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審決分類 審判 全部申し立て   H01C
管理番号 1028366
異議申立番号 異議1997-75945  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-12-18 
確定日 2000-10-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第2539724号「チップ可変抵抗器」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2539724号の実用新案登録を取り消す。
理由 I、手続の経緯
実用新案登録第2539724号の請求項1に係る考案についての出願は、平成1年1月9日に実用新案登録出願され、請求項1に係る考案について平成9年4月11日に設定登録されたものであり、その後、請求項1に係る考案に対して、西田良幸、京セラ株式会社、及び雨山範子から登録異議の申立てがなされ、平成10年4月17日付け取消理由の通知がなされ、その取消理由の通知の指定期間内である平成10年7月7日付けで訂正請求がなされ、この訂正請求について平成11年2月5日付けで訂正拒絶理由の通知がなされ、その訂正拒絶理由の通知に対して平成11年4月19日付け実用新案登録異議意見書が提出され、平成12年3月16日付けで再度訂正拒絶理由及び取消理由の通知がなされ、その訂正拒絶理由及び取消理由の通知の指定期間内である平成12年5月30日付けで、前記訂正請求を補正しようとする手続補正書及び実用新案登録異議意見書が提出されたものである。

II、訂正請求に対する補正の適否についての判断
II-ア、補正の内容
(実用新案登録請求の範囲の補正について)
実用新案登録権者が求めている補正のうち、実用新案登録請求の範囲に関しての補正は、次のとおりである。
訂正請求書の全文訂正明細書中の実用新案登録請求の範囲の「【請求項1】上下に開口した貫通孔を有する絶縁基板の上面に、前記貫通孔を囲うようにした円弧状の抵抗膜を、その両端が前記絶縁基板の一側面に向けて延びるように形成し、前記絶縁基板の一側面に、前記抵抗膜の両端に導通する一対の側面電極を形成する一方、前記絶縁基板の下面に、前記絶縁基板の他側面に向かって延びる中心端子板を配設し、該中心端子板に、前記貫通孔に嵌まる中空軸を一体的に造形し、前記抵抗膜に摺接するステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板製の摺動子を、前記中空軸の先端に、当該中空軸の先端のかしめ広げにより回転可能に装着し、該摺動子に、当該摺動子を回転操作するためのドライバ工具挿入用溝を形成し、更に、前記中心端子板の一端に、前記絶縁基板の他側面に沿って上向きに延びる屈曲部を設けて成るチップ可変抵抗器において、前記中空軸付き中心端子板を、ステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板にて形成し、この中心端子板のうち前記屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とのみに、ニッケルメッキ層を下地として金メッキ層を連続的に形成したことを特徴とするチップ可変抵抗器。」を、
「【請求項1】上下に開口した貫通孔を有する絶縁基板の上面に、前記貫通孔を囲うようにした円弧状の抵抗膜を、その両端が前記絶縁基板の一側面に向けて延びるように形成し、前記絶縁基板の一側面に、前記抵抗膜の両端に導通する一対の側面電極を形成する一方、前記絶縁基板の下面に、前記絶縁基板の他側面に向かって延びる中心端子板を配設し、該中心端子板に、前記貫通孔に嵌まる中空軸を一体的に造形し、前記抵抗膜に摺接するステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板製の摺動子を、前記中空軸の先端に、当該中空軸の先端のかしめ広げにより回転可能に装着し、該摺動子に、当該摺動子を回転操作するためのドライバ工具挿入用溝を形成し、更に、前記中心端子板の一端に、前記絶縁基板の他側面に沿って上向きに延びる屈曲部を設けて成るチップ可変抵抗器において、前記中空軸付き中心端子板を、ステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板にて形成し、この中心端子板のうち前記屈曲部寄り部位の下面から屈曲部の外面の上端部までに、ニッケルメッキ層を下地として金メッキ層を連続的に形成したことを特徴とするチップ可変抵抗器。」と補正する。

II-イ、補正の適否
上記訂正請求に対する実用新案登録請求の範囲の補正は、中心端子板にニッケルメッキ層を下地として金メッキ層を形成する個所について、「屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とのみに、ニッケルメッキ層を下地として金メッキ層を連続的に形成した」を、「屈曲部寄り部位の下面から屈曲部の外面の上端部までに、ニッケルメッキ層を下地として金メッキ層を連続的に形成した」と補正しようとするものであるが、この補正が実用新案登録請求の範囲の減縮を目的としたものであったとしても、本件訂正請求書の要旨を変更するものに該当する。
したがって、上記訂正請求に対する補正は、その余の補正事項を検討するまでもなく、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第9条第2項で準用する特許法第120条の4第3項でさらに準用する同法第131条第2項の規定に適合しないので、上記補正を採用することができない。

III、訂正の適否についての判断
III-ア、訂正明細書の請求項1に係る考案
本件訂正明細書の請求項1に係る考案(以下「訂正請求項に係る考案」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】上下に開口した貫通孔を有する絶縁基板の上面に、前記貫通孔を囲うようにした円弧状の抵抗膜を、その両端が前記絶縁基板の一側面に向けて延びるように形成し、前記絶縁基板の一側面に、前記抵抗膜の両端に導通する一対の側面電極を形成する一方、前記絶縁基板の下面に、前記絶縁基板の他側面に向かって延びる中心端子板を配設し、該中心端子板に、前記貫通孔に嵌まる中空軸を一体的に造形し、前記抵抗膜に摺接するステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板製の摺動子を、前記中空軸の先端に、当該中空軸の先端のかしめ広げにより回転可能に装着し、該摺動子に、当該摺動子を回転操作するためのドライバ工具挿入用溝を形成し、更に、前記中心端子板の一端に、前記絶縁基板の他側面に沿って上向きに延びる屈曲部を設けて成るチップ可変抵抗器において、前記中空軸付き中心端子板を、ステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板にて形成し、この中心端子板のうち前記屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とのみに、ニッケルメッキ層を下地として金メッキ層を連続的に形成したことを特徴とするチップ可変抵抗器。」

III-イ、引用刊行物記載の考案
III-イ-1、引用刊行物
訂正明細書の請求項1に係る考案に対して、当審が通知した平成12年3月16日付け訂正拒絶理由で引用した特開昭60-97603号公報(以下「刊行物1」という。)、実願昭56-138232号(実開昭58-44805号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)、及び1983年9月5日株式会社工業調査会発行 大澤直著「電子材料のはんだ付技術」第41頁?第47頁、及び第183頁?第185頁(以下「刊行物3」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。

III-イ-2、刊行物1
第1頁左下欄第15?16行中に「本発明はプリント基板などに直付けできるようにしたチップ形可変抵抗器に関する。」と、
第2頁左上欄第2?16行中に「第1図において、1は抵抗基板、2は摺動子、3はビス、4は半田が付着しにくい材料、例えばステンレスなどで構成された可変側端子板である。
抵抗基板1はセラミックなどの絶縁材料よりなり、そのほぼ中央部には、摺動子2をビス3によって取り付けるための孔1aを設けている。抵抗基板1の表面には、第2図(a)に示すように、孔1aの周囲にリング状のコレクタ電極5を形成し、基板表面の一端部のほぼ中央部に設けた引出電極5aに引き出している。コレクタ電極5の外周部には、円弧状のサーメット抵抗体6を形成し、この抵抗体6の両端部はそれぞれ導電膜7、8により、抵抗基板1の一端側面1bを通して裏面に延長し、上記一端の近傍に固定側端子部9,10(第2図(C))を形成するようにしている。」と、
第2頁右上欄第4?6行中に「可変側端子板4の他端4cは、直角に折り曲げ、抵抗基板1の他端側面1cに上記溝1dに連続して設けた溝1eに配置している。」と、
第2頁右上欄第10?14行中に「上記可変側端子板4には、抵抗基板1の裏面側であって他端側面1cの近傍および他端側面1c側の一部に、半田、錫などの半田が付着しやすい材料を例えばメッキした層4dを形成し、可変側端子部としている。」と、
第2頁左下欄第5?8行中に「このとき、ビス3の頭部3aの下部の横断面形状を例えば四角形状にするとともに、この下部が嵌入する摺動子2の孔2aもそれに見合う形状としており、摺動子2はビス3と共回転する。」と、
第3頁左上欄第10?17行には、「上記各実施例では、ビス3を用いているが、本発明によれば必らずしも別部品のビス3やハトメを用いる必要はない。すなわち、可変側端子板4の中央部に絞り加工により円筒状部を形成し、この円筒状部を抵抗基板1の孔1aおよび摺動子2の接点2a(この「2a」の部材名称は、この他の記載を参酌すると「孔2a」とみられる。)に挿通し、円筒状部の先端を摺動子2が回動可能なように、摺動子2上にカシメ止めするように構成してもよい。」と記載されている。
これらの記載、図面の簡単な説明、及び図面の記載からみて、刊行物1には、
「上下に開口した孔1aを有する抵抗基板1の上面に、前記孔1aを囲うようにした円弧状の抵抗体6を、その両端が前記抵抗基板1の一側面に向けて延びるように形成し、前記抵抗基板1の一側面に、前記抵抗体6の両端に導電膜7,8により導通する一対の固定側端子部9,10を形成する一方、前記抵抗基板1の下面に、前記抵抗基板1の他側面に向かって延びる可変側端子板4を配設し、該可変側端子板4に、ビス3を介して、前記抵抗体6に摺接する摺動子2を、回転可能に装着し、該摺動子2と一体回転する前記ビス3に、当該摺動子2を回転操作するためのドライバ溝3bを形成し、更に、前記可変側端子板4の一端に、前記抵抗基板1の他側面に沿って上向きに延びる屈曲部を設けて成るチップ形可変抵抗器において、可変側端子板4を、半田非接合性のステンレス鋼板にて形成し、この可変側端子板4のうち前記屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とのみに、半田、錫などの半田が付着しやすい金属メッキ層を形成したチップ形可変抵抗器。」が記載されていると認められる。
さらに、上記第3頁左上欄第10?17行の「上記各実施例では、ビス3を用いているが、・・・・するように構成してもよい。」の記載、及び、ビス3を用いることなく、可変側端子板に、抵抗基板に開口した孔に嵌まる円筒状部を一体的に造形し、摺動子を、前記円筒状部の先端に、当該円筒状部の先端のカシメ止めにより回転可能に装着する点が、本件実用新案登録の出願前に周知(参照:特開昭63-296203号公報、及び実願昭58-126187号(実開昭60-35507号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム、実願昭59-196736号(実開昭61-114805号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム、実願昭59-41404号(実開昭60-153502号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)であることを考慮すると、刊行物1には、
「上下に開口した孔1aを有する抵抗基板1の上面に、前記孔1aを囲うようにした円弧状の抵抗体6を、その両端が前記抵抗基板1の一側面に向けて延びるように形成し、前記抵抗基板1の一側面に、前記抵抗体6の両端に導電膜7,8により導通する一対の固定側端子部9,10を形成する一方、前記抵抗基板1の下面に、前記抵抗基板1の他側面に向かって延びる可変側端子板4を配設し、該可変側端子板4に、前記孔1aに嵌まる円筒状部を一体的に造形し、前記抵抗体6に摺接する摺動子2を、前記円筒状部の先端に、当該円筒状部の先端のカシメ止めにより回転可能に装着し、更に、前記可変側端子板4の一端に、前記抵抗基板1の他側面に沿って上向きに延びる屈曲部を設けて成るチップ形可変抵抗器において、前記円筒状部付き可変側端子板4を、半田非接合性のステンレス鋼板にて形成し、この可変側端子板4のうち前記屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とのみに、半田、錫などの半田が付着しやすい金属メッキ層を形成したチップ形可変抵抗器。」(以下「刊行物1に記載された考案」という。)が実質上記載されているものと認められる。

III-イ-3、刊行物2
刊行物2には、出願当初の明細書及び図面と、昭和57年6月24日付け手続補正書とが含まれており、後者の第1頁第15?17行中に「この考案は、可変抵抗器に係り、特に回路基板などへの装着が容易な構造の小形の可変抵抗器に関するものである。」と、
同第4頁第12頁?第5頁第6行中に「前記絶縁基板4上には、はんだと非接合性の材料、例えば、ステンレス、アルミニウムなどの金属からなる摺動子1が載置されており、該摺動子1は絶縁基板4にこうめピンP(「こう」は原文では金偏に交であり、「はさみ」を意味する漢字であって、原文のこの個所の記載及び第2図の記載を参酌すると、該記載は「かしめピンP」とみられる。)を介し回転自在に取着されている。
前記摺動子1は、第5図(イ)(ロ)(ハ)に示すように、該摺動子1を回動させるための回動操作部3および抵抗皮膜5と接触する接触片2が形成されており、従来周知のプレス成形法を採用することにより形成されている。
前記摺動子1の接触片2は、前記絶縁基板4上の抵抗皮膜5に接触している。
また、摺動子1は、こうめピンP(前記と同様に、「かしめピンP」とみられる。)を介し絶縁基板4の裏面に形成した金属皮膜8を経て端子7に接続されている。」と記載されている。
これらの記載、図面の簡単な説明、及び図面の記載からみて、刊行物2には、以下の点が記載されていると認められる。
「摺動子1を、ステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板製とし、該摺動子1に、当該摺動子1を回転操作するための回動操作部3を形成して成るチップ可変抵抗器。」

III-イ-4、刊行物3
第43頁図の下第8?11行中に「また、図3.6に示すように、メッキ皮膜として用いられる各種金属の溶融はんだへの溶融速度は金属の種類によって異なるので、とくにAuやAgメッキで被覆する場合には溶食されにくい金属(例えば、Ni、Feなど)を下地メッキする多層メッキによって、はんだのぬれ性を確保することが大切である。」と、
第47頁第4?6行中に「接続端子などには接触電気抵抗を小さくするためにAuメッキを施す場合が多い。しかし、経済的な観点からAuが単一メッキとして用いられることは少なく、一般には下地メッキの上に約0.5?1.2μm程度メッキされる。」と、
第185頁第12?16行に、「8.4特殊金属材料のはんだ付
電子工業で使用される特殊金属材料としてはNi合金、バネ材、ステンレス鋼、抵抗材料などがある。表8.9に主な電子工業用材料の諸性質を示す。
これらの材料は実際にはSn、Sn-Pb、Ni,Ag,Auなどをメッキして使用される場合が多く、そのために、それらのはんだ付はそれ程問題にならない。」と記載されている。

III-ウ、対比・判断
III-ウ-1、訂正請求項に係る考案と、上記刊行物1に記載された考案とを対比する。
刊行物1に記載された考案の「孔1a」、「抵抗基板1」、「抵抗体6」、「固定側端子部9,10」、「可変側端子板4」、「円筒状部」、「チップ形可変抵抗器」は、それぞれ訂正請求項に係る考案の「貫通孔」、「絶縁基板」、「抵抗膜」、「側面電極」、「中心端子板」、「中空軸」、「チップ可変抵抗器」に相当する。
したがって、訂正請求項に係る考案と、上記刊行物1に記載された考案とを対比すると、両者間には次の一致点及び相違点がある。
〔一致点〕
「上下に開口した貫通孔を有する絶縁基板の上面に、前記貫通孔を囲うようにした円弧状の抵抗膜を、その両端が前記絶縁基板の一側面に向けて延びるように形成し、前記絶縁基板の一側面に、前記抵抗膜の両端に導通する一対の側面電極を形成する一方、前記絶縁基板の下面に、前記絶縁基板の他側面に向かって延びる中心端子板を配設し、該中心端子板に、前記貫通孔に嵌まる中空軸を一体的に造形し、前記抵抗膜に摺接する摺動子を、前記中空軸の先端に、当該中空軸の先端のかしめにより回転可能に装着し、更に、前記中心端子板の一端に、前記絶縁基板の他側面に沿って上向きに延びる屈曲部を設けて成るチップ可変抵抗器において、前記中空軸付き中心端子板を、半田非接合性のステンレス鋼板にて形成し、この中心端子板のうち前記屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とのみに、半田が付着しやすい金属のメッキ層を形成したチップ可変抵抗器。」
〔相違点1〕、訂正請求項に係る考案では、「摺動子を、ステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板製とし、該摺動子に、当該摺動子を回転操作するためのドライバ工具挿入用溝を形成している」のに対して、刊行物1に記載された考案では、摺動子の材料、及びドライバ工具挿入用溝の有無について明らかにされていない点、
〔相違点2〕、摺動子を、中空軸の先端に、回転可能に装着するかしめについて、訂正請求項に係る考案では、「かしめ広げ」であるのに対して、刊行物1に記載された考案では、どのようにかしめ止めしたのかが明らかにされていない点、
〔相違点3〕、中心端子板に行う半田が付着しやすい金属のメッキ層の形成について、訂正請求項に係る考案では、「屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とに、ニッケルメッキ層を下地として金メッキ層を連続的に形成した」のに対して、刊行物1に記載された考案では、メッキ層を形成する金属について、半田が付着しやすい金属として半田、及び錫を例示しているが、ニッケルメッキを下地として金メッキすることについては記載されていない点で相違している共に、屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とに形成しているメッキ層が、連続的かどうかが明らかにされていない点、

III-ウ-2、上記相違点1について検討する。
刊行物2に記載された考案の「回動操作部3」は、訂正請求項に係る考案の「ドライバ工具挿入用溝」に相当する。したがって、刊行物2には、上記相違点1における訂正請求項に係る考案の構成が記載されていると認められる。また、上記相違点1のこの構成は、刊行物2の他、実願昭57-97794号(実開昭59-2105号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム、実願昭61-44361号(実開昭62-157103号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム等により従来周知である。そして、刊行物1、2に記載されたもの、及び上記両従来周知例に記載されたものは、いづれもチップ可変抵抗器である点で共通しているので、刊行物1に記載された考案における摺動子に代えて、上記刊行物2に記載された摺動子、又は上記従来周知の摺動子の構成を採用して、訂正請求項に係る考案のように構成することは、当業者がきわめて容易になし得ることであると認められる。

III-ウ-3、上記相違点2について検討する。
前記「III-イ-2」で示した4つの従来周知例に示されているように、「かしめ広げ」によって摺動子を回動可能に装着することは、従来周知である。そして、刊行物1に記載されたもの、及び上記の従来周知例に記載されたものは、いづれもチップ可変抵抗器である点で共通しているので、刊行物1に記載された考案における「かしめ」について、上記従来周知の「かしめ広げ」を採用し、訂正請求項に係る考案のように構成することは、当業者がきわめて容易になし得ることであると認められる。

III-ウ-4、上記相違点3について検討する。
半田接合性を良好とするために金メッキを行う点、及び金メッキにはニッケルメッキを下地メッキする点は、例えば刊行物3に記載されているように、本件実用新案登録の出願前より周知の事項と認められ、本件チップ可変抵抗器のような電子部品に、例えば、刊行物3に記載された従来周知の事項を適用して、半田を付着しやすくするためのメッキ金属として、金を採用すると共に、ステンレスに金メッキするとき、ニッケルメッキ層を下地として金メッキ層を形成するようなことは、当業者が適宜なし得ることであると認められる。
また、訂正請求項に係る考案が、メッキ層を屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面との2つの面に連続的に形成している点について検討すると、接近した2つの面のメッキ層の形成を、別々に分離させて行わなければならないような必要性もないことや、2つの面を連続させて行う方が、作業が能率的であることは当業者に自明な事項であることから、接近した2つの面である屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とのメッキ層を連続的に形成するようなことは、当業者がきわめて容易になし得ることであると認められる。

III-ウ-5、そして、訂正請求項に係る考案によってもたらされる作用効果も、刊行物1?3に記載された考案、及び上記周知事項から、当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、訂正明細書の請求項に係る考案は、上記刊行物1,2及び3に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められる。

III-エ、むすび
以上のとおりであるから、訂正請求項に係る考案は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなお効力を有するとされる同法律による改正前の実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号。)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

IV、実用新案登録異議の申立てについての判断
IV-ア、本件実用新案登録の請求項1に係る考案
本件実用新案登録第2539724号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】上下に開口した貫通孔を有する絶縁基板の上面に、前記貫通孔を囲うようにした円弧状の抵抗膜を、その両端が前記絶縁基板の一側面に向けて延びるように形成し、前記絶縁基板の一側面に、前記抵抗膜の両端に導通する一対の側面電極を形成する一方、前記絶縁基板の下面に、前記絶縁基板の他側面に向かって延びる中心端子板を配設し、該中心端子板に、前記貫通孔に嵌まる中空軸を一体的に造形し、前記抵抗膜に摺接するステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板製の摺動子を、前記中空軸の先端に、当該中空軸の先端のかしめ広げにより回転可能に装着し、該摺動子に、当該摺動子を回転操作するためのドライバ工具挿入用溝を形成し、更に、前記中心端子板の一端に、前記絶縁基板の他側面に沿って上向きに延びる屈曲部を設けて成るチップ可変抵抗器において、前記中空軸付き中心端子板を、ステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板にて形成し、この中心端子板のうち前記屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とのみに、金メッキ層を連続的に形成したことを特徴とするチップ可変抵抗器。」

IV-イ、取消理由に引用した考案
本件考案に対して、当審が通知した平成12年3月16日付け取消理由では、特開昭60-97603号公報(以下「刊行物1」という。)、実願昭56-138232号(実開昭58-44805号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)、及び1983年9月5日株式会社工業調査会発行 大澤直著「電子材料のはんだ付技術」第41頁?第47頁、及び第183頁?第185頁(以下「刊行物3」という。)を引用した。
上記刊行物1?3は、前記「III-イ-1」に記載した刊行物と全く同じ刊行物1?3である。
上記刊行物1?3には、前記「III-イ-2」?「III-イ-4」に記載した考案が記載されている。

IV-ウ、対比・判断
IV-ウ-1、 本件考案と、上記刊行物1に記載された考案とを対比する。
刊行物1に記載された考案の「孔1a」、「抵抗基板1」、「抵抗体6」、「固定側端子部9,10」、「可変側端子板4」、「円筒状部」、「チップ形可変抵抗器」は、それぞれ本件考案の「貫通孔」、「絶縁基板」、「抵抗膜」、「側面電極」、「中心端子板」、「中空軸」、「チップ可変抵抗器」に相当する。
したがって、本件考案と、上記刊行物1に記載された考案とを対比すると、両者間には次の一致点及び相違点がある。
〔一致点〕
「上下に開口した貫通孔を有する絶縁基板の上面に、前記貫通孔を囲うようにした円弧状の抵抗膜を、その両端が前記絶縁基板の一側面に向けて延びるように形成し、前記絶縁基板の一側面に、前記抵抗膜の両端に導通する一対の側面電極を形成する一方、前記絶縁基板の下面に、前記絶縁基板の他側面に向かって延びる中心端子板を配設し、該中心端子板に、前記貫通孔に嵌まる中空軸を一体的に造形し、前記抵抗膜に摺接する摺動子を、前記中空軸の先端に、当該中空軸の先端のかしめにより回転可能に装着し、更に、前記中心端子板の一端に、前記絶縁基板の他側面に沿って上向きに延びる屈曲部を設けて成るチップ可変抵抗器において、前記中空軸付き中心端子板を、半田非接合性のステンレス鋼板にて形成し、この中心端子板のうち前記屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とのみに、半田が付着しやすい金属のメッキ層を形成したチップ可変抵抗器。」
〔相違点1〕、本件考案では、「摺動子を、ステンレス鋼又はアルミニウム等の半田非接合性金属板製とし、該摺動子に、当該摺動子を回転操作するためのドライバ工具挿入用溝を形成している」のに対して、刊行物1に記載された考案では、摺動子の材料、及びドライバ工具挿入用溝の有無について明らかにされていない点、
〔相違点2〕、摺動子を、中空軸の先端に、回転可能に装着するかしめについて、本件考案では、「かしめ広げ」であるのに対して、刊行物1に記載された考案では、どのようにかしめ止めしたのかが明らかにされていない点、
〔相違点3〕、中心端子板に行う半田が付着しやすい金属のメッキ層の形成について、本件考案では、「屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とに、金メッキ層を連続的に形成した」のに対して、刊行物1に記載された考案では、メッキ層を形成する金属について、半田が付着しやすい金属として半田、及び錫を例示しているが、金については記載されていない点で相違している共に、屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面とに形成しているメッキ層が、連続的かどうかが明らかにされていない点、

IV-ウ-2、上記相違点1について
上記相違点1は、前記「III-ウ-1」の〔相違点1〕と全く同じである。したがって、上記相違点1についての検討内容及びその結果も、前記「III-ウ-2」と全く同じである。

IV-ウ-3、上記相違点2について検討する。
上記相違点2は、前記「III-ウ-1」の〔相違点2〕と全く同じである。したがって、上記相違点2についての検討内容及びその結果も、前記「III-ウ-3」と全く同じである。

IV-ウ-4、上記相違点3について検討する。
ステンレスに半田接合性を良好とするために金メッキを行う点は、例えば刊行物3に記載されているように、本件実用新案登録の出願前より周知の事項と認められる。本件チップ可変抵抗器のような電子部品に、例えば、刊行物3に記載された従来周知の事項を適用して、半田が付着しやすくするためのメッキ金属として金を採用し、ステンレスに金メッキ層を形成するようなことは、当業者が適宜なし得ることであると認められる。
また、本件考案が、メッキ層を屈曲部寄り部位の下面と屈曲部の外面と2つの面に連続的に形成している点についての検討内容及びその結果は、前記「III-ウ-4」の後段と全く同じである。

IV-ウ-5、そして、本件考案によってもたらされる作用効果も、刊行物1?3に記載された考案、及び上記周知事項から、当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。

IV-エ、したがって、本件考案は、上記刊行物1,2及び3に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

V、むすび
以上のとおりであるから、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、上記刊行物1,2及び3に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなお効力を有するとされる同法律による改正前の実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案についての実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-08-08 
出願番号 実願平1-1084 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (H01C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 吉村 宅衛下野 和行  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 藤田 豊比古
清水 信行
登録日 1997-04-11 
登録番号 実用新案登録第2539724号(U2539724) 
権利者 ローム株式会社
京都市右京区西院溝崎町21番地
考案の名称 チップ可変抵抗器  
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