• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て   E05B
管理番号 1025087
異議申立番号 異議1999-70107  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-01-11 
確定日 2000-04-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2576017号「ドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2576017号の実用新案登録を維持する。
理由 I.手続の経緯
本件実用新案登録第2576017号の請求項1に係る考案は、平成1年3月24日に実用新案登録出願され、平成10年4月17日にその実用新案権の設定の登録がなされ、その後、浜田大三より請求項1(全請求項)に係る考案の実用新案登録について実用新案登録異議の申立がなされ、当審において、請求項1(全請求項)に係る考案の実用新案登録について取消理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成12年1月11日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
実用新案権者が求めている訂正の内容は、次の(1)?(3)のとおりである。
(1)実用新案登録明細書(登録査定時の明細書)の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載を、次のように訂正する。
【請求項1】 オープンレバー、スライド部材及び該スライド部材と係脱可能なリフトレバーを介して開閉機構を作動させるインサイドレバーを有し、前記スライド部材を前記リフトレバーに対して係脱させるべく作動させるロツクキングレバーの状態に関係なく前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とするドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構であつて、前記開閉機構を内蔵し且つ前記オープンレバー及び前記インサイドレバーを回動自在に支持するベースと、該ベースに回動自在に支持されたチヤイルドレバーと、前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設されたオープンリフトレバーと、該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結するピンと、前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる連結部と、前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする係合部とを有するドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構。
(2)実用新案登録明細書の第3頁17行?第4頁6行の「上記技術的課題を?ことである。」という記載を、次のように訂正する。
「上記技術的課題を解決するために本考案において講じた技術的手段は、オープンレバー、スライド部材及び該スライド部材と係脱可能なリフトレバーを介して開閉機構を作動させるインサイドレバーを有し、前記スライド部材を前記リフトレバーに対して係脱させるべく作動させるロツクキングレバーの状態に関係なく前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とするドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構であつて、前記開閉機構を内蔵し且つ前記オープンレバー及び前記インサイドレバーを回動自在に支持するベースと、該ベースに回動自在に支持されたチヤイルドレバーと、前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設されたオープンリフトレバーと、該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結するピンと、前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる連結部と、前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする係合部とを有した、ことである。」
(3)実用新案登録明細書の第9頁5行の「かからわず」という記載を、「かかわらず」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、および拡張・変更の存否
(1)上記1.(1)の実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正は、オープンリフトレバーを、「前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設された」と限定し、ピンを、「該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結する」と限定し、連結部を、「前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる」と限定し、係合部を、「前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする」と限定したもので、実用新案登録請求の範囲の減縮に相当し、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、この訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正である。
(2)上記1.(2)の訂正は、実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正に伴って、それとの整合を図るために考案の詳細な説明を訂正したもので明りょうでない記載の釈明に相当する。
そして、この訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)上記1.(3)の訂正は、誤記の訂正である。
3.独立実用新案登録要件
(1)訂正明細書の請求項1に係る考案
本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 オープンレバー、スライド部材及び該スライド部材と係脱可能なリフトレバーを介して開閉機構を作動させるインサイドレバーを有し、前記スライド部材を前記リフトレバーに対して係脱させるべく作動させるロツクキングレバーの状態に関係なく前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とするドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構であつて、前記開閉機構を内蔵し且つ前記オープンレバー及び前記インサイドレバーを回動自在に支持するベースと、該ベースに回動自在に支持されたチヤイルドレバーと、前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設されたオープンリフトレバーと、該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結するピンと、前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる連結部と、前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする係合部とを有するドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構。
(2)各刊行物(甲各号証)に記載の考案
実用新案登録異議申立人 浜田大三が甲第2号証として提出し、先の当審の取消理由通知において刊行物として引用した実公昭57ー2628号公報(以下、「刊行物1」という。)には、チャイルドレバーを備えたドアロック装置に関する考案について、
イ.第3図に示す解錠状態において、車外からの操作による開扉については、
「車外からの開扉操作はアウトサイドハンドル(図示なし)を解除操作することによりなされ、この操作と連動して解放レバー11が時計方向へ回動し、該解放レバー11と連結しているサブレバー17が上昇してその係合部17bがオープンレバー9の被係合部9aを解放レバー11と同一方向へ押圧回動させるようになる。したがって、オープンレバー9と一体になって回動するポール部材6は噛合解除方向(第1図反時計方向)へ回動させられるので、安全あるいは完全噛合位置におけるラッチ部材5の拘束が解かれ、扉が自由に開扉できるようになる。」(公報2頁右欄25?36行)と記載れ、
ロ.第3図に示す解錠状態において、車内からの操作による開扉については、
「車内からの開扉はインサイドハンドル(図示なし)を解除操作することによりなされ、この操作と連動してインサイドレバー21が反時計方向(時計方向は誤記と認める。)に回動すると共に、このインサイドレバー21上に配設された切替レバー23もチャイルドレバー19の案内溝19bに導かれながら一体的に第4図に示す二点鎖線位置から実線で示す位置まで移動し、その先端肩部23aが解放レバー11の先端延出部11bを上方へ持ち上げるので、以後上述車外からの場合と同様の作動で開扉がなされる。」(公報2頁右欄37行?3頁左欄2行)と記載され、
ハ.第3図の解錠位置からロックレバー14を時計方向に回動して施錠状態にしたときの開扉については、
「第3図解錠位置にあるロックレバー14をノブあるいはキープレート(図示なし)により時計方向に回動させ施錠状態にすると、サブレバー17の係合部17bの移動軌跡線上からオープンレバー9の被係合部9aが外れてしまうので、車内外のハンドルを操作してもその動作はポール部材6に伝達されず開扉することはできない。」(公報3頁左欄3?9行)と記載され、
ニ.チャイルドプルーフ状態における開扉については、
「チャイルドプルーフを行なうべく、開扉時に予めチャイルドレバー19の操作部19cを手動で第4図に示す非作動位置から第5図に示す作動位置へ揺動させておくと、その案内溝19bの移動と共に案内溝19b内に嵌入しているピン23cが移動し、インサイドレバー21上に摺動可能に設けられた切替レバー23は伝達位置から第5図に示す非伝達位置へと移動させられ、その先端肩部23aは解放レバー11の延出部11bから離脱するので、インサイドレバー21側の動きを解放レバー11側に伝えることのできない所謂チャイルドプルーフ状態となる。従ってこの状態で閉扉すると、車内からの開扉はロックレバー14の施解錠位置に関係なく第5図に示すような空振りをするだけで開けることはできない。なお、車外からの開扉はロックレバー14が解錠位置にあればチャイルドレバー19の位置に関係なく開けることができ、また、チャイルドプルーフの解錠は開扉時にチャイルドレバー19の操作部19cを作動位置から非作動位置に戻すことによりなされる。」(公報3頁左欄10?30行)と記載されている。
同じく実用新案登録異議申立人 浜田大三が甲第1号証として提出した特公昭47ー20323号公報(以下、「刊行物2」という。)には、チャイルドレバーを備えたドアーロックに関する考案が記載されており、
車内からの操作による開錠については、
「又車内にて開錠するにはインサイドレバー17を引きて第11図、第12図に示す如くにすると、インサイドレバー17の係合片18はその縦透孔20にてピン26に沿うて降下し、その段部19にて屈曲子6(屈曲子7は誤記と認められる。)を押して摺動片5の一端を押し上げ屈曲子4にて爪片2をも押上げるから爪3は爪車15より外れ開錠される。」(公報2頁左欄34行?右欄3行)と記載され、
車外からの操作による開錠については、
「開錠するにはシルレバー21を車外より引きてこれを第2図、第5図、第6図に示す元に戻すと股部22にてキープレート13も元に戻り、牽引片10は屈曲子7に当たるので牽引片10を引くと、第10図に示す如く牽引片10は屈曲子7にて摺動片5の一端を押して他端を押し上げるから、屈曲子4にて爪片2をも押上げ、結局爪3は爪車15より外れ鎖錠は開放される。」(公報2頁左欄26?34行)と記載されている。
さらに、チヤイルドレバーに関しては、
「なお、チヤイルドレバー24を廻動して側壁の屈曲子28に当てると共に自己の屈曲子25をシルレバー21の屈曲子23に当てて第13図の如くにすると、車内よりインサイドレバー17を動かしても係合片18のみ空振りし、又車外よりシルレバー21を動かそうとしても屈曲子23と屈曲子25とが当たっているので、シルレバー21は動かず開錠できない。それだから車内に子供を残すような場合は閉錠に加え、チャイルドレバー24を第13図の如くにしておかば、童児が内外よりインサイドレバー17やシルレバー21を動かしても、それは空振りに終わり開錠できないから安心である。」(公報2頁右欄4?16行)と記載されている。
また、刊行物2には、インサイドレバー17とチャイルドレバー24との間に係合片18を配設したものや、係合片18がチャイルドレバー24の回動によってピン回りでインサイドレバー17に揺動自在に連結されたものが記載されている。
(3)対比、判断
本件訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件訂正考案」という。)と、先の取消理由通知において引用した上記刊行物1の考案とを対比する。
刊行物1の考案の上記イ.?ニ.の記載は要するに、
刊行物1の考案においては、
(イ)第3図に示す解錠状態における車外からの操作による開扉は、アウトサイドハンドル(図示なし)の操作と連動して解放レバー11が時計方向へ回動すると、この解放レバー11と連結しているサブレバー17が上昇し、その係合部17bがオープンレバー9の被係合部9aを、解放レバー11と同一方向へ押圧回動させて開扉するというものであり、
(ロ)同じく解錠状態における車内からの操作による開扉は、インサイドレバー21が反時計方向に回動すると、このインサイドレバー21上に配設された切替レバー23も第4図に示す二点鎖線位置から実線で示す位置まで移動し、その先端肩部23aが解放レバー11の先端延出部11bを上方へ持ち上げ、その開放レバー11と連結しているサブレバー17が上昇し、サブレバー17の係合部17bと係合するオープンレバー9の被係合部9aがオープンレバー9を回動して開扉するというものであり、
(ハ)ロックレバー14による施錠状態においては、車内外のハンドルを操作しても開扉することはできないというものであり、
(ニ)チャイルドプルーフ状態における開扉については、
(a)車内からの開扉は、ロックレバー14の施解錠位置に関係なく、インサイドレバー21が解放レバー11に対して空振りをするだけで開けることはできないというものであり、
(b)車外からの開扉は、ロックレバー14が解錠位置にあればチャイルドレバー19の位置に関係なく開けることができるというものである。
一方、本件訂正考案においては、
(イ)解錠状態における車外からの操作による開扉は、オープンレバー4の第1図反時計方向への回動により、スライド部材6のピン6aとリフトレバー2の一端2aとが係合してリフトレバー2が回動し、ドアが開となるものであり、
(ロ)解錠状態における車内からの操作による開扉は、インサイドレバー10を第2図反時計方向に回動させると、オープンリフトレバー16が上方に移動し、このオープンリフトレバー16の移動によりオープンリフトレバー16の係合部19とオープンレバー4の他端4bとが係合し、オープンレバー4の第1図反時計方向への回動により、スライド部材6のピン6aとリフトレバー2の一端2aとが係合してリフトレバー2が回動し、ドアが開となるものであり、
(ハ)ロッキングレバー7による施錠状態においては、車内外のハンドルを操作しても、オープンレバー4からリフトレバー2への回動動作の伝達が阻止されて、ドアを開とすることはできないものであり、
(ニ)チャイルドプロテクター状態における開扉については、
(a)車内からの開扉は、ロッキングレバー7の状態に関係なく、インサイドレバー10がオープンレバー4に対して空振りをするだけで開けることはできないというものであり、
(b)車外からの開扉は、ロッキングレバー7が解錠位置にあればチャイルドレバー13の位置に関係なく開けることができるというものである。
そうすると、両考案は共に、
(i)解錠状態においては、車内外からの操作によって開扉できるというものであり、
(ii)施錠状態においては、車内外のハンドルを操作しても開扉できないというものであり、
(iii)チャイルドプルーフ(本件訂正考案では、チャイルドプロテクター。以下、括弧内の記載は本件訂正考案の構成を示す。)状態では、
(iii-1)車内からの開扉は、ロックレバー14(ロッキングレバー7)の施錠・解錠位置に関係なく、インサイドレバー21(インサイドレバー10)が解放レバー11(オープンレバー4)に対して空振りをするだけで開けることはできないというものであり、
(iii-2)車外からの開扉は、ロックレバー14(ロッキングレバー7)が解錠位置にあればチャイルドレバー19(チャイルドレバー13)の位置に関係なく開けることができるというものであって、両考案の機能に格別の差異は認められない。
さらに、刊行物1の考案の「解放レバー11」、「サブレバー17」、「オープンレバー9」、「インサイドレバー21」、「ロックレバー14」、「チャイルドレバー19」、及び「切替レバー23」は、それぞれ、本件訂正考案の「オープンレバー4」、「スライド部材6」、「リフトレバー2」、「インサイドレバー10」、「ロッキングレバー7」、「チャイルドレバー13」、及び「オープンリフトレバー16」に対応するものと認められるから、両考案は、その構成の相当部分において一致しているものの、次の
(A)及び(B)の点に構成上の相違が認められる。
(A)本件訂正考案では、オープンリフトレバーが、インサイドレバーとチヤイルドレバーとの間に配設されるのに対して、刊行物1の考案では、切替レバー23はインサイドレバー21に重合しており、切替レバー23が、インサイドレバー21とチャイルドレバー19との間に配設されていない点。(B)本件訂正考案では、オープンリフトレバーがチャイルドレバーの回動によってピン回りでインサイドレバーに揺動自在に連結され、オープンリフトレバーの揺動でオープンレバーとの係合可能状態が解除されるのに対して、刊行物1の考案では、切替レバー23はインサイドレバー21に摺動自在に重合して連結しており、切替レバー23の摺動で解放レバー11との係合可能状態が解除される点。
そうすると、本件訂正考案と刊行物1の考案との間には、その構成に相違があり、しかもその構成には技術的意義が認められるから、本件訂正考案が、刊行物1に記載された考案とは認められないし、また、刊行物1の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとも認められない。
次に、刊行物1の考案と本件訂正考案の構成とを対比した上記相違について、刊行物2の考案をもとに検討する。
刊行物2の考案では、
(i)解錠状態においては、本件訂正考案と同様に、車内外からの操作によって開扉できるものであり、
(ii)施錠状態においては、本件訂正考案と同様に、車内外のハンドルを操作しても開扉できないというもので、両考案はこの点の機能に格別差異は認められない。
ところが、
(iii)チャイルドプロテクター状態では、本件訂正考案が、
(iii-1)車内からの開扉は、ロッキングレバー7の施錠・解錠位置に関係なく、インサイドレバー10がオープンレバー4に対して空振りをするだけで開けることはできないというものであり、
(iii-2)車外からの開扉は、ロッキングレバー7が解錠位置にあればチャイルドレバー13の位置に関係なく開けることができるというものであるのに対して、
刊行物2の考案では、チャイルドプロテクター状態では、
(iii-1)車内からの開扉は、車内よりインサイドレバー17を動かしても係合片18のみ空振りして開錠(開扉)できないというものであり、
(iii-2)車外からの開扉は、車外よりシルレバー21を動かそうとしても屈曲子23と屈曲子25とが当たっているので、シルレバー21は動かず開錠(開扉)できないというものである。
つまり、チャイルドプロテクター状態では、本件訂正考案は、車内からは開扉できず、車外からは開扉できるのに対して、刊行物2の考案では、車内外のいずれからも開扉できないというものであって、両考案はその機能に相当な差異が認められる。
このように、刊行物2の考案と本件訂正考案とは、ドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構の基本形式において異なる考案である。
そして、刊行物2には、インサイドレバー17とチャイルドレバー24との間に係合片18を配設したものや、係合片18がチャイルドレバー24の回動によってピン回りでインサイドレバー17に揺動自在に連結されたものは記載されているが、上記のように刊行物2の考案と、本件訂正考案のドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構とは、そもそも、基本形式や機能の異なるものであって、本件訂正考案とは異なる機能を奏するように配置、あるいは連結された刊行物2のインサイドレバー17、チャイルドレバー24、及び係合片18を、刊行物1の考案に適用する合理的な理由は見当たらないところであるし、また、そのインサイドレバー17、チャイルドレバー24、及び係合片18を刊行物1の考案のどこに、どのように適用すれば、本件訂正考案と同じような機能を奏する考案が得られるかについては何も示唆されていないから、本件訂正考案が、刊行物1及び刊行物2に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認められない。
以上のとおりであるから、本件訂正考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
4.むすび
以上のとおり、上記訂正は、実用新案法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定において準用する特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.実用新案登録異議申立についての判断
1.本件考案
本件実用新案登録第2576017号の請求項1に係る考案は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの上記II.の3.の「(1)訂正明細書の請求項1に係る考案」に示したとおりのもの(以下、「本件考案」という。)である。
2.異議申立の理由の概要
(1)実用新案登録異議申立人 浜田大三は、証拠方法として、
甲第1号証(特公昭47ー20323号公報)、及び
甲第2号証(実公昭57ー2628号公報)を提出し、
本件請求項1の考案は、甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができないと主張している。 なお、甲第2号証(=上記刊行物1)は、チャイルドブロック時に、車外からドアを開くことができるようにすることは周知であるとして提出されたもの(実用新案登録異議申立書7頁下段参照。)である。
3.甲各号証の記載事項
実用新案登録異議申立人 浜田大三の提出した甲第1号証及び甲第2号証には、上記II.の3.の「(2)各刊行物(甲各号証)に記載の考案」に示したとおりの考案が記載されている。
4.対比、判断
本件考案と、実用新案登録異議申立人 浜田大三の提出した甲第1号証
(=上記刊行物2)に記載の考案とを対比すると、上記 II.の3.の「(3)対比、判断」についての判断で示したのと同様に、チャイルドプロテクター状態においては、本件考案が、車内からは開扉できないが、車外からは開扉できるのに対して、甲第1号証(刊行物2)の考案では、車内からも、車外からも開扉できないもので、当然に、開閉扉するための両考案の構成が相違するのも明らかであって、本件考案が、甲第1号証(=上記刊行物2)に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認められないから、実用新案登録異議申立人の上記主張は採用できない。 なお、甲第2号証(=上記刊行物1)には、実用新案登録異議申立人の主張のように、チャイルドプルーフ(チャイルドブロック)時に、車外からドアを開くことができるようにする技術は記載されているが、この技術を、チャイルドプロテクター(チャイルドプルーフ)状態において、車内からも、車外からも開扉することのできない甲第1号証(刊行物2)の考案に適用すべき合理的な理由は何もないから、本件考案が、甲第1号証(刊行物2)の考案に、甲第2号証(刊行物1)に記載の考案を適用して当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとも認められない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由、及び提出した証拠方法によっては、本件考案の実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
I.手続の経緯
本件実用新案登録第2576017号の請求項1に係る考案は、平成1年3月24日に実用新案登録出願され、平成10年4月17日にその実用新案権の設定の登録がなされ、その後、浜田大三より請求項1(全請求項)に係る考案の実用新案登録について実用新案登録異議の申立がなされ、当審において、請求項1(全請求項)に係る考案の実用新案登録について取消理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成12年1月11日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
実用新案権者が求めている訂正の内容は、次の(1)?(3)のとおりである。
(1)実用新案登録明細書(登録査定時の明細書)の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載を、次のように訂正する。
【請求項1】 オープンレバー、スライド部材及び該スライド部材と係脱可能なリフトレバーを介して開閉機構を作動させるインサイドレバーを有し、前記スライド部材を前記リフトレバーに対して係脱させるべく作動させるロツクキングレバーの状態に関係なく前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とするドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構であつて、前記開閉機構を内蔵し且つ前記オープンレバー及び前記インサイドレバーを回動自在に支持するベースと、該ベースに回動自在に支持されたチヤイルドレバーと、前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設されたオープンリフトレバーと、該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結するピンと、前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる連結部と、前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする係合部とを有するドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構。
(2)実用新案登録明細書の第3頁17行?第4頁6行の「上記技術的課題を?ことである。」という記載を、次のように訂正する。
「上記技術的課題を解決するために本考案において講じた技術的手段は、オープンレバー、スライド部材及び該スライド部材と係脱可能なリフトレバーを介して開閉機構を作動させるインサイドレバーを有し、前記スライド部材を前記リフトレバーに対して係脱させるべく作動させるロツクキングレバーの状態に関係なく前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とするドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構であつて、前記開閉機構を内蔵し且つ前記オープンレバー及び前記インサイドレバーを回動自在に支持するベースと、該ベースに回動自在に支持されたチヤイルドレバーと、前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設されたオープンリフトレバーと、該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結するピンと、前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる連結部と、前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする係合部とを有した、ことである。」
(3)実用新案登録明細書の第9頁5行の「かからわず」という記載を、
「かかわらず」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、および拡張・変更の存否
(1)上記1.(1)の実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正は、オープンリフトレバーを、「前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設された」と限定し、ピンを、「該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結する」と限定し、連結部を、「前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる」と限定し、係合部を、「前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする」と限定したもので、実用新案登録請求の範囲の減縮に相当し、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、この訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正である。
(2)上記1.(2)の訂正は、実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正に伴って、それとの整合を図るために考案の詳細な説明を訂正したもので明りょうでない記載の釈明に相当する。
そして、この訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)上記1.(3)の訂正は、誤記の訂正である。
3.独立実用新案登録要件
(1)訂正明細書の請求項1に係る考案
本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 オープンレバー、スライド部材及び該スライド部材と係脱可能なリフトレバーを介して開閉機構を作動させるインサイドレバーを有し、前記スライド部材を前記リフトレバーに対して係脱させるべく作動させるロツクキングレバーの状態に関係なく前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とするドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構であつて、前記開閉機構を内蔵し且つ前記オープンレバー及び前記インサイドレバーを回動自在に支持するベースと、該ベースに回動自在に支持されたチヤイルドレバーと、前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設されたオープンリフトレバーと、該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結するピンと、前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる連結部と、前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする係合部とを有するドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構。
(2)各刊行物(甲各号証)に記載の考案
実用新案登録異議申立人 浜田大三が甲第2号証として提出し、先の当審の取消理由通知において刊行物として引用した実公昭57ー2628号公報(以下、「刊行物1」という。)には、チャイルドレバーを備えたドアロック装置に関する考案について、
イ.第3図に示す解錠状態において、車外からの操作による開扉については、
「車外からの開扉操作はアウトサイドハンドル(図示なし)を解除操作することによりなされ、この操作と連動して解放レバー11が時計方向へ回動し、該解放レバー11と連結しているサブレバー17が上昇してその係合部17bがオープンレバー9の被係合部9aを解放レバー11と同一方向へ押圧回動させるようになる。したがって、オープンレバー9と一体になって回動するポール部材6は噛合解除方向(第1図反時計方向)へ回動させられるので、安全あるいは完全噛合位置におけるラッチ部材5の拘束が解かれ、扉が自由に開扉できるようになる。」(公報2頁右欄25?36行)と記載れ、
ロ.第3図に示す解錠状態において、車内からの操作による開扉については、
「車内からの開扉はインサイドハンドル(図示なし)を解除操作することによりなされ、この操作と連動してインサイドレバー21が反時計方向(時計方向は誤記と認める。)に回動すると共に、このインサイドレバー21上に配設された切替レバー23もチャイルドレバー19の案内溝19bに導かれながら一体的に第4図に示す二点鎖線位置から実線で示す位置まで移動し、その先端肩部23aが解放レバー11の先端延出部11bを上方へ持ち上げるので、以後上述車外からの場合と同様の作動で開扉がなされる。」(公報2頁右欄37行?3頁左欄2行)と記載され、
ハ.第3図の解錠位置からロックレバー14を時計方向に回動して施錠状態にしたときの開扉については、
「第3図解錠位置にあるロックレバー14をノブあるいはキープレート(図示なし)により時計方向に回動させ施錠状態にすると、サブレバー17の係合部17bの移動軌跡線上からオープンレバー9の被係合部9aが外れてしまうので、車内外のハンドルを操作してもその動作はポール部材6に伝達されず開扉することはできない。」(公報3頁左欄3?9行)と記載され、
ニ.チャイルドプルーフ状態における開扉については、
「チャイルドプルーフを行なうべく、開扉時に予めチャイルドレバー19の操作部19cを手動で第4図に示す非作動位置から第5図に示す作動位置へ揺動させておくと、その案内溝19bの移動と共に案内溝19b内に嵌入しているピン23cが移動し、インサイドレバー21上に摺動可能に設けられた切替レバー23は伝達位置から第5図に示す非伝達位置へと移動させられ、その先端肩部23aは解放レバー11の延出部11bから離脱するので、インサイドレバー21側の動きを解放レバー11側に伝えることのできない所謂チャイルドプルーフ状態となる。従ってこの状態で閉扉すると、車内からの開扉はロックレバー14の施解錠位置に関係なく第5図に示すような空振りをするだけで開けることはできない。なお、車外からの開扉はロックレバー14が解錠位置にあればチャイルドレバー19の位置に関係なく開けることができ、また、チャイルドプルーフの解錠は開扉時にチャイルドレバー19の操作部19cを作動位置から非作動位置に戻すことによりなされる。」(公報3頁左欄10?30行)と記載されている。
同じく実用新案登録異議申立人 浜田大三が甲第1号証として提出した特公昭47ー20323号公報(以下、「刊行物2」という。)には、チャイルドレバーを備えたドアーロックに関する考案が記載されており、
車内からの操作による開錠については、
「又車内にて開錠するにはインサイドレバー17を引きて第11図、第12図に示す如くにすると、インサイドレバー17の係合片18はその縦透孔20にてピン26に沿うて降下し、その段部19にて屈曲子6(屈曲子7は誤記と認められる。)を押して摺動片5の一端を押し上げ屈曲子4にて爪片2をも押上げるから爪3は爪車15より外れ開錠される。」(公報2頁左欄34行?右欄3行)と記載され、
車外からの操作による開錠については、
「開錠するにはシルレバー21を車外より引きてこれを第2図、第5図、第6図に示す元に戻すと股部22にてキープレート13も元に戻り、牽引片10は屈曲子7に当たるので牽引片10を引くと、第10図に示す如く牽引片10は屈曲子7にて摺動片5の一端を押して他端を押し上げるから、屈曲子4にて爪片2をも押上げ、結局爪3は爪車15より外れ鎖錠は開放される。」(公報2頁左欄26?34行)と記載されている。
さらに、チヤイルドレバーに関しては、
「なお、チヤイルドレバー24を廻動して側壁の屈曲子28に当てると共に自己の屈曲子25をシルレバー21の屈曲子23に当てて第13図の如くにすると、車内よりインサイドレバー17を動かしても係合片18のみ空振りし、又車外よりシルレバー21を動かそうとしても屈曲子23と屈曲子25とが当たっているので、シルレバー21は動かず開錠できない。それだから車内に子供を残すような場合は閉錠に加え、チャイルドレバー24を第13図の如くにしておかば、童児が内外よりインサイドレバー17やシルレバー21を動かしても、それは空振りに終わり開錠できないから安心である。」(公報2頁右欄4?16行)と記載されている。
また、刊行物2には、インサイドレバー17とチャイルドレバー24との間に係合片18を配設したものや、係合片18がチャイルドレバー24の回動によってピン回りでインサイドレバー17に揺動自在に連結されたものが記載されている。
(3)対比、判断
本件訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件訂正考案」という。)と、先の取消理由通知において引用した上記刊行物1の考案とを対比する。
刊行物1の考案の上記イ.?ニ.の記載は要するに、
刊行物1の考案においては、
(イ)第3図に示す解錠状態における車外からの操作による開扉は、アウトサイドハンドル(図示なし)の操作と連動して解放レバー11が時計方向へ回動すると、この解放レバー11と連結しているサブレバー17が上昇し、その係合部17bがオープンレバー9の被係合部9aを、解放レバー11と同一方向へ押圧回動させて開扉するというものであり、
(ロ)同じく解錠状態における車内からの操作による開扉は、インサイドレバー21が反時計方向に回動すると、このインサイドレバー21上に配設された切替レバー23も第4図に示す二点鎖線位置から実線で示す位置まで移動し、その先端肩部23aが解放レバー11の先端延出部11bを上方へ持ち上げ、その開放レバー11と連結しているサブレバー17が上昇し、サブレバー17の係合部17bと係合するオープンレバー9の被係合部9aがオープンレバー9を回動して開扉するというものであり、
(ハ)ロックレバー14による施錠状態においては、車内外のハンドルを操作しても開扉することはできないというものであり、
(ニ)チャイルドプルーフ状態における開扉については、
(a)車内からの開扉は、ロックレバー14の施解錠位置に関係なく、インサイドレバー21が解放レバー11に対して空振りをするだけで開けることはできないというものであり、
(b)車外からの開扉は、ロックレバー14が解錠位置にあればチャイルドレバー19の位置に関係なく開けることができるというものである。
一方、本件訂正考案においては、
(イ)解錠状態における車外からの操作による開扉は、オープンレバー4の第1図反時計方向への回動により、スライド部材6のピン6aとリフトレバー2の一端2aとが係合してリフトレバー2が回動し、ドアが開となるものであり、
(ロ)解錠状態における車内からの操作による開扉は、インサイドレバー10を第2図反時計方向に回動させると、オープンリフトレバー16が上方に移動し、このオープンリフトレバー16の移動によりオープンリフトレバー16の係合部19とオープンレバー4の他端4bとが係合し、オープンレバー4の第1図反時計方向への回動により、スライド部材6のピン6aとリフトレバー2の一端2aとが係合してリフトレバー2が回動し、ドアが開となるものであり、
(ハ)ロッキングレバー7による施錠状態においては、車内外のハンドルを操作しても、オープンレバー4からリフトレバー2への回動動作の伝達が阻止されて、ドアを開とすることはできないものであり、
(ニ)チャイルドプロテクター状態における開扉については、
(a)車内からの開扉は、ロッキングレバー7の状態に関係なく、インサイドレバー10がオープンレバー4に対して空振りをするだけで開けることはできないというものであり、
(b)車外からの開扉は、ロッキングレバー7が解錠位置にあればチャイルドレバー13の位置に関係なく開けることができるというものである。
そうすると、両考案は共に、
(i)解錠状態においては、車内外からの操作によって開扉できるというものであり、
(ii)施錠状態においては、車内外のハンドルを操作しても開扉できないというものであり、
(iii)チャイルドプルーフ(本件訂正考案では、チャイルドプロテクター。以下、括弧内の記載は本件訂正考案の構成を示す。)状態では、
(iii-1)車内からの開扉は、ロックレバー14(ロッキングレバー7)の施錠・解錠位置に関係なく、インサイドレバー21(インサイドレバー10)が解放レバー11(オープンレバー4)に対して空振りをするだけで開けることはできないというものであり、
(iii-2)車外からの開扉は、ロックレバー14(ロッキングレバー7)が解錠位置にあればチャイルドレバー19(チャイルドレバー13)の位置に関係なく開けることができるというものであって、両考案の機能に格別の差異は認められない。
さらに、刊行物1の考案の「解放レバー11」、「サブレバー17」、「オープンレバー9」、「インサイドレバー21」、「ロックレバー14」、「チャイルドレバー19」、及び「切替レバー23」は、それぞれ、本件訂正考案の「オープンレバー4」、「スライド部材6」、「リフトレバー2」、「インサイドレバー10」、「ロッキングレバー7」、「チャイルドレバー13」、及び「オープンリフトレバー16」に対応するものと認められるから、両考案は、その構成の相当部分において一致しているものの、次の(A)及び(B)の点に構成上の相違が認められる。
(A)本件訂正考案では、オープンリフトレバーが、インサイドレバーとチヤイルドレバーとの間に配設されるのに対して、刊行物1の考案では、切替レバー23はインサイドレバー21に重合しており、切替レバー23が、インサイドレバー21とチャイルドレバー19との間に配設されていない点。(B)本件訂正考案では、オープンリフトレバーがチャイルドレバーの回動によってピン回りでインサイドレバーに揺動自在に連結され、オープンリフトレバーの揺動でオープンレバーとの係合可能状態が解除されるのに対して、刊行物1の考案では、切替レバー23はインサイドレバー21に摺動自在に重合して連結しており、切替レバー23の摺動で解放レバー11との係合可能状態が解除される点。
そうすると、本件訂正考案と刊行物1の考案との間には、その構成に相違があり、しかもその構成には技術的意義が認められるから、本件訂正考案が、刊行物1に記載された考案とは認められないし、また、刊行物1の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとも認められない。
次に、刊行物1の考案と本件訂正考案の構成とを対比した上記相違について、刊行物2の考案をもとに検討する。
刊行物2の考案では、
(i)解錠状態においては、本件訂正考案と同様に、車内外からの操作によって開扉できるものであり、
(ii)施錠状態においては、本件訂正考案と同様に、車内外のハンドルを操作しても開扉できないというもので、両考案はこの点の機能に格別差異は認められない。
ところが、
(iii)チャイルドプロテクター状態では、本件訂正考案が、
(iii-1)車内からの開扉は、ロッキングレバー7の施錠・解錠位置に関係なく、インサイドレバー10がオープンレバー4に対して空振りをするだけで開けることはできないというものであり、
(iii-2)車外からの開扉は、ロッキングレバー7が解錠位置にあればチャイルドレバー13の位置に関係なく開けることができるというものであるのに対して、
刊行物2の考案では、チャイルドプロテクター状態では、
(iii-1)車内からの開扉は、車内よりインサイドレバー17を動かしても係合片18のみ空振りして開錠(開扉)できないというものであり、
(iii-2)車外からの開扉は、車外よりシルレバー21を動かそうとしても屈曲子23と屈曲子25とが当たっているので、シルレバー21は動かず開錠(開扉)できないというものである。
つまり、チャイルドプロテクター状態では、本件訂正考案は、車内からは開扉できず、車外からは開扉できるのに対して、刊行物2の考案では、車内外のいずれからも開扉できないというものであって、両考案はその機能に相当な差異が認められる。
このように、刊行物2の考案と本件訂正考案とは、ドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構の基本形式において異なる考案である。
そして、刊行物2には、インサイドレバー17とチャイルドレバー24との間に係合片18を配設したものや、係合片18がチャイルドレバー24の回動によってピン回りでインサイドレバー17に揺動自在に連結されたものは記載されているが、上記のように刊行物2の考案と、本件訂正考案のドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構とは、そもそも、基本形式や機能の異なるものであって、本件訂正考案とは異なる機能を奏するように配置、あるいは連結された刊行物2のインサイドレバー17、チャイルドレバー24、及び係合片18を、刊行物1の考案に適用する合理的な理由は見当たらないところであるし、また、そのインサイドレバー17、チャイルドレバー24、及び係合片18を刊行物1の考案のどこに、どのように適用すれば、本件訂正考案と同じような機能を奏する考案が得られるかについては何も示唆されていないから、本件訂正考案が、刊行物1及び刊行物2に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認められない。
以上のとおりであるから、本件訂正考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
4.むすび
以上のとおり、上記訂正は、実用新案法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定において準用する特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.実用新案登録異議申立についての判断
1.本件考案
本件実用新案登録第2576017号の請求項1に係る考案は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの上記II.の3.の「(1)訂正明細書の請求項1に係る考案」に示したとおりのもの(以下、「本件考案」という。)である。
2.異議申立の理由の概要
(1)実用新案登録異議申立人 浜田大三は、証拠方法として、
甲第1号証(特公昭47ー20323号公報)、及び
甲第2号証(実公昭57ー2628号公報)を提出し、
本件請求項1の考案は、甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができないと主張している。 なお、甲第2号証(=上記刊行物1)は、チャイルドブロック時に、車外からドアを開くことができるようにすることは周知であるとして提出されたもの(実用新案登録異議申立書7頁下段参照。)である。
3.甲各号証の記載事項
実用新案登録異議申立人 浜田大三の提出した甲第1号証及び甲第2号証には、上記II.の3.の「(2)各刊行物(甲各号証)に記載の考案」に示したとおりの考案が記載されている。
4.対比、判断
本件考案と、実用新案登録異議申立人 浜田大三の提出した甲第1号証(=上記刊行物2)に記載の考案とを対比すると、上記 II.の3.の「(3)対比、判断」についての判断で示したのと同様に、チャイルドプロテクター状態においては、本件考案が、車内からは開扉できないが、車外からは開扉できるのに対して、甲第1号証(刊行物2)の考案では、車内からも、車外からも開扉できないもので、当然に、開閉扉するための両考案の構成が相違するのも明らかであって、本件考案が、甲第1号証(=上記刊行物2)に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認められないから、実用新案登録異議申立人の上記主張は採用できない。 なお、甲第2号証(=上記刊行物1)には、実用新案登録異議申立人の主張のように、チャイルドプルーフ(チャイルドブロック)時に、車外からドアを開くことができるようにする技術は記載されているが、この技術を、チャイルドプロテクター(チャイルドプルーフ)状態において、車内からも、車外からも開扉することのできない甲第1号証(刊行物2)の考案に適用すべき合理的な理由は何もないから、本件考案が、甲第1号証(刊行物2)の考案に、甲第2号証(刊行物1)に記載の考案を適用して当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとも認められない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由、及び提出した証拠方法によっては、本件考案の実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】オープンレバー,スライド部材及び該スライド部材と係脱可能なリフトレバーを介して開閉機構を作動させるインサイドレバーを有し、前記スライド部材を前記リフトレバーに対して係脱させるべく作動させるロツクキングレバーの状態に関係なく前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とするドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構であつて、前記開閉機構を内蔵し且つ前記オープンレバー及び前記インサイドレバーを回動自在に支持するベースと、該ベースに回動自在に支持されたチヤイルドレバーと、前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設されたオープンリフトレバーと、該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結するピンと、前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる連結部と、前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする係合部とを有するドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構。
【考案の詳細な説明】
〔考案の目的〕
(産業上の利用分野)
本考案は、ドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構に関するものである。
(従来の技術)
従来のこの種のチヤイルドプロテクター機構としては、実公昭55-49403号公報に示されるものが知られている。これは、ベースに、開閉機構を作動させるオープンレバー,インサイドハンドルに連結されたインサイドレバー,インサイドレバーの回動動作をオープンレバーに伝達してオープンレバーを回動させるオープンリフトレバー及びインサイドレバーの回動動作がオープンレバーに伝達してされるのを阻止するチヤイルドレバーとが夫々回動自在に枢支されている。オープンリフトレバーはオープンレバーと係合可能となつていると共に同一のスライドピンを介してインサイドレバー及びチヤイルドレバーと係合可能となつており、チヤイルドレバーを回動操作することにより、スライドピンを摺動させインサイドレバーとオープンリフトレバーとの係合を解除し、インサイドレバーを空振り状態として施錠状態とするものであつた。
(考案が解決しようとする課題)
しかし、上記したチヤイルド機構であると、スライドピンの摺動によりインサイドレバーとオープンリフトレバーとの係脱を行いインサイドレバーの回動動作をオープンレバーに伝達可能又は伝達不能つまり解錠状態または施錠状態としているので、経年変化や砂,埃等によりスライドピンの摺動が悪くなり、チヤイルドレバーの操作力が大きくなつたりさらには作動できなくなつたりする恐れがあつた。又、部品点数が多くなり、組付け性が悪くコストアツプにつながる等の欠点もあった。
故に、本考案は、スライドピンの摺動による切り換えを廃止することを、その技術的課題とするものである。
〔考案の構成〕
(課題を解決するための手段)
上記技術的課題を解決するために本考案において講じた技術的手段は、オープンレバー,スライド部材及び該スライド部材と係脱可能なリフトレバーを介して開閉機構を作動させるインサイドレバーを有し、前記スライド部材を前記リフトレバーに対して係脱させるべく作動させるロツクキングレバーの状態に関係なく前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とするドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構であつて、前記開閉機構を内蔵し且つ前記オープンレバー及び前記インサイドレバーを回動自在に支持するベースと、該ベースに回動自在に支持されたチヤイルドレバーと、前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設されたオープンリフトレバーと、該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結するピンと、前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる連結部と、前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする係合部とを有した、ことである。
(作用)
上記技術的手段は次のように作用する。チヤイルドレバーの回動操作によりオープンリフトレバーを揺動させオープンレバーとオープンリフトレバーとの係合可能状態が解除され、インサイドレバーからオープンレバーへの回動動作の伝達が阻止される。このように、オープンリフトレバーの揺動動作によりオープンレバーとオープンリフトレバーとの係脱を行い解錠状態又は施錠状態としているので、係脱切り換え部の経年変化が少ない、チヤイルドレバーの操作力の増大や不作動等の不具合を解消できる。又、スライドピンの廃止より、装置の簡素化及びコストダウンを達成することができる。
(実施例)
以下、本考案の一実施例を添付図面に基づいて説明する。
第1図に示されるように、ポール及びラツチよりなる開閉機構(図示せず)が内蔵されたベース1上には開閉機構を作動させるリフトレバー2が枢軸ピン3により回動可能に枢支されている。この枢軸ピン3にはオープンレバー4が回動可能に枢支されており、スプリング5により第1図示時計方向に常時付勢されている。このオープンレバー4の一端4aにはピン6aが植設されたスライド部材6が摺動可能に保持されており、このピン6aはリフトレバー2の一端2aと係合可能となつている。ベース1の立部1aにはロツキングノブ(図示せず)に連結されたロツキングレバー7がスプリング8により節度をもつて回動可能に枢支されている。このロツキングレバー7の一端7aには枢軸ピン3を中心とした長穴9が形成されており、この長穴9内にはピン6aが係合されている。
第1図ないし第2図に示されるように、立部1aの車両上方側(第2図示上側)にはインサイドハンドル(図示せず)に連結されたインサイドレバー10が枢軸ピン11により回動可能に枢支されており、このインサイドレバー10の一端10aにはピン12が植設されている。立部1aの車両下方側(第2図示下側)にはハンドル部13aが形成されたチヤイルドレバー13が枢軸ピン14により回動可能に枢支されており、このチヤイルドレバー13の一端13bにはピン15が形成されている。このインサイドレバー10とチヤイルドレバー13との間にはオープンリフトレバー16が配設されている。このオープンリフトレバー16の一端16aには枢軸ピン11を中心とする長穴17が形成されており、この長穴17内にはピン12が係合されている。長穴17は、インサイドレバー10を操作した時の初期アソビとして利用されており、アソビの設定が不要の場合には、長穴17を廃止してピン12を直接オープンリフトレバー16と連結してもよい。又、オープンリフトレバー16の他端16bには二股部18が形成されており、この二股部18間にピン15が係合されている。更に、オープンリフトレバー16には係合部19が形成されており、この係合部19はオープンレバー4の他端4bと係合可能となつている。尚、二股部18は長穴としてもよい。
次に作動について説明する。
第1図示の状態において、インサイドハンドルを操作してインサイドレバー10を第2図示反時計方向に回動させると、オープンリフトレバー16が第2図示実線の位置から第2図示二点鎖線の位置(第3図示の状態から第4図示の状態)へ移動する。このオープンリフトレバー16の移動により係合部19とオープンレバー4の他端4bとが係合し、オープンレバー4がスプリング5の付勢力に抗して第1図示反時計方向に回動する。このオープンレバー4の回動によりスライド部材6のピン6aとリフトレバー2の一端2aとが係合してリフトレバー2が回動し、開閉機構が作動する。これによりドア(図示せず)が開となる。
又、第1図示の状態において、ロツキングノブを操作してロツキングレバー7を第2図示反時計方向に回動させると、ロツキングレバー7の長穴9とスライド部材6のピン6aとの係合によりスライド部材6が第1図示実線の位置から第1図示上方(ピン6aを点線で示す)にスライドする。このスライド部材6のスライドによりスライド部材6のピン6aとリフトレバー2の一端2aとの係合可能状態が解除されるつまりオープンレバー4からリフトレバー2への回動動作の伝達が阻止され施錠状態となる。これにより、インサイドハンドルを操作してもドアは開とならない。
更に、第1図示の状態において、ハンドル部13aを操作してチヤイルドレバー13を第2図示時計方向に回動させると、オープンリフトレバー16がピン12回りに第2図示実線の位置から第2図示二点鎖線の位置(第3図示の状態から第5図示の状態)に揺動する。この揺動によりオープンリフトレバー16の係合部19とオープンレバー4の他端4bとの係合可能状態が解除されるつまりオープンリフトレバー16からオープンレバー4への回動動作の伝達が阻止され施錠状態となる。これにより、インサイドレバー10を回動させても、第6図示の如く空打ちとなりロツキングレバー7の状態にかかわらずドアは開かない。
このように、オープンリフトレバー16を揺動させることにより、オープンリフトレバー16の係合部19とオープンレバー4の他端4aとを係脱させて施錠状態又は解錠状態としているため、係脱切り換え部の経年変化が少なく、チヤイルドレバー13の操作力の増大や不作動等の不具合を解消できる。又、従来のスライドピンの廃止より、部品点数の削減による装置の簡素化及びコストダウンを達成することができる。更に、従来のチヤイルドレバーの操作でのスライドピンのスライドによるインサイドレバーとオープンリフトレバーの係脱からオープンリフトレバー16とオープンレバー4の係脱としたので、従来、車両下方側(第2図示下側)に近接して配設しなければならなかつたインサイドレバー10,オープンリフトレバー18及びチヤイルドレバー13を離間して配設することが可能となり、ロツキングレバー7を車両下方側(第2図示下側)に配設できる。これにより、ロツキングロツドを介さずにダイレクトにオープンレバー4とロツキングレバー7とを作用的に連結することができ、部品点数の削減による装置の簡素化及びコストダウンを達成することができる。
〔考案の効果〕
本考案によれば、インサイドレバーとオープンレバーとの間にオープンレバーとの係合可能状態を解除してスライド部材がリフトレバーに対して係合可能な状態においてインサイドレバーをオープンレバーに対して空振り状態とすべく揺動自在なオープンリフトレバーを配設したので、オープンリフトレバーを揺動させることによりインサイドレバーからオープンレバーへの回動動作の伝達が阻止される。これにより、ロツキングレバーの状態に関係なくインサイドレバーをオープンレバーに対して空振り状態とするいわゆるドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構を実現することができる。又、係脱切り換え部の経年変化が少なく、チヤイルドレバーの操作力の増大や不作動等の不具合を解消できる。又、従来のスライドピンの廃止より、部品点数の削減による装置の簡素化及びコストダウンを達成することができる。更に、従来、車両下方側に近接して配設しなければならなかったインサイドレバー,オープンリフトレバー及びチヤイルドレバーを離間して配設することが可能となり、ロツキングレバーを車両下方側(第2図示下側)に配設できる。これにより、ロツキングロツドを介さずにダイレクトにオープンレバーとロツキングレバーとを作用的に連結することができ、部品点数の削減による装置の簡素化及びコストダウンを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案に係るドアロツク装置の平面図、第2図は第1図の側面図、第3図は解錠状態でのチヤイルド機構を表す平面図、第4図は第3図のインサイドレバー回動後の状態を表す平面図、第5図は施錠状態でのチヤイルド機構を表す平面図、第6図は第5図のインサイドレバー回動後の状態を表す平面図である。
1…ベース、2…リフトレバー、4…オープンレバー、6…スライド部材、7…ロツキングレバー、10…インサイドレバー・、13…チヤイルドレバー、16…オープンリフトレバー、
訂正の要旨 訂正の要旨
実用新案登録第2576017号の明細書の記載を次のように訂正する。
1 実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として次のように訂正する。
【請求項1】 オープンレバー、スライド部材及び該スライド部材と係脱可能なリフトレバーを介して開閉機構を作動させるインサイドレバーを有し、前記スライド部材を前記リフトレバーに対して係脱させるべく作動させるロツクキングレバーの状態に関係なく前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とするドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構であつて、前記開閉機構を内蔵し且つ前記オープンレバー及び前記インサイドレバーを回動自在に支持するベースと、該ベースに回動自在に支持されたチヤイルドレバーと、前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設されたオープンリフトレバーと、該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結するピンと、前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる連結部と、前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする係合部とを有するドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構。
2 実用新案登録明細書の第3頁17行?第4頁6行の「上記技術的課題を?ことである。」という記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として次のように訂正する。
「上記技術的課題を解決するために本考案において講じた技術的手段は、オープンレバー、スライド部材及び該スライド部材と係脱可能なリフトレバーを介して開閉機構を作動させるインサイドレバーを有し、前記スライド部材を前記リフトレバーに対して係脱させるべく作動させるロツクキングレバーの状態に関係なく前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とするドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構であつて、前記開閉機構を内蔵し且つ前記オープンレバー及び前記インサイドレバーを回動自在に支持するベースと、該ベースに回動自在に支持されたチヤイルドレバーと、前記インサイドレバーと前記チヤイルドレバーとの間に配設されたオープンリフトレバーと、該オープンリフトレバーの一端を前記インサイドレバーに揺動自在に連結するピンと、前記オープンリフトレバーの他端を前記チヤイルドレバーに連結し且つ前記チヤイルドレバーの回動で前記オープンリフトレバーを前記ピン回りで揺動させる連結部と、前記オープンリフトレバーに形成され前記オープンレバーと係合可能で且つ前記オープンリフトレバーの揺動で前記オープンレバーとの係合可能状態が解除されて前記スライド部材が前記リフトレバーに対して係合可能な状態において前記インサイドレバーを前記オープンレバーに対して空振り状態とする係合部とを有した、ことである。」
3 実用新案登録明細書の第9頁5行の「かからわず」という記載を、誤記の訂正を目的として、「かかわらず」と訂正する。
異議決定日 2000-03-22 
出願番号 実願平1-33857 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (E05B)
最終処分 維持    
特許庁審判長 佐田 洋一郎
特許庁審判官 鈴木 憲子
斎藤 利久
登録日 1998-04-17 
登録番号 実用新案登録第2576017号(U2576017) 
権利者 アイシン精機株式会社
愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 トヨタ自動車株式会社
愛知県豊田市トヨタ町1番地
考案の名称 ドアロツク装置のチヤイルドプロテクター機構  
代理人 大庭 咲夫  
代理人 加藤 慎治  
代理人 加藤 慎治  
代理人 尾関 伸介  
代理人 大庭 咲夫  
代理人 大庭 咲夫  
代理人 加藤 慎治  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ