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審決分類 審判 全部申し立て   B66F
審判 全部申し立て   B66F
管理番号 1028367
異議申立番号 異議1999-72427  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-16 
確定日 2000-10-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第2590739号「軌道用ブーム作業車の安全装置」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2590739号の実用新案登録を取り消す。
理由 I.手続きの経緯
本件実用新案登録第2590739号の請求項1に係る考案についての出願は、平成5年10月15日に実用新案出願され、平成10年12月11日にその設定登録がされた。
その後、本件請求項1に係る考案に対して、株式会社タダノより実用新案登録異議の申立てがされ、平成12年1月21日付け取消理由通知の指定期間内である平成12年4月4日付けで訂正請求がされ、これに対して平成12年5月2日付けで訂正拒絶理由通知がされ、期間を指定して意見書を提出する機会を与えられたが、何らの応答もなかった。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正明細書の請求項1に係る考案
平成12年4月4日付けで提出された訂正請求書に添付した訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、訂正請求項に係る考案という)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】車体と、前記車体に取り付けられた道路走行用車輪と、前記車体に下方に張出・格納自在に取り付けられた軌道走行用車輪と、前記車体に起伏、旋回および伸縮自在に配設されたブーム装置とを有して構成され、前記軌道走行用車輪を格納して前記道路走行用車輪により道路走行が可能であるとともに、前記軌道走行用車輪を軌道上に張り出して上方にトロリ線が架設された軌道上での走行が可能に構成された軌陸ブーム作業車の安全装置であって、前記軌道走行用車輪の張出を検出する張出検出器と、前記張出検出器により前記軌道走行用車輪が張り出されたことが検出されているときに、前記ブーム装置が前記軌道の上方における前記トロリ線の架設範囲に入ったか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記ブーム装置が前記架設範囲に入ったと判定されたときに警報作動を行う警報手段とから構成されることを特徴とする軌陸ブーム作業車の安全装置。」
2.引用刊行物記載の考案
刊行物1:実願平4-16310号(実開平5-69092号)のマイクロイルム
刊行物2:特公昭51-30344号公報(異議申立人が提出した甲第1号証)

a)当審が通知した訂正拒絶理由通知で引用した上記刊行物1には、
(1)「【請求項1】道路上を走行自在な車両の車体に旋回作動が自在なブームを取り付けてなり、さらに鉄道用レール上を走行するための鉄輪を張出・格納自在に備えてなる軌陸用ブーム作業車の安全装置であって、前記鉄輪が張出されたことを検出する鉄輪張出検出手段と、この鉄輪張出検出手段により前記鉄輪が張出されたことが検出されたときに、前記ブームの旋回作動を規制する規制手段と、前記ブームの全旋回範囲のうち選択された一部の範囲についてのみ前記規制手段による前記ブームの旋回作動規制を解除する規制解除手段とから構成されることを特徴とする軌陸用ブーム作業車の安全装置。」(実用新案登録請求の範囲)、
(2)「鉄道用レールに沿って設置されたトロリ線や各種設備の保守・点検等を行う場合には、いわゆる軌陸用ブーム作業車が用いられることが多い。この軌陸用ブーム作業車は、トラック等、道路上を走行する車両をベースとして構成され、その車体に起伏・旋回作動等が自在なブーム(このブームの先端には作業台等が取り付けられる)を備えるとともに、車体の下部に鉄道用レール上を走行するための鉄輪を備えている。なお、鉄輪は車体に対して張出・格納が自在であり、本作業車が鉄道用レール上を走行する場合にはその鉄輪が張出され、道路上を走行する場合には格納される。このような軌陸用ブーム作業車では、作業現場近くまで道路上を走行して移動し、作業現場近くから鉄道用レール上を走行して作業現場に移動する。これにより、迅速に作業現場に到着することができる。そして、ブームを起伏・旋回作動等させることにより、容易に鉄道用レール周辺における高所等での作業を行うことができる。」(段落【0002】)、
(3)「鉄道用レール上に載った軌陸用ブーム作業車が、他のレール上における列車の走行を妨害することなく作業を行えるようにした軌陸用ブーム作業車の安全装置を提供することを目的としている。」(段落【0004】の抜粋)、
(4)「上記の目的を達成するために、本考案の安全装置は、鉄輪が張出されたことを検出する鉄輪張出検出手段を備え、この鉄輪張出検出手段により鉄輪が張出されたことが検出されたときに、ブームの旋回作動を規制する規制手段を備えている。さらに、ブームの全旋回範囲のうち選択された一部の範囲についてのみ規制手段によるブームの旋回作動規制を解除する規制解除手段を備えている。」(段落【0005】の抜粋)、及び
(5)「鉄輪張出検出器11は、鉄輪36が張出されたこと、つまりは作業車30が鉄道用レールR上に載置されたことを検出して検出信号を出力する。規制コントローラ12は、その鉄輪張出検出器11からの検出信号を受けると、旋回台33の旋回作動(以下、ブーム34の旋回作動という)を規制する。例えば、旋回台33を作動させる油圧アクチュエータへの作動油供給を停止させる。これにより、作業者がブーム34の旋回操作を行っても、ブーム34の旋回作動は行われない。ただし、このままでは作業を行うことができないので、次の規制解除ユニット13が設けられている。」(段落【0010】)と記載されている。
これらの記載及び図面を参酌すると、刊行物1には
「車体と、前記車体に取り付けられたタイヤと、前記車体に下方に張出・格納自在に取り付けられた軌道走行用鉄輪と、前記車体に起伏、旋回および伸縮自在に配設されたブーム装置とを有して構成され、前記軌道走行用鉄輪を格納して前記タイヤにより道路走行が可能であるとともに、前記鉄輪を軌道上に張り出して上方にトロリ線が架設された軌道上での走行が可能に構成された軌陸ブーム作業車の安全装置であって、前記軌道走行用鉄輪の張出を検出する張出検出器と、前記張出検出器により前記軌道走行用鉄輪が張り出されたことが検出されているときに、ブームの旋回作動を規制する規制手段を有する軌陸ブーム作業車の安全装置。」が記載されているものと認められる。
b)当審が通知した訂正拒絶理由通知で引用した上記刊行物2には、
(6)「本発明はクレーン等の作業機械の高さ制限装置に関するものである。軌条車にクレーンを塔載した場合のクレーン作業は架線があるため架線とクレーンとの接触の危険を避けるために細心の注意を必要とする。同様の状態はトンネル、倉庫内でのクレーン等の作業に際しても生じ、操作者は下方の処理すべき品物と上方の許容空間とを常に注視する必要がある。架線、天井張り等が存在する場合には誤作動に基づく危険又は障害が著しく大きい。本発明の目的は上述の危険を除くために架線等に接触する前に自動的に油圧シリンダへの加圧油供給回路を遮断する高さ制限装置を提供するにある」(第1欄第28行乃至第2欄第4行)、
(7)「第1図に示すようにレール1上を走行する作業車、例えば、軌条車2にクレーン3を取付け、クレーン3の端部ブーム4が架線5に接触するのを防ぐために本発明による高さ制限装置6を設ける。第2図に示す通り、クレーン3の主柱7にピン8によってメーンブーム9を枢着し、メーンブーム9と主柱7との間にピン10,11によってブーム起伏用シリンダ12を枢着する。端部ブーム4はメーンブーム9内を摺動可能とし、端部ブーム4とメーンブーム9との間にピン13,14によってブーム伸縮用シリンダ15を枢着する。高さ制限装置6のブラケット16を主柱7に固着する。ブラケット16に摺動可能に係合させた高さ制限棒17を止めねじ18によって所要の高さに固定する。高さ制限棒17の先端にピン19によって回転自在に支承した滑車20にワイヤロープ21を係合させ、ワイヤロープ21の一端を先端ブーム4の頂部の止め金具27に固着し、他端をブラケット16に取付けたリール28に巻いてワイヤロープ21を常に緊張状態に保ち得る張力を作用させる。高さ制限棒17の頂部に近接してレバー22をピン23によって枢着する。第3,4図に示す通り、ローラ24をピン25によってレバー22に回転自在に支承し、図示しない弱いばね又は自重によってローラ24を常にワイヤロープ21に接触させる。高さ制限棒17にリミットスイッチ26を取付け、ワイヤロープ21がほゞ水平となった時にレバー22の他方の腕22aによってリミットスイッチ26を作動させる」(第2欄第29行乃至第3欄第21行)、及び
(8)「レバー22によってリミットスイッチ26を作動させ、電磁弁41,47が位置dとなったことを図示しない警報灯等によって操作者が知った時はブーム起伏用切換弁35を位置bとし、加圧油はシリンダ12のへツド側油室39に供給され、ロッド側油室40内の油はチェック弁42、切換弁35、導管49を経て油溜31に戻り、メーンブーム9は下方に回動する。これによってワイヤロープ21は水平位置でなくなり、レバー22は回動してレバー腕22aはリミットスイッチ26から離れる。電磁弁41,47は定常位置cに戻り、警報灯は消える」(第4欄第36行乃至第5欄第3行)と記載されている。
3.対比・判断
訂正請求項に係る考案と刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された考案の「タイヤ」、「軌道走行用鉄輪」は、訂正請求項に係る考案の「道路走行用車輪」、「軌道走行用車輪」に相当するものと認められるので、両者は、
「車体と、前記車体に取り付けられた道路走行用車輪と、前記車体に下方に張出・格納自在に取り付けられた軌道走行用車輪と、前記車体に起伏、旋回および伸縮自在に配設されたブーム装置とを有して構成され、前記軌道走行用車輪を格納して前記道路走行用車輪により道路走行が可能であるとともに、前記軌道走行用車輪を軌道上に張り出して上方にトロリ線が架設された軌道上での走行が可能に構成された軌陸ブーム作業車の安全装置であって、前記軌道走行用車輪の張出を検出する張出検出器と、前記張出検出器により前記軌道走行用車輪が張り出されたことが検出されているときに、安全に作業が行える軌陸ブーム作業車の安全装置」で一致するが、下記の相違点で相違する。
<相違点>張出検出器により軌道走行用車輪が張り出されたことが検出されているときに作動する軌陸ブーム作業車の具体的安全装置に関して、本件訂正請求項に係る考案ではブーム装置が軌道の上方におけるトロリ線の架設範囲に入ったか否かを判定する判定手段と該判定手段によりブーム装置が架設範囲に入ったと判定されたときに警報作動を行う警報手段とから構成されるのに対し、刊行物1に記載されたものではブームの旋回作動を規制する規制手段で構成される点。
ここで、上記相違点を検討する。
刊行物2には、上記2.(6)で摘記したように「本発明の目的は上述の危険を除くために架線等に接触する前に自動的に油圧シリンダへの加圧油供給回路を遮断する高さ制限装置を提供するにある」と記載され、同じく上記(8)で摘記したように「レバー22によってリミットスイッチ26を作動させ、電磁弁41,47が位置dとなったことを図示しない警報灯等によって操作者が知った時はブーム起伏用切換弁35を位置bとし、加圧油はシリンダ12のへツド側油室39に供給され、ロッド側油室40内の油はチェック弁42、切換弁35、導管49を経て油溜31に戻り、メーンブーム9は下方に回動する。これによってワイヤロープ21は水平位置でなくなり、レバー22は回動してレバー腕22aはリミットスイッチ26から離れる。電磁弁41,47は定常位置cに戻り、警報灯は消える」と記載されている。
それらの記載を併せ検討するに、刊行物2には「軌陸ブーム作業車の安全装置において、ブーム装置が軌道の上方におけるトロリ線の架設範囲に入ったか否かを判定する判定手段と該判定手段によりブーム装置が架設範囲に入ったと判定されたときに警報作動を行う警報手段」が記載されているものと認められる。
そして、刊行物1と2に記載された考案は、共にブーム作業車の安全装置という技術分野及び機能・作用が共通している。
してみれば、刊行物1記載の軌陸ブーム作業車の安全装置として、刊行物2記載の上記構成を採用することは、当業者がきわめて容易に想到しうるものであり、上記相違点における本件訂正請求項に係る考案の構成は、当業者がきわめて容易に想到しうる事項にすぎないものと認められる。
4.むすび
したがって、訂正請求項に係る考案は、上記刊行物1、2記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して登録を受けることができないものである。 以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、特許法第120条の4第3項で準用する同第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正請求は認められない。

III.実用新案登録異議申立てについて
1.本件考案
請求項1に係る考案(以下、本件考案という)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】上方にトロリ線が架設された軌道を走行する車体に、起伏自在なブーム装置を取り付けてなる軌道用ブーム作業車の安全装置であって、前記ブーム装置が前記軌道の上方における前記トロリ線の架設範囲に入ったか否かを判定する判定手段と、この判定手段により前記ブーム装置が前記架設範囲に入ったと判定されたときに警報作動を行う警報手段とから構成される軌道用ブーム作業車の安全装置。」
2.実用新案法第3条第1項違反について
当審が通知した平成12年1月21日付け取消理由通知において引用した上記刊行物2(特公昭51-30344号公報)、には、上記II.「2.引用刊行物記載の考案」のb)に記載したとおりの考案が記載されている。
本件考案と刊行物2に記載された考案とを比較すると、刊行物2の「架線」、「端部ブーム、メーンブーム」、「レール1上を走行するクレーン等の作業車」は、それぞれ、本件考案の「トロリー線」、「ブーム装置」、「軌道用ブーム作業車」に相当するものと認められる。
また、刊行物2には、上記II.3に記載した同様の理由で、「軌道用ブーム作業車の安全装置において、ブーム装置が軌道の上方におけるトロリ線の架設範囲に入ったか否かを判定する判定手段と該判定手段によりブーム装置が架設範囲に入ったと判定されたときに警報作動を行う警報手段」が記載されているものと認められる。
以上を鑑みれば、両者は、「上方にトロリ線が架設された軌道を走行する車体に、起伏自在なブーム装置を取り付けてなる軌道用ブーム作業車の安全装置であって、前記ブーム装置が前記軌道の上方における前記トロリ線の架設範囲に入ったか否かを判定する判定手段と、この判定手段により前記ブーム装置が前記架設範囲に入ったと判定されたときに警報作動を行う警報手段とから構成される軌道用ブーム作業車の安全装置。」である点で一致し、両者に構成の相違はない。
3.むすび
以上のとおり、本件考案は、その出願前に国内において頒布された刊行物2に記載された考案であるから、その登録は実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、上記のとおり決定する。
異議決定日 2000-08-11 
出願番号 実願平5-60629 
審決分類 U 1 651・ 113- ZB (B66F)
U 1 651・ 121- ZB (B66F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 久雄  
特許庁審判長 藤田 豊比古
特許庁審判官 清田 栄章
蓑輪 安夫
登録日 1998-12-11 
登録番号 実用新案登録第2590739号(U2590739) 
権利者 株式会社アイチコーポレーション
愛知県名古屋市中区千代田2丁目15番18号
考案の名称 軌道用ブーム作業車の安全装置  
代理人 大西 正悟  
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