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審決分類 審判 全部申し立て   B65D
管理番号 1028373
異議申立番号 異議1999-70113  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-01-11 
確定日 2000-09-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第2576760号「包装用かご」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2576760号の実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2576760号は、平成5年4月22日に出願され、平成10年4月24日に実用新案権の設定の登録があり、実用新案登録掲載公報が平成10年7月16日に発行され、その後、平成11年1月11日付けで堀田浩一より実用新案登録異議の申立てがあり、取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成11年8月2日付けで登録異議意見書の提出と共に訂正請求がされ、訂正拒絶理由が通知されたが、それに対しては何ら応答がなかったものである。

2.本件出願の出願日について
本件に係る実用新案登録出願は、出願後、実用新案登録をすべき旨の査定の謄本の送達前である平成8年10月29日にその願書に添付した明細書について補正がされたものであるが、その補正事項には、実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載中、「ある程度の力を加えて急激に引き拡げることにより、切断して」とあるのを、「ある程度の力を加えて細幅体を折切して」(以下、「構成イ」という。)と補正し、それに対応する考案の詳細な説明の欄の記載も補正することが含まれている。
ところで、かご本体同士を分離させる点の構成に関し、出願当初の明細書には、「ある程度の力を加えて急激に引き拡げること」についてのみ記載され、当該構成イについては、出願当初の明細書には何ら記載されていないものである。
この点について、権利者は、平成11年8月2日付けの登録異議意見書において、「各かご本体を分離させようとする場合、純粋に開脚状に引き拡げるだけでなく、上下に折り曲げる行為をも行いながら分離しようとするのが自然であり、当業者であれば容易になし得る行為である」旨反論している。
しかしながら、「開脚状に引き拡げる」とは、かご本体を水平方向に引き離す動作を意味するものと解されるが、「折切し」とはかご本体に対し垂直方向に回動する動作であり、両者は明らかに相違する。また、権利者が主張するように、当然に2つの動作を行うものとは認められず、自明なことともいえない。
よって、引き拡げる点の説明のみ記載された明細書に、折切する点が記載されていた、あるいは記載されているに等しいとすることはできず、平成8年10月29日付け手続補正は、明細書の要旨を変更するものと認めざるを得ない。
以上のとおり、本件実用新案登録は、願書に添付した明細書又は図面について実用新案登録をすべき旨の査定の謄本の送達前にした補正がこれらの要旨を変更するものと認められる実用新案登録出願に対してされたものである。
したがって、本件実用新案登録に係る出願は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条の規定により、なおその効力を有するとされる改正前の実用新案法第9条第1項において準用する改正前の特許法第40条の規定により、その出願について手続補正書を提出した平成8年10月29日にしたものとみなす。

3.訂正の適否について
(1)訂正の内容
本件訂正請求に係る訂正は、次の事項を内容とする。
a.実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載
「内容物を入れる空間を保って段積みできる複数個のかご本体を、かご本体同士間に隙間を設けて、横方向に連設して、この連設部分を手作業で分離できるようになされた包装用かごであって、各かご本体は、その少なくとも一つの側縁同士の複数箇所が細幅体を介して連設され、この各側縁の外端部を把持し、ある程度の力を加えて細幅体を折切してかご本体同士が分離されるように構成されたことを特徴とする包装用かご。」を、
「内容物を入れる空間を保って段積みできる複数個のかご本体を、かご本体同士間に隙間を設けて、横方向に連設して、この連設部分を手作業で分離できるようになされた包装用かごであって、各かご本体は、その少なくとも一つの側縁同士がこれら側縁の長さに対応する所定間隔を隔てて配置された2つの細幅体によって連設され、この各側縁の外端部を把持し、ある程度の力を加えて細幅体を折切してかご本体同士が分離されるように構成されたことを特徴とする包装用かご。」とする。
b.訂正事項aに伴い、考案の詳細な説明中の対応する箇所の記載を、両者の整合を採って訂正する。

(2)訂正の目的の適否
上記訂正事項aは、各かご本体の細幅体による連設状態を、「複数箇所」であったものを「2つ」に限定するものであるから、請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。
また、上記訂正事項bは、aの訂正に伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合をとるためのものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。

(3)独立登録要件の判断
本件訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下、「訂正考案」という。)が独立して実用新案登録を受けることができるものかどうかについて検討する。

(i)訂正考案
訂正考案は、全文訂正明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。
なお、その訂正後の請求項1の記載は前記(2)に摘記したとおりである。

(ii)引用刊行物
当審が訂正拒絶理由通知において引用した、上記2において本件の出願日とみなされた日前に頒布された刊行物である、実願平5-21867号(実開平6-80637号)のCD-ROM(以下、「引用例1」という。なお、当該刊行物は本件考案にについて公開されたものである。)および実願昭50-138741号(実開昭52-51832号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、概略次の事項を内容とする考案が記載されている。
[引用例1]
「内容物を入れる空間を保って段積みできる複数個のかご本体を横方向に連設して、この連設部分を手作業で分離できるようになされた包装用かごであって、各かご本体は、その少なくとも一つの側縁同士が線状体を介して連設され、この各側縁の外端部を把持し、ある程度の力を加えて急激に引き拡げることにより、線状体を切断してかご本体同士が分離されるように構成されたことを特徴とする包装用かご。」(実用新案登録請求の範囲)
「かご本体1の隣合う両側縁11同士および両側縁12同士は、それぞれ二つの線状体13,14および15,16を介して連設されている。」(段落【0029】)
[引用例2]
「底板の表面に断面弧状の複数の凹陥条溝が平行に設けられた発泡熱可塑性樹脂製の浅底容器が、互いに隣接する側板の上部全長に亘って側板の厚み以下の厚みを有する連結部によって容器が同一平面上に複数個一体に連結せしめられてなることを特徴とする連結容器」(実用新案登録請求の範囲)
「本考案の容器は、各容器に………(中略)………等の被収容物品を収容し、両端部で持上げても連結部(5)で各容器は連結しているので、各容器に分離することはない。しかし、これを両手で上下に強く彎曲すると、連結部(5)は切断されて各容器に分離される。」(4頁7?13行)

(iii)対比
引用例1の記載を検討するに、上記摘記記載および図面の記載からみて、そのかご本体の少なくとも1つの側縁同士を連設する線状体は、訂正考案の細幅体に相当するものと認められ、かつ「側縁の長さに対応する所定間隔を隔てて」2つ「配置され」、しかも、かご本体同士間には「隙間」が設けられているものと解される。
そうすると、訂正考案と引用例1記載の考案(以下、「引用考案」という。)とを、訂正考案の用語を用いて対比すると、両者は、「内容物を入れる空間を保って段積みできる複数個のかご本体を、かご本体同士間に隙間を設けて、横方向に連設して、この連設部分を手作業で分離できるようになされた包装用かごであって、各かご本体は、その少なくとも一つの側縁同士がこれら側縁の長さに対応する所定間隔を隔てて配置された2つの細幅体によって連設され」た「包装用かご」であり、「各側縁の外端部を把持し」た上で、「ある程度の力を加え」て「かご本体同士が分離されるように構成され」たものである点で一致し、訂正考案が「細幅体を折切して」分離するものであるのに対し、引用考案は「急激に引き拡げることにより、線状体を切断して」分離するものである点で相違する。

(iv)当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用例2には、上記摘記事項および図面の記載からみて、両手で上下に湾曲することによって容易に各容器に分離することができる連結容器が開示されている。当該引用例の場合の、連結部を「上下に彎曲させて」分離することは、換言すれば「折切すること」により分離することに他ならず、連結容器において、ある程度の力を加えて連結部を折切して分離する技術は本件出願前公知の技術であったものと認めることができる。
そして、連設して用いられる容器という点で共通する引用例2に開示された分離技術を引用例1の包装用かごに適用することが当業者にとって格別の創意を要するものとも認められないから、引用考案の「側縁の長さに対応する所定間隔を隔てて配置されている線状体」部分を、折切して分離されるような構成とすること、すなわち上記相違点に係る構成は、当業者が必要に応じてきわめて容易になし得ることとするのが相当である。
以上のとおりであるから、訂正考案は、引用例1および引用例2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。

(v)むすび
したがって、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.登録異議申立てについて
(1)本件考案
本件の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載にされた次のとおりのものである。
「内容物を入れる空間を保って段積みできる複数個のかご本体を、かご本体同士間に隙間を設けて、横方向に連設して、この連設部分を手作業で分離できるようになされた包装用かごであって、各かご本体は、その少なくとも一つの側縁同士の複数箇所が細幅体を介して連設され、この各側縁の外端部を把持し、ある程度の力を加えて細幅体を折切してかご本体同士が分離されるように構成されたことを特徴とする包装用かご」
(2)刊行物
当審が先の取消理由通知に引用した、本件の出願日前に頒布された刊行物である、実願平5-21867号(実開平6-80637号)のCD-ROM(前記「引用例1」)および実願昭50-138741号(実開昭52-51832号)のマイクロフィルム(前記「引用例2」)には、前記3(3)(ii)に示した事項を内容とする考案が記載されている。

(3)対比・判断
本件考案と引用例1記載の考案(前記「引用考案」)とを対比する。
前記3(3)(iii)でも検討したように、引用例1には、そのかご本体を連設する「線状体」は、訂正考案の「細幅体」に相当するものと認められ、かつ、「少なくとも1つの側縁同士」が2つの線状体を介して連設されているから、複数箇所が連設されているものであり、また、かご本体同士間には「隙間」が設けられているものと解される。
そうすると、本件考案と引用考案とを、訂正考案の用語を用いて対比すると、両者は、「内容物を入れる空間を保って段積みできる複数個のかご本体を、かご本体同士間に隙間を設けて、横方向に連設して、この連設部分を手作業で分離できるようになされた包装用かごであって、各かご本体は、その少なくとも一つの側縁同士の複数箇所が細幅体を介して連設され」た「包装用かご」であり、「各側縁の外端部を把持し」た上で、「ある程度の力を加え」て「かご本体同士が分離されるように構成され」たものである点で一致し、本件考案が「細幅体を折切して」分離するものであるのに対し、引用考案は「急激に引き拡げることにより、線状体を切断して」分離するものである点で相違する。
そこで、上記相違点について検討するに、前記3(3)(iv)に述べた理由と同様に、当該相違点に係る構成は、引用例2に開示された分離技術を引用例1の包装用かごに適用することによって当業者が必要に応じてきわめて容易になし得ることと認められる。

(4)むすび
以上のとおり、本件考案は、引用例1および引用例2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件請求項1に係る実用新案登録は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条の規定に基づき準用する特許法113条第第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-04-25 
出願番号 実願平5-21867 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (B65D)
最終処分 取消    
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 佐藤 雪枝
特許庁審判官 船越 巧子
西村 綾子
登録日 1998-04-24 
登録番号 実用新案登録第2576760号(U2576760) 
権利者 有限会社川原商店
兵庫県津名郡津名町大谷896番地の1
考案の名称 包装用かご  
代理人 倉内 義朗  

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