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審決分類 審判 全部申し立て   F24H
管理番号 1025097
異議申立番号 異議1999-72889  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-26 
確定日 2000-06-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2589238号「給湯機」の請求項1及び請求項2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2589238号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 (1)手続の経緯
実用新案登録第2589238号の請求項1及び請求項2に係る考案は、平成5年1月18日に実用新案登録出願され、平成10年11月13日に実用新案登録の設定登録がされ、その後実用新案登録異議申立人パロマ工業株式会社により実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年12月13日に訂正請求がなされたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
訂正請求書における訂正の内容は、本件登録実用新案の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正事項は以下a?cの通りのものである。
a 実用新案登録請求の範囲の記載、
「【請求項1】 熱交換器(3)の流出側に接続した給湯配管(4)の中途から、浴槽(9)へのお湯はり配管(8)を分岐し、同お湯はり配管(8)に給湯配管(4)との圧力バランスをとるための圧力調整弁(12)を取付けたことを特徴とする給湯機。
【請求項2】 圧力調整弁(12)に逆流防止機能を保持させたことを特徴とする請求項1記載の給湯機。」
を、
「【請求項1】
熱交換器(3)の流出側に接続した給湯配管(4)の中途から、浴槽(9)へのお湯はり配管(8)を分岐し、同お湯はり配管(8)に圧力調整弁(12)を取付けた給湯機であって、
前記圧力調整弁(12)を、
流路(d)を形成した外筒(20)内に配設され、テーパ面(23)を有する弁体ストッパー(22)と、
スプリング(24)により前記弁体ストッパー(22)側に付勢され、前記テーパ面(23)と当接して前記流路(d)を閉塞する弁体(21)と、
周囲に前記スプリング(24)を装着し、前記弁体(21)に一端を連接し、他端をガイド孔(31)の内部に進退自在に収納した弁杆(30)と、
を具備する構成として、
前記給湯配管(4)との圧力バランスをとるとともに、逆流防止機能を保持させたことを特徴とする給湯機。」
と訂正する。
b 明細書段落【0008】の
「【課題を解決するための手段】本考案は、熱交換器の流出側に接続した給湯配管の中途から、浴槽へのお湯はり配管を分岐し、同お湯はり配管に給湯配管との圧力バランスをとるための圧力調整弁を取付けたことを特徴とする給湯機を提供するものである。」

「【課題を解決するための手段】
本考案は、熱交換器の流出側に接続した給湯配管の中途から、浴槽へのお湯はり配管を分岐し、同お湯はり配管に圧力調整弁を取付けた給湯機であって、前記圧力調整弁を、流路を形成した外筒内に配設され、テーパ面を有する弁体ストッパーと、スプリングにより前記弁体ストッパー側に付勢され、前記テーパ面と当接して前記流路を閉塞する弁体と、周囲に前記スプリングを装着し、前記弁体に一端を連接し、他端をガイド孔の内部に進退自在に収納した弁杆と、を具備する構成として、前記給湯配管との圧力バランスをとるとともに、逆流防止機能を保持させたことを特徴とする給湯機を提供するものである。」
と訂正する。
c 明細書段落【0009】の
「また、本考案は、圧力調整弁を逆止弁によって形成したことにも特徴を有する。」
を削除する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲の請求項1を削除するとともに、請求項1を引用する請求項2を独立請求項とし、更に、元々願書に添付した明細書、図面に記載された圧力調整弁の構成を具体的に特定するものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮に相当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。上記訂正事項b、cは、上記訂正事項aによる実用新案登録請求の範囲の減縮に伴い生じる、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との不整合を回避するために記載の明瞭化を図って訂正したもので、新規事項を付加するものでなく、明瞭でない記載の釈明に該当する。
ウ.独立実用新案登録要件について
本件訂正後の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は次のとおりのものである認める。
「熱交換器(3)の流出側に接続した給湯配管(4)の中途から、浴槽(9)へのお湯はり配管(8)を分岐し、同お湯はり配管(8)に圧力調整弁(12)を取付けた給湯機であって、
前記圧力調整弁(12)を、
流路(d)を形成した外筒(20)内に配設され、テーパ面(23)を有する弁体ストッパー(22)と、
スプリング(24)により前記弁体ストッパー(22)側に付勢され、前記テーパ面(23)と当接して前記流路(d)を閉塞する弁体(21)と、
周囲に前記スプリング(24)を装着し、前記弁体(21)に一端を連接し、他端をガイド孔(31)の内部に進退自在に収納した弁杆(30)と、
を具備する構成として、
前記給湯配管(4)との圧力バランスをとるとともに、逆流防止機能を保持させたことを特徴とする給湯機。」
これに対して、当審が平成11年9月30日付けで通知した取り消し理由で引用した特開昭63-38853号公報(以下「第1引用例」という。)には、「給湯器の出湯側を分岐して、一方を給湯器から自動給湯弁?風呂釜?浴槽へと至る自動給湯回路、および、他方は給湯器からシャワー栓等へ通じる給湯回路とし、浴槽の水位を検知する水位センサーの作動に連動して前記自動給湯弁を開閉して浴槽の水位を設定レベルで保つ機構と、リモートコントローラに給湯優先スイッチを備え、前記優先スイッチの操作により、給湯回路と自動給湯回路の同時使用時には、給湯回路の湯量が優先して確保できるようにしたことを特徴とする給湯器付自動風呂装置。」(1頁左欄5行?15行)、「このような給湯器付自動風呂装置においては、自動給湯運転中にシャワー2を使用するため、シャワー栓10を開いてもシャワー2の湯量が十分に得られずにシャワーを使用することができない。(第5図のB-C間の使用、運転モードで第6図のシャワー流量を示すF線図の流量と自動給湯流量を示すE線図の流量の分配となる。)入浴状態により、シャワー使用中に自動給湯運転になるとシャワー湯量が極端に少なくなり、シャワーとして使えなくなる等の問題がある。一般にシャワー口の圧力損失が大きく、又、使用する位置が高いため、位置水頭がプラスされて流量が少なくなる。」(2頁左上欄10行?右欄3行)と記載されている。
また、実願昭54-169186号(実開昭56-85763号)のマイクロフィルム(実用新案登録異議申立人の提出した甲第2号証、以下、「第2引用例」という。)には、「多栓式給湯設備において給湯栓間に高低差があるときその給湯配管の分岐点に分岐点通過給湯圧より低く前記高低差に相当する静水圧より高い一定圧で開放する水圧自動弁を介装せしめたことを特徴とする分岐水圧自動弁」(実用新案登録請求の範囲)、「前記構成において、水圧自動弁(V)は分岐点を通過する給湯圧より低く1、2階のヘッド差圧より高い一定圧Pで初めて開放する構造となっているから、例えば、2階へ給湯中に1階の給湯栓を開いて分岐点通過圧が下がり、前記Pより低くなると弁は閉じるので1階への給湯は止まるが、2階への給湯は引き続き行われ止まることがない。すなわち、1階の出湯量をある程度絞って分岐点通過圧がPを下廻ることのないようにすれば1、2階の同時給湯が可能である。なお、給湯器の場合、一般に分岐点通過給湯圧は水道の吸水圧より減圧されているとはいっても、通常1階と2階のヘッド差圧より相当高いものであるから2階への給湯に何ら支障はないものである。」(明細書3頁11行?4頁9行)と記載されている。
本件考案と前記第1引用例、及び第2引用例に記載されたものを対比すると、本件考案は圧力調整弁を、流路を形成した外筒内に配設され、テーパ面を有する弁体ストッパーと、
スプリングにより前記弁体ストッパー側に付勢され、前記テーパ面と当接して前記流路を閉塞する弁体と、周囲に前記スプリングを装着し、前記弁体に一端を連接し、他端をガイド孔の内部に進退自在に収納した弁杆と、を具備する構成とした点を有しているが、前記第1、及び第2引用例には、本件考案の上記構成については何も記載されていないし、また、示唆もされていない。
そして、本件考案は、上記構成により明細書に記載されたとおりの上記第1,及び第2引用例に記載された考案には期待できない作用効果を奏するものと認められる。
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(3)実用新案登録異議の申立について

ア.本件考案
本件登録実用新案は、訂正後の明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「熱交換器(3)の流出側に接続した給湯配管(4)の中途から、浴槽(9)へのお湯はり配管(8)を分岐し、同お湯はり配管(8)に圧力調整弁(12)を取付けた給湯機であって、
前記圧力調整弁(12)を、
流路(d)を形成した外筒(20)内に配設され、テーパ面(23)を有する弁体ストッパー(22)と、
スプリング(24)により前記弁体ストッパー(22)側に付勢され、前記テーパ面(23)と当接して前記流路(d)を閉塞する弁体(21)と、
周囲に前記スプリング(24)を装着し、前記弁体(21)に一端を連接し、他端をガイド孔(31)の内部に進退自在に収納した弁杆(30)と、
を具備する構成として、
前記給湯配管(4)との圧力バランスをとるとともに、逆流防止機能を保持させたことを特徴とする給湯機。」
イ.申立の理由の概要
実用新案登録異議申立人は、
甲第1号証(特開平1-300154号公報)
甲第2号証(実願昭54-169186号(実開昭56-85763号)のマイクロフィルム)
甲第3号証(実開昭56-85763号公報(甲第2号証の公開公報))
を提出し、本件請求項1,及び請求項2に係る考案は甲第1号証、及び甲第2号証記載のものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件実用新案は取り消されるべきであると主張している。
ウ.判断
そこで、本件考案と上記甲各号証記載のものを対比、検討すると
甲第1号証には
「1.バ-ナ(1)により加熟される水加熱用熱交換器(2)からの給湯路(3)を優先給湯路(3A)と非優先給湯路(3B)とに分岐し、それら優先給湯路(3A)及び非優先給湯路(3B)の夫々に開閉弁(4),(12)を設けた給湯装置であって、前記熱交換器(2)における通水量を検出する水量検出手段(16)を設け、前記非優先給湯路(3B)に流量調整弁(11)を介装し、少なくとも前記優先給湯路(3A)と前記非優先給湯路(3B)とからの同時給湯状態において、前記水量検出手段(16)による検出通水量Wが下記(イ)式
W≒G_(M)/(Ts ‐ Ti)…………(イ)
但しG_(M):バ-ナ燃焼量の設定上限値
Ts:熱交換器出口における必要給湯温度
Ti:熱交接器入□における給水温度
を満足する値となるように前記流量調整弁(11)を自動操作する制御手段(15)を設けた給湯装置。
2.前記優先給湯路(3A)に補助流量調整弁を介装し、前記制御手段(15)を、前記非優先給湯路(3B)からの単独給湯状態、並びに、前記優先給湯路(3A)と前記非優先給湯路(3B)とからの同時給湯状態の夫々においては、前記補助流量調整弁を全開とした状態で前記(イ)式に基づく前記流量調整弁(11)の自動操作を実行し、かつ、前記優先給湯路(3A)からの単独給湯状態においては、前記水量検出手段(16)による検出通水量Wが前記(イ)式を満足する値となるように前記補肋流量調整弁を自動操作するものとした請求項1記載の給湯装置。」(特許請求の範囲)
が記載されている。
又、甲第2号証には、上記(2)ウに記したような分岐水圧自動弁が記載されている。
しかしながら、甲第1号証、及び甲第2号証のいずれにも本件考案が圧力調整弁を、流路を形成した外筒内に配設され、テーパ面を有する弁体ストッパーと、スプリングにより前記弁体ストッパー側に付勢され、前記テーパ面と当接して前記流路を閉塞する弁体と、周囲に前記スプリングを装着し、前記弁体に一端を連接し、他端をガイド孔の内部に進退自在に収納した弁杆と、を具備する構成とした点については何も記載されていないし、また、示唆もされていない。しかも、本件考案は訂正後の明細書に記載された作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件の請求項1に係る考案が登録異議申立人の提出した甲各号証に記載されているとも、同号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものであるとすることもできない。

エ.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議の申立の理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
給湯機
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(3)の流出側に接続した給湯配管(4)の中途から、浴槽(9)へのお湯はり配管(8)を分岐し、同お湯はり配管(8)に圧力調節弁(12)を取付けた給湯機であって、
前記圧力調整弁(12)を、
流路(d)を形成した外筒(20)内に配設され、テーパ面(23)を有する弁体ストッパー(22)と、
スプリング(24)により前記弁体ストッパー(22)側に付勢され、前記テーパ面(23)と当接して前記流路(d)を閉塞する弁体(21)と、
周囲に前記スプリング(24)を装着し、前記弁体(21)に一端を連接し、他端をガイド孔(31)の内部に進退自在に収納した弁杆(30)と、
を具備する構成として、
前記給湯配管(4)との圧力バランスをとるとともに、逆流防止機能を保持させたことを特徴とする給湯機。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、シャワーとお湯はりを同時に使用した場合においても、シャワー側に充分な湯量を確保できる給湯機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱交換器の流出側に給湯配管を接続し、同給湯配管を通じてシャワー等に給湯を行う給湯機において、前記給湯配管の中途からお湯はり配管を分岐し、同お湯はり配管を通じて浴槽へもお湯を分配供給可能とした給湯機が知られている。
【0003】
すなわち、図8に示すように、給湯機101内の熱交換器102によって生成した湯は、給湯配管103を通じてシャワー104に給湯されるとともに、前記給湯配管103の中途から分岐したお湯はり配管105を通って浴槽106へも給湯される。図中、107は電磁弁、108は流量計、110はバーナーを示す。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、上記構成の給湯機は、以下の課題を有していた。
【0005】
給湯配管103の下流端に設けたシャワーの吐水口109は、浴槽等において高位置に配置されているので、相当の水頭がある。
【0006】
このため、お湯はり配管105と給湯配管103との間には、圧損において著しい差がある。従って、お湯はりと給湯とを同時に使用した場合は、お湯は圧損の少ないお湯はり配管105の方に大半が流れ、給湯配管103へは充分な湯量が供給されず、使用者は快適なシャワーを楽しむことが出来なかった。
【0007】
本考案は、前記課題を解決する給湯機を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本考案は、熱交換器の流出側に接続した給湯配管の中途から、浴槽へのお湯はり配管を分岐し、同お湯はり配管に圧力調整弁を取付けた給湯器であって、前記圧力調整弁を、流路を形成した外筒内に配設され、テーパ面を有する弁体ストッパーと、スプリングによリ前記弁体ストッパー側に付勢され、前記テーパ面と当接して前記流路を閉塞する弁体と、周囲に前記スプリングを装着し、前記弁体に一端を連接し、他端をガイド孔の内部に進退自在に収納した弁杆と、を具備する構成として、前記給湯配管との圧力バランスをとるとともに、逆流防止機能を保持させたことを特徴とする給湯機を提供するものである。
【0010】
【実施例】
以下、添付図に示す実施例を参照して、本考案を具体的に説明する。
【0011】
図1に本考案に係る給湯機Aの全体構成が概念的に示されており、1は、並設された多数のフィンであり、同フィンに吸熱管2が取付けられて熱交換器3を構成している。
【0012】
また、熱交換器3の下部には、同熱交換器3を加熱するバーナ13が配設されており、前記吸熱管2内の水を加熱する。
【0013】
さらに、前記熱交換器3の吸熱管2の流出側には、給湯配管4が接続されており、同給湯配管4はシャワー5等の出湯口と連通連結されている。
【0014】
また、熱交換器3の吸熱管2の流入側には、給水配管6が接続され、給水口7より同給水配管6を介して熱交換機3へ水が供給されている。
【0015】
一方、前記給湯配管4の中途からお湯はり配管8が分岐されており、同お湯はり配管8の下流側は浴槽9と連通連結されている。また、同お湯はり配管8には、流量計10、電磁開閉弁11が取付けられている。
【0016】
かかる構成を有する給湯機Aは、バーナー13の燃焼によってシャワー等へ給湯配管4を通して出湯することができるのみならず、浴槽9のお湯はりも行うことができる。
【0017】
本発明は、上記した構成を有する給湯機Aにおいて、お湯はりと給湯(シャワー)の同時使用時における、給湯配分を調節することができる構成に特徴を有する。
【0018】
すなわち、図1に示すように、お湯はり配管8に、お湯はり配管8と給湯配管4との間の圧損バランスをとるための圧力調整弁12を取付けている。
【0019】
この圧力調整弁12は、実質的に、お湯はり配管8内の管路内抵抗を増大するためのものであり、例えばスプリング付勢の逆止弁や、ハニカムスリーブ等を介設することによって形成できる。
【0020】
以下に、圧力調整弁12の作用機構を、図2から図4を参照して具体的に説明する。
【0021】
まず、図2は上記した圧力調整弁12を使用しない状態での同時使用時における両配管4,8内を流れる湯の流量特性を示す。図2に示すように、お湯はりの流量特性aとシャワーの流量特性bとは、シャワーの吐出口6が高位置であるので、当初から給湯配管4にはシャワー5のヘッド圧に相当する圧損ΔPがかかっている。
【0022】
そのため、シャワーとお湯はりとの同時使用時に、給湯圧が圧損ΔPになるまでは、お湯はり配管8だけからしか出湯せず、圧損ΔPを越えて初めて給湯配管4(シャワー)に流れる。
【0023】
しかも、両流量特性a,bから明らかなように、その後も出湯流量に大きな差がある。すなわち、お湯は圧損の少ないお湯はり配管8へ大部分が流れ、シャワー側に充分な湯量を供給できない。
【0024】
そこで、本実施例では、圧力調整弁12によって、シャワーのヘッド圧に相当する圧損ΔPを加えると、圧力調整弁12は図3に示す流量特性cを示すことになる。
【0025】
従って、圧力調整弁12を設けることにより、図4に示すように、お湯はり特性a’と給湯特性b’でほとんど同形の流量特性を示すようになる。
【0026】
そして、結果的にシャワーとお湯はりとに、ほとんど同量の湯を配分可能となるものである。
【0027】
また、圧力調整弁のスプリング強度の選定により、シャワーとお湯はりの分配比を任意にして、例えば、お湯はりとシャワーの分配を1対1とするだけでなく、シャワー側を優先(流量大)させ、同時使用時でも快適なシャワーを楽しむことができるようにも設定できる。
【0028】
次に、同圧力調整弁12の具体的な構造について説明すると、同圧力調整弁12は、各種形態が考えらえる。
【0029】
図5に示す圧力調整弁12は、実質的に圧力調整機能を有する逆止弁構造から形成されている。すなわち、同圧力調整弁12は、付勢力調節ねじ27を設け、弁体21が開く圧力を調整することによって、流体に付与する抵抗を変化させることができるものである。
【0030】
図5において、12は圧力調整弁であり、同調整弁12の外筒20の内部には矢印方向に流れる流路dを形成している。
【0031】
21は弁体で、流体の圧力を受ける部分であり、同弁体21の前方の外筒20の内周には、テーパ面23を有する環状の弁体ストッパー22を設けている。
【0032】
そして、同弁体21は、スプリング24により常時弁体ストッパー22側へ付勢されており、弁体ストッパー22のテーパ面22aと弁体21前部のテーパ面23とが当接して前記流路dを閉塞するように構成されている。
【0033】
一方、弁体21の後方位置には、外筒20の内周面に固定スリーブ25を設け、同固定スリーブ25の内周面は、雌ねじ26を形成している。
【0034】
そして、同雌ねじ26には、付勢力調節ねじ27の雄ねじ27aが螺着され、同ねじ27aの前方側には、スプリング当接板28が連接されている。
【0035】
また、同雄ねじ27aの後方側には、付勢力調整つまみ29が設けられている。
【0036】
前記弁体21には弁杆30の一端が連接され、同弁杆30の周囲に前記スプリング24を装着すると共に、同弁杆30の他端は、付勢力調整ねじ27の軸芯部に設けられたガイド孔31の内部に進退自在に収納されている。
【0037】
32は流出口であり、水は流路dから連絡孔33を通って流出口32へ連絡するようになっている。
【0038】
かかる構成の圧力調整弁12において、前記付勢力調節ねじ27の付勢力調整つまみ29を調節することによって、当接板28の位置を前後に移動させることができ、これにより、流体抵抗値を調整することができる。
【0039】
また、同圧力調整弁12は、逆止弁としても機能して、お湯はり配管8を通って浴槽の水が逆流するのを防ぎ、衛生面でも効果を有するものである。
【0040】
以上の構成の圧力調整弁12をお湯はり配管8の一部に取付けて、同弁12を通って浴槽へお湯が供給されるように構成する。
【0041】
上記圧力調整弁12の他の実施例としては、付勢力調節ねじ27を設けず、あらかじめ弁体21を開く最適圧力を計算して、選定したばね定数のばねにより常時一定の抵抗を流体に付与するようにしてもよい。
【0042】
以上のように構成される本考案の給湯機においては、圧力調整弁12により、お湯はり配管8のお湯に一定の圧損を付加して、給湯配管4とお湯はり配管8とに同等にお湯を分配可能としたものである。
【0043】
次に、本考案の他の実施例として、前記圧力調整弁を1缶2回路式給湯機に使用した例を説明する。
【0044】
図6に概念的に示したように、51は、並設した多数のフィン52を共用し、このフィン52に風呂用吸熱管53と給湯用吸熱管54とを取付けた熱交換器である。
【0045】
また、熱交換器51の下部には、同熱交換器51を加熱するバーナ55が配設されており、同バーナ55への燃料供給路56には、電磁弁57と比例弁58とが取付けられている。
【0046】
さらに、風呂用吸熱管53は、中途に循環ポンプ59を取り付けた循環流路60を介して浴槽61に連通連結している。60aは熱交換器51より浴槽61へ加熱された湯を供給する流入循環流路、60bは浴槽61の湯を熱交換機51に供給する流出循環流路である。
【0047】
一方、給湯用吸熱管54の水流入口には給水配管62が接続されており、出湯口には給湯配管63が接続されている。給湯用吸熱管54の中途部には、沸騰防止検出器66が設けられている。
【0048】
また、給水配管62には、水量検出器64、給水温度検出器65が取り付けられており、一方給湯配管63には、出湯温度検出器67、バキュームブレーカ68が取り付けられている。69はミキシングバルブ、70は水量バルブ、71は給湯温度検出器を示す。
【0049】
ここで、給湯配管63は、ミキシングバルブ69、水量バルブ70を経た位置で分岐して第一分岐流路72を形成し、同第一分岐流路72は、ふろ水量センサ73、温水電磁弁74、圧力調整弁75を経てさらに分岐して、第二分岐流路76および第三分岐流路77を形成し、それぞれ前記循環流路60の流出循環流路60bおよび流入循環流路60aと連結されている。また、第二分岐流路76および第三分岐流路77には、逆止弁78,79が取付けられている。
【0050】
なお、図6において、80は制御装置を示し、水量検出器64や給水温度検出器65の検出信号に基づいて、電磁弁57や、比例弁58や、循環ポンプ59の駆動を制御するものである。81はフレームロッド、82は点火プラグである。
【0051】
上記したように、本実施例においても、分岐流路を設けて給湯配管63と循環流路60とを連結し、分岐流路に圧力調整弁75を取付けたことによって、シャワーとお湯はりに分配される湯量を調整可能としている。そして循環流路60に分配された湯は、第三分岐流路77および流入循環流路60aを通って浴槽61へ供給されると共に、第二分岐流路76、循環ポンプ59および流出循環流路60bを通って浴槽61へ供給される。
【0052】
圧力調整弁75および逆止弁78,79の構成をさらに詳しく説明すれば、図7に示すように、圧力調整弁75は、先の実施例で説明した圧力調整弁12と同様に、筒体83の内部に弁体84と、同弁体84を構成する中心軸85と、中心軸85周囲のばね86を具備し、同ばね86により連結孔87方向に付勢されている。
【0053】
また、本実施例の圧力調整弁75は、中心軸85を収納する中心孔88aを有する係止部88を、筒体83に連結して設けている。よって、同弁体84を開く圧力は固定されており、事前に選定したばね定数のばね86を用いて、一定の適切な圧力以上の圧力で弁体84が開くように設定されている。
【0054】
また、第二分岐流路76および第三分岐流路77の基端部に設けた逆止弁78,79は、基本的に前記圧力調整弁75と同一の構成としている。そして、使用しているばね86のばね定数を適当に選定することによって、第一分岐流路72から第二分岐流路76および第三分岐流路77へは水が流れ、反対方向へは流れないような逆流防止機能を保持させて、逆止弁として機能させているものである。
【0055】
以上の構成の圧力調整弁75および逆止弁78,79は、図7に示すように、第一分岐流路72、第二分岐流路76、および第三分岐流路77を連結させる連結筒体90の内部にそれぞれ収納して、一体構造の連結ユニットBとしている。これにより、圧力調整弁および逆止弁をコンパクトにまとめ、分岐流路への取付けを容易にしているものである。
【0056】
【考案の効果】
本考案は、熱交換器の流出側に接続した給湯配管の中途から、浴槽へのお湯はり配管を分岐し、同お湯はり配管に給湯配管との圧力バランスをとるための圧力調整弁を取付けた給湯機であり、同圧力調整弁によって、給湯配管とお湯はり配管に均等にお湯を分配可能とし、給湯とお湯はりの同時使用時でもシャワー側に必要量の湯量を分配することができるようになった。
【0057】
これにより、給湯使用時にも、お湯はりを中断させることなく同時使用できるため、給湯機の能力を充分に活用できる。
【0058】
さらに、圧力調整弁を逆止弁によって形成した場合は、衛生面で向上されると共に、給湯機のコンパクト化も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の給湯機の構造を示す模式図。
【図2】従来の給湯機における流量特性を示すグラフであり、縦軸は流量を、横軸は水圧をあらわす。また、aはお湯はりの流量特性、bはシャワーの流量特性である。
【図3】本考案の給湯機の流量特性を示すグラフであり、縦軸は流量を、横軸は水圧をあらわす。cは圧力調整弁の流量特性である。
【図4】本考案の給湯機における流量特性を示すグラフであり、縦軸は流量を、横軸は水圧をあらわす。また、a’はお湯はりの流量特性、b’はシャワーの流量特性である。
【図5】圧力調整弁の構造を示す説明図。
【図6】本考案の給湯機の構造を示す模式図。
【図7】圧力調整弁および逆止弁の構造を示す説明図。
【図8】従来の給湯機の構造を示す模式図。
【符合の説明】
3 熱交換器
4 給湯配管
8 お湯はり配管
9 浴槽
12 圧力調整弁
訂正の要旨 ア.訂正の内容
訂正請求書における訂正の内容は、本件登録実用新案の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正事項は以下a?cの通りのものである。
a 実用新案登録請求の範囲の記載、
「【請求項1】 熱交換器(3)の流出側に接続した給湯配管(4)の中途から、浴槽(9)へのお湯はり配管(8)を分岐し、同お湯はり配管(8)に給湯配管(4)との圧力バランスをとるための圧力調整弁(12)を取付けたことを特徴とする給湯機。
【請求項2】 圧力調整弁(12)に逆流防止機能を保持させたことを特徴とする請求項1記載の給湯機。」
を、
「【請求項1】
熱交換器(3)の流出側に接続した給湯配管(4)の中途から、浴槽(9)へのお湯はり配管(8)を分岐し、同お湯はり配管(8)に圧力調整弁(12)を取付けた給湯機であって、
前記圧力調整弁(12)を、
流路(d)を形成した外筒(20)内に配設され、テーパ面(23)を有する弁体ストッパー(22)と、
スプリング(24)により前記弁体ストッパー(22)側に付勢され、前記テーパ面(23)と当接して前記流路(d)を閉塞する弁体(21)と、
周囲に前記スプリング(24)を装着し、前記弁体(21)に一端を連接し、他端をガイド孔(31)の内部に進退自在に収納した弁杆(30)と、
を具備する構成として、
前記給湯配管(4)との圧力バランスをとるとともに、逆流防止機能を保持させたことを特徴とする給湯機。」
と訂正する。
b 明細書段落【0008】の
「【課題を解決するための手段】本考案は、熱交換器の流出側に接続した給湯配管の中途から、浴槽へのお湯はり配管を分岐し、同お湯はり配管に給湯配管との圧力バランスをとるための圧力調整弁を取付けたことを特徴とする給湯機を提供するものである。」

「【課題を解決するための手段】
本考案は、熱交換器の流出側に接続した給湯配管の中途から、浴槽へのお湯はり配管を分岐し、同お湯はり配管に圧力調整弁を取付けた給湯機であって、前記圧力調整弁を、流路を形成した外筒内に配設され、テーパ面を有する弁体ストッパーと、スプリングにより前記弁体ストッパー側に付勢され、前記テーパ面と当接して前記流路を閉塞する弁体と、周囲に前記スプリングを装着し、前記弁体に一端を連接し、他端をガイド孔の内部に進退自在に収納した弁杆と、を具備する構成として、前記給湯配管との圧力バランスをとるとともに、逆流防止機能を保持させたことを特徴とする給湯機を提供するものである。」
と訂正する。
c 明細書段落【0009】の
「また、本考案は、圧力調整弁を逆止弁によって形成したことにも特徴を有する。」
を削除する。
異議決定日 2000-05-16 
出願番号 実願平5-871 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (F24H)
最終処分 維持    
前審関与審査官 小菅 一弘  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 岡田 和加子
原 慧
登録日 1998-11-13 
登録番号 実用新案登録第2589238号(U2589238) 
権利者 東陶機器株式会社
福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1号 日本ユプロ株式会社
兵庫県神戸市東灘区魚崎浜町43番1号
考案の名称 給湯機  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 松尾 憲一郎  

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