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審決分類 審判 全部申し立て   A01M
管理番号 1028407
異議申立番号 異議2000-71765  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-24 
確定日 2000-12-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第2600743号「加熱蒸散装置」の請求項1ないし2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2600743号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.本件考案
実用新案登録第2600743号(平成3年1月19日出願、平成11年8月27日設定登録。)の請求項1ないし2に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。。
「【請求項1】吸液芯を具備する薬液容器、少なくとも前記吸液芯の受熱部を収納し且つ該受熱部の周囲に間隙を設けて発熱体を備えた器体、該器体の上部に設けた中央部に拡散口を有する保護キャップとからなる加熱蒸散装置において、前記発熱体の上部には10?30mmの範囲内の均一な内径及び0.5?3mmの厚みを有する円筒状リングが設けられており、該円筒状リングの上端開口の円周部は前記保護キャップの内面と一体成形されており、該リングの上端開口は前記拡散口において開口しており、且つ該リングの下端開口は前記間隙と対面して開口していることを特徴とする加熱蒸散装置。
【請求項2】器体の底部または側面に通気口を設け、該通気口を通じて外気を吸液芯の受熱部の周囲の間隙と連通させたことを特徴とする請求項1記載の加熱蒸散装置。」
2.異議申立ての理由の概要
ア.異議申立人 ア-ス製薬株式会社は、証拠として甲第1号証(実願昭51-166732号(実開昭53-84577号)のマイクロフィルム)および甲第2号証(実願昭63-167961号(実開平2-87481号)のマイクロフィルム)を提出して、本件請求項1ないし請求項2に係る考案は、甲第1号証および甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない旨主張している。
(1)甲各号証記載の考案
a.甲第1号証には、「本考案は電池式燻蒸器に係り、電池を熱源として燻蒸液中にその一部を浸漬しているヒ-タを清潔に保持し得る電池式燻蒸器に関する。」(明細書第1頁11行?同頁13行)と記載され、「燻蒸室9には煙突14が固定され上端は前記蓋体17を突出している。」(明細書第4頁6行?同頁7行)と記載され、「燻蒸室9内に充満した燻蒸気は燻蒸室9に設けた煙突14より上昇気流となって立ちのぼり、いわゆる煙突の吸い込み効果となって強力かつ迅速に上端から排出されることになる。」(明細書第6頁15行?同頁18行)と記載されていることからみて、
甲第1号証には、「燻蒸室の上端に吸い込み効果を奏する煙突が固定され、該煙突が蓋体から突出している構成を備えた電池式燻蒸器」の考案が記載されているものと認められる。
b.甲第2号証には、「吸液芯を具備する薬液容器を収納し、該吸液芯の受熱部の周囲に間隙を設けて発熱体を備えた加熱蒸散装置において、該加熱蒸散装置の底部に通気口を設け、外気がこの通気口から前記間隙を通じて連通しうるようになしたことを特徴とする加熱蒸散装置。」(明細書第1頁5行?同頁11行)と記載され、「5は発熱体3の上部に載置される保護キャップで安全上付設するのが好ましい。」(明細書第8頁14行?同頁15行)と記載され、「吸液芯8の受熱部に浸透した薬液が発熱体3に間接加熱されて揮散される。また、装置内において発熱体3と接触している空気は温度が上昇する結果、上方に流動する一方、装置底部通気口14から冷たい空気が流入しここに装置は煙突式作用効果を呈するようになる。」(明細書第11頁19行?第12頁5行)と記載され、「この煙突式作用効果は、通気口14を底部に配すると共に吸液芯8と発熱体3の間隙11を周囲均等に固定した本考案装置において最も顕著で、安定した蒸散機能と高い薬剤拡散力を与え、広い部屋でも満足な殺虫効果が得られたが、」(明細書第14頁12行?同頁16行)と記載され、「本考案は、従来の加熱蒸散装置に比べて薬液のロスが少なく効率的に蒸散使用でき、拡散力がすぐれ、しかも、使用が安全であるという効果奏する。」(明細書第15頁9行?同頁12行)と記載されていることからみて、
甲第2号証には、「 吸液芯を具備する薬液容器、少なくとも前記吸液芯の受熱部を収納し且つ該受熱部の周囲に間隙を設けて発熱体を備えた器体、該器体の上部に設けた中央部に拡散口を有する保護キャップとからなる加熱蒸散装置」の考案が記載されているものと認められる。
(2)対比・判断
(請求項1に係る考案)
請求項1に係る考案(前者)と甲第2号証に記載された考案(後者)とを対比すると、両者は、「 吸液芯を具備する薬液容器、少なくとも前記吸液芯の受熱部を収納し且つ該受熱部の周囲に間隙を設けて発熱体を備えた器体、該器体の上部に設けた中央部に拡散口を有する保護キャップとからなる加熱蒸散装置 」の構成において一致するが、前者は、「発熱体の上部には10?30mmの範囲内の均一な内径及び0.5?3mmの厚みを有する円筒状リングが設けられており、該円筒状リングの上端開口の円周部は前記保護キャップの内面と一体成形されており、該リングの上端開口は前記拡散口において開口しており、且つ該リングの下端開口は前記間隙と対面して閉口している 」構成であるのに対し、後者は、そのような構成を具備していない点で両者は相違する。
上記相違点を検討すると、甲第1号証は、「燻蒸室の上端に吸い込み効果を奏する煙突が固定され、該煙突が蓋体から突出している構成を備えた電池式燻蒸器」の考案であって、上記煙突は蓋体から突出するものであるから、請求項1に係る考案の上端開口の円周部は保護キャップの内面と一体成形されている円筒状リングとは構成が相違する以上、これを甲第2証記載の考案に適用しても請求項1に係る考案は構成されない。
そして、かかる相違点により、請求項1に係る考案は、明細書に記載されたとおりの「従来の加熱蒸散装置に比較べて放熱エネルギ-及び薬液のロスが少なく効率的に蒸散使用でき、拡散力がすぐれ、使用が安全である」という作用効果を奏するものと認める。
したがって、請求項1に係る考案は、甲第1号証および甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。
(請求項2に係る考案)
請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案の構成を技術的に限定したものであるので、上記対比・判断で示した同様の理由により、甲第1号証および甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。
イ.異議申立人 ア-ス製薬株式会社は、本願考案は請求項の記載と考案の詳細な説明との対応関係が不明瞭であり実用新案第5条3項の規定により、実用新案登録を受けることができない旨主張している。
本件新案登録明細書の請求項1には、「?発熱体の上部には10?30mmの範囲内の均一な内径及び0.5?3mmの厚みを有する円筒状リングが設けられており、該円筒状リングの上端開口の円周部は前記保護キャップの内面と一体形成されており、」と記載され、他方、考案の詳細な説明の段落番号【0016】には、「本実施例では、上記の構成に加え、該加熱蒸散装置の発熱体3と拡散口12との間に直径10?30m/m、厚み0.5?3m/mの円筒状リング16を設け、該該円筒状リングの上端開口の円周部を器具1の上面と一体成形により結合させ、」と記載されている。
したがって、請求項の記載と考案の詳細な説明の記載との対応関係は明りょうであるものと認める。
3.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議の申立ての理由によっては本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-11-21 
出願番号 実願平3-5528 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (A01M)
最終処分 維持    
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 鈴木 寛治
平瀬 博通
登録日 1999-08-27 
登録番号 実用新案登録第2600743号(U2600743) 
権利者 大日本除蟲菊株式会社
大阪府大阪市西区土佐堀1丁目4番11号
考案の名称 加熱蒸散装置  

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