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審決分類 審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効としない F25B
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない F25B
管理番号 1025083
審判番号 審判1999-35322  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-06-25 
確定日 2000-09-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第1954050号実用新案「冷凍機ユニツト」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1、手続の経緯・本件考案
本件実用新案登録第1954050号の出願は、昭和62年3月13日に出願され、平成5年2月25日に設定の登録がなされたものである。
そして、その考案の要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲第1項?2項に記載されたとおりのものと認められるところ、その実用新案登録請求の範囲第1項には、下記の通り記載されている。
「円筒状で横向きに設けられた貯蔵タンクと、このタンク上に取付けられた取付台と、この取付台上に搭載された圧縮機と、この圧縮機の駆動制御装置を収納し、かつ、前記圧縮機の上方に設けられた電装ボックスとを備えた冷凍機ユニットにおいて、前記電装ボックスは貯留タンクに沿って横長に形成されたボックス本体と、この本体を圧縮機の上部後方で固定する取付金具と、前記ボックス本体の開口を塞ぐ蓋体とで構成され、この蓋体は圧縮機の上方を可動空間としつつ前記開口を開閉するようヒンジでボックス本体に開閉自在に取付けられていることを特徴とする冷凍機ユニット。」
2、請求人の主張
これに対し、本件請求人は、要するに下記a?bの理由で本件実用新案登録は無効とすべき旨主張している。
a、本件実用新案登録請求の範囲の必須要件項、実施態様項に係る考案は、甲第1号証(「日本冷凍冷房新聞」,日本冷凍冷房新聞社,昭和57年1月7日)、甲第2号証(「RSC」,December,1977,Volume 45,Number 12)及び甲第3号証(「The SuperMisers TRi-Pak & Quad-Pak」,Friedrich Air Conditioing & Refrigereration Co.)に記載された考案に基いて当業者にはきわめて容易に考案できたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであって、同法第37条第1項第1号により無効とすべきものである。
b、本件考案は、その必須要件項における構成要件が、その記載のとおり「この蓋体は圧縮機の上方を可動空間としつつ・・・開閉自在に取り付けられている」とすれば、蓋体を開いた時、蓋体先端が圧縮機の前部先端より明らかに外に出るものまでも、その権利範囲に含んでしまうことになり、効果の記載と一致せず不明瞭な記載であり、実用新案法第5条第5項の規定に違反するものであって、同法第37条第1項第3号の規定により無効とすべきである。
3、実用新案法第37条第1項第3号の無効理由について
まず、本件請求人の主張する上記無効理由bについて検討する。
本件考案の出願明細書及び図面についてみると、同明細書には、本件考案が、
「この考案は上記問題を解決するために、圧縮機の上方に電装ボックスを設け、この電装ボックスの蓋体が圧縮機上で開けられるようにし、冷凍機ユニットの設置スペースが電装ボックスに影響されないようにする」(明細書考案の詳細な説明の「考案が解決しようとする課題」の項参照)という課題を解決するため、
ボックス本体を「圧縮機の上方後方で固定」するとともに(明細書実用新案登録請求の範囲第1項参照)、「蓋体は圧縮機の上方を可動空間と」する(明細書実用新案登録請求の範囲第1項参照)ことを考案の構成とすることが図面第2図とともに記載され、
「電装ボックスの蓋体を圧縮機の上方で開閉させられ、この蓋体の開閉スペースを冷凍ユニットの設置面積として取る必要がなく、この冷凍ユニットの設置面積を小さくできる。」(明細書考案の詳細な説明の「考案の効果」の項参照)という効果を達成できることが明記されている。
したがって、上記各記載相互の関係を検討してみても、本件考案の解決しようとする課題、課題を解決するための手段及び考案の効果の間に矛盾といえるほどのものは存在せず、本件考案の実用新案登録請求の範囲における構成要素の記載が効果の記載と一致せず、不明瞭な記載であるという本件請求人の上記主張は根拠のないものであって、これを採用することはできない。
4、実用新案法第37条第1項第1号の無効理由について
次に、本件請求人の主張する上記無効理由aについて検討する。
(1)甲各号証記載の発明
a、甲第1号証
甲第1号証には、その「電子化マルチユニットいよいよ登場」の段の記事中央に掲載された写真からみて、本件考案を形成する構成要素の名称を使用して表現すると、下記の考案が記載されている。
「円筒状で横向きに設けられた貯蔵タンクと、取付台上に搭載された圧縮機と、この圧縮機の駆動制御装置を収納し、かつ、前記圧縮機の上方に設けられた電装ボックスとを備えた冷凍機ユニットにおいて、前記電装ボックスはボックス本体と、この本体を圧縮機の上部で固定する取付金具とで構成された冷凍機ユニット。」
なお、電装ボックスの開口及びその開口を塞ぐべき蓋体については、上記写真の状況からみて、当該蓋体の可動空間が不明であるばかりでなく、開口又は蓋体の存在の有無さえ明らかでない。
b、甲第2号証
甲第2号証には、その「Superior ″Tuffy″」と表示された頁の「new products /conntinued from page 4」と記載された欄上部に掲載された写真の状況からみて、本件考案を形成する構成要素の名称を使用して表現すると、下記の考案が記載されている。
「円筒状で横向きに設けられた貯蔵タンクと、取付台上に搭載された圧縮機と、この圧縮機の駆動制御装置を収納し、かつ、前記圧縮機の上方に設けられた電装ボックスとを備えた冷凍機ユニットにおいて、前記電装ボックスは貯留タンクに沿って横長に形成されたボックス本体と、この本体を圧縮機の上部で固定する取付金具と、前記ボックス本体の開口を塞ぐ蓋体とで構成され、この蓋体は前記開口を開閉するようボックス本体に開閉自在に取付けられている冷凍機ユニット。」
なお、電装ボックスの開口を塞ぐべき蓋体の可動空間については、上記写真の状況からみて、本件考案でいう「圧縮機の上方」に位置しているといい得るまでには明らかでない。
c、甲第3号証
甲第3号証には、その表紙の写真(第1頁)、「Quad-Pak」の「DIMENSIONS AND RECOMMENDED CLEARANCES」の図面(第4頁)及び「Check these Quad-Pak and Tri-Pak Features:」の写真(第5頁)からみて、本件考案を形成する構成要素の名称を使用して表現すれば、下記の考案が記載されている。
「円筒状貯蔵タンクと、取付台上に搭載された圧縮機と、この圧縮機の駆動制御装置を収納し、かつ、前記圧縮機の上方に設けられた電装ボックスとを備えた冷凍機ユニットにおいて、前記電装ボックスは横長に形成されたボックス本体と、この本体を圧縮機の上部で固定する取付金具と、前記ボックス本体の開口を塞ぐ蓋体とで構成され、この蓋体は前記開口を開閉するようヒンジでボックス本体に開閉自在に取付けられている冷凍機ユニット。」
なお、電装ボックスの開口を塞ぐべき蓋体の可動空間については、上記写真の状況からみて、上記甲第2号証の場合と同様に、本件考案でいう「圧縮機の上方」に位置しているといい得るまでには明らかでない。
(2)対比・判断
本件考案(前者)と上記甲第1号証記載の考案(後者)とを対比すると、後者の構成は上記認定のとおりであるから、両者は、結局
「円筒状で横向きに設けられた貯蔵タンクと、取付台上に搭載された圧縮機と、この圧縮機の駆動制御装置を収納し、かつ、前記圧縮機の上方に設けられた電装ボックスとを備えた冷凍機ユニットにおいて、前記電装ボックスはボックス本体と、この本体を圧縮機の上部で固定する取付金具とで構成された冷凍機ユニット。」
の点で一致し、下記のa?cの点で相違している。
a、前者の取付台が、「タンク上に取付けられ」ているのに対し、後者のそれは、そのように取付けられてはいない。
b、前者のボックス本体が、「貯留タンクに沿って横長に形成され」ているのに対し、後者のそれは、そのように形成されてはいない。
c、前者のボックス本体が、その固定される位置が圧縮機の上部「後方」であるとともに、「ボックス本体の開口を塞ぐ蓋体」を有し、「この蓋体は圧縮機の上方を可動空間としつつ前記開口を開閉するようヒンジでボックス本体に開閉自在に取付けられている」のに対し、後者のボックス本体は、その固定される位置が圧縮機の上方ではあっても、「後方」とはいえないばかりでなく、ボックス本体の開口を塞ぐ蓋体を有しているか否かさえ明らかでない。
そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点cについてみると、この種の冷凍機ユニットにおいて、その電装ボックスが、圧縮機の上方に固定されるとともに、そのボックス本体の開口を塞ぐ蓋体を有し、この蓋体は前記開口を開閉するようヒンジでボックス本体に開閉自在に取付けられている構成自体は、上記(1)で認定のとおり、本件請求人の提示した甲第2号証又は甲第3号証に記載されているものである。
しかしながら、この甲第2号証及び甲第3号証には、そのいずれにも、ボックス本体の固定される位置が圧縮機の上部「後方」であるとともに、蓋体が「圧縮機の上方を可動空間と」する構成が明記されていない。
しかも、前者は、この括弧書きの構成により、「電装ボックスの蓋体を圧縮機の上方で開閉させられ、この蓋体の開閉スペースを冷凍ユニットの設置面積として取る必要がなく」(本件考案の出願明細書の「考案の効果」の項参照)という、後者又は他の上記甲各号証には示唆されていない効果を達成できるものである。
したがって、前者が後者及び他の上記甲各号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案できたものということはできないので、本件被請求人の主張する甲第3号証の証拠としての成立性について検討するまでもなく、本件請求人の上記主張は、これを採用することはできない。
5、むすび
以上のとおりであるから、本件請求人の上記主張及び証拠によっては、本件登録実用新案を無効とすることはできない。
また、審判に関する費用は、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項において更に準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
審理終結日 2000-07-18 
結審通知日 2000-07-28 
審決日 2000-08-08 
出願番号 実願昭62-37417 
審決分類 U 1 112・ 121- Y (F25B)
U 1 112・ 532- Y (F25B)
最終処分 不成立    
特許庁審判長 大久保 好二
特許庁審判官 滝本 静雄
原 慧
登録日 1993-02-25 
登録番号 実用新案登録第1954050号(U1954050) 
考案の名称 冷凍機ユニツト  
代理人 宮田 金雄  
代理人 稲村 悦男  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 芝野 正雅  
代理人 家入 健  

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