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審決分類 審判 全部申し立て   B65D
審判 全部申し立て   B65D
管理番号 1028395
異議申立番号 異議1998-76074  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-12-18 
確定日 2000-11-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第2574527号「連結包装食品」の請求項に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについてした平成10年12月18日付取消決定に対し、東京高等裁判所において取消決定取消の判決(平成12年(行ケ)第111号、平成12年9月20日判決言渡)があったので、さらに審理したうえ、次のとおり決定する。   
結論 登録第2574527号の請求項に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2574527号に係る考案は、平成3年9月20日に出願され、平成10年4月3日にその実用新案登録の設定登録がなされたところ、実用新案登録異議申立人 下田昭から平成10年12月18日付で実用新案登録異議の申立て(平成10年異議第76074号)があり、平成12年1月26日付で「実用新案登録第2574527号の請求項1ないし4に係る実用新案登録を取り消す。」との決定がなされた。
これに対して、本件実用新案登録の実用新案登録権者は、平成12年(行ケ)第111号として取消決定取消請求訴訟を提訴したところ、平成12年9月20日に、「特許庁が平成10年異議第76074号事件において平成12年1月26日にした決定を取り消す。」との判決の言渡があった。

2.本件考案
本件実用新案登録第2574527号に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】収納部と周縁部とを有する包装体の収納部に食肉製品を収納し含気または真空包装してなる個包装した食肉製品包装体数個を少しずつずらしてその表及び裏にそれぞれ1枚ずつの紙帯またはプラスチック帯を当接してその収納部と周縁部とを順次連結貼付してなる連結包装食品。
【請求項2】紙帯またはプラスチック帯が裏に貼着剤を付けた印刷ラベルおよび/または印刷ステッカーである請求項1記載の連結包装食品。
【請求項3】食肉製品がスライスハムまたはソーセージである請求項1記載の連結包装食品。
【請求項4】食肉製品包装体が真空包装されたものである請求項1記載の連結包装食品。」

2.実用新案登録異議申立の概要
実用新案登録異議申立人 下田昭(以下、「申立人」という。)は、甲第1号証(特開昭51-122595号公報)、甲第2号証(実願昭54-158540号(実開昭56-75169号)のマイクロフィルム)、甲第3号証(実願昭60-169543号(実開昭62-78663号)のマイクロフィルム)を提出して、請求項1,3及び4に係る考案は甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案できたものであり、請求項2に係る考案は甲第1,2及び3号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものであると主張している(以下、「主張1」という。)。
さらに、申立人は、本件考案の明細書第3図に記載されたものが請求項1に係る考案に含まれないとして、実用新案法第5条第3項又は第4項の規定に違反して実用新案登録されたものであると主張している(以下、「主張2」という。)。

3.主張1について
(1)申立人の提出した証拠に記載された事項
甲第1号証である特開昭51-122595号公報には、
(ア)「本発明は複数の個々の密閉封止されたユニットが対応する縁部に沿い互いに固着されサドル・ラベルを取付けられその結果によるマルチ・ユニットの販売用包装物が掛けくぎを打込んだ板の形式の棚に展示できるようにし、個々のユニットには分離線が設けられて従ってそれぞれのユニットは包装物の残りのユニットを乱さずに容易に分離できるようにしてある。」(第1頁右下欄第7?15行)、
(イ)「本発明の1つの目的は、一般的にいえば、消費のため一時に1つづつ開けられる個々のユニットの1つが幾つかを消費者が選択できるよう経済的にしかも魅力的にして薄切り食品の小さい一部分を販売するためのマルチ・ユニット配給包装物を提供することである。
更に詳細にいえば、本発明の1つの目的は、1種類かそれ以上の種類の食品の1つまたは少数の薄切り部分を入れた複数の個々に密閉封止されたユニットを展示および販売目的でまとめると共に個々のユニットが包装物から選択的に取出しすなわち分離されるようにする前記型式のマルチ・ユニット配給包装物を提供することである。」(第2頁右上欄第13行?同頁左下欄第10行)、
(ウ)「第1図、第2図および第5図に示した具体例について説明すると、周知の方法で大量生産できる個々の溶着密封されたユニットが第1図に総体的に符号5で示してある。ユニット5は食品に使用を許された適当なプラスチック材で形成できるほぼ平たい支持層すなわち後ろ側部材6(第1図と第5図)を有している。個々のユニット5はまた突出した矩形状ポケット8が一体に形成されている透明なカバー層すなわち前側部材7を有している。ポケット8が円形の如き他の種々の形状を有することができることは理解できよう。第5図において、ポケット8は、たとえば、軽食用の肉で良い食品の個々の薄切り部分9を2個入れてある。」(第2頁右下欄第1?13行、第1、2、5図)、
(エ)「実際には、複数の個々のユニット5がまとめられ第2図に総体的に符号13で示した如きマルチ・ユニットの配給包装物になるよう一緒に固着される。包装物13において、4個の個々のユニット5は同じ向きにされそれらの細長い上部のへり12を周知の市販の機具を使用して熱密封の如き方法により一緒に固着される。次いで、サドル・ラベル14をまとめたへり12にかぶせこのようにして形成された組合わせ体に掛けくぎ受け孔15を形成する。もし所望ならば、サドル・ラベル14は個々のユニット5の並べたへり12が合わされた後であるがしかしへりが密封される以前にかぶせて次いでサドル・ラベルを含む組合わせ全体を超音波密封すなわち合体することができる。へり12とサドル・ラベル14とをまとめるすなわち互いに固着するのに熱密封とか適当な接着剤の如き他の手段を使用できることは理解できよう。 ・・・
サドル・ラベル14の背部すなわち後脚部は最後部のユニット5に設けた穿孔線11の下方にまで延び他方サドル・ラベル14の前脚すなわち前部は最前部のユニット5の穿孔線11の幾分上方で終るようにすることが好ましい。」(第3頁左下欄第14行?第4頁左上欄第7行、第1、2、5図)、
(オ)「第6図ないし第8図の具体例について説明すると、マルチ・ユニット包装物が総体的に符号30で示してあり第1図と第2図とに示した個々のユニット5にほぼ似ている4個の個々のユニット31から成る。第1図と第2図とのユニットとに比較した場合の1つの相違点は、頂部に各ユニットをはがし開くすなわち分離する際に使用されるフラップを設ける代りにフラップ32をユニットの底部に設けてある。個々のユニット31はまた第6図と第8図とに示した如く水平に互いにずらした関係になるようマルチ・ユニット包装物30に異なる位置にして組合わされる。このようにするには個々のユニットの頂部には分離線35の上の矩形状のへり部34を互いにまとめるのに前記した具体例のサドル・ラベルより長いヘッダー・ラベルすなわちサドル・ラベル33を使用する必要がある。
個々のユニット31をこのように互いにずらして形成されたマルチ・ユニット包装物30は個々のユニットが種々の薄切りした軽食用肉、チーズ等の如き異なる品目を入れて製品を販売するのに特に有用である。」(第4頁右下欄第4行?第5頁左上欄第10行、第6?8図)と記載されている。

申立人の提出した甲第2号証である実願昭54-158540号(実開昭56-75169号)のマイクロフィルムには、
(カ)「以下実施例に基づいて本考案の内容を説明すると、第1図に示すように、個包装した菓子1…をトレー2内に並べて収容し、同列ごとに透明な連結テープ3にて一連に連結し、連結テープ3の端はトレー2の縁に接着し、この状態にて外装袋4にて外装するものである。
このように包装すると、個々の菓子1…は連結テープ3にて一連に連結され、しかも連結テープ3の端はトレー2の縁に接着してあるため、トレー2内においては何れの方向にも移動できない。
したがって、スタンド方式にて商品を陳列しても中味が底の方に片寄る心配がなく、従来と違って商品価値が損なわれることがない。
また、商品の輸送中或いは取扱い中の動きにおいても、個々の菓子は移動しないので、菓子の損傷の防止効果もある。なお、個包装した菓子をトレー内に入れずに外装する場合には、夫々の菓子だけを一連に連結テープにて連結し、ブロック化することにより、上記と同一の効果を奏することができる。また、この連結テープは商品との違和感が無いように、透明材を用い、一見しても判らないようにするのが望ましい。但し、商品によっては着色したものを用いて、商品のデザイン効果を高める工夫をなしても良く、本考案においては連結テープの材質等は特に限定しない。また、上記実施例は菓子を対象としているが本考案は菓子以外の商品の包装構造にも適用が可能である。」(第2頁第17行?第4頁第4行、第1、2図)と記載されている。

申立人の提出した甲第3号証である実願昭60-169543号(実開昭62-78663号)のマイクロフィルムには、
(キ)「1.収納物品を収容した容器を、合成樹脂の密封フィルムで被覆密封し、さらに上記密封フィルムの外面には、表面に印刷表示部を形成した、自己粘着性を有する帯状の表示フィルムを巻回装着していることを特徴とするフィルム密封包装体。」(実用新案登録請求の範囲)、
(ク)「表示フィルム(4)に形成する印刷表示部(40)としては、前記したバーコード、製造年月日等のほか、商品の内容量や価格等の商品情報、および装飾用の模様や意匠デザイン等が、必要に応じて印刷形成することができる。」(第11頁第1?5行、第1図)と記載されている。
(2)対比・判断
まず、請求項1に係る考案について検討する。
(請求項1に係る考案と甲第1号証記載のものとの一致点)
請求項1に係る考案と甲第1号証に記載されたものとを対比すると、甲第1号証に記載された包装物は、食品の少数の薄切り部分を入れた複数の個々に密封封止されたユニット5からなり(上記記載イ)、個々のユニット5に設けられたポケット8には食用の肉が収納されることが例示されている(上記記載ウ)とともに、第6?8図に記載された実施例では、個々のユニットが少しずつずらして連結されている(上記記載オ)。してみると、甲第1号証に記載されたもののユニット、ポケットは、請求項1に係る考案の包装体、収納部にそれぞれ対応し、また、甲第1号証記載のユニットは収納部の周囲に周縁部を有していることは図面からも明らかであるので、両者は、収納部と周縁部とを有する包装体の収納部に食肉製品を収納し含気または真空包装してなる個包装した食肉製品包装体数個を少しずつずらして順次連結貼付してなる連結包装食品、で一致している。
(申立人の主張する一致点)
両者の一致点に関して、申立人は、(甲第1号証の)特に第6図及び第8図には、個々の包装体は各包装体のへりの表裏にまたがって各へりの表と裏にそれぞれ当接されたサドル・ラベルによってなされており、1枚か2枚かの相違はあるものの、両者は、帯状体で連結貼付されている点でも一致していると主張している。
しかしながら、甲第1号証には、個々のユニットをずらさずに連結する場合に関しては、上記エに記載があるものの、第6図及び第8図の具体例の説明である上記オには、各包装体をどのように連結するかについての具体的な記載はなく、第6図及び第8図の具体例については、上記エの記載と同様の手段により固定がされると理解するのが妥当である。
ところで、上記エには、個々のユニット同士は熱密封または超音波密封より互いに連結固定するとの記載はあるものの、サドル・ラベルはユニットを連結するために用いられてはいない。サドル・ラベルは接着剤により個々のユニットと固着され、その結果としてユニット同士の連結に寄与することがあり得るとしても、サドル・ラベルなしで連結固定されているその固定部にかぶせるものであるから、カバーとしての機能を果たすにすぎない。
また、申立人は、上記記載エの記載箇所の内、(あ)「サドル・ラベルを含む組合せ全体を超音波密封すなわち合体することができる。」及び(い)「互いに固着するのに熱密封とか適当な接着剤の如き他の手段を使用できることは理解できよう。」の箇所に下線を引き、上記主張を行っているが、上記(い)の記載事項については、平成12年(行ケ)第111号判決では直接の判断は示されていない。しかしながら、敢えてその点について触れることなくサドル・ラベルにはカバーとしての機能を果たすにすぎないとの判断が判決で示されたことを勘案すれば、上記(い)に記載されたものも、サドル・ラベルにユニットを連結する機能があることを示唆するものではないと判断するのが妥当である。
よって、申立人の主張は認められない。
(相違点について)
以上のことから、請求項1に係る考案と甲第1号証に記載されたものとは、以下の点で相違する。
相違点:請求項1に係る考案においては、個包装した包装体(ユニット)の表及び裏にそれぞれ1枚ずつ設けられた紙帯またはプラスチック帯(帯状体)により、ユニットの収納部と周縁部とが順次連結貼付されているのに対し、甲第1号証に記載されたものにおいては、個包装したユニットは熱密封あるいは超音波密封により直接連結されている点。
(相違点に対しての判断)
甲第2号証には、片面に設けられた連結テープにより個包装されたユニットの収納部が連結貼付されたものが記載されている。しかしながら、甲第1号証に記載されたものにおいては、個包装したユニットは熱密封あるいは超音波密封により連結されており、ユニットと別体の連結手段により連結貼付するものではないので、熱密封あるいは超音波密封に替えて甲第2号証記載のユニットとは別体の連結テープを用いてユニットを連結することを当業者がきわめて容易に想到し得たということはできない。
従って、上記相違点は甲第2号証記載のものから当業者がきわめて容易に想到し得たとすることはできないので、請求項1に係る考案は甲第1号証及び甲第2号証記載のものからきわめて容易に考案できたものということはできない。
また、申立人の主張にはないが、甲第3号証に記載されたものを見ても、上記相違点に関する容易性の判断には変更はない。
(請求項2?4に係る考案について)
次に、請求項2?4に係る考案について検討すると、これらの請求項に係る考案は、請求項1に係る考案を特定するものであるので、甲第1号証、甲第2号証及び甲3号証に記載されたものからきわめて容易に考案できたものとはいえない。

4.主張2について
本件考案の明細書の第1図及び第2図に記載されたものは、本考案の連結包装した食肉製品の表と裏を示しているものであり、第3図に記載されたものは、本件考案に係る連結包装した食肉製品を作成するための治具を用いて製造する態様を示したものである。
したがって、本件考案の明細書には、当業者が本件考案を実施できる程度に記載がされており、かつ、実用新案登録請求の範囲には、考案の詳細な説明に記載されたものであることも明らかなので、本件考案が実用新案法第5条第3項及び第4項で規定する明細書の記載要件を満たしていないとする申立人の主張は認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-01-26 
出願番号 実願平3-84806 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (B65D)
U 1 651・ 531- Y (B65D)
最終処分 維持    
前審関与審査官 原 慧  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 杉原 進
市野 要助
村本 佳史
門前 浩一
登録日 1998-04-03 
登録番号 実用新案登録第2574527号(U2574527) 
権利者 雪印食品株式会社
北海道札幌市東区本町1条9丁目2番8号
考案の名称 連結包装食品  
代理人 藤野 清也  
代理人 滝田 清暉  

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