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審決分類 |
審判 全部申し立て B65D |
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管理番号 | 1028377 |
異議申立番号 | 異議1998-74999 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-10-08 |
確定日 | 2000-09-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第2568162号「易開封性包装袋」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2568162号の実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
1. 本件は、実用新案登録第2568162号に関し、その受けた登録を取り消すべきことを請求して提起された実用新案登録異議申立事件にかかり、その経緯の概要は、以下のとおりである。 1) 出願日:平成2年4月11日(特願平2-94103の変更出願) 2) 登録日:平成10年1月9日 3) 公報発行日:平成10年4月8日 4) 異議申立日:平成10年10月8日 5) 実用新案登録異議申立人:福島 一郎 6) 取消理由通知 :平成12年3月27日付けを以て、当審より第3回 目の取消理由の通知 7) 意 見 書 :平成12年6月2日付けで、実用新案登録権者より、 意見書を提出 2. 本件登録実用新案に係る考案は、明細書の実用新案登録請求の範囲【請求項1】に記載された次ぎのとおりのものである。 「二軸延伸フィルム層と、この二軸延伸フィルム層に積層したシーラント層とを具えるフィルム積層構体を、シーラント層のヒートシールによって製袋してなり、少なくとも一のヒートシール部分に、その延在方向に間隔をおいて位置する複数の引裂誘導疵を有する包装袋であって、 前記二軸延伸フィルム層の分子配向線を、包装袋の表面側と裏面側とで相互に交差させるとともに、各分子配向線と、包装袋の、前記引裂誘導疵を設けたヒートシール部分と直交する辺縁との交角を、0度を越えて15度以下とし、引裂外力の作用方向のいかんにかかわらず易開封性を担保してなる易開封性包装袋」 3. 引用文献 1) 引用例:「特開昭63-82965号公報」 本引用例には、以下の事項が図面とともに記載されている。 イ) 「(1)少なくとも1層の基材層と少なくとも1層の熱融着層とを有する複合フィルムの端縁部を熱融圧着してなる袋であって、該基材層は低密度ポリエチレンよりも硬い熱可塑性樹脂で形成され、かつ1.5倍以上に2軸延伸されてなり、互いに熱融圧着された2層の複合フィルムが、その基材層の配向方向を示す配向線が0° ?20°の角度で交差するように配置され、かつ該袋の熱融着部の端縁部に少なくとも基材層を貫通する傷痕を設けたことを特徴とする易開封性袋。」(特許請求の範囲) ロ) 「ここで、例えば第2図に示す如きフィルムを製袋する場合、従来の市販の三方シール袋用製袋機では、基材層の上に熱融着層を設けたフィルムを半折して熱融着層どうしを重ね合わせて三方をシールするために、袋の上面のフィルムと下面のフィルムは第4図に示すように、配向線が一致しない状態となる。」(第3頁下段左欄第15行?同下段右欄第1行) ハ) 「そして、このように袋の上面と下面とで基材層の配向方向が異ると、片側の基材層が引裂かれようとするのを他方の基材層が妨害し、この妨害効果は基材層どうしが熱融着層を介して貼合わされた熱融部において最も著しくなる。そこで、このような袋の熱融着した端縁部にIノッチやVノッチを入れても熱融着部でつっかかってしまい、更に引裂くのにはより大きな力を要し、大きな力で無理に引裂いた場合には融着部を通過したところから第5図のように上面と下面のフィルムがそれぞれ異なった方向に引裂かれることとなる。第5図中5は引裂部である。 これに対し、本発明では、互いに熱融圧着された2層の複合フィルムが、その基材層の配向方向を示す配向線が0° ?20°の交差角(第4図中ではθとして示してある)で交差するように配置してある。この交差角θは0°?1 5° が好ましく、0° ?5° がより好ましく、0° ?2° が更に好ましく、0° すなわち、完全に配向軸が一致している場合が最も好ましい。」 (第3頁下段右欄第9行?第4頁上段左欄第7行目) ニ) 「配向線の交差角を上記範囲のように小さくするには以下の方法が採用される。 (1) 第6図のように2軸延伸配向後にフィルム走行方向(縦方向=Machine Direction=MD)に所定の長さLごとに切断し、これを片方を平行移動させて(反転しない)第6図中、a_(1)とb_(1)、a_(2)とb_(2)のそれぞれ位置で重ね合せる方法。 (2) 第7図のように巾方向(横方向=Transverse Direction=TD)に適宜の巾に等分し、配向線の交差角が最も小さい値になるように、平行移動するかあるいは第8図のように反転させて重ね合わせる方法。 ………………………………………………………………………………………… ………………………………………………………………………………………… …また、第8図のようにほぼ左右対称に配向している場合に(2)の方法を適用するには、2等分するには中央の破線で折るかまたは切断して、フィルムの表面どうし、あるいは裏面どうしを重ね合わせれば、交差角を小さくすることができる。」(第4頁上段左欄第17行?同下段左欄第10行目) ホ) 「傷痕の形状、大きさは問わないが、ノッチ効果が生ずるよう傷痕の一部に鋭角状(ノッチ状)の部分があるのが好ましい。また、第9-C図、第10-A図のように複合フィルムの長手方向に垂直な方向に細長い形状が好ましい。第10-A図乃至第10-E図は傷痕の形状を例示して説明するための平面図で、第10-A図は、複合フィルムの長手方向に垂直な方向に細長い形状を有する短い線状の傷痕を示し、第10-B図は三角形状の傷痕を示し、第10-C図はひし形(ダイヤ形)の傷痕を示し、第10-D図は星形の傷痕を示し、第10-E図は点形(ドット形)の傷痕を示す。」(公報第4頁下段左欄15行?同右欄6行目) ヘ) 「第17図に示すように、縦横に桝目状の傷痕6の群を設けた場合には4方のいずれの部位からも破ることのできる4方シール型の袋が得られる。」(第5頁下段左欄第16行?第19行目) ト) 「傷痕を入れる位置は、袋の熱融着部の端縁から5mm程度以内で、傷痕の間隔は1?5mmであり、2列以上に配してもよい。」(公報第5頁下段右欄11行?13行目)。 チ) 「MC加工、Vノッチ、Iノッチを入れたものに差異はなくいずれも抵抗なく簡単に開封できた。また左右どちらからのサイドから引裂いても抵抗なく簡単に開封できた。」(公報第6頁上段右欄13行?16行目) 頁5行?12行目) 4. 対比・判断 本件【請求項1】に係る考案と引用例に記載された考案とを対比検討すると、引用例に記載された「基材層」は2軸延伸されているので本件【請求項1】に係る考案の「二軸延伸フィルム層」に相当し、引用例に記載された「熱融着層」、「複合フィルム」、「配向方向を示す配向線」は、それぞれ、本件【請求項1】に係る考案の「シーラント層」、「フィルム積層構体」、「分子配向線」に相当している。 また、引用例に記載された「熱融着した端縁部」は、本件【請求項1】に係る考案の「ヒートシール部分」に相当しており、引用例の第10図図示の態様から明らかなとおり、ヒートシール部分には複数の傷痕が延在方向に間隔をおいて存在しているところ、斯かる「複数の傷痕」は、本件【請求項1】に係る考案の「複数の引裂誘導疵」に相当し、且つこれ等複数の引裂誘導疵は、「その延在方向に間隔をおいて位置する」を、実現していることも明らかに是認されるところである。 さらに、引用例に記載された「互いに熱融圧着された2層の複合フィルム(袋の上面を「表面側」と措定すると、袋の下面は「裏面側」となる)」は、本件【請求項1】に係る考案の「包装袋の表面側と裏面側」をなし、且つ引用例に記載の表・裏両面側を為す2層の複合フィルムが、「配向方向を示す配向線が交差角θの角度で交差するように配置され」るから、本件【請求項1】に係る考案の「包装袋の表面側と裏面側とで相互に交差させる」を、実現していることは明らかというべきである。 またさらに、引用例に記載の包装袋の表面側フィルムの分子配向線と裏面側フィルムの分子配向線との交差角は、0°?20°である。 なお、このことのみでは、飽くまでも表裏両面フィルムの分子配向線の交差角度を示すことはあっても、分子配向線とヒートシール部分と直交する辺縁との交角については、言及していないということができよう。 しかしながら、引用例の記載全体を見渡すと、引用例に記載の交差角も、分子配向線とヒートシール部分と直交する辺縁との交角として、実現しているものと捉えることができる。 先ず、第6図の記載からみると、MD方向はそれ自体縦方向をなしており、これが即ち、包装袋の長手方向を含意している(Lが、袋体の長手方向を示す。)。 つまり、このことから、引用例中には、機械による樹脂引き出し方向と、包装袋の長手方向を符合させるという技術概念が見出だされる。 他方、上記MD方向は、第8図では同図の縦方向と一致することは明らかであり、この縦方向に沿って、ヒートシール部分が存しこのヒートシール部分に引裂誘導疵が存在することも亦明らかというべきである(第9図、第10図の態様参照)。 斯様に、引裂誘導疵を設けたヒートシール部分と直交する辺縁は、袋(袋の形状は、菱形や三角形ではなく、機械方向を縦方向とする長方形である。)の幅方向自体であることは明らかに是認されるところである(即ちTR方向をなす。)。 さて、翻って、このような袋の表裏両面フィルムの分子配向線の交角を検討すると、先にみたとおり、表裏両面側フィルムの分子配向線交差角は、 交差角θ=0°?20°であるところ、この交点にヒートシール部に直交する線(幅方向線)を引くと、各分子配向線が右直交線たる幅方向線となす各交差角は、それぞれ、0°?10°となることが解る。 してみれば、引用例に記載された考案の易開封性袋においても、各分子配向線と、包装袋の、引裂誘導疵を設けたヒートシール部分と直交する辺縁との交角を、所望の範域に特定した技術的事項が、包括されるものである。 また、引用例に記載の「易開封性袋」は、本件【請求項1】に係る考案の「易開封性包装袋」と実質上同義であることは、言を待たないところである。 以上のとおりであるから、本件【請求項1】に係る考案と引用例に記載の考案とは、 「二軸延伸フィルム層と、この二軸延伸フィルム層に積層したシーラント層とを具えるフィルム積層構体を、シーラント層のヒートシールによって製袋してなり、少なくとも一のヒートシール部分に、その延在方向に間隔をおいて位置する複数の引裂誘導疵を有する包装袋であって、 前記二軸延伸フィルム層の分子配向線を、包装袋の表面側と裏面側とで相互に交差させるとともに、各分子配向線と、包装袋の、前記引裂誘導疵を設けたヒートシール部分と直交する辺縁との交角を、所望の範域に特定した、 易開封性を担保してなる易開封性包装袋」 である点で一致している。 他方、両者は、以下の点において相違している。 1) 引裂誘導疵を設けたヒートシール部分と直交する辺縁との交角の範域の特定につき、本件【請求項1】に係る考案が、0度を越えて15度以下としたのに対して、引用例に記載の考案においては、0度?10度となした点。 2) 本件【請求項1】に係る考案が、「引裂外力の作用方向のいかんにかかわらず易開封性を担保した」ものであるのに対して、引用例に記載された考案の易開封性包装袋においては、その目的・構成・効果に徴し引裂外力の作用する方向性の如何を問わず可及的に易開封性を追求しているものではあるが、斯かる形式的文言による記載がされていない点。 そこで、これ等の相違点につき、審案する。 イ) 1)の相違点について なるほど、引用例に記載の考案の易開封性包装袋においては、 各分子配向線と包装袋の引裂誘導疵を設けたヒートシール部分と直交する辺縁との交角の範域は、0度?10度となっており、本件【請求項1】に係る考案の交角の範域0度を越えて15度以下とは、相違している。 しかしながら、易開封性を誘うにつき最も力少なく開封を実現することができる交角0度をわざわざ除いた本件【請求項1】に係る考案の下限の特定には、格別の有意義性は、見いだされない。 また、本件【請求項1】に係る考案の上記交角の範域の上限は、15度であるが、交角が大であればむしろ開封により大きな力を必要とするものであることは明らかである。 したがって、本件【請求項1】に係る考案が、上記交角につき、引用例に記載の考案の交角の範域に代えて0度を越えて15度までとした点は、当業者当然予測の範域を出ず且つ格別臨界的有意性は窺われないところ、設計変更の域を出ないものというべきである。また、よって齎らされる効用も明細書の記載から窺うに格別顕著であるとはいい難い。 ロ) 2)の相違点について 上記2)の相違点は、本件【請求項1】に係る考案の前段の 「二軸延伸フィルム層と、この二軸延伸フィルム層に積層したシーラント層とを具えるフィルム積層構体を、シーラント層のヒートシールによって製袋してなり、少なくとも一のヒートシール部分に、その延在方向に間隔をおいて位置する複数の引裂誘導疵を有する包装袋であって、前記二軸延伸フィルム層の分子配向線を、包装袋の表面側と裏面側とで相互に交差させるとともに、各分子配向線と、包装袋の、前記引裂誘導疵を設けたヒートシール部分と直交する辺縁との交角を、0度を越えて15度以下とし、」としたところの、 構成要件に随伴する機能を明確化したに過ぎないものというべきであり、引用例に記載の考案の構成要件からもこのような機能は誘われるものというべきところ、この点は、単なる記載形式上の差異に過ぎないものというべきである。 5. 結語 結局、本件【請求項1】に係る考案は、この出願前日本国内において頒布された刊行物である引用例に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に推考することができたものと認められる。 したがって、実用新案法第3条第2項の規定により、本件【請求項1】に係る考案につき、実用新案登録を受けることを得なかったものというべきである。 それ故、本件【請求項1】に係る考案につき受けた登録は、実用新案法第3条第2項の規定の趣意に反してされたものであるというべきところ、不適法なものという外はない。 上記のとおりであるから、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定において準用する特許法第113条第2号の規定により、本件【請求項1】に係る考案につき受けた登録は、不適法なものとして、取り消しを免れない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-07-24 |
出願番号 | 実願平6-469 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Z
(B65D)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 岡田 幸夫、鳥居 稔、平岩 正一、山崎 勝司 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
熊倉 強 藤原 稲治郎 |
登録日 | 1998-01-09 |
登録番号 | 実用新案登録第2568162号(U2568162) |
権利者 |
大成ラミック株式会社 埼玉県南埼玉郡白岡町篠津778番地2 |
考案の名称 | 易開封性包装袋 |
代理人 | 高見 和明 |
代理人 | 徳永 博 |
代理人 | 杉村 暁秀 |
代理人 | 中谷 光夫 |
代理人 | 梅本 政夫 |
代理人 | 藤谷 史朗 |
代理人 | 青木 純雄 |
代理人 | 杉村 純子 |
代理人 | 杉村 興作 |