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審決分類 審判 全部申し立て   B65D
管理番号 1028335
異議申立番号 異議1999-72893  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-26 
確定日 2000-07-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2589341号「合成樹脂キャップ」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2589341号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。
理由 <1>手続の経緯
本件実用新案登録第2589341号は、平成5年2月4日に実用新案登録出願され、平成10年11月20日にその実用新案登録の設定の登録がなされた。
その後、佐伯忠より実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に登録異議意見書の提出とともに訂正請求がなされ、さらに、訂正請求拒絶理由通知がなされたところ、平成12年5月15日付けで意見書が提出されたものである。

<2>訂正の適否についての判断
<2-1>訂正の内容
実用新案登録権者が求めている訂正の内容は、以下のA,Bのとおりである。
<訂正A>
実用新案登録請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】
容器口嵌合外筒、容器口嵌合内筒、頂壁、及び裂取部を破断することにより開口する注ぎ口を有する合成樹脂キャップにおいて、前記容器口嵌合内筒は容器口嵌合外筒との間に容器口部が密嵌合する隙間を形成するように頂壁の内端から垂下して環状に形成され、その下端が内方にU字状溝を形成するように折り曲がって前記頂壁より上方まで立ち上がって注出筒壁を形成し、該注出筒壁の中間部に、スコアによって前記裂取部を形成した隔壁を設けたことを特徴とする合成樹脂キャップ。」
を、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載のとおり、すなわち、次のように訂正する。
「【請求項1】
容器口嵌合外筒、容器口嵌合内筒、頂壁、及び裂取部を破断することにより開口する注ぎ口を有する、内容物が高温充填された容器用の合成樹脂キャップにおいて、前記容器口嵌合内筒は容器口嵌合外筒との間に容器口部が密嵌合する隙間を形成するように頂壁の内端から垂下して環状に形成され、その下端が内方にU字状溝を形成するように折り曲がって前記頂壁より上方まで立ち上がって注出筒壁を形成し、該注出筒壁の中間部に、スコアによって前記裂取部を形成した隔壁を設けたことを特徴とする合成樹脂キャップ。」
(以下、「訂正後の請求項1の考案」という)
(なお、請求項2についての訂正請求はない)

<訂正B>
考案の詳細な説明の記載を、実用新案登録請求の範囲の記載との整合を図るために、
「【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を本考案の合成樹脂キャップは、容器口嵌合外筒、容器口嵌合内筒、頂壁、及び裂取部を破断することにより開口する注ぎ口を有する合成樹脂キャップにおいて、前記容器口嵌合内筒は容器口嵌合外筒との間に容器口部が密嵌合する隙間を形成するように頂壁の内端から垂下して環状に形成され、その下端が内方にU字状溝を形成するように折り曲がって前記頂壁より上方まで立ち上がって注出筒壁を形成し、該注出筒壁の中間部に、スコアによって前記裂取部を形成した隔壁を設けたことを特徴とする構成によって解決することができた。そして、前記U字状溝の底部に補強リブを形成することによって、容器口嵌合内筒の強度がより向上し望ましい。」
を、次のように訂正する。
「【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を本考案の合成樹脂キャップは、容器口嵌合外筒、容器口嵌合内筒、頂壁、及び裂取部を破断することにより開口する注ぎ口を有する、内容物が高温充填された合成樹脂キャップにおいて、前記容器口嵌合内筒は容器口嵌合外筒との間に容器口部が密嵌合する隙間を形成するように頂壁の内端から垂下して環状に形成され、その下端が内方にU字状溝を形成するように折り曲がって前記頂壁より上方まで立ち上がって注出筒壁を形成し、該注出筒壁の中間部に、スコアによって前記裂取部を形成した隔壁を設けたことを特徴とする構成によって解決することができた。そして、前記U字状溝の底部に補強リブを形成することによって、容器口嵌合内筒の強度がより向上し望ましい。」


<2-2>訂正の目的の適否、新規事項の有無、および実用新案登録請求の範囲の拡張・変更の有無
上記訂正Aは、訂正前の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「合成樹脂キャップにおいて」を、その用途を限定して「内容物が高温充填された容器用の合成樹脂キャップにおいて」と訂正するものであり、
また、訂正Bは、詳細な説明の欄【0004】における同じ記載を同様に訂正するものであるから、
上記訂正AおよびBは、願書に添付した明細書の欄【0003】【0004】【0008】【0010】に上記事項を示唆する記載があるから、上記明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、その目的は、実用新案登録請求の範囲の請求項1の減縮と、明瞭でない記載の釈明に該当し、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張または変更するものではない。


<2-3>独立実用新案登録要件の判断
<2-3-1>訂正後の考案
訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、上記訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

<2-3-2>引用例
当審が通知した訂正拒絶理由において、本件実用新案登録の出願前に頒布された下記の刊行物を引用した。
引用例1:実公昭51-35475号公報(甲第1号証)
引用例2:実願昭53-25159号(実開昭54-128865号)のマイクロフィルム(甲第2号証)
引用例3:実願昭57-39977号(実開昭58-143339号)のマイクロフィルム
引用例4:実願昭61-131602号(実開昭63-37567号)のマイクロフィルム

上記引用例には、次の記載がある。
<引用例1>実公昭51-35475号公報(甲第1号証)
図を引用して、
a:
「円板状の切り取り部2の外周に、切り溝7を介して、断面V字形の内筒12を設け、さらに該内筒の外周に、環状の外周板16を介して外筒13を形成し、前記切り溝7上部に切り取りリング8を設け、又前記外周板16上に、係合用凸条9を有する注ぎ口3を設けてなる中栓4を、瓶口1にとりつけ、又別に天井板17下面に、前記係合用凸条9と係合する係合用溝9’を有する筒部14を設けてなる替栓5と、前記中栓4とを、冠頭6により被冠し、前記外筒13及び冠頭6をともに瓶口1にかしめてなる瓶栓。」(実用新案登録請求の範囲)
b:
「本考案は、酒、醤油、ソース等の液体を収納する瓶栓に関するものである。
従来、この種の瓶に於いては王冠を使用していたが、王冠を外すのが面倒であったり、使用中に瓶口が汚れたりする欠点があった。
本考案はこれらの欠点を除去するためのものであり」(第1欄第31?38行)
c:
「本考案は上記構成を有するので、中栓4により瓶口が汚れたりすることがなく、使用頻度の高い調味料の瓶栓として非常に便利である。」(第2欄第21?23行)
d:
「断面ほぼV字形の内筒12を中栓4(「12」は誤字)に設けたから、中栓4は弾力性横圧力によって瓶口1にきつく嵌着、保持できる。
又、中栓4に環状の切り溝7を設け、かつ切り取りリング8を設けたから、切り取り部2を円盤状に容易に切り取ることができ、比較的大きい取出口を作ることができる。」(第2欄第29?35行)
e:
図において、
中栓4の内筒12の「断面V字形の内筒12」は、その先端部が、どちらかといえばU字形に近いゆるめのV字形で、全体として深い折返し溝に形成されている。
また、切り溝7によって切り取り部2を形成した水平な部分は、内筒12の上記溝の内側の壁の部分の上端に設けられている構成、が記載されている。

<引用例2>実願昭53-25159号(実開昭54-128865号)のマイクロフィルム(甲第2号証)第1?3図を引用して、
f:
「瓶口部に被嵌定着される蓋体と、軟質合成樹脂製の中栓とからなり、前記中栓における円筒状栓体内にその下端から折り返し状に連接する注出管を一体に設け、栓体の上端外周には鍔を一体に設ける一方、前記注出管の上端開口部には、これに前記蓋体を被嵌定着したとき鍔の上面に押圧されるラッパ状呑口を一体に設けて成る注出口付き瓶栓。」(実用新案登録請求の範囲)
g:
「本考案は、内容液を取り出すとき液切りの良い注出口を備えた瓶栓に関するものであり、詳しくは、瓶口部に嵌挿した中栓に注出口を設けるにおいて、該注出口にはラッパ状呑口を設けて液切りを良くすると共に、このラッパ状呑口によって瓶封時における瓶封効果を向上するものである。」(第1頁第14?19行)
h:
第1?3図において、中栓(2)の「薄肉円筒状の栓体(4)内に、その下端から折り返し状に連接する薄肉円筒状の注出管(5)」にいう折り返し部分は、U字状を形成している。
i:
「開封に際して…第3図に示すように元のラッパ状を呈するから、瓶内容液を瓶口部から直接取り出すときのように瓶内容液が瓶口部外周面に伝いこぼれるようなことが呑口(7)によって防止でき、瓶内容液を呑口(7)から液切り良く取り出すことができるのである。」(第3頁第11?18行)

<引用例3>実願昭57-39977号(実開昭58-143339号)のマイクロフィルム
第1?3図を引用して、
j:
「次に本考案の実施例を説明すると、図において(1)はポリエチレン等の軟質合成樹脂製の瓶栓で、… 前記栓体(2)には、瓶口部(5)上面を覆う天板(10)の下面に筒状のスカート部(6)とこれに同芯状に設けた中栓部(7)とを突設し、中栓部(7)外周面が瓶口部(5)内周面に密接し、前記外スカート部(6)内周面で前記瓶口部(5)を被嵌すると共に、外スカート部(6)内周面の環状突条(8)が瓶口部(5)外周の環状溝(9)に嵌着するように構成する。
天板(10)上面には、外筒(11)と内筒(12)とを同芯状に上向き突設し、外筒(11)外壁には環状の係止突条(13)を設け、前記内筒(12)内位置の天板(10)には、適宜平面形状に囲む環状切目線(14)を薄肉成形する。 そして、前記天板(10)上面には、リング状等の摘持片(15)一端基部が前記環状切目線(14)によって囲まれる平面形状内域部から突出するように設け、摘持片(15)を引張ることにより前記切目線(14)に沿って天板(10)を切開いて注出口(16)が形成できるように構成する。」(第3頁第12行?第4頁第11行)
k:
「瓶栓(1)を開封するには、・・・次いで、リング状摘持片(15)に指を入れて引っぱれば第3図のように天板に注出口(16)が形成できる。」(第5頁第10行?第6頁第5行)

<引用例4>実願昭61-131602号(実開昭63-37567号)のマイクロフィルム
第1?3図を引用して
l:
「この考案はガラス瓶用口栓に関するものである。」(第2頁第7行)
m:
「(実施例)
以下、この考案の一実施例を第1図?第3図を参照して説明する。
この口栓は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の可撓性合成樹脂からなるもので、図中21はガラス瓶(例えば一升瓶)Bの口部に圧入嵌合される栓本体であり、この栓本体21は、瓶口部の外周に嵌合される直筒状の外筒22と、この外筒22の上端部内周に一体に形成されて瓶口部の口縁を上方からかかえる環状の上面部23と、この上面部23の内周に一体に形成された内容物注出口25となる上下端が開口する内周24と、この内筒24の瓶口部内に挿入される部分の内側に一体に形成されてこの内筒24内を上下に仕切る切取り可能な中蓋26とを形成した一体成型品とされている。………
…また、前記内筒24内に形成された中蓋26は、その下面外周縁に内筒24の内周面と一致させて形成した切取り溝27から切取られるもので、この中蓋26は、その一側部上面に突設した上端に指掛けリング28aを有する引張り片28を上方に引くことによって前記切取り溝27から切取られるようになっている。」(第9頁第1行?第12頁第14行)

<2-3-3>対比・判断
訂正後の請求項1の考案と引用例1記載の考案とを対比すると、
訂正後の請求項1の考案の「容器口嵌合外筒」「容器口嵌合内筒」「頂壁」「スコア」「裂取部」「キャップ(本体)」は、
引用例1記載の考案の「外筒」「内筒」「外周板」「切り溝」「切取り部」「中栓」に各々、相当する。
また、引用例1の上記内筒の<内側の壁の部分>が訂正後の請求項1の考案の「筒壁」に、切り溝7と切り取り部2を形成した<水平な部分>が同じく「隔壁」に、各々相当するということができ、
また、キャップが合成樹脂で形成されることは、当業者であれば自明の技術的事項である。

よって、両者は、
「容器口嵌合外筒、容器口嵌合内筒、頂壁、及び裂取部を破断することにより開口する注ぎ口を有する、容器用の合成樹脂キャップにおいて、前記容器口嵌合内筒は容器口嵌合外筒との間に容器口部が密嵌合する隙間を形成するように頂壁の内端から垂下して環状に形成され、その下端が内方に溝を形成するように折り曲がって筒壁を形成し、該筒壁に、スコアによって前記裂取部を形成した隔壁を設けたことを特徴とするキャップ」
の構成が一致するが、 下記の点で相違する。
<相違点>
訂正後の請求項1の考案は、内容物が高温充填された容器用の合成樹脂キャップであって、スコアによって裂取部を形成した隔壁が、容器口嵌合内筒の下端が内方にU字状溝を形成するように折り曲がって頂壁より上方まで立ち上がって
形成された注出筒壁の中間部に設けられているのに対して、
引用例1記載の考案においては、溝がV字型で切り取り部(スコアによって裂取部を形成した隔壁)が、頂壁と同じ高さの筒壁の上端に設けられている点。
上記相違点について検討する。
引用例2には、中栓における円筒状栓体内にその下端からU字状に折り返して連接する注出管を一体に設けてはいるが、、該注出管は、ラッパ状呑口を設けて液切りを良くすると共に、このラッパ状呑口によって瓶封時における瓶封効果を向上するためのものであって、引用例1記載の切り取り部2を設けた瓶栓とは、解決しようとする課題が相違するものであるから、引用例1記載の瓶栓に引用例2記載の注出管構造を採用する契機が存在しないものである。
引用例3,4には、従来周知の筒壁の中間部にスコアによって裂取部を形成したキャップ構造が記載されているに過ぎないものである。
そして、訂正後の請求項1の考案は、上記相違点の構成を備えることによって,U字状溝を介して注出筒壁とで半径方向に二十リング構造を呈しているので、クッション効果が向上し、容器口内壁と密着して密封性が良く、且つ強度が向上し、内容物を高温充填した容器に打栓しても熱履歴による内倒れ現象はなく、強固にシールできるという格別な効果を奏するものと認める。
そうしてみると、訂正後の請求項1の考案の上記相違点の構成は、引用例1,2記載のもの、および引用例3,4にみられるような周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得るものということはできない。

したがって、訂正後の請求項1の考案は、引用例1,2記載の考案および引用例3,4に見られるような本出願前の当該技術分野における周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案することができたものであるとはいえず、実用新案法第3条第2項の規定により拒絶することはできず、出願の際、独立して実用新案登録を受けることができるものである。


<2-4>むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用する特許法第120条の4第2項および第3項でさらに準用する特許法第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。



<3>実用新案登録異議申立てについての判断
<3-1>本件請求項1の考案
本件請求項1に係る考案は、前記の「<2>訂正の適否についての判断<2-3>独立特許要件の判断 <2-3-1>訂正後の考案」において述べたように訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(以下、「本件請求項1の考案」という)である。
また、本件請求項2に係る考案は、訂正請求がないので、実用新案登録明細書の請求項2に記載の次のとおりのものである。
「【請求項2】
前記U字状溝の底部に補強リブが形成されている請求項1の合成樹脂キャップ。」
(以下、「本件請求項2の考案」という)


<3-2>申立ての理由の概要
異議申立人佐伯忠は、甲第1号証として実公昭51-35475号公報を、甲第2号証として実願昭53-25159号(実開昭54-128865号)のマイクロフィルムを提出し、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1および2記載の考案は、その出願前の国内において頒布された刊行物である甲第1?2号証に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができず、本件請求項1および請求項2に係る実用新案登録は取り消されるべきものである旨、主張している。


<3-3>証拠
異議申立人の提出した甲第1?2号証に記載された事項は、前記「<2>訂正の適否についての判断<2-3>独立特許要件の判断 <2-3-2>引用例」の<引用例1>および<引用例2>で述べたとおりである。


<3-4>判断
本件請求項1の考案は、前記「<2>訂正の適否についての判断<2-3>独立特許要件の判断」で検討したように、甲第1号証および甲第2号証に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものということはできない。

さらに、本件請求項2の考案は、請求項1を引用しているから、同様に甲第1号証および甲第2号証に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものということはできない。


<3-5>むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立の理由および証拠によっては、本件請求項1および2に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
合成樹脂キャップ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 容器口嵌合外筒、容器口嵌合内筒、頂壁、及び裂取部を破断することにより開口する注ぎ口を有する、内容物が高温充填された容器用の合成樹脂キャップにおいて、前記容器口嵌合内筒は容器口嵌合外筒との間に容器口部が密嵌合する隙間を形成するように頂壁の内端から垂下して環状に形成され、その下端が内方にU字状溝を形成するように折り曲がって前記頂壁より上方まで立ち上がって注出筒壁を形成し、該注出筒壁の中間部に、スコアによって前記裂取部を形成した隔壁を設けたことを特徴とする合成樹脂キャップ。
【請求項2】 前記U字状溝の底部に補強リブが形成されている請求項1の合成樹脂キャップ。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、合成樹脂キャップ、特にシール性を高める為の容器口嵌合内筒を有する合成樹脂キャップにおいて熱履歴による容器口嵌合内筒の内倒れを防止した合成樹脂キャップに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来合成樹脂キャップは、シール性を高める手段として、ボトル口頂部と接触する天壁内面にライナーを設けるか、図3に示すように、ボトル口部内周と密着するように天壁31から容器口嵌合内筒32を垂下して形成するかしている。後者の手段は、キャップが一工程で製造でき、別工程でライナーを設ける必要がないので、多くのキャップに採用されている。
しかしながら、図3に示すような容器口嵌合内筒によるシール構造のキャップは、ボトルヘの内容物の充填が高温充填の場合は、熱履歴によリ容器口嵌合内筒32が内倒れ現象を起し、液漏れの発生原因となるので、使用することができなかった。また、合成樹脂キャップが打栓によリボトルに装着するキャップである場合、注ぎ口33に設けられたプルリング付き裂取部34を画成するスコア35に打栓による衝撃が直接伝わり、スコア部に破断やピンホールが生じ密封性を損なう問題があった。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は、従来の容器口嵌合内筒によるシール構造の合成樹脂キャップの上記問題点を解消するために創案されたものであって、内容物を高温充填しても容器口嵌合内筒の内倒れ現象が起らず、且つ打栓時の衝撃がスコア部に伝わるのを緩衝し、スコア部にピンホール等の破断が起るのを防止して、密封性を高めることができ、高温充填でも適用できる容器口嵌合内筒によるシール構造の合成樹脂キャップを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を本考案の合成樹脂キャップは、容器口嵌合外筒、容器口嵌合内筒、頂壁、及び裂取部を破断することにより開口する注ぎ口を有する、内容物が高温充填された合成樹脂キャップにおいて、前記容器口嵌合内筒は容器口嵌合外筒との間に容器口部が密嵌合する隙間を形成するように頂壁の内端から垂下して環状に形成され、その下端が内方にU字状溝を形成するように折り曲がって前記頂壁より上方まで立ち上がって注出筒壁を形成し、該注出筒壁の中間部に、スコアによって前記裂取部を形成した隔壁を設けたことを特徴とする構成によって解決すことができた。
そして、前記U字状溝の底部に補強リブを形成することによって、容器口嵌合内筒の強度がより向上し望ましい。
【0005】
【作用】
容器嵌合内筒下端部からU字状溝を介して注出筒壁を形成することで、半径方向に容器嵌合内筒と注出筒壁とで二重リング構造を呈し、容器嵌合内筒のクッション効果が向上し、容器口内周と密着して密封性が良くなる。且つ強度も向上し、内容物を高温充填した容器に打栓しても熱履歴による内倒れ現象はなく、容器口内周と密着し強固にシールできる。従って、容器口嵌合内筒によるシール構造でありながら、低温充填、高温充填何れの場合にも適用できる。
また、スコアが設けられている注ぎ口部は、容器口嵌合内筒からU字状溝を介して連結されているので、打栓時の衝撃が直接スコアに加わることがなく、従来のような打栓時の衝撃によるスコア切れやピンホールの発生のおそれがない。さらに、前記U字状溝に補強リブを設けることによって、容器嵌合内筒の強度をより向上させることができる。
【0006】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本考案の実施例に係る合成樹脂キャップを示している。
本実施例の合成樹脂キャップは、例えば、中密度ポリエチレン樹脂等で一体成形され、容器口部に嵌合装着するキャップ本体1と、該キャップ本体にヒンジ3を介して一体成形された上蓋2とからなる。キャップ本体1は、容器口嵌合外筒5、頂壁6、容器口嵌合内筒7及び上蓋嵌合壁8を有し、容器口嵌合外筒5の内周下端部には係合突条9が形成され、キャップを打栓して容器口部に嵌合装着できるようになっている。
【0007】
前記容器口嵌合内筒7は、容器口嵌合外筒5との間に容器口部が密嵌合する隙間を形成するように頂壁6の内端から垂下して形成され、その下端が内方にU字状に折り曲がって立ち上がることにより、注ぎ口10の注出筒壁11を形成している。従って、容器口嵌合内筒7の背部にはU字状溝12を介して注出筒壁11があり、2重リング構造となり、容器口嵌合内筒7の強度を高めると共に、クッション効果を高め、打栓時の内倒れを防止すると共に容器口内周壁へ密着し、密封性が向上する。図中、13はU字状溝12の下端に円周方向に間欠的に複数個設けられた補強リブであり、該補強リブを設けることによって、容器口嵌合内筒の強度がより向上して強固なシールが行われる。
16は前記注出筒壁11内に前記頂壁6とほぼ同レベルの位置に形成された隔壁であり、該隔壁にスコア17によって裂取部15を形成し、プルリング18を引っ張ってスコアを引き裂くことにより、注ぎ口が開口できるようになっている。
【0008】
本考案の合成樹脂キャップは、以上のように構成され、上蓋2を図1の状態からヒンジ3を介してキャップ本体に折り返すことにより、上蓋2内面に形成された注ぎ口嵌合筒壁20がキャップ本体の注ぎ口10に嵌合すると共に、上蓋2のスカート壁21の端部内周部に形成された係合突起22がキャップ本体の上蓋嵌合壁8に形成された係合突起9を乗り越えて係合し、上蓋閉塞状態が維持される。このような状態で、合成樹脂キャップはボトル等の容器へのキャップピング工程において、フィーダーによリキャッパーに供給され、容器口部に打栓される。その際、内容物が70℃以上の高温で充填された容器であっても、容器口嵌合内壁の熱履歴による内倒れ現象は発生することなく、密封性の高いキャッピングができる。
【0009】
図2は本考案の合成樹脂キャップの他の実施例であり、上記実施例では上蓋はキャップ本体とヒンジ連結されて一体となっていたが、本実施例では上蓋はキャップ本体に螺子嵌合する別体となっている。該実施例では、上蓋(図示してない)を螺子装着するために、キャップ本体24の上蓋嵌合壁25に上蓋が螺合する螺子26が形成されている点を除いては前記実施例と同様な構成であるので、同一構成には前記実施例と同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
なお、上記両実施例は、何れも合成樹脂キャップを容器口に打栓により装着する場合の実施例であるが、本考案の合成樹脂キャップは必ずしも打栓キャップに限らず、容器口に螺子嵌合により装着するキャップにも適用できることは言うまでもない。
【0010】
【考案の効果】
本考案の合成樹脂キャップは、以上のように構成され次のような格別の効果を奏する。
容器口嵌合内筒は、U字状溝を介して注出筒壁とで半径方向に二重リング構造を呈しているので、クッション効果が向上し、容器口内周と密着して密封性が良く、且つ強度が向上し、内容物を高温充填した容器に打栓しても熱履歴による内倒れ現象はなく、強固にシールできる。従って、本考案の合成樹脂キャップは、容器口嵌合内筒によるシール構造でありながら、低温充填、高温充填何れの場合も適用できる。
また、スコアが設けられている注ぎ口部は、容器口嵌合内筒からU字状溝を介して連結されているので、打栓時の衝撃がスコアに直接加わることがなく、スコア切れやピンホールの発生するおそれがない。しかも、容器口嵌合内筒の下端が内方にU字状溝を形成するように折り曲がって前記頂壁より上方まで立ち上がる注出筒壁を形成しているので、注出中又は注出後に内容物が前記U字状溝に入り込んで溜ることがなく、衛生的である。
さらに、前記U字状溝に補強リブを設けることによって、容器嵌合内筒の強度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の合成樹脂キャップの縦断面図である。
【図2】
本考案の合成樹脂キャップの一部断面正面図である。
【図3】
従来の合成樹脂キャップの要部断面図である。
【符号の説明】
1 キャップ本体 2 上蓋
3 ヒンジ 5 容器口嵌合外筒
6 頂壁 7 容器口嵌合内筒
10 注ぎ口 11 注出筒壁
12 U字状溝 13 補強リブ
16 隔壁 17 スコア
訂正の要旨 (3)訂正の要旨
訂正事項
実用新案登録請求の範囲の請求項1中の「注ぎ口を有する合成樹脂キャップにおいて、」を実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「注ぎ口を有する、内容物が高温充填された容器用の合成樹脂キャップにおいて、」と訂正する。
これに伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として、考案の詳細な説明の欄の段落〔0004〕中の「注ぎ口を有する合成樹脂キャップにおいて、」を「注ぎ口を有する、内容物が高温充填された容器用の合成樹脂キャップにおいて、」と訂正する。
異議決定日 2000-07-05 
出願番号 実願平5-7744 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (B65D)
最終処分 維持    
前審関与審査官 森林 克郎  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 西村 綾子
祖山 忠彦
登録日 1998-11-20 
登録番号 実用新案登録第2589341号(U2589341) 
権利者 東洋製罐株式会社
東京都千代田区内幸町1丁目3番1号
考案の名称 合成樹脂キャップ  
代理人 佐藤 文男  
代理人 大城 重信  
代理人 佐藤 文男  
代理人 大城 重信  

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