に実施できる程度に十分に記載されており、無効理由2には該当しない。

4.証拠
請求人が提出した証拠及びその記載事項は以下のとおりである。
甲第1号証:平成2年3月25日付け「段ボール事報」第11面
甲第2号証:特開昭52-18905号公報
甲第3号証:特開昭58-157250号公報
甲第1号証には、「開発ニュース」の見出しで「片段自動巻取機」について、「段操機で生産された片面段ボールを、……巻取り用の角シャフトへ自動的に巻付ける。」(第1段)、「オーダープリセット寸法に達すると、自動的にカッターされ、角シャフトが縮んで、巻取製品が排出される。」(同第2段)等が記載され、片段自動巻取機LD-1400型の給紙側及び巻取り側の写真が掲載され、さらに「片段自動巻取機のメカニズム図解」として、
巻取り軸が「角シャフト」であること、巻段排出に際して、角シャフトが(中央から左右に)開くこと、紙先巻付に際して、角シャフトの下方のコンベアが上昇し、上昇が停止したところで、コンベアの先端の巻付ツメが180°回転して「片段」を角シャフトに巻き付けるようにすること等が図面とともに示されている。
甲第2号証には、「紙類直接巻取り軸」であって、「巻取り物の先端を直接吸着して巻き込むための気体管路を有し、軸抜き取りのため、軸径が小となり、前記気体管路に気体を逆方向に流して、巻取り軸と巻取り物との分離を確実に行なう巻取り軸」(特許請求の範囲)、「空気を吸引して巻取りはじめに、巻取り物先端を軸に接着することなく確実に巻込めるようにした。」(第1頁右下欄第3?5行)、「エアホース18から吸引するとエアホース18と小孔14とがつながっているため、小孔から空気がすい込まれ、小孔14に巻取り物先端16が吸着する。すなわち、円筒肉厚中の管路12は、管路入口17をエアホース18と通じて空気が流通し、管路12が小孔につながっている。」(第1頁右下欄第14?20行)、「第4図は、巻取り始めに使う吸引シュー35の構造の一例を示す。」(第2頁右上欄第12?13行)等の記載がなされ、図面には、円筒肉厚中に軸方向の管路を有し、該管路と連通する小孔を表面に有する巻取り軸(第1、2、6、7図)、エアホースを備えた吸引シュー(第4図)、吸引シューを巻取り軸の端部に取付け、エアホースと巻取り軸の管路及び小孔を連通する態様[第6図(a)、第7図(a)]が示されている。
甲第3号証には、ファクシミリなどの記録装置において、記録紙を記録部へガイドするためにS字状に湾曲した下ガイド板を設けること(第2頁左上欄第14?20行、同頁左下欄第4?15行等の記載及び第1図参照)が記載されている。

5.当審の判断
(1)[理由1]について
本件考案と甲第1号証に記載されたものとを対比すると、甲第1号証に記載された「片段自動巻取機」は、片面段ボールを巻取り用の角シャフトにロール状に巻き取るものであり、本件考案の「ロール巻き機械体」に相当し、写真及び図面を参照すると、本体のフレームに支持された角シャフトすなわち角柱の形状の軸が巻段排出時に本体の中央部から左右に分離できる構造となっており、片面段ボールは巻取り側から見ると本体の奥部に相当する給紙側から送り出されるものであることが理解できるので、甲第1号証に記載されたものは、「角柱の形状の軸(角シャフト)を本体に設け、軸は本体の中央部より左右に分離できる構造にし、本体の奥からロール状に巻く為の紙(片面段ボール)を送り出し、軸は支持壁で支えられたロール巻き機械体」である点で本件考案と一致しているが、甲第1号証には、本件考案の構成のうち以下の点が記載されていない点で本件考案と相違している。
イ.軸が、中空で、吸入穴を有する点
ロ.軸の端へ回転方向でスライドできる間接部を有する点
ハ.間接部からホースを介して吸引機と結合する点
ニ.紙の直ぐ下へ擡げ部を設ける点
ホ.擡げ部の下へ底面部を設ける点
ヘ.回転できるようにチェーンを取り付けて設ける点
ト.吸い付け方式である点
そこで上記の相違点について検討する。
甲第2号証には、紙類直接巻取り軸として、円筒肉厚中の管路を有し、該管路と連通する小孔を表面に有する巻取り軸が記載されており、該巻取り軸は小孔から空気がすい込まれ、小孔に巻取り物先端が吸着するすなわち本件考案でいう「吸い付け方式」で紙を軸に巻き付けるものである。
しかし、甲第2号証に開示された巻取り軸の形状は円筒形であり、中空で、吸入穴を有するものではあるが、その形状が角柱のものについては記載も示唆もしていないので、甲第2号証の記載をもって、甲第1号証に記載された角柱の形状の軸を中空で、吸入穴を有するものとすることが当業者にとってきわめて容易に推考し得たものとすることはできない。
また、紙の直ぐ下に擡げ部を設ける点について、甲第3号証に記載された記録装置におけるS字状に湾曲したガイドは、紙をその湾曲形状に沿って擡げることもできるものではあるが、本願考案における擡げ部のように紙を持ち上げて軸へ吸い付き易く出来るためのものでなく、甲第1号証に記載されたような吸い付け方式でない巻き取り装置にこれを適用する必然性もない。
上記のように、中空で、吸入穴を有する角柱の形状の軸を中空で吸入穴を有するものとし、紙の直ぐ下に擡げ部を設けるという本件考案の構成は、甲第1号証ないし甲第3号証の記載から当業者がきわめて容易に推考し得たものでないのであるから、軸を機械本体に回転可能に取り付ける際に間接部を介在せしめること、軸と吸引機をホースで結合すること、回転軸の駆動のためにチェーンを用いることなどが本件出願前周知慣用の技術であったとしても、本願考案が、甲第1号証ないし甲第3号証の記載に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。
(2)[理由2]について
請求人が、考案の詳細な説明に、当業者が容易にその実施をすることができる程度に考案の構成が記載されていないとする理由は、以下の2点である。ア)本件請求項1に、「軸(3)は、本体(1)の中央部より左右に分離できる構造にし」と記載された構造について当業者の実施を可能にする程度の具体的説明は、考案の詳細な説明のうちに全く記載されていない。
イ)本件請求項1に記載された「紙(7)」の一例である、片面段ボールを「段の有する面を内側にして」巻くことを当業者に容易に実施させる程度の記載が考案の詳細な説明のうちに含まれていない。
そこで検討する。
ア)について、
紙類をロール状に巻き取る角柱の形状の軸を中央から左右に分離することが、本件明細書の<従来の技術>に述べられているように本件出願前に行われていることは、被請求人の提出した乙第1号証である実公昭57-15874号公報にも記載のとおりであり、また、甲第1号証にも角柱の形状の軸を左右に分離する機構が図解されている。
請求人は、支持壁において軸を回転自在としつつ長さ方向への移動も自在なように支持するための構成、軸に対してチェーンを取り付けるための構成、軸を左右移動するための駆動手段をどこにつけるか、あるいはホースとしてどのようなものを使うのか等が考案の詳細な説明に具体的に示されていない旨主張しているが、上記の甲第1号証、乙第1号証に記載のものも、角柱の形状の軸を回転自在としつつ長さ方向への移動も自在なように支持壁に支持し、軸を左右移動するための駆動手段も備えているものであり、軸と吸引機をホースで結合すること、回転軸の駆動のためにチェーンを用いることなどは、本件出願前周知慣用の技術的事項(審判請求書第5頁第8?11行の請求人の主張参照)であれば、本件考案の「軸(3)は、本体(1)の中央部より左右に分離できる構造」を得ることは、当業者であれば、本件出願前周知の技術事項に基づいて、容易になし得ることであり、これらの点が考案の詳細な説明に具体的に記載されていないことをもって本件考案を当業者が実施できないということはできない。
イ)について、
請求人は、片面段ボールを段の有する面を内側にして巻く場合の課題を列挙してそれらの課題を解決するための手段が明細書に示されていない旨を主張しているが、本件考案は、「紙」をロール状に巻くための機械に係る考案であって、請求人の問題にしている片面段ボールの巻取りに特定されるものではない。本件考案においては、軸の吸入穴における空気の吸引力と紙の真下に設けられた擡げ部との協働で「紙」を軸に吸い付け巻き取ることができるものであり、対象となる紙の性状に応じて、吸引力を調整したり、吸引穴の配置や軸駆動状態を変更することは当業者が必要に応じてなし得る設計的事項であり、特定の紙の固有の課題について解決の困難なものがあるとしても、本件考案を実施できないというものでもない。
以上のように、本件実用新案登録明細書の考案の詳細な説明に、当業者が容易にその実施をすることができる程度に本件考案の構成が記載されていないということはできないので、その記載に実用新案法第5条第3項の規定に違反するような記載不備があるとはいえない。

6.まとめ
以上の通りであるから、請求人の主張する理由1、理由2及び証拠方法によっては、本件実用新案の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-07-18 
結審通知日 2000-07-28 
審決日 2000-08-08 
出願番号 実願平2-93735 
審決分類 U 1 112・ 531- Y (B65H)
U 1 112・ 121- Y (B65H)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 佐藤 雪枝
特許庁審判官 森林 克郎
村本 佳史
登録日 1994-11-21 
登録番号 実用新案登録第2039589号(U2039589) 
考案の名称 吸付け方式ロ?ル巻き機械体  
代理人 細見 吉生  
代理人 鳥巣 実  
代理人 中村 茂信  
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