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審決分類 |
審判 全部申し立て A01B |
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管理番号 | 1028363 |
異議申立番号 | 異議1999-71970 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-05-14 |
確定日 | 2000-10-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第2585283号「シリンダ装置」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2585283号の実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件実用新案登録第2585283号に係る考案についての出願は、平成4年8月10日に出願され、平成10年9月11日にその考案についての実用新案の設定登録がなされ、その後、その実用新案登録について、異議申立人肥田謙二より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年12月29日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由通知に対して手続補正書が提出されたものである。 2.訂正請求に対する補正の適否について (2-1)補正の内容 実用新案登録権者は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1「・・・軸線を交差させた一対のピンを設け・・・」を「・・・軸線を直交させた一対のピンを設け・・・」、並びに、同書第3頁第26行及び第4頁19行の「交差」を「直交」と補正しようとするものである。 (2-2)判断 しかしながら、本件訂正請求に対する補正は、訂正明細書の訂正事項が実用新案登録請求の範囲の減縮であったものを、実用新案登録請求の範囲をさらに減縮する目的で「交差」を「直交」に変更したものであって、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正とは認められないから、訂正請求書の要旨の変更をするものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号。)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第131条第2項の規定に違反するものであり、採用しない。 3.訂正請求について (3-1)訂正請求の内容 本件訂正請求は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「・・・X方向及びそれに直交するY方向のみに揺動自在としたジョイントを介して・・・連結する構成」を「・・・このジョイントには、軸線を交差させた一対のピンを設け、これらいずれか一方のピンでアームとジョイントとを回動自在に連結し、・・・連結する構成」と訂正しようとするものである。 (3-2)判断 しかしながら、「交差」とは、二軸(一対の軸線)が0゜<θ<180゜の範囲で交わっておればよく、「直交」でないものも含まれるから、実用新案登録請求の範囲を「このジョイントには、軸線を交差させた一対のピンを設け・・・回動自在に連結する構成」と訂正することは、二軸(一対の軸線)が、「直交」以外で、0゜<θ<180゜の範囲で交わるものも包含することになり、上記訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張するものである。 また、登録明細書の【0011】「・・・つまり、シリンダチューブ11は上記ピン109を中心にして上記X方向に直交するY方向に揺動するようになっている。」等の記載から、登録明細書には、「X方向及びそれに直交するY方向のみに揺動自在としたジョイント」のみ記載され、二軸(一対の軸線)が、「直交」以外で、0゜<θ<180゜の範囲で交わるものは記載されていない。しかも、実用新案登録請求の範囲を「このジョイントには、軸線を交差させた一対のピンを設け・・・回動自在に連結する構成」と訂正することは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項から直接的かつ一義的に導き出せるものでもない。 よって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号。)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合しないので、当該訂正は認めない。 4.実用新案登録異議の申立てについて (4-1)本件考案 本件実用新案登録第2585283号の請求項1に係る考案(以下、本件考案という。)は、その実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「シリンダチューブ及びピストンロッドからなり、車両等の本体と、この本体に取り付けた作業機との間に介在させたシリンダ装置において、シリンダチューブ及びピストンロッドのうちいずれか一方を、その回転を規制する連結部材を介して、本体及び作業機のいずれか一方に連結するとともに、いずれか他方を、X方向及びそれに直交するY方向のみに揺動自在としたジョイントを介して、本体及び作業機のいずれか他方に連結する構成にしたことを特徴とするシリンダ装置。」 (4-2)引用刊行物記載の発明 引用刊行物(実願平1-148043号(実開平3-85806号)のマイクロフイルム)(甲第1号証)には次のことが記載されている。 a「第1図、第2図において、1は農用のトラクター、2はトラクター1の後部に設けられた四点ヒッチ装置、3は四点ヒッチ装置2を介してトラクター1後部に装着された作業機で、作業機3は耕うん機が例示されている。四点ヒッチ装置2は三点リンクとトラクターの出力軸の四点で作業機を自動的に連結するもので、トラクター1の油圧ケース4後面に固設されたトップリンクブラケット5に基端部を枢着された上方一本のトップリンク6と、ギヤケース7の両側面に基端部を枢着された下方左右のロアリンク8から成る三点リンクの各先端部と、トラクター1の後部PTO軸9に接続された2個1組のユニバーサルジョイントで成る出力軸(図示なし)の先端部がヒッチフレーム10に一体に支持され、油圧ケース4の両側面に基端部を枢着した左右のリフトアーム11を油圧シリンダー(図示なし)で上下することにより、リフトアーム11先端とロアリンク8の先端寄りに両端を枢着されたリフトロッド12が上下し、ロアリンク8と一本のヒッチフレーム10が上下されるようになっている。」(第4頁第11行目?第5頁第11行目)、 b「図中17は伸縮制御可能なリフトロッド12として構成された作業機の姿勢制御装置で、第3図乃至第5図にその詳細を示す。この作業機の姿勢制御装置17はリフトシリンダー18とリフトロッド長さセンサー19とから成り、リフトシリンダー18は頭部に、カラー20aの両側にプレート20bを溶着したU字状のリンク20の開放端部が、カラー20aの軸線と直角方向の取付けピン21によって枢着され、リフトシリンダー18のロッド18a先端にはフォーク22が固着され、リンク20のカラー20aを三点リンクの片側のリフトアーム11の先端にナット23で取付けられた軸24に枢着し、ロッド18a先端のフォーク22を三点リンクの同片側のロアリンク8に枢着することによって伸縮制御可能なリフトロッド12となる。」(第6頁第7行目?第7頁第1行目)。 (4-3)対比・判断 本件考案と上記刊行物(甲1号証)記載の考案とを対比する。 上記刊行物記載の「フォーク22」は「ロッド18a」の回転を規制すること、及び、上記刊行物記載の「リンク20」は「リフトシリンダー18」をX方向及びそれに直交するY方向のみに揺動自在であることは、その構成から明確であるから、上記刊行物記載の「リフトシリンダー18」、「ロッド18a」、「トラクター1」、「作業機3」、「姿勢制御装置17」、「フォーク22」、「リンク20」は、それぞれ、本件考案の「シリンダチューブ」、「ピストンロッド」、「車両等の本体」、「作業機」、「シリンダ装置」、「連結部材」、「ジョイント」に相当する。 したがって、上記刊行物には、シリンダチューブ(リフトシリンダー18)及びピストンロッド(ロッド18a)からなり、車両等の本体(トラクター1)と、この本体に取り付けた作業機(3)との間に介在させたシリンダ装置(姿勢制御装置17)において、ピストンロッド(ロッド18a)を、その回転を規制する連結部材(フォーク22)を介して、作業機に連結するとともに、シリンダチューブ(リフトシリンダー18)を、そのX方向及びそれに直交するY方向のみに揺動自在としたジョイント(リンク20)を介して、本体に連結したシリンダ装置が記載されており、本件考案と上記刊行物記載の考案の構成は異ならない。 したがって、本件考案は、その出願前に頒布された刊行物に記載された考案である。 (4-4)むすび 以上のとおりであるから、本件考案は、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができない。 したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-08-21 |
出願番号 | 実願平4-61792 |
審決分類 |
U
1
651・
113-
ZB
(A01B)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 番場 得造、西田 秀彦 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
平瀬 博通 鈴木 寛治 |
登録日 | 1998-09-11 |
登録番号 | 実用新案登録第2585283号(U2585283) |
権利者 |
カヤバ工業株式会社 東京都港区浜松町2丁目4番1号 世界貿易センタービル |
考案の名称 | シリンダ装置 |
代理人 | 北村 修一郎 |
代理人 | 嶋 宣之 |