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審決分類 審判 全部申し立て   A47B
管理番号 1025088
異議申立番号 異議1999-74385  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-11-24 
確定日 2000-04-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第2595183号「収納装置、並びにその収納装置に取り付けられる桟」の請求項1ないし4に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2595183号の請求項1ないし4に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続きの経緯
本件実用新案登録第2595183号に係る考案は、平成5年11月30日に出願され、平成11年3月12日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、平成11年11月24日にサンウエーブ工業株式会社より、実用新案登録異議の申立てがなされたものである。

2.本件請求項1?4に係る考案
本件実用新案登録第2595183号の請求項1?4に係る考案(以下、「本件請求項1?4に係る考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1?4に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】相対向位置する側板部と、これら側板部の各内側面にそれぞれ取り付けられる支持具と、これら支持具を介して、両側板部の間に取り外し自在に配置される桟とを備える収納装置において、
前記桟は、上側板状部及び下側板状部を備えるとともに、一方に開口部を有する断面概ねコの字状の外形からなり、また、その桟の各側部には、前記支持具が備える第1の係合部と着脱自在に係合する第2の係合部が備えられており、かつ、前記上側板状部及び下側板状部の開口部側の先端部には、前記第1及び第2の係合部が互いに係合した際に、前記支持具の後方部に係合して、その支持具が前記開口部より抜け出るのを困難とする、掛止部が設けられていることを特徴とする収納装置。
【請求項2】前記側板部の各内側面には、前記支持具を取り外し自在に取り付けることができる取付手段が、前記内側面の高さ方向に複数段形成されていることを特徴とする請求項1に記載の収納装置。
【請求項3】収納装置の相対向位置する側板部の各内側面にそれぞれ取り付けられる支持具を介して、両側板部の間に取り外し自在に配置される桟において、
その桟は、上側板状部及び下側板状部を備えるとともに、一方に開口部を有する断面概ねコの字状の外形からなり、また、その桟の各側部には、前記支持具が備える第1の係合部と着脱自在に係合する第2の係合部が備えられており、かつ、前記上側板状部及び下側板状部の開口部側の先端部には、前記第1及び第2の係合部が互いに係合した際に、前記支持具の後方部に係合して、その支持具が前記開口部より抜け出るのを困難とする、掛止部が設けられていることを特徴とする桟。
【請求項4】前記第1の係合部は、突起からなるとともに、前記第2の係合部は、開口を有する弾性変形可能な弾性片からなり、両第1及び第2の係合部を係合させる際に、前記突起が前記開口を押し開くようにして前記弾性片に嵌め合わされることを特徴とする請求項3に記載の桟。」

3.実用新案登録異議申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人は、
甲第1号証[実願平4-12138号(実開平5-61509号)のCD-ROM]を提出し、本件請求項1?4に係る考案は、甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件請求項1?4に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであり、実用新案登録は取り消すべきものである旨主張している。

4.甲第1号証に記載の考案
甲第1号証には、
「 【課題を解決するための構成】
上記目的を達成するため、この考案にあっては、桟の取付装置を、キャビネットの相対向する部材に夫々止着される一対の係止具と、この係止具に突設された係止片部に蕨合係上される桟部材と、から構成し、上記桟部材の中空部には、上記係止片部の進入を許容し、かつ、嵌合後は係止具と桟部材との係合状態を保持する係止弾片を形成したことを特徴とするものである。」(明細書第5頁段落【0006】)、
「 【0009】
図に示す実施例は、この考案を、桟部材の一種であるキャビネットの抽斗用横框の取付装置に適用した場合を例示したものであり、この実施例に係るキャビネットKは、図1に示すように、左側板1、背板2、底板3、中仕切板7及び右側板8がビス止め或は接着剤などで予め組み立て固定されている。
【0010】
そして、上記左側板1と中仕切板7の対向面部の手前側上下方向には、ダボ孔4が所定間隔毎に開設されており、該ダボ孔4には、横框Aを取り付ける一対の係止具Bが止着される。
【0011】
この係止具Bは、図2と図3に示すように、基板10と、この基板10の幅広部に開設されたビス孔11と、上記基板10の手前側方向に突設された横倒略V字状の係止片部12と、この係止片部12の先端部に係止段部12 aを有して形成された鏃部12bと、上記係止片部12の左側板1或は中仕切板7の対向面部側に突設されたダボ13と、から構成されている。
【0012】
従って、上記係止具Bは、上記左側板1と中仕切板7の対向面部に開設された各ダボ孔4に上記ダボ13を圧入し、かつ、ビス14を上記ビス孔11に挿通してこれを緊締することで、上記左側板1と中仕切板7の所定対向面部に夫々止着される。
【0013】
尚、上記中仕切板7と右側板8の対向面上部に横框Cを取り付ける場合には、上記中仕切板7と右側板8の対向面上部にもダボ孔4aを開設し、該ダボ孔4aに上記一対の係止具Bを同様の手順で止着し、この係止具Bに長尺の横框Cを嵌合係止することで、簡単に取り付けることができる。」(明細書第5?6頁段落【0009】?段落【0013】及び図1?3)、
「 【0014】
横框A,Cは、図4と図5に示すように、断面略C字状に形成された本体20の手前垂直面部に、抽斗の鏡板や扉と弾接するクッション材21が上下2列に貼着或は一体成型で形成されており、上記横框Aは、上記左側板1と中仕切板7の間隔寸法と同寸法の長さを有し、また、横框Cは上記中仕切板7と右側板8の間隔寸法と同寸法の長さを有して形成されている。」(明細書第6頁段落【0014】及び図4,5)、
「 【0016】
また、これら各横框A,Cの中空部22内には、上記本体20を構成する上下水平板部23,24の後端部から中空部22の内方向へと延設された横倒略ハ字状の係止弾片25,26が一体に延設されている。
【0017】
そして、これらの係止弾片25,26は、図6に示すように、上記係止具Bの係止片部12が圧入されたときには、該係止片部12によって拡開されて該係止片部12の進入を許容し、かつ、嵌合後は各係止弾片25,26の終端部が上記係止片部12の鏃部12bに形成された係止段部12aと係合して係止具Bが各横框A,Cからみたりに離脱しないように、各横框A,Cと係止具Bとの係合状態を保持するように構成されている。」(明細書第7頁段落【0016】?段落【0017】及び図4,6)
「 【考案の効果】
この考案に係る桟の取付装置にあっては、以上説明したように、予め組み立ててられたキャビネットに一対の係止具を、その係止片部がキャビネットの手前方向に向いた状態で止着し、この状態から桟部材をキャビネットの手前側から係止具の係止片部方向へと押し込み、該桟部材の係止弾片を係止具の係止片部と係合させることで、上記桟部材を所定の取付位置に取り付けるように構成したので、上記桟部材を、予め概略組み立てられたキャビネットに後からワンタッチで簡単に取り付けることができ.その結果、桟部材の取付位置を変更して、大きさの異なる抽斗の収納スペースを容易に確保することができ、或は、一のキャビネットに対して種々の抽斗の収納バリエーションを容易に得ることができると共に、この種のキャビネットの組み立て効率を大幅に向上することができるので量産にも好適である等、幾多の優れた効果を奏する。」(明細書第8?9頁段落【0024】)及び
「横框Aは、上下水平板部23,24を備えるとともに、一方に開口部を有する断面略C字状の外形からなっている形状。」(図4)
がそれぞれ記載されている。
以上の明細書及び図面の記載からみて、甲第1号証には、以下の考案が記載されていると認められる。
「相対向位置する側板1,8と中仕切板7と、これら側板1,8と中仕切板7の各内側面の高さ方向に複数段形成されたダボ孔4に、取り外し自在に取り付けられる係止具Bと、これら係止具Bを介して、側板1,8と中仕切板7の間に取り外し自在に配置される横框Aを備えるキャビネットKの桟取付装置において、
前記横框Aは、上水平板部23及び下水平板部24を備えるとともに、一方に開口部を有する断面略C字状の外形からなり、また、上下水平板部23,24の後端部から中空部22の内方向へと係止弾片25,26が一体に延設され、係止具Bの係止片部12が圧入されたときには、前記係止弾片25,26が係止片部12によって拡開されて係止片部12の進入を許容し、かつ、嵌合後は各係止弾片25,26の終端部が係止片部12の鏃部12bに形成された係止段部12aと係合して各横框Aと係止具Bとの係合状態を保持するようにし、前記係止具Bが前記横框Aの開口部より抜け出るのを困難とするキャビネットの桟取付装置。 」

5.対比・判断
[本件請求項1に係る考案について]
本件請求項1に係る考案と甲第1号証に記載の考案とを対比すると、
本件請求項1に係る考案の「側板と中仕切板」、「ダボ孔」、「係止具」、「横框」、「キャビネット」、「上水平板部」、「下水平板部」、「断面略C字状」、「係止弾片」及び「係止片部」は、それぞれ甲第1号証に記載の考案の「側板部」、「取付手段」、「支持具」、「桟」、「収納装置」、「上側板状部」、「下側板状部」、「断面概ねコの字状」、「第2の係合部」及び「第1の係合部」に相当するから、本件請求項1に係る考案と甲第1号証に記載の考案とは、以下の点で相違している他は、一致していると認められる。
(相違点)
本件請求項1に係る考案は、上側板状部及び下側板状部の開口部側の先端部には、支持具の後方部に係合して、その支持具が前記開口部より抜け出るのを困難とする、掛止部が設けられているのに対して、甲第1号証に記載の考案は、上側板状部及び下側板状部の開口部側の先端部から中空部の内方向へと延設された係止弾片は、第2の係合部となり、該第2の係合部と支持具の終端部が第1の係合部となる係止片部の鏃部に形成された係止段部とが係合し、係止弾片は支持具の後方部に係合してはいない点。
上記相違点のように、甲第1号証に記載の考案には、本件請求項1に係る考案の支持具に第1の係合部、桟に第2の係合部を備える構造は、具備しているものの、甲第1号証に記載の考案の第2の係合部に相当する係止弾片を、本件請求項1に係る考案の上記相違点に係る掛止部に対応するものとみても、該係止弾片は、支持具に相当する係止具の後方部に係合しているものとは認められない。
そして、本件請求項1に係る考案は、上記相違点における事項を構成要件とすることにより、実用新案登録明細書記載の「第1及び第2の係合部が互いに係合した際に、前記支持具の後方部に係合して、その支持具が前記開口部より抜け出るのを困難とする、掛止部が設けられているので、その桟は、支持具に確実に固定される。」(【考案の効果】の段落【0036】参照)という特有な効果を奏するものと認められる。
したがって、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることができない。
[本件請求項2に係る考案について]
本件請求項2に係る考案は、請求項1記載の考案を引用するものであるから、上記「[本件請求項1に係る考案について]」でした対比・判断のとおり、甲第1号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。
[本件請求項3に係る考案について]
本件請求項3に係る考案と甲第1号証に記載の考案とを対比すると、
本件請求項3に係る考案の「キャビネット」、「側板と中仕切板」、「係止具」、「横框」、「上水平板部」、「下水平板部」、「断面略C字状」、「係止片部」及び「係止弾片」は、それぞれ甲第1号証に記載の考案の「収納装置」、「側板部」、「支持具」、「桟」、「上側板状部」、「下側板状部」、「断面概ねコの字状」、「第1の係合部」及び「第2の係合部」に相当するから、本件請求項3に係る考案と甲第1号証に記載の考案とは、以下の点で相違している他は、一致していると認められる。
(相違点)
本件請求項3に係る考案は、上側板状部及び下側板状部の開口部側の先端部には、支持具の後方部に係合して、その支持具が前記開口部より抜け出るのを困難とする、掛止部が設けられているのに対して、甲第1号証に記載の考案は、上側板状部及び下側板状部の開口部側の先端部から中空部の内方向へと延設された係止弾片は、第2の係合部となり、該第2の係合部と支持具の終端部が第1の係合部となる係止片部の鏃部に形成された係止段部とが係合し、係止弾片は支持具の後方部に係合してはいない点。
上記相違点のように、甲第1号証に記載の考案には、本件請求項3に係る考案の支持具に第1の係合部、桟に第2の係合部を備える構造は、具備しているものの、甲第1号証に記載の考案の第2の係合部に相当する係止弾片を、本件請求項3に係る考案の上記相違点に係る掛止部に対応するものとみても、該係止弾片は、支持具に相当する係止具の後方部に係合しているものとは認められない。
そして、本件請求項3に係る考案は、上記相違点における事項を構成要件とすることにより、実用新案登録明細書記載の「第1及び第2の係合部が互いに係合した際に、前記支持具の後方部に係合して、その支持具が前記開口部より抜け出るのを困難とする、掛止部が設けられているので、その桟は、支持具に確実に固定される。」(【考案の効果】の段落【0038】参照)という特有な効果を奏するものと認められる。
したがって、本件請求項3に係る考案は、甲第1号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることができない。
[本件請求項4に係る考案について]
本件請求項4に係る考案は、請求項3記載の考案を引用するものであるから、上記「[本件請求項3に係る考案について]」でした対比・判断のとおり、甲第1号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由並びに証拠によっては、本件請求項1?4に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-04-04 
出願番号 実願平5-68950 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (A47B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 林 茂樹平城 俊雅  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 鈴木 憲子
藤枝 洋
登録日 1999-03-12 
登録番号 実用新案登録第2595183号(U2595183) 
権利者 トーヨー工業株式会社
岐阜県関市下有知6315番地の1
考案の名称 収納装置、並びにその収納装置に取り付けられる桟  
代理人 山口 哲夫  
代理人 廣瀬 光司  

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