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審決分類 審判 一部申し立て   H01R
審判 一部申し立て   H01R
管理番号 1028378
異議申立番号 異議1999-73168  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-18 
確定日 2000-11-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2596903号「ピン接続構造」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2596903号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯

本件実用新案登録第2596903号は平成4年11月30日の出願であって平成11年4月16日に設定登録がなされ、その後、斎藤陽より請求項1に係る実用新案登録に対し異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年5月16日に訂正請求(後日取下げ)がなされた後、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年10月27日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断

2-1.訂正の内容
a.請求項1の
「スプリングコンタクトピンと、コンタクトパッドが形成された回路部材とを押圧し、前記スプリングコンタクトピン先端を前記コンタクトパッドに接触させて電気的な接続をなすピン接続構造において、
前記スプリングコンタクトピン接触子の付勢方向を、前記スプリングコンタクトピンと前記回路部材との押圧方向に対して、一定角やや傾斜させてなることを特徴とするピン接続構造。」を
「複数のスプリングコンタクトピンと、コンタクトパッドが形成された回路部材とを押圧し、前記スプリングコンタクトピン先端を前記コンタクトパッドに接触させて電気的な接続をなすピン接続構造において、
前記スプリングコンタクトピン接触子の付勢方向を、前記スプリングコンタクトピンと前記回路部材との押圧方向に対して、一定角やや傾斜させるとともに前記複数のスプリングコンタクトピンの傾斜方向が少なくとも2方向に分散されてなることを特徴とするピン接続構造。」と訂正する。
b.請求項2の
「スプリングコンタクトピンが複数であるピン接続構造であって、前記複数のスプリングコンタクトピンの傾斜方向が少なくとも2方向に分散されてなることを特徴とする請求項1に記載のピン接続構造。」を
「前記複数のスプリングコンタクトピン同士がそれぞれ相互に前記回路部材に与える応力を相殺するように前記傾斜方向が選ばれてなることを特徴とする請求項1に記載のピン接続構造。」と訂正する。
c.明細書の段落【0018】において
「置き台51がDUT4が」を
「置き台51にDUT4が」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a.は、訂正前の請求項2に記載された事項を引用形式によらずに記載し直して新たに請求項1としたものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項b.は、明細書の段落【0019】の「この場合にも、コンタクトピン1a,1b同士、1c,1d同士はそれぞれ相互に水平方向の応力を相殺する。したがって、DUT4に偏った力(すなわち、この場合にはトルク)が加えられることはないので、DUT4は置き台51から脱落することはない。」の記載に基く訂正であり、訂正前の請求項2におけるスプリングコンタクトピンの傾斜方向を限定したものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項c.は、明瞭でない記載の釈明に該当する。
そして、上記各訂正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、コンタクトピンとコンタクトパッドとの接触を、簡易かつ確実に行うことができるピン接続構造の提供という課題に変更を及ぼすものではないから、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2-3.独立登録要件
訂正明細書の請求項1及び2に係る考案(以下、「本件考案1」及び「本件考案2」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものである。(前記2-1.a.及びb.参照)

これに対して、当審の平成12年3月6日付第1回目の取消理由通知において引用した刊行物1(特開昭57-152502号公報)には、
公報第1頁左下欄19行?右下欄3行に、「第1図は従来のヘッドシェルの取付装置を示すものであり、1はカートリッジ、2はヘッドシェル、3はその後端部、4はその後端面の4箇所に設けられた半球状の導電性接触部、5はカートリッジ1に接続される4本のリード線」と記載され、
また、公報第2頁左上欄9行?右上欄5行には、「本発明は第2図に一実施例の要部を示すように、コネクターピン8を、ヘッドシェルの中心軸lに対して傾斜して設けたものである。
このようにすれば、ヘッドシェルの後端部3をヘッドコネクター6のスリーブ6a内に挿入したとき、最部後端部3が第3図に実線で示す位置にあるときは、接触部4の13の点がコネクターピン8の先端に接触するが、後端部3が破線3’で示す位置まで挿入されると、接触部4の別の点14がコネクターピン8の先端に接触することになる。すなわちヘッドシェルの挿入動作に応じて接触部4の先端がコネクターピン8の先端に接触したまま15で示す量だけ移動し、これによって接触部4の先端がセルフクリーニングされることになる。このためごみやほこりあるいは錆等による接触不良を確実に防止し、常に安定な接触状態を得ることができる。」と記載されている。
また、第3図には、コネクターピン8の先端を接触部4に接触させて電気的な接続をなす接続構造が、さらに第2図には、複数のコネクターピン8をヘッドシェル2との押圧方向に対して一定角やや傾斜させたものがそれぞれ示されている。
したがって、刊行物1には、
ばね10を有する複数のコネクターピン8と、接触部4が後端面に形成されたヘッドシェル2とを押圧し、コネクターピン8の先端を接触部4に接触させて電気的な接続をなすピン接続構造において、コネクターピン接触子の付勢方向を、コネクターピン8とヘッドシェル2との押圧方向に対して、一定角やや傾斜させたピン接続構造が記載されている。

同じく引用した刊行物2(実願昭49-80433号(実開昭51-9283号)のマイクロフィルム)には、
電気的な接続をなすピン接続構造において、回路配線基板12の導体パターン12Aと液晶パネル11のネサ膜11Aとに、コネクタ筒体1に設けられた導電性コイルバネ2を介して一対の導電性可動接触子3が接触するコネクタ4を用いたものが記載されている。

本件考案1と上記刊行物1及び2に記載された考案とを対比すると、刊行物1記載の考案は、「複数のスプリングコンタクトピン(「コネクターピン8」が相当。)と、コンタクトパッド(「接触部4」が相当。)が形成された回路部材(「ヘッドシェル2」が相当。)とを押圧し、前記スプリングコンタクトピン先端を前記コンタクトパッドに接触させて電気的な接続をなすピン接続構造において、前記スプリングコンタクトピン接触子の付勢方向を、前記スプリングコンタクトピンと前記回路部材との押圧方向に対して、一定角やや傾斜させたピン接続構造」を具備し、刊行物2記載の考案は「スプリングコンタクトピン(「導電性可動接触子3」が相当。)と、コンタクトパッド(「導体パターン12A」及び「ネサ膜11A」が相当。)が形成された回路部材(「回路配線基板12」及び「液晶パネル11」が相当。)とを押圧し、前記スプリングコンタクトピン先端を前記コンタクトパッドに接触させて電気的な接続をなすピン接続構造」を具備するものの、両刊行物には、少なくとも本件考案1を特定する事項である、「複数のスプリングコンタクトピンの傾斜方向が少なくとも2方向に分散されてなる」点が記載もしくは開示されていない。
そして、本件考案1はかかる事項により、「スプリングピンの付勢によりDUTや回路基板のパッドが受ける応力を分散させ、パッド面に水平な応力を相殺することができるので、DUTの所定位置からの脱落や離脱、あるいは回路基板の変形等を防止することができる」という明細書に記載された格別の効果を奏するものである。
したがって、本件考案1は、刊行物1又は2に記載された考案であるとは認められず、また、上記両刊行物記載の考案を組み合わせたとしても本件考案1に至らないことは明らかであるから、刊行物1及び2に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることもできない。
また、本件考案2は、本件考案1の構成を全て備えているものであるから、本件考案1と同旨の理由により、刊行物1又は2に記載された考案であるものとも、刊行物1及び2に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとも認められない。
よって、本件考案1及び2は、実用新案登録出願の際、独立して実用新案登録を受けることができるものである。

2-4.訂正の適否に対するむすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法第116号附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.実用新案登録異議申立についての判断

3-1.申立の理由の概要
実用新案登録異議申立人 斎藤陽は、甲第1号証(特開昭57-152502号公報、上記刊行物1と同じ)及び甲第2号証(実願昭49-80433号(実開昭51-9283号)のマイクロフィルム、上記刊行物2と同じ)を提出し、本件考案1は甲第1号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定に該当し、あるいは、甲第1号証、および、甲第2号証に記載された考案に基いて、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に該当しているため、本件考案1に係る実用新案登録は、平成6年法律第116号附則第9条第2項で準用する特許法第113条第2項によって取り消すべきものである旨主張している。

3-2.判断
本件考案1は、上記2-3.で検討したように、甲第1号証に記載された考案であるとも、また甲第1号証及び甲第2号証記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案できたものとすることもできない。

3-3.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立の理由および証拠によっては、本件考案1についての実用新案登録を取り消すことができない。
また、他に本件考案1についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ピン接続構造
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】複数のスプリングコンタクトピンと、コンタクトパッドが形成された回路部材とを押圧し、前記スプリングコンタクトピン先端を前記コンタクトパッドに接触させて電気的な接続をなすピン接続構造において、
前記スプリングコンタクトピン接触子の付勢方向を、前記スプリングコンタクトピンと前記回路部材との押圧方向に対して、一定角やや傾斜させるとともに前記複数のスプリングコンタクトピンの傾斜方向が少なくとも2方向に分散されてなることを特徴とするピン接続構造。
【請求項2】前記複数のスプリングコンタクトピン同士がそれぞれ相互に前記回路部材に与える応力を相殺するように前記傾斜方向が選ばれてなることを特徴とする請求項1に記載のピン接続構造。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、電子部品テスト装置等の電子機器に用いられるピン接続構造に関し、スプリングコンタクトピンとコンタクトパッド(回路基板,電気部品等に形成された導電性の平面状パッド)との接触を確実に行うことができる上記構造に関する。
【0002】
【従来の技術および考案が解決しようとする課題】例えば、電子部品の自動テスト装置においては、測定端子と被測定対象(DUT)端子との電気的接続を行うために、スプリングコンタクトピン(以下、単に「コンタクトピン」と言う)が用いられる。また、上記テスト装置では、通常、DUT毎にボード類が用意されるが、この種のボード類をテスト装置に装着する場合にも、上記と同様のコンタクトピンが用いられる。
【0003】ところで、自動テスト装置では頻繁に被測定物を交換して装着しなければならないことが多く、またそのボード類にあっては半田付け作業等を伴う部品交換が繰り返し行われことが多い。このため、コンタクトピンの先端(すなわち、接触子の先端)表面やコンタクトパッド表面に酸化皮膜や硫化皮膜が形成されたり、半田付けに使用するペースト剤粒子、塵、油の粒子等が付着して汚れたりすることがある。このような酸化皮膜や塵等による汚れは、コンタクトピンとコンタクトパッドとの接触不良をしばしば生じさせる。
【0004】この不都合を解消するために、たとえば、コンタクトピンの先端を鋭利にして、コンタクトピンとコンタクトパッドとの接触を確保することも行われている。しかし、この方法ではコンタクトパッド表面の摩耗が激しいため、その用途はごく限られたものとなり、上記のような、電気部品のテスト装置におけるDUTとの接続や、頻繁に交換等を要するボード類等との接続に広く適用することはできなかった。
【0005】本考案は上記のような問題を解決するために提案されたものであって、コンタクトピンとコンタクトパッドとの接触を、簡易かつ確実に行うことができるピン接続構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記のような接触不良は、コンタクトピン接触子の付勢方向と、該コンタクトピンとコンタクトパッドとが押圧される方向とが同一であるために、コンタクトピンとコンタクトパッドとの接触が、接続動作の開始から終了に至るまでは常に一点で行われることに起因する。 本考案者等は、この事実に着目し、コンタクトピンの先端がコンタクトパッド面を摺動するようにすれば、コンタクトピンとコンタクトパッドとの良好な接続が保証されるとの知見を得て本考案をなしたものである。
【0007】すなわち、本考案のピン接続構造は、コンタクトピンと、コンタクトパッドが形成された回路部材とを押圧し、前記スプリングコンタクトピン先端を前記コンタクトパッドに接触させて電気的な接続をなすものであり、前記スプリングコンタクトピン接触子の付勢方向を、前記コンタクトピンと前記回路部材との押圧方向に対して、やや傾斜させてなることを特徴とする。
【0008】本考案は、コンタクトピンを使用する電子機器であれば、電子部品のテスト装置におけるDUTや回路基板のピン接続構造の他、ICテストシステムにおけるテストヘッド本体とDUTマザーボードとのピン接続など各種の電子機器に適用することができる。コンタクトピンの接触対象であるコンタクトパッドは、たとえば回路基板面に形成されたプリントパターンの一部である場合もあるし、電子部品に形成された端子(例えば基板面実装型の電気部品の端子)であることもある。コンタクトパッドは、形状や大きさを問わないことはもちろんである。
【0009】コンタクトピンの接触子とコンタクトパッドとが同一硬度の金属である場合には両者は相互に浸食(摩耗)し合うこともあるが、コンタクトピンの接触子とコンタクトパッドとをそれぞれ構成する金属に硬度差を持たせることで、何れか一方の摩耗を防止することができる。また、通常、コンタクトピンの先端やコンタクトパッドにはAu、Pt/Rh合金等によるメッキが施される。この場合、コンタクトピンに施されるメッキ金属と、コンタクトパッドに施されるメッキ金属の硬度に差を持たせることで、上記と同様、一方のメッキ金属の摩耗を防止することができる。
【0010】コンタクトピン接触子の付勢方向と、コンタクトピンとコンタクトパッドとが形成された回路部材との押圧方向との傾斜角は、コンタクトピン先端(接触子先端)がコンタクトパッド上を摺動する距離の設定長さに依存する。すなわち、コンタクトピンとコンタクトパッドが形成された回路部材とが接触し、両者の押圧が開始(接続動作が開始)すると、コンタクトピンの接触子がコンタクトピンの筒体に没入し始める。コンタクトピン接触子の付勢方向は、コンタクトピンと前記回路部材との押圧方向に対してやや傾斜しているので、接触子の筒体への没入に伴って、接触子先端はコンタクトパッド上を摺動する。そしてコンタクトピンが筒体内に所定長さ没入した所で(換言するなら、接触子先端が所定距離を摺動した所で)、上記押圧が停止(接続動作が終了)する。 この摺動により、接触子先端やコンタクトパッドの表面に、酸化皮膜や硫化皮膜が形成されていたり、塵、油の粒子等が付着していたりしても、結果としてこれらの皮膜や塵等が削られて接触子先端とコンタクトパッドとが良好に接触し、電気的接続が担保される。
【0011】通常は、僅かでもコンタクトピンの先端(接触子の先端)がコンタクトパッド上を摺動すれば、上記効果は発現される。 しかし、接続動作の開始から終了に至るまでの摺動距離の設定を大きくしすぎると、コンタクトピン接触子の付勢方向と押圧方向との傾斜角を大きくしなければならず、摺動が円滑に行われない場合も生じる。また、逆に摺動距離の設定を小さくしすぎるとコンタクトピンの接触子のコンタクトピンを収納筒体内での「遊び」に摺動距離が吸収されてしまい、接触子の先端がコンタクトパッド上を摺動しない場合も生じる。このため、接触子の摺動距離は、0.25mm程度以上に設定することが好ましい。
【0012】たとえば、コンタクトパッドの幅が2.5mmであり、コンタクトピンがこの幅方向に摺動する距離を0.3mm程度に設定した場合、コンタクトピン接触子の付勢方向と押圧方向との傾斜角θは以下のようになる。 θ=sin^(-1)(0.3/λ)(ただし、λは、回路部材との押圧による接触子の伸縮長)
【0013】部品テスト装置等のコンタクトピンが複数設けられてなるピン接続構造を有する装置の場合には、複数のコンタクトピンの傾斜方向を少なくとも2方向に分散させることもできる。 これにより、スプリングピンの付勢によりDUTや回路基板のパッドが受ける応力を分散させてパッド面に水平な応力を相殺することができるので、DUTの所定位置からの脱落や離脱、あるいは回路基板の変形等を防止することができる。
【0014】 なお、コンタクトピンと、コンタクトパッドが取り付けられた回路部材とは、相互に押圧することができれば、何れが固定されていてもよい。また、双方共に移動することにより両者の押圧がなされるようにしてもよい。
【0015】【実施例】図1は本考案の一実施例によるコンタクトピンの取付け構造を示している。 同図では、コンタクトピン1は図示しないピンソケットに固定挿着されている。また、回路部材(この場合は、回路基板3で示す)がF1,F2方向に移動し、該基板3に形成されたコンタクトパッド2との接触がなされる。 ここでは、回路基板3をF2方向に移動させた場合において、基板位置L1にてコンタクトパッド2とコンタクトピン1の先端(接触子11の先端)とが接触(接触点P1)することにより接続動作が開始し、基板位置L2にて回路基板3の移動が停止し接続動作が終了(ここでの接触点をP2とする)するものとする。
【0016】回路基板3をコンタクトピン1の付勢力に打ち勝って基板位置L1から下方に移動させると、接触子11はコンタクトピン1の筒体12内に没入する。 このとき、コンタクトピン1の付勢方向は、上記押圧方向(F1方向)に対してやや(同図ではθ)傾斜しているので、接触子11はコンタクトパッド2上をP1からP2まで摺動することになる。 L1,L2間距離(回路基板3の移動距離)をεとすると、摺動距離δは、δ=ε×tanθで表される。 この摺動距離δはごく僅かでよく、上記傾斜角θは摺動距離δを得るのに足りる角度に設定される。 上記摺動により、コンタクトパッド2の面に酸化皮膜等が形成され、あるいは塵等が付着していても、結果として、これらの皮膜塵等は接触子11先端により削り取られることになるので、コンタクトピン1とコンタクトパッド2との電気的接続が保証される。
【0017】図2は2本のコンタクトピン1a,1bを用いたピン接続構造を示している。なお、同図に示した各要素のうち、図1に示した要素と同一符号のものは、図1の要素と同一である。 図2において、各コンタクトピン1a,1bは図1に示したコンタクトピン1と同一動作をし、かつ各ピン1a,1bの傾斜方向は逆方向に分散しているので、コンタクトパッド2から回路基板3が受ける該基板面に平行な応力は全体として相殺される。したがって、回路基板3に偏った力が生じたり、コンタクトピン1a,1bが固定挿着されている図示しないソケット側の部材に偏った力が加わることもない。
【0018】図3(A),(B)は本考案のピン接続構造を、4端子電気部品に適用した場合のより具体的な実施例を説明するための図である。 同図(A)は、電子部品のテスト装置の平面図であり電気部品(DUT4)は、置き台51に載置されており、コンタクトピン1a,1bの組がブロック52に、またコンタクトピン1c,1dの組がブロック53に設けた図示しないソケットにそれぞれ固定挿着されている。ここでは、各コンタクトピンの組1a,1bおよび1c,1dはそれぞれ先端を水平かつ内向に配向させている。 なお、参考のために、同図(B)に置き台51にDUT4が載置される様子を示しておく。
【0019】両ブロック52,53は相対的に近接・乖離することができ、近接した際にはDUT4は、各コンタクトピン1a?1dにより両側から挟まれ、DUT4のコンタクトパッド4a?4dは、各コンタクトピン4a?4dの先端と接触する。 この場合にも、コンタクトピン1a,1b同士、1c,1d同士はそれぞれ相互に水平方向の応力を相殺する。したがって、DUT4に偏った力(すなわち、この場合にはトルク)が加えられることはないので、DUT4は置き台51から脱落することはない。
【0020】図4(A),(B)は本考案のピン接続構造を、ICテストシステムのテストヘッドに適用した場合の具体的な実施例を説明するための図である。同図(B)に示すように、テストヘッド61の本体上面には、多数のコンタクトピン1(1),1(2),・・・が上方に向けて突出している。 また、テストヘッド61の上方に位置するDUTマザーボード62が、その下面に形成された図示されないコンタクトパッドをコンタクトピン1(1),1(2),・・・に押圧させることにより、コンタクトピンとコンタクトパッドとのピン接続が行われる。本実施例では、同図(A)のテストヘッド本体の縦断面説明図に示すように、各コンタクトピン1(1),1(2),・・・は交互に内側、外側に傾斜している。なお、同図では、1(k),1(k+1)および1(n+1),1(n)を代表して図示してある。 この場合、各コンタクトピンがDUTマザーボード62に与える応力の水平成分は相殺されるので、DUTマザーボード62の挿着の際に該マザーボードに偏った応力が加えられることはなく、良好な電気接続が達成される。
【0021】
【考案の効果】本考案のピン接続構造は上記のように構成したので以下のような効果を奏することができる。(1)コンタクトピンの先端やコンタクトパッド表面に硫化皮膜,酸化皮膜が形成され、あるいは塵や油等の汚れが付着している場合にも、コンタクトピンとコンタクトパッドとの確実な接触を担保することができる。(2)また、コンタクトピンの取り付け方向を多少変化させるだけで、上記接触を保証できるので、部品点数を増加させることなく低コストかつ高品質のピン接続構造の提供が可能となる。(3)複数のコンタクトピンの傾斜方向を少なくとも2方向に分散させた場合には、スプリングピンの付勢によりDUTや回路基板のパッドが受ける応力を分散させ、パッド面に水平な応力を相殺することができるので、DUTの所定位置からの脱落や離脱、あるいは回路基板の変形等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の基本的な実施例を示す図である。
【図2】コンタクトピンが2本である場合の本考案の実施例を示す図である。
【図3】本考案を部品テスト装置に適用した場合の実施例を示す図であり、(A)は該部品テスト装置の部分平面説明図、(B)はDUTを置き台へ載置する際の参考図である。
【図4】本考案をICテストシステムのテストヘッドに適用した場合の実施例を示す図であり、(A)はテストヘッド本体上のコンタクトピンの取り付け状態を示す縦断面説明図であり、(B)はテストヘッドの概略説明図である。
【符号の説明】
1、1a?1d、1(1),1(2),・・・コンタクトピン
2、コンタクトパッド
3、回路基板
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を
「【請求項1】
複数のスプリングコンタクトピンと、コンタクトパッドが形成された回路部材とを押圧し、前記スプリングコンタクトピン先端を前記コンタクトパッドに接触させて電気的な接続をなすピン接続構造において、
前記スプリングコンタクトピン接触子の付勢方向を、前記スプリングコンタクトピンと前記回路部材との押圧方向に対して、一定角やや傾斜させるとともに前記複数のスプリングコンタクトピンの傾斜方向が少なくとも2方向に分散されてなることを特徴とするピン接続構造。」
と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2を
「【請求項2】
前記複数のスプリングコンタクトピン同士がそれぞれ相互に前記回路部材に与える応力を相殺するように前記傾斜方向が選ばれてなることを特徴とする請求項1に記載のピン接続構造。」
と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書の段落【0018】において
「置き台51がDUT4が」を
「置き台51にDUT4が」と訂正する。
異議決定日 2000-11-01 
出願番号 実願平4-88562 
審決分類 U 1 652・ 113- YA (H01R)
U 1 652・ 121- YA (H01R)
最終処分 維持    
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 藤本 信男
熊倉 強
登録日 1999-04-16 
登録番号 実用新案登録第2596903号(U2596903) 
権利者 アジレント・テクノロジー株式会社
東京都八王子市高倉町9番1号
考案の名称 ピン接続構造  
代理人 加藤 公久  
代理人 小原 英一  
代理人 加藤 公久  

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