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審決分類 審判 全部申し立て   E04F
管理番号 1025086
異議申立番号 異議1999-73463  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-09-09 
確定日 2000-04-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第2591702号「壁面用パネル」の請求項1及び2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2591702号の請求項1及び2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.本件考案
実用新案登録第2591702号(平成4年7月30日出願、平成11年1月8日設定登録。)の請求項1及び2に係る考案(以下、本件考案1及び2という。)は、それぞれ、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下のとおりのものである。
【請求項1】直方形の基材の対向する一対の側面の上下の辺を凸型の曲面に切削加工する際に、側面に直線部が残るように、かつ、上曲面の曲率半径が下曲面の曲率半径より大きくなるように切削加工して基材層とし、しかる後、元の直方形の基材の側面を基準として上曲面の曲率半径より大きい長さの該基材層の裏面直線部の一部、下曲面、直線部、上曲面、及び表面に、接着剤を介してジアリルフタレート樹脂系化粧シートを連続的に被覆してなることを特徴とする壁面用パネル。
【請求項2】基材が無機質素材であることを特徴とする請求項1記載の壁面用パネル。
2.申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人株式会社ノダは、証拠として甲第1乃至3号証を提示して、本件考案1及び2は、本件考案の出願前に頒布された甲第1号証(永大総合カタログ’89、1989年1月永大産業株式会社発行)、甲第2号証(特開平3-182343号公報)及び甲第3号証(実公昭49-30426号公報)に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、取り消されるべきものである旨主張している。
3.申立人が提出した甲各号証
(1)甲第1号証(永大総合カタログ’89、1989年1月永大産業株式会社発行)の第383頁には、システム造作材Cシリーズとして手摺(笠木)が記載されており、手摺の写真と共に幅寸法の異なる3種類のサイズの断面図が示されている。該写真及び該断面図を見ると、手摺は略直方形の対向する一対の側面の上面の辺は5Rに曲面加工され、下側の辺は3Rに曲面加工されており、その側面において曲面加工された上曲面と下曲面の間には直線部が残されている。さらに、該断面図には、手摺の上面、側面及び下面の一部(断面図より、基材の側面を基準として5Rより大きい長さの裏面直線部に点線が記載されていると認められる)を囲むように点線が記載されており、また、第6頁下部には、「C Comfort-Co-ordination (コンフォートコーディネイション)特殊加工塩ビシート化粧板を使用したシリーズ。カジュアルなイメージのお部屋づくりにぴったりのシリーズです。」と記載されており、第8頁下部には、Comfort-Co-ordination の商品としてシステム造作材Cシリーズが記載されているから、上記第383頁に記載された手摺には特殊加工塩ビシート化粧板が使用されており、該断面図の点線は特殊加工塩ビシート化粧板を示すものであると認められる。
(2)甲第2号証(特開平3-182343号公報)には、「化粧板の製造方法」に関する発明が記載されており、発明の詳細な説明の欄には、
a.「合板、パーティクルボード等の基板(1)の表面にメラミン樹脂やジアリルフタレート樹脂をクラフトパルプに含脂率40?55%になるように含浸した樹脂含浸バリアー紙(2)を、その上にメラミン樹脂やジアリルフタレート樹脂をサルファイトパルプに50?70%、好ましくは55?65%になるように含浸した樹脂含浸化粧紙(3)を載置した後、樹脂の種類に応じ、下記の条件で熱圧着して化粧層である樹脂含浸紙層(4)を形成する。」(第2頁右上欄第12行?同頁左下欄第1行)
b.「第2図d、第3図d、第4図dに示す如く、切削時に残された樹脂含浸紙層(4)の端縁部を折曲げて少なくとも一部が側部芯材によって構成される木口面(5)に接着剤を介して貼着する。」(第3頁左上欄第1?4行)
と図面とともに記載されている。
(3)甲第3号証(実公昭49-30426号公報)には、「化粧板」に関する考案が記載されており、考案の詳細な説明の欄には、
「第3図に実例を示すように突き付け施工の場合には一定間隔に設けた胴縁11上に、上記の離型シート10を剥ぎ取り感圧接着剤層9によって基板1の周辺部7の表面端縁線6の端面より裏面に達するまで前記化粧薄基材2の剥離周辺部8を圧着したものを並列設置しカラーネイル12等によって釘打ち固定する」(第1欄第38行?第2欄第6行)
と図面とともに記載されている。
4.対比・判断
4-1 本件考案1について
(1)本件考案1は、壁面用パネルに関する考案であって、壁面に長い幅に渡って突き合わされて施工された壁面パネルの目地部の段差や温度、湿度等によって経時的に伸縮して生じる隙間により壁面が外観上見苦しいものとなるという従来技術の課題を解決することを目的の一つとして、請求項1に記載されたごとく構成したものであり、そのことにより、「本考案の壁面用パネルは、側面に直線部を有するために、突き合わせて施工する作業も容易で、側面に上下の曲面があるために目地部の段差や経時的に生ずる隙間を視覚で捉えることが極めて難し」(段落【0014】)いという明細書記載の作用効果を奏するものである。
これに対して、甲第1号証に記載された考案は、手摺(笠木)に関するものであり、上記記載3(1)から、該手摺は、直方形の基材の対向する一対の側面に直線部が残るように5Rの上曲面及び3Rの下曲面を形成した基材の側面を基準として上曲面の曲率半径より大きい長さの該基材の裏面直線部の一部、下曲面、直線部、上曲面、及び表面に塩ビ化粧シートを連続的に被覆して構成されており、「手摺の5Rの上曲面」及び「3Rの下曲面」が本件考案1の「上曲面」及び「下曲面」にそれぞれ相当するから、甲第1号証に記載の考案と本件考案1は、a.本件考案1は化粧シートとしてジアリルフタレート樹脂系化粧シートを被覆しているのに対して、甲第1号証に記載された手摺では化粧材として特殊加工塩ビシート化粧板を使用している点、及び、b.本件考案1が壁面用パネルであるのに対して、甲第1号証に記載された考案は手摺である点、で相違しており、その余の点で一致していると認められる。
(2) 申立人は、本件考案1と甲第1号証記載の考案との上記相違点a、bに対して、相違点aについては、甲第1号証の化粧シートとして甲第2号証記載のものを適用することによって当業者にはきわめて容易になし得たことであるとし、また、相違点bについては、甲第3号証(特に第3図)には、合板、石膏ボード等の基板(1)の表面(3)を化粧シート(2)で被覆してなる化粧板が記載され、甲第1号証記載の手摺と甲第3号証記載の化粧材とは構成上実質的に同一であり、そして、甲第1号証記載の手摺も甲第3号証記載の化粧材も内装材として用いられる化粧板である点において共通するから、甲第1号証に手摺として記載された構成を甲第3号証のように壁面用パネルとしての用途に適用することは、当業者の予測範囲内における単なる用途転換にすぎず、当業者にはきわめて容易に想到し得ることであると主張している。
(3)まず、相違点bについて検討すると、甲第1号証に記載された手摺は、その側面(甲第1号証に記載された断面図の左右の面)が突き合わされて施工されるものではなく、「基材の対向する一対の側面に直線部が残るように5Rの上曲面及び3Rの下曲面を形成した」構成は、手摺の機能や設置場所等から考えて、突き合わせ部の段差や経時的変化によって生じる隙間等の壁面パネル特有の課題を解決するための構成とは考えられない。
また、甲第3号証の特に第3図に記載された考案は、基板(1)の周辺部の表面から端面を通って裏面に達するまで化粧薄基板(2)で被覆してなる化粧板であり、壁面に突き合わせて施工されるものであるが、基板の端面に曲面を設けたものではなく、突き合わせ部の段差や経時的に生じる隙間を課題としたものでもないから、本件考案明細書に記載された従来例に相当するものである。
したがって、甲第1号証に記載された手摺の構成を甲第3号証に記載された化粧板(壁面用パネル)に適用する動機付けが全く考えられず、申立人の主張は採用できない。
そもそも、単体で施工される手摺と甲第3号証のように突き合わせて施工される壁面用パネルとではその機能や施工形態が異なるのであって、両者がともに基板に化粧シートを被覆してなる内装材である点で共通するとしても、壁面パネルにおいて突き合わせ施工されることによって生じる課題を解決するために、突き合わせることなく施工される手摺の構成を転用することがきわめて容易であるとはいえない。
更に、甲第2号証には、上記相違点aに係る本件考案1の構成が記載されているものの、得られた化粧板の突き合わせに関する記載は認められない。
(4)以上のように、甲第1乃至3号証には、本件考案1において解決しようとする課題についての記載はなく、たとえ甲各号証に本件考案1の構成の一部が記載されているとしても、それらに記載された構成を組み合わせて本件考案1のように構成する動機付けに欠けるのであるから、本件考案1は、上記甲第1乃至3号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に推考しうるものではない。
4-2 本件考案2について
本件考案2は、本件考案1を更に限定したものであるから、上記4-1に記載したのと同じ理由により、上記甲各号証に記載の考案から当業者がきわめて容易に推考しうるものではない。
4-3 以上のとおり、本件考案1及び2に係る考案は、申立人が提出した甲各号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。
5.むすび
したがって、実用新案登録異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件考案1及び2の実用新案登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-03-31 
出願番号 実願平4-59640 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (E04F)
最終処分 維持    
前審関与審査官 井上 博之  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 藤枝 洋
宮崎 恭
登録日 1999-01-08 
登録番号 実用新案登録第2591702号(U2591702) 
権利者 アイカ工業株式会社
愛知県名古屋市中区丸の内2丁目20番19号
考案の名称 壁面用パネル  
代理人 ▲桑▼原 史生  

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