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審決分類 |
審判 全部申し立て E03D 審判 全部申し立て E03D 審判 全部申し立て E03D |
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管理番号 | 1028342 |
異議申立番号 | 異議1999-72897 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-07-27 |
確定日 | 2000-09-11 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2589549号「給水機構」の請求項1?3に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2589549号の請求項1及び2に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
〔1〕手続の経緯 本件実用新案登録第2589549号の考案は、平成5年10月22日に出願され、平成10年11月20日に実用新案権の設定登録がなされ、その後、長屋千亜紀及び安藤三千男より請求項1?3に係る考案について実用新案登録異議の申立がなされ、当審において取消理由通知をなしたところ、その指定期間内の平成12年6月19日に訂正請求がなされたものである。 〔2〕訂正請求について 1.訂正請求の内容 訂正請求の趣旨は、実用新案登録第2589549号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。 そして、その訂正の内容は、以下のとおりである。 a.実用新案登録請求の範囲の 「【請求項1】 洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置に、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水する給水機構であって、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成されていることを特徴とする給水機構。 【請求項2】 前記フレキシブルホースの前記分岐栓および/又は前記管部 材との接続部は、その流路周方向に回動自在に構成されてなる請求項1記載の給水機構。 【請求項3】 洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置であって、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水するために、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成されていることを特徴とする衛生洗浄装置。」を、 「【請求項1】 洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置に、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水する給水機構であって、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能となるように構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けたことを特徴とする給水機構。 【請求項2】 洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置であって、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水するために、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けたことを特徴とする衛生洗浄装置。」に訂正する。 b.明細書段落【0005】を、「【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために本考案の採用した手段は、洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置に、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水するために、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けたことをその要旨とする。」に訂正する。 c.明細書段落【0006】の記載を削除する。 d.明細書段落【0026】の記載を、「また、衛生洗浄装置の移動に伴いねじれが発生しても、このねじれをフレキシブルホースに残すことがなくなり管部材の緩みや水漏れ等を回避することができる。」に訂正する。 2.訂正の適否 (1)訂正の目的等について 上記訂正について検討すると、訂正aは、請求項1及び3の分岐管と管部材の接続に関して、「前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けた」と限定すると共に、請求項2を削除し、請求項3を請求項2に繰り上げるものであって、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正b?dは、実用新案登録請求の範囲の訂正に伴って、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合を図るために行う訂正であり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、これらの訂正は、願書に添付した明細書の段落【0012】、【0013】、【0018】及び図4の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。 (2)独立実用新案登録要件について ア.訂正明細書の請求項1及び2に係る考案 訂正明細書の請求項1及び2に係る考案(以下、それぞれ「訂正考案1」、「訂正考案2」という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものである。(上記1.a参照。) イ.刊行物の記載事項 当審で通知した取消理由に引用した刊行物1及び2の記載事項は、以下のとおりである。 刊行物1(実願平2-59498号(実開平4-17456号)のマイクロフィルム、異義申立人長屋千亜紀提出の甲第1号証)には、明細書1頁15?18行、同3頁13行?4頁4行、同5頁2?14行、同6頁10行?7頁1行及び同7頁6行?8頁14行の記載、並びに第1図及び第4図の記載からみて、 「洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう温水洗浄装置に、前記水洗便器に到る第1の給水管2から上水を給水する給水機構であって、前記温水洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する受入口17と、前記第1の給水管2に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する止水栓3と、該止水栓3と前記受入口17との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される配管18とを有し、配管18と止水栓3との接合部に止水栓3の分岐した給水流路の周方向に回動自在となるように結合される自在継手21を設けた給水機構」(考案1)及び、 「洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう温水洗浄装置であって、 前記水洗便器に到る第1の給水管2から上水を給水するために、前記温水洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する受入口17と、前記第1の給水管2に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する止水栓3と、該止水栓3と前記受入口17との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される配管18とを有し、配管18と止水栓3との接合部に止水栓3の分岐した給水流路の周方向に回動自在となるように結合される自在継手21を設けた温水洗浄装置」(考案2)が記載されていると認める。 刊行物2(実願平3-70407号(実開平5-20699号)のCD-ROM、異義申立人長屋千亜紀提出の甲第2号証、同じく安藤三千男提出の甲第1号証)には、段落【0007】?【0009】及び【0012】の記載、並びに図1?図3の記載からみて、便器から一体的に簡単に着脱できるようにするために、給水管6に設けられた分岐栓17と温水タンク9との間にわたって配管される給水管19を脱着可能なジョイント8により温水タンク9に接続するとともに、ジョイントの着脱を容易にするために、給水管19をフレキシブルホースにより形成する、洋式の便器に載置される便座、蓋、シャワーケース等から成るシャワー機能を有する装置、及び該シャワー機能を有する装置に、水洗便器に到る給水管6から上水を給水する給水機構、が記載されていると認める。 ウ.対比・判断 《訂正考案1について》 訂正考案1と刊行物1記載の考案1とを対比すると、刊行物1記載の考案1の「温水洗浄装置」、「第1の給水管2」、「受入口17」、「止水栓3」及び「配管18」は、それぞれ訂正考案1の「衛生洗浄装置」、「給水管」、「管部材」、「分岐栓」及び「分岐管」に相当するから、両者は、 洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置に、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水する給水機構であって、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有する給水機構、である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 訂正考案1は、「分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し」ているのに対し、刊行物1記載の考案1は、そのような構成を備えていない点。 相違点2 訂正考案1は、「前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能となるように構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けた」のに対し、刊行物1記載の考案1は、そのような構成を備えていない点。 上記相違点について検討すると、刊行物2には、洋式の便器に載置されるシャワー機能を有する装置(訂正考案1の「衛生洗浄装置」に相当する。)において、給水管6に設けられた分岐栓17と温水タンク9との間にわたって配管される給水管19(同「分岐管」に相当する。)を、フレキシブルホースにより形成すること、が記載されており、上記相違点1における訂正考案1の構成が示唆されている。しかしながら、刊行物2には、上記相違点2における訂正考案1の構成が記載されていないし、示唆もされていない。 すなわち、刊行物2に記載された考案は、給水管19を脱着可能なジョイント8により温水タンク9に接続し、給水管19を温水タンク9からはずすことにより、シャワー機能を有する装置を便器から簡単に着脱できるようにしたものであり、訂正考案1のように「配管の接続を解くことなく容易に衛生洗浄装置を取り外すことのできる」(訂正明細書段落【0005】参照。)ものではなく、技術思想が訂正考案1とは基本的に異なる。 そして、訂正考案1は上記相違点2の構成を備えることにより、「ロータンクに到る給水管と衛生洗浄装置との間に分岐管を配管したままでも、衛生洗浄装置の取り外しに支障をきたすことはない。……分岐管両端の管部材又は分岐栓に過度の負荷をかけることはなく、水漏れを起こさない。……ただ単に衛生洗浄装置を水洗便器から取り外せばよいので、配管の接続を解くことなく容易に衛生洗浄装置を取り外すことができる。……給水管からの上水の給水を担うよう、フレキシブルホースには上水圧に対する耐圧性が求められ、このフレキシブルホースをある程度剛直で強固なものとせざるを得ない。しかし、このようにある程度剛直で強固なフレキシブルホースであっても、フレキシブルホースの配管管路の変化に追従して給水流路の向きを変更するので、分岐管と分岐栓又は管部材とのシール性の低下をきたすことがなく、分岐管と分岐栓又は管部材との接続部から水漏れを起こさない。」(段落【0025】)、「衛生洗浄装置の移動に伴いねじれが発生しても、このねじれをフレキシブルホースに残すことがなくなり管部材の緩みや水漏れ等を回避することができる。」(段落【0026】)という格別の効果を奏するものと認められる。 なお、刊行物1には、第2図に示された実施例について、取水部材14の配管接続部14bが任意の方向を指向するように姿勢決めしても、バルブケース9内の水を配管接続部14bから取水可能であることや、配管18の接続に最も具合が良い方向となるように配管接続部14bの向きを選ぶことができ、配管施工がきわめて簡単に行なえることが記載されている(明細書7頁6?13行参照。)が、第2図の記載を参照すると、取水部材14が随時回動可能な構成になっているものとは認められず、上記実施例は、配管施工時には取水部材14を回動して配管18の接続に最も具合が良い方向を選ぶことができるものであって、それ以外のときにも取水部材14が随時回動可能になっていると解することはできない。 したがって、訂正考案1は、刊行物1及び2記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 また、他に訂正考案1が実用新案登録を受けることができないとする理由も発見できないから、訂正考案1は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。 《訂正考案2について》 訂正考案2と刊行物1記載の考案2とを対比すると、両者は、洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置であって、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水するために、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有する衛生洗浄装置、である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 訂正考案2は、「分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し」ているのに対し、刊行物1記載の考案2は、そのような構成を備えていない点。 相違点2 訂正考案2は、「前記分岐栓又は管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けた」のに対し、刊行物1記載の考案2は、そのような構成を備えていない点。 上記相違点について検討すると、相違点1及び2は、上記《訂正考案1について》で挙げた相違点1及び2と同じであり、訂正考案2は、上記《訂正考案1について》で述べたのと同じ理由により、刊行物1及び2記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 また、他に訂正考案2が実用新案登録を受けることができないとする理由も発見できないから、訂正考案2は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、訂正a?dは、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則9条2項で準用され、同附則10条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第2項ただし書1又は3号に掲げる事項を目的とし、同条3項で準用する126条2?4項の規定に適合するので、本件訂正請求を認める。 〔3〕実用新案登録異議の申立てについて 1.異議申立ての理由の概要 異議申立人長屋千亜紀は、 1)請求項1?3に係る考案は、甲第1号証及び甲第2号証記載の考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、それらの考案の実用新案登録は取り消されるべきである旨、 2)本件登録明細書には不備があって、実用新案法5条4項、5項及び6項に規定する要件を満たしていないから、請求項1?3に係る考案の実用新案登録は取り消されるべきである旨、 主張するとともに、甲第1号証及び甲第2号証を提出している。 異議申立人安藤三千男は、請求項1?3に係る考案は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案を組み合わせることにより、又は甲第1号証記載の考案に甲第2号証?甲第6号証記載の周知慣用の技術を転用することにより、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、それらの考案の実用新案登録は取り消されるべきである旨主張すると共に、甲第1号証?甲第6号証を提出している。 2.本件請求項1及び2に係る考案 本件請求項1及び2に係る考案は、訂正明細書の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認める。(上記〔2〕1.a.参照。) 3.異議申立ての理由についての判断 (1)異議申立人長屋千亜紀が主張する理由1)について 甲第1号証及び甲第2号証は、上記刊行物1及び2と同じであり、それらの記載事項は、上記〔2〕2.の「(2)独立実用新案登録要件について」の「イ.刊行物の記載事項」に記載したとおりである。 本件請求項1に係る考案についての対比・判断は、同じく「ウ.対比・判断」の《訂正考案1について》でしたとおりであり、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証及び甲第2号証(刊行物1及び2)記載の考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 本件請求項2に係る考案についての対比・判断は、同「ウ.対比・判断」の《訂正考案2について》でしたとおりであり、本件請求項2に係る考案は、甲第1号証及び甲第2号証(刊行物1及び2)記載の考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 (2)異議申立人安藤三千男が主張する理由について ア.甲各号証の記載事項 甲第1号証は上記刊行物2と同じであり、その記載事項は、上記〔2〕2.の「(2)独立実用新案登録要件について」の「イ.刊行物の記載事項」に記載したとおりである。 また、甲第2号証?甲第6号証の記載事項は以下のとおりである。 甲第2号証(実願昭59-87064号(実開昭61ー1792号)のマイクロフィルム)には、明細書1頁20行?2頁2行及び同2頁6行?3頁2行並びに第1図?第3図の記載からみて、給水ホース1を回動自在のエルボー3を介して給水弁2に接続する、自動洗濯機、ウオータークーラー等の給水ホースの接続構造、が記載されていると認める。 甲第3号証(実願昭54-95963号(実開昭56-14901号)のマイクロフィルム)には、明細書2頁3行?3頁7行及び同4頁5?6行の記載、並びに第3図の記載からみて、可撓ホースを鈍角状に折曲された回転自在なホースエンド5を介して接続管4に連結した、いずれの方向からも可撓ホースを接続できるガス器具、が記載されていると認める。 甲第4号証(実願平1-140311号(実開平3-80185号)のマイクロフィルム)には、実用新案登録請求の範囲、明細書11頁20行?12頁5行の記載、並びに第1図及び第2図の記載からみて、タイヤのブレーキシューに連通する可撓ホース3を自在継手体21に接続し、可撓ホース3の変位方向に円滑に追従して無理がなく、可撓ホース3の流体漏れを阻止する車両のコネクタ構造、が記載されていると認める。 甲第5号証(実願昭63-99261号(実開平2-22705号)のマイクロフィルム)には、明細書4頁10?15行及び同5頁4?6行の記載、並びに第1図?第4図の記載からみて、蛇腹ホース13を回転取付け部12を介して温風発生器本体11に接続し、先端の吹出し口14を任意の方向に向けることができるようにしたヘアードライヤー、が記載されていると認める。 甲第6号証(特開昭58-109789号公報)には、1頁左下欄14行?右下欄2行の記載及び第1図?第4図の記載からみて、給油タンクからガソリンを給油する給油ノズル3にスイベル接手5を介してホース4が接続され、ホースの他端にもスイベル接手5が接続され、給油ノズル3を自動車の燃料タンクに挿入するときにホース4がねじれることがない給油機、が記載されていると認める。 イ.対比・判断 《本件請求項1に係る考案について》 本件請求項1に係る考案と甲第1号証(刊行物2)記載の考案とを対比すると、甲第1号証記載の考案は、給水管に設けられた分岐栓17と温水タンク9との間にわたって配管される給水管19(本件請求項1に係る考案の「分岐管」に相当する。)をフレキシブルホースにより形成する洋式の便器に載置されるシャワー機能を有する装置(同「衛生洗浄装置」に相当する。)に、水洗便器に到る給水管から上水を給水する給水機構である点で、本件請求項1に係る考案と共通するところは認められるものの、本件請求項1に係る考案の「前記分岐栓または前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能となるように構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けた」との構成を備えていない。すなわち、甲第1号証記載の考案は、給水管19を脱着可能なジョイント8により温水タンク9に接続し、給水管19を温水タンク9からはずすことにより、上記シャワー機能を有する装置を便器から簡単に着脱できるようにしたものであり、本件請求項1に係る考案のように「配管の接続を解くことなく容易に衛生洗浄装置を取り外すことのできる」(訂正明細書段落【0005】参照。)ものではなく、技術思想が本件請求項1に係る考案とは基本的に異なる。 また、甲第2号証?甲第6号証には、ホースがねじれないように回動自在な部材を介してホースを接続する技術が示されているが、本件請求項1に係る考案及び甲第1号記載の考案とは、産業上の利用分野が異なり、これらの技術を甲第1号証記載の考案に適用して、上記構成とする動機付けを見いだせない。 そして、本件請求項1に係る考案は、この構成を備えることにより、訂正明細書記載の格別の効果を奏するものと認められる。 したがって、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案を組み合わせることにより当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできないし、また甲第1号証記載の考案に甲第2号証?甲第6号証記載の周知慣用の技術を転用することにより当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることもできない。 《本件請求項2に係る考案について》 本件請求項2に係る考案と甲第1号証(刊行物2)記載の考案とを対比すると、甲第1号証記載の考案は、給水管に設けられた分岐栓17と温水タンク9との間にわたって配管される給水管19(本件請求項2に係る考案の「分岐管」に相当する。)をフレキシブルホースにより形成する洋式の便器に載置されるシャワー機能を有する装置(同「衛生洗浄装置」に相当する。)である点で、本件請求項2に係る考案と共通するところは認められるものの、本件請求項2に係る考案の「前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能となるように構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けた」との構成を備えておらず、上記《本件請求項1に係る考案について》で述べたように、技術思想が本件請求項2に係る考案とは基本的に異なる。 また、甲第2号証?甲第6号証に示された技術を甲第1号証記載の考案に適用して、上記構成とする動機付けを見いだせない。 そして、本件請求項2に係る考案は、この構成を備えることにより、訂正明細書記載の格別の効果を奏するものと認められる。 したがって、本件請求項2に係る考案は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案を組み合わせることにより当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできないし、また甲第1号証記載の考案に甲第2号証?甲第6号証記載の周知慣用の技術を転用することにより当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることもできない。 (3)異議申立人長屋千亜紀が主張する理由2)について 異議申立人は、実用新案法5条4項、5項及び6項に規定する要件を満たしていない具体的な理由として、次の点を挙げている。 a.請求項1及び3の「前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と」における「管部材」及び「給水流路」に相当する文言が、考案の詳細な説明中になく、管部材及び給水流路を容易に理解できない。 b.請求項1及び3には「フレキシブルホース」の定義がなく、ゴムホース等も含まれるのか否か不明である。また、仮に明細書の考案の効果の記載により、請求項1及び3のフレキシブルホースがある程度剛直なものとして解釈されるとすれば、どの程度剛直なものが相当するのかも不明である。 c.請求項1及び3の「前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方」における「又は」と「少なくとも一方」との関係が理解できず、何が「前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成されている」のか不明である。マーカッシュ形式の請求項を意図しているのであれば、「前記分岐栓及び前記管部材の少なくとも一方」と記載すべきである。 d.考案の詳細な説明の段落【0013】において「フレキシブルホース36は、その一端に管金具35と結合するための管継手を、他端に鋼管34と結合するための管継手を有する。」という記載があり、【0022】において「分岐管32における分岐栓33側を鋼管34にて構成した」という記載がある一方、第4図によれば、フレキシブルホース(36)を管金具(35)と結合するために流路周方向に回動自在な管継手を採用しつつ、フレキシブルホース(36)を鋼管(34)と結合するための管継手の開示がない。仮に、フレキシブルホース(36)を鋼管(34)と結合するため、ここにも流路周方向に回動自在な管継手を採用するとすれば、フレキシブルホース(36)を管金具(35)と結合するために、流路周方向に回動自在な管継手を採用しなくとも、フレキシブルホースのねじれは生じない。こうであれば、請求項2に係る考案は、本件の作用・効果を生じないことから、請求項2には、実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないことになる。 また、フレキシブルホース(36)を鋼管(34)と結合するための管継手の開示がないことから、請求項2に係る考案では、ここにいかなる管継手を採用するかが不明であり、その効果も不明である。 以下、上記a?dについて検討する。 aについて 訂正明細書の考案の詳細な説明の実施例の記載には、「管部材」及び「給水流路」の文言はないが、訂正明細書の請求項1及び請求項3の「該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、」との記載、訂正明細書の段落【0017】の「操作部26下面に設けられた管金具35には、図4に示すように、フレキシブルホース36と連通する連通孔57が空けられており、」との記載、同じく段落【0016】の「分岐栓33は、……備える。また、先端金具43の外部連通孔47と外側金具44の孔49および連通孔50とで、鋼管34に到る給水流路56が形成され、」との記載、及び図1、図2、図4の記載によれば、上記「管部材」及び「給水流路」は、それぞれ実施例に記載されている「管金具35」及び「連通孔57」に対応していると理解することができる。 bについて 訂正明細書の請求項1及び2の「フレキシブルホース」なる用語それ自体の意味は明確であり、訂正明細書に記載された考案が解決しようとする課題からみて、フレキシブルホースの材質を特定する必要性は認められない。また、訂正明細書の考案の詳細な説明の考案の効果の項(段落【0025】)に記載の「ある程度剛直」は、同段落の「給水管からの上水の給水を担うよう、フレキシブルホースには上水圧に対する耐圧性が求められ、このフレキシブルホースをある程度剛直で強固なものとせざるを得ない。」との記載からみて、給水管からの上水の圧力に耐えるのに必要とされる程度に剛直であることを意味していると理解できる。 cについて 訂正明細書の請求項1及び2の記載から、分岐栓又は管部材又は分岐栓と管部材の両方が、「前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成されている」ものと理解することができる。 dについて 訂正明細書の考案の詳細な説明の記載をみると、フレキシブルホース36と鋼管34とを結合する管継手について、「フレキシブルホース36は、その一端に管金具35と結合するための管継手を、他端に鋼管34と結合するための管継手を有する。」(段落【0013】)の記載があるのみで、流路周方向に回動自在な管接手であるという記載はなく、図1及び図6に、フレキシブルホース36と鋼管34との間に管継手と思われる部品が記載されているにすぎないことからすると、フレキシブルホース36と鋼管34とを結合する管継手は、流路周方向に回動自在なものではない、普通の管継手であると解される。したがって、該管継手がどのようなものであるかの開示がなくとも、本件請求項1及び2に係る考案(旧請求項2が削除され、その構成の一部が訂正後の請求項1及び2に加えられた。)の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないとはいえないし、また本件請求項1及び2に係る考案の効果が不明であるともいえない。 したがって、申立人の主張するような明細書の記載不備は認められない。 4.むすび 以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1及び2に係る考案の実用新案登録許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1及び2に係る考案の実用新案登録許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 給水機構 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置に、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水する給水機構であって、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能となるように構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けたことを特徴とする給水機構。 【請求項2】洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置であって、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水するために、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けたことを特徴とする衛生洗浄装置。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、洋式の水洗便器に載置される衛生洗浄装置に給水する給水機構に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年になり、用便後の局部を清潔に保つために、便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して局部洗浄を行なう衛生洗浄装置が急速に普及している。この衛生洗浄装置は、通常、洋式の水洗便器に載置されたままであるが、便器自体を清掃する際には、水洗便器から取り外される。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、衛生洗浄装置にはロータンクに到る給水管から水道水等が給水されているので、次のような問題があった。つまり、衛生洗浄装置の取り外し時にはこの給水のための配管における接続箇所、例えば衛生洗浄装置との接続箇所で配管の接続を解き、清掃完了時には配管を接続して復元する必要があり煩わしい。このため、衛生洗浄装置の取り外しに支障をきたしていた。 【0004】 本考案は、上記問題点を解決するためになされ、配管の接続を解くことなく容易に衛生洗浄装置を取り外すことのできる給水機構を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために本考案の採用した手段は、洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置に、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水するために、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けたことをその要旨とする。 【0006】 【0007】 【作用】 本考案では、水洗便器に到る給水管と衛生洗浄装置との間に分岐管を配置し、この分岐管の両端は給水管側にあっては分岐栓の給水流路と衛生洗浄装置側にあっては管部材の給水流路と接続される。よって、給水管からは、こうして配管された分岐管を経て衛生洗浄装置に上水が給水される。 【0008】 この分岐管は、その管路が曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースであることから、衛生洗浄装置が水洗便器から取り外される場合には、その動きに追従してフレキシブルホースのなす配管管路を変化させる。この際、分岐管両端の分岐栓又は管部材の少なくとも一方は、分岐管が接続されている給水流路の向きを、分岐管の配管管路の移動(変化)に追従して変更する。よって、本考案の給水機構では、分岐管を配管したままでも衛生洗浄装置の取り外しに支障をきたすことはないとともに、分岐管両端の管部材又は分岐栓に過度の負荷をかけることはない。その一方、上記の分岐管としてのフレキシブルホースは給水管からの上水の給水を担うことから、上水圧に対する耐圧性が求められる。よって、このフレキシブルホースはある程度剛直で強固なものとなる。しかし、このようにある程度剛直で強固なフレキシブルホースであっても、上記したようにフレキシブルホースのなす配管管路の変化に追従して給水流路の向きを変更するようにしているので、分岐管と分岐栓又は管部材とのシール性に影響を及ぼさない。 【0009】 また、衛生洗浄装置の移動に伴い分岐管にねじれ方向の負荷が加わっても、フレキシブルホースは回動自在に固定されているため、過度の負荷がかかることはない。 【0010】 【実施例】 以上説明した本考案の構成・作用を一層明らかにするために、以下本考案の好適な実施例について説明する。図1は、本考案にかかる実施例の給水機構を適用した衛生洗浄装置付の洋式の水洗便器(以下、洋式便器という)の外観図である。 【0011】 図1に示すように、衛生洗浄装置20は、洋式便器21に装着されるものであり、洗浄水を加熱したり温風を吹き出すための装置などを収納し図示しない軸により便座28を回動自在に軸支して保持する本体22、洗浄水を便座に座った人の局部に噴出し局部洗浄を行なう洗浄用ノズル24、操作を行なう操作パネル25を表面に有し図示しない洗浄水タンクを内蔵した操作部26などから構成されている。そして、この衛生洗浄装置20が本体22とともに洋式便器21の後部に取り付けられると、便座28および便器の蓋29は、洋式便器21に対して開閉する。なお、操作部26に内蔵される洗浄水タンクは、単に洗浄水を貯留するタンクと、ヒータを備え温水を貯留するタンクとに分離されており、両タンクに水が給水される。また、洗浄用ノズル24にはこの両タンクから所定の流量比で水および温水が供給され、洗浄用ノズル24からは、この流量比等で定まる温度の温水が噴出される。 【0012】 洋式便器21に流す水を貯留するロータンク30と上記した衛生洗浄装置20との間には、ロータンク30に給水する給水管31から分岐して分岐管32が配管されている。この分岐管32は、給水管31の管路途中に設けられた分岐栓33に接続される鋼管34と、衛生洗浄装置20の操作部26下面に設けられた管金具35に接続されるフレキシブルホース36とを管継手により接合・固定して構成されている。よって、衛生洗浄装置20には、より詳しくは上記した洗浄水タンクには、給水管31から分岐栓33,分岐管32および管金具35を経て給水される。 【0013】 図示するように、分岐管32は、分岐栓33から垂れ下がりその下方で湾曲して衛生洗浄装置20にいたる管路を形成し、その管路のうちの曲線管路となる範囲をフレキシブルホース36で形成する。このフレキシブルホース36は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合体)製のホースをステンレス細線で編み上げたブレードで被覆し、更にこのブレードを塩化ビニル等の樹脂で被覆した3層構造のフレキシブルホースである。そして、フレキシブルホース36は、その一端に管金具35と結合するための管継手を、他端に鋼管34と結合するための管継手を有する。 【0014】 給水管31から分岐して分岐管32は、図2に示すように、給水管31に組み込まれるT字状の分岐管部40と、この分岐管部40にゴムパッキン41を介在させてユニオンナット42により水密に固定される先端金具43と、この先端金具43が組み込まれる外側金具44とを有する。先端金具43の内部には、分岐管部40の上流流路45と連通する有底孔46が軸方向に空けられており、その外周には、この有底孔46に連通する外部連通孔47が空けられている。 【0015】 外側金具44には、先端金具43の先端部が嵌合可能な孔48とこの孔と同軸で先端金具43の基部が嵌合可能な孔49とが空けられている。また、この外側金具44には、孔49と連通する連通孔50が空けられている。そして、外側金具44には、Oリング51,52を介在させて水密に先端金具43が組み込まれ、外側金具44から突出した先端金具43の先端部には、E型リング53が取り付けられている。また、この外側金具44には、ゴムパッキン54を介在させ、鋼管34が連通孔50に連通するようユニオンナット55により水密に固定されている。 【0016】 上記構成を有する分岐栓33は、ユニオンナット42とE型リング53で規制される範囲に亘って先端金具43の軸方向に外側金具44を移動可能に備え、図中矢印A方向からの矢視図である図3に示すように、この外側金具44を先端金具43を中心に回転可能に備える。また、先端金具43の外部連通孔47と外側金具44の孔49および連通孔50とで、鋼管34に到る給水流路56が形成され、この給水流路56を経て衛生洗浄装置20に給水される。 【0017】 操作部26下面に設けられた管金具35には、図4に示すように、フレキシブルホース36と連通する連通孔57が空けられており、その外周には、フレキシブルホース36端部の接続金具58の固定ピン59が入り込む溝60が形成されている。また、管金具35の先端部には、Oリング61が装着されている。また、図5に示すように、接続金具58には、管金具35が嵌合される嵌合孔62に外部から連通する一対の孔63,64が空けられており、この孔63,64には、バネ鋼から形成された固定ピン59が組み込まれている。 【0018】 固定ピン59は、図5(A)に示すように、接続金具58の外周から離れた位置にあれば、その一部が孔63,64から嵌合孔62内に突出し、図5(B)に示すように、接続金具58の外周に接触した位置にあれば、孔63,64内に引っ込むように変形する。よって、固定ピン59が孔63,64内に引つ込んだ状態で管金具35に接続金具58を装着し、固定ピン59を接続金具58から離せば、固定ピン59は管金具35外周の溝60に入り込み、管金具35とフレキシブルホース36とは接続される。ここで、溝60は管金具35の外部全周に亘って設けられているため、このようにして接続されたフレキシブルホース36は、固定ピン59が溝60に入り込んでいることから、管金具35に対して回動自在となる。 【0019】 次に、衛生洗浄装置20の洋式便器21からの取り外しの様子について、図6を用いて説明する。図示するように、衛生洗浄装置20は、洋式便器21後部の所定位置から、洋式便器21上面に沿って摺動或いは僅かに持ち上げて図中白抜き矢印Bに移動される。この移動前には、分岐管32の鋼管34は、分岐栓33から真っ直ぐ下方に垂れ下がり、フレキシブルホース36はU字状に湾曲して衛生洗浄装置20に到っている。しかし、上記したように衛生洗浄装置20が移動すると、フレキシブルホース36は管金具35側において前方に引かれその配管管路をU字の開口の度合いが広がるよう変化させる。この際、鋼管34もその下端、即ちフレキシブルホース36との接合端がフレキシブルホース36ともに引かれてその配管管路を変化させるが、分岐栓33は、図3に示すように外側金具44を回転させる。 【0020】 よって、分岐栓33における給水流路56は、鋼管34およびフレキシブルホース36からなる分岐管32の配管管路の変化に追従してその向きが変更することになる。このため、本実施例の給水機構では、分岐管32を給水管31と衛生洗浄装置20との間に配管したままでも衛生洗浄装置20の取り外しに支障をきたさない。また、分岐栓33における外側金具44が回転して給水流路56の向きが変わることから、分岐栓33に負荷をかけることはなく分岐栓33において水漏れを起こさない。この結果、本実施例の給水機構によれば、単純に衛生洗浄装置20を洋式便器21から取り外せばよいので、分岐管32の配管接続を解くことなく容易に衛生洗浄装置20を取り外すことができる。 【0021】 加えて、衛生洗浄装置20側の管金具35においてフレキシブルホース36をこの管金具35に対して回動自在とした。このため、フレキシブルホース36に衛生洗浄装置20の移動に伴いねじれが発生しても、このねじれをフレキシブルホース36に残すことがなくなり管金具35の緩みや水漏れ等を起こさない。 【0022】 また、本実施例では、分岐管32における分岐栓33側を鋼管34にて構成したので、分岐管32の全長をこの鋼管34を切断することで調整できる。よって、本実施例の給水機構によれば、単一或いは小数種類の全長の分岐管32を製造し現場作業でその全長を調整して衛生洗浄装置20を据え付けすることができるので、製造工数や据え付け工数,製造コストを低減することができる。しかも、全長を調整して分岐管32を余分な弛みを持たせて配管することがなくなり、衛生洗浄装置20周辺の見栄えを向上することができる。 【0023】 更に、本実施例では、分岐管32はステンレス細線で編み上げたブレードを有しその表面を塩化ビニル等の樹脂で被覆されたものとした。よって、この分岐管32によれば、耐久性を向上させることができるとともに、分岐管32自体を容易に清掃することができる。また、樹脂をトイレ室内の色調に調和した色とすることで、違和感をなくすことができる。 【0024】 以上本考案の実施例について説明したが、本考案はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本考案の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施例では、分岐管32を鋼管34とフレキシブルホース36とを接合して構成したが、この分岐管32をその全長に亘りフレキシブルホース36とすることもできる。また、衛生洗浄装置20側における管金具35を、給水管31側の分岐栓33と同様に、その給水流路の向きが変更できるように構成することもできる。更に、分岐栓33における給水流路56の向きが外側金具44の回転により変更するよう分岐栓33を構成したが、流路の向きの変更の自由度が高い管継手、例えば内部に球面状のすべり面を持ち流路向きの角変位を可能とするボールジョイント式のボール管継手を採用することもできる。また、フレキシブルホース36にあっては、EDPM製のホースのみとしたり、コイル状に形成されたホースとすることもできる。 【0025】 【考案の効果】 以上説明したように本考案では、ロータンクに到る給水管と衛生洗浄装置との間に分岐管を配管したままでも、衛生洗浄装置の取り外しに支障をきたすことはない。また、本考案の給水機構では、この分岐管両端の管部材又は分岐栓に過度の負荷をかけることはなく、水漏れを起こさない。よって、本考案の給水機構によれば、ただ単に衛生洗浄装置を水洗便器から取り外せばよいので、配管の接続を解くことなく容易に衛生洗浄装置を取り外すことができる。また、次のような利点がある。給水管からの上水の給水を担うよう、フレキシブルホースには上水圧に対する耐圧性が求められ、このフレキシブルホースをある程度剛直で強固なものとせざるを得ない。しかし、このようにある程度剛直で強固なフレキシブルホースであっても、フレキシブルホースの配管管路の変化に追従して給水流路の向きを変更するので、分岐管と分岐栓又は管部材とのシール性の低下をきたすことがなく、分岐管と分岐栓又は管部材との接続部から水漏れを起こさない。 【0026】 また、衛生洗浄装置の移動に伴いねじれが発生しても、このねじれをフレキシブルホースに残すことがなくなり管部材の緩みや水漏れ等を回避することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本考案にかかる実施例の給水機構を適用した衛生洗浄装置付の洋式便器の外観図。 【図2】分岐栓33を一部破断して示す側面図。 【図3】図3の矢印A方向矢視図。 【図4】管金具35とフレキシブルホース36との接続の様子を説明する説明図。 【図5】管金具35への接続金具58の装着の様子を説明する説明図。 【図6】衛生洗浄装置20の洋式便器21からの取り外しの様子を説明する説明図。 【符号の説明】 20…衛生洗浄装置 21…洋式便器 22…本体 24…洗浄用ノズル 25…操作パネル 26…操作部 28…便座 30…ロータンク 31…給水管 32…分岐管 33…分岐栓 34…鋼管 35…管金具 36…フレキシブルホース 40…分岐管部 43…先端金具 44…外側金具 45…上流流路 46…有底孔 47…外部連通孔 50…連通孔 56…給水流路 58…接続金具 |
訂正の要旨 |
〔訂正の要旨〕 実用新案登録第2589549号の明細書を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として下記aのとおり、明瞭でない記載の釈明を目的として下記b?dのとおり訂正する。 a.実用新案登録請求の範囲の 「【請求項1】洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置に、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水する給水機構であって、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成されていることを特徴とする給水機構。 【請求項2】前記フレキシブルホースの前記分岐栓および/又は前記管部材との接続部は、その流路周方向に回動自在に構成されてなる請求項1記載の給水機構。 【請求項3】洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置であって、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水するために、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成されていることを特徴とする衛生洗浄装置。」を、 「【請求項1】洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置に、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水する給水機構であって、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能となるように構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けたことを特徴とする給水機構。 【請求項2】洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置であって、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水するために、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けたことを特徴とする衛生洗浄装置。」に訂正する。 b.明細書段落【0005】を、「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本考案の採用した手段は、洋式の水洗便器に載置され便座に座った人の局部に向けて洗浄水を噴出して該局部の洗浄を行なう衛生洗浄装置に、前記水洗便器に到る給水管から上水を給水するために、前記衛生洗浄装置に接続され該装置に到る給水流路を有する管部材と、前記給水管に設けられ該給水管から分岐した給水流路を有する分岐栓と、該分岐栓と前記管部材との間に亘って配管され、前記両給水流路に接続される分岐管とを有し、該分岐管は、前記分岐栓と前記管部材との間のうち少なくとも曲線管路となる範囲に亘ってはフレキシブルホースにてその管路を形成し、前記分岐栓又は前記管部材の少なくとも一方は、前記分岐管の管路の変化に追従して前記給水流路の向きを変更可能に構成され、且つ、前記分岐管と管部材との接合部には、フレキシブルホースのねじれを吸収すべく、フレキシブルホースの一端に、管部材の流路周方向に回動自在となるように結合される接続金具を設けたことをその要旨とする。」に訂正する。 c.明細書段落【0006】の記載を削除する。 d.明細書段落【0026】の記載を、「また、衛生洗浄装置の移動に伴いねじれが発生しても、このねじれをフレキシブルホースに残すことがなくなり管部材の緩みや水漏れ等を回避することができる。」に訂正する。 |
異議決定日 | 2000-08-21 |
出願番号 | 実願平5-61756 |
審決分類 |
U
1
651・
531-
YA
(E03D)
U 1 651・ 534- YA (E03D) U 1 651・ 121- YA (E03D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 家田 政明 |
特許庁審判長 |
幸長 保次郎 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 鈴木 公子 |
登録日 | 1998-11-20 |
登録番号 | 実用新案登録第2589549号(U2589549) |
権利者 |
東陶機器株式会社 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1号 |
考案の名称 | 給水機構 |