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審決分類 審判    B43K
管理番号 1025104
異議申立番号 異議1999-70114  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-01-11 
確定日 2000-05-08 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2576876号「シャープペンシル」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。    
結論 実用新案登録第2576876号の実用新案登録を取り消す。
理由 [1] 手続きの経緯
登録実用新案第2576876号の請求項1に係る考案は、昭和62年12月29日に出願された実願昭62-201469号の一部を、実用新案法第9条第1項において準用する特許法第44条第1項の規定により、平成3年6月27日に実用新案登録出願されたものであって、平成10年5月15日に実用新案登録の設定登録がなされ、その後、実用新案登録異議申立人 株式会社壽により実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年7月26日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月19日に実用新案登録異議意見書が提出されたものである。
[2] 訂正の適否
[2-1] 訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「内部に鉛芯繰り出し機構と該鉛芯繰り出し機構の後方に芯タンクとが配置された軸筒であって、該軸筒の後方に螺旋機構により棒状体を繰り出す棒状体繰り出し装置を取り付けたシャープペンシルにおいて、前記棒状体繰り出し装置は、内面に螺旋溝が一体に形成された外軸と、該外軸内に棒状体を把持固定する把持部を有する棒状体受け部材と、該棒状体受け部材に形成された突部を摺動可能に配置する案内溝が形成された棒状体案内部材とから構成し、該棒状体案内部材の後方に鍔部を一体形成すると共に、棒状体案内部材の中間部に係合部を配置し、該係合部と鍔部とによって前記外軸を回転可能に挟持したことと、前記棒状体案内部材の内径と棒状体との外径を略同径に形成したことと、前記軸筒の後端部近傍の内面に面取り部を形成したことと、前記棒状体案内部材の前方部分を前記芯タンクに嵌入することによって、軸筒と棒状体繰り出し装置とを連結せしめたことを特徴とするシャープペンシル。」
[2-2] 先願明細書記載の考案
当審が通知した訂正拒絶理由に引用した、本件出願の日前の他の出願であつて、その出願後に出願公開された実顧昭62-155302号(実開平1-59686号公報)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という)には、
内部に鉛芯繰り出し機構と該鉛芯繰り出し機構の後方に芯タンク8とが配置された外筒3であって、該外筒3の後方に螺旋機構により消ゴム13を繰り出す棒状体繰り出し装置を取り付けたシャープペンシルにおいて、
前記消しゴム繰り出し装置は、内面に螺旋溝5が一体に形成された筒状キャップ19と、該筒状キャップ19内に消ゴム13を把持固定する把持片12を有する消ゴム受台11と、該消ゴム受台11に形成された挟持片12を摺動可能に配置するスリット10が形成された筒状体6とから構成し、該筒状体6の後方に環状ストッパー部26を一体形成すると共に、筒状体6の中間部に係合部7を配置し、該係合部7と環状ストッパー部26とによって前記筒状キャップ19を回転可能に挟持したことと、前記筒状体6の内径と消ゴム13との外径を略同径に形成したことと、前記筒状体6の前方部分6aの先端部近傍の内面に面取り部を形成したことと、前記筒状体6の前方部分を前記芯タンク8に嵌入することによって、外筒3と消ゴム繰り出し装置とを連結したシャープペンシルが記載されている。
[2-3] 対比・判断
そこで、訂正明細書の請求項1に係る考案と先願明細書に記載されている考案とを比較すると、
先願明細書に記載されている考案の、
「外筒3」「消ゴム13」「筒状キャップ19」「消ゴム受台11」「挟持片12」「消ゴム受台11に形成された挟持片12」「スリット10」「筒状体6」「環状ストッパー部26」は、
訂正明細書の請求項1に係る考案の、
「軸筒」「棒状体」「外軸」「棒状体受け部材」「把持部」「棒状体受け部材に形成された突部」「案内溝」「棒状体案内部材」「鍔部」
にそれぞれ相当しているから、両者を対比すると、
訂正明細書の請求項1に係る考案では、軸筒の後端部近傍の内面に面取り部を設けているのに対し、
先願明細書に記載されている考案では、筒状体6の前方部分6aの先端部近傍の内面に面取り部を形成している点で両者は一応相違しており、その余の構成では両者は一致するものである。
上記の両者の相違点について検討すると、
従来、嵌入(挿入)操作を容易にするために、嵌入部分の雌部材の端面の内面を面取りすることは一般に慣用されている技術であり、軸筒(外筒)への棒状体案内部材(筒状体)の嵌入と、棒状体案内部材(筒状体)の芯タンクの嵌入との2箇所の嵌入部が存在するシャープペンシルにおいて、
軸筒(外筒)への棒状体案内部材(筒状体)の嵌入と、棒状体案内部材(筒状体)への芯タンクの嵌入とを行うに際し、
軸筒と棒状体受け部材との嵌入(挿入)の容易性を優先して軸筒端部内面に面取り部を形成するか、
筒状体の前方部分に設けられた芯タンクの嵌入(挿入)の容易性を優先して筒状体の前方部分に設けられた端部内面に面取り部を形成するかの選択は、当業者が必要に応じて適宜行なうべき設計的事項にすぎない。
なお、平成11年10月19日提出の意見書において、
訂正明細書の請求項1に係る考案のものは、多角形部同士の嵌入部に於ける、その多角形部に面取り部を形成しているために、多角形部同士の嵌入ならではの問題点、即ち、ずれた状態で嵌入操作をしてしまったときに生じる、嵌入動作の煩わしさを解消できる旨の主張をしているが、訂正明細書の請求項1に係る考案では、軸筒の後端部近傍の内面部分に面取り部を設ける構成を、考案の構成に欠くことのできない事項としており、前記意見書において相違点として主張する面取り部分の断面形状の構成を、考案の構成に欠くことのできない事項としてはいないから、上記の意見書の主張は採用できない。
以上の理由により、訂正明細書の請求項1に係る考案と先願明細書に記載されている考案との構成の相違は、当業者が適宜行う程度の構成の微差にすぎないから、訂正明細書の請求項1に係る考案は、先願明細書に記載されている考案と実質的に同一であると認められ、しかも、本件請求項1に係る考案の考案者が上記先願明細書に記載された考案の考案者と同一であるとも、本件出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められない。
したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案は、実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
[2-4] むすび
上記訂正は、実用新案法附則(平成6年12月14日法律第116号)第9条第2項の規定により準用される特許法第120条の4第3項においてさらに準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。
[3]実用新案登録異議申立てについて
[3-1] 実用新案登録異議申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人株式会社壽は、甲第1号証を提示し、
本件請求項1に係る考案は、本件出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された実願昭62-155302号(実開平1-59686号公報)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という)に記載された考案と同一であると認められ、しかも、本件請求項1に係る考案の考案者が上記先願明細書に記載された考案の考案者と同一であるとも、この出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本件請求項1に係る実用新案登録は実用新案法第3条の2第1項の規定に違反してなされたものである旨主張している。
[3-2] 本件考案
本件請求項1に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案請求の範囲に記載された次の事項により特定される次ぎのとおりのものである。
「内部に鉛芯繰り出し機構と該鉛芯繰り出し機構の後方に芯タンクとが配置された軸筒であって、該軸筒の後方に螺旋機構により棒状体を繰り出す棒状体繰り出し装置を取り付けたシャープペンシルにおいて、前記棒状体繰り出し装置は、内面に螺旋溝が一体に形成された外軸と、該外軸内に棒状体を把持固定する把持部を有する棒状体受け部材と、該棒状体受け部材に形成された突部を摺動可能に配置する案内溝が形成された棒状体案内部材とから構成し、該棒状体案内部材の後方に鍔部を一体形成すると共に、棒状体案内部材の中間部に係合部を配置し、該係合部と鍔部とによって前記外軸を回転可能に挟持したことと、前記棒状体案内部材の内径と棒状体との外径を略同径に形成したことと、前記棒状体案内部材の前方部分を前記芯タンクに嵌入することによって、軸筒と棒状体繰り出し装置とを連結せしめたことを特徴とするシャープペンシル。」
[3-3]本件請求項1に係る考案と先願明細書に記載されている考案との対比・判断
先願明細書には、前記[2-2]に記載したとおりの考案が記載されている。
そして、本件請求項1に係る考案と先願明細書に記載された考案とを対比すると、本件請求項1に係る考案は先願明細書に記載されている考案と同一であると認められ、
しかも、本件請求項1に係る考案の考案者が上記先願明細書に記載された考案の考案者と同一であるとも、この出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められない。
したがって、本件請求項1に係る考案は、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができない。
[4] むすび
以上の理由により、本件請求項1に係る考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認められるから、
特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条の規定に基づく、特許法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、上記のとおり決定する。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-03-08 
出願番号 実願平3-57696 
審決分類 U 1 65・ 161- ZB (B43K)
最終処分 取消    
前審関与審査官 白樫 泰子砂川 充  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 外山 邦昭
吉村 尚
登録日 1998-05-01 
登録番号 実用新案登録第2576876号(U2576876) 
権利者 ぺんてる株式会社
東京都中央区日本橋小網町7番2号
考案の名称 シャープペンシル  
代理人 橋場 満枝  
代理人 石戸 元  
代理人 石戸 久子  
代理人 赤澤 日出夫  

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